院外心停止への経鼻蒸発冷却法は有益か/JAMA

提供元:ケアネット

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公開日:2019/05/16

 

 院外心停止患者への経鼻蒸発冷却法(trans-nasal evaporative intra-arrest cooling)の実施は、通常ケアと比較して90日後の良好な神経学的アウトカムの生存を、統計学的に有意に改善しなかったことが示された。スウェーデン・カロリンスカ研究所のPer Nordberg氏らが、欧州7ヵ国の救急医療サービス(EMS)を通じて行った国際多施設共同無作為化試験「PRINCESS試験」の結果で、JAMA誌2019年5月7日号で発表した。経鼻蒸発冷却法は、心肺蘇生中(すなわち心停止中)に主に脳を冷却するための手法である。心停止後に実施する低体温治療は、良好な神経学的アウトカムの生存を増大する可能性が示唆されていた。

90日後の脳機能カテゴリー1~2での生存率を比較
 PRINCESS試験では、2010年7月~2018年1月にかけて、バイスタンダー目撃のある院外心停止患者677例を対象に試験を開始し、2018年4月29日まで追跡した。

 研究グループは被験者を無作為に2群に分け、一方には経鼻蒸発冷却法を(343例)、もう一方には通常のケアを行った(334例)。両群の被験者ともに、入院後に全身低体温療法(24時間32~34℃)を行った。

 主要アウトカムは、90日後の脳機能カテゴリー(CPC)1~2で定義した、良好な神経学的アウトカムを有する生存だった。副次アウトカムは、90日生存率と中核体温が34℃未満に達するまでの経過時間だった。

90日後CPC 1~2生存率、介入群16.6%、対照群13.5%で有意差なし
 被験者677例の年齢中央値は65歳、女性は25%だった。671例が試験を完遂した。

 90日後のCPC 1~2達成患者は、経鼻蒸発冷却法を行った介入群56/337例(16.6%)に対し、通常ケアの対照群45/334例(13.5%)で、両群に有意差はなかった(群間差:3.1%[95%信頼区間[CI]:-2.3~8.5]、相対リスク[RR]:1.23[95%CI:0.86~1.72]、p=0.25)。

 90日時点での生存は、介入群60/337例(17.8%)に対し、対照群52/334例(15.6%)で、有意差はみられなかった(群間差:2.2%[95%CI:-3.4~7.9]、RR:1.14[0.81~1.57]、p=0.44)。

 中核体温34℃未満達成までの時間中央値は、介入群105分、対照群182分で、有意差が認められた(p<0.001)。

 なお、最も高頻度の介入デバイス関連有害事象は軽微な鼻血で、介入群45/337例(13%)で報告された。7日間までの有害事象発生率は両群で同程度だった。

(医療ジャーナリスト 當麻 あづさ)

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コメンテーター : 香坂 俊( こうさか しゅん ) 氏

慶應義塾大学 循環器内科 専任講師

J-CLEAR評議員