双極症の薬物療法に関する臨床的エビデンスは依然として限られている。とくに、臨床現場で広く用いられている併用療法の有効性については、システマティックに評価されていない。臨床疫学研究推進機構の奥村 泰之氏らは、双極症に対して用いられる気分安定薬および抗精神病薬の単剤療法と併用療法の再発予防効果を、厚生労働省が保有する匿名医療保険等関連情報データベース(NDB)を用いて評価した。The British Journal of Psychiatry誌オンライン版2026年4月30日号の報告。
本研究は、厚生労働省が保有するNDBを用いた、個人内比較デザインの集団ベースコホート研究である。対象は、2013年4月〜2022年3月に精神科施設で治療を受けた双極症の主診断を受けた20歳以上の患者。フォローアップ調査は、2023年5月末まで継続した。
曝露群には、気分安定薬または抗精神病薬の単剤療法およびリチウムと他の気分安定薬の併用療法またはリチウム、バルプロ酸、ラモトリギンと一般的に処方される抗精神病薬の併用療法を含めた。主要アウトカムは、精神科入院までの期間とした。調整ハザード比(aHR)および95%信頼区間(CI)の推定には、層別化Cox回帰分析を用いた。
主な結果は以下のとおり。
・対象患者31万5,046例のうち、8万3,621例(26.5%)が精神科入院を経験した(フォローアップ期間中央値:7.1年)。
・リチウム(aHR:0.67、95%CI:0.66〜0.68)、バルプロ酸(aHR:0.71、95%CI:0.70〜0.73)、ラモトリギン(aHR:0.72、95%CI:0.69〜0.75)、カルバマゼピン(aHR:0.74、95%CI:0.70〜0.78)の単剤療法は、いずれの気分安定薬も使用しない場合と比較し、入院リスクの低下と関連していた。
・アリピプラゾール(aHR:0.73、95%CI:0.70〜0.75)およびゾテピン(aHR:0.74、95%CI:0.69〜0.79)を含む15種類の抗精神病薬の単剤療法は、いずれの抗精神病薬も使用しない場合と比較し、入院リスクの低下と関連していた。
・リチウム単剤療法と比較し、リチウムとカルバマゼピン(aHR:0.73、95%CI:0.64〜0.83)、ゾテピン(aHR:0.82、95%CI:0.72〜0.93)、アリピプラゾール(aHR:0.87、95%CI:0.82〜0.92)、またはバルプロ酸(aHR:0.92、95%CI:0.87〜0.97)の併用療法は、入院リスクのさらなる低下と関連していた。
著者らは「本研究は、双極症患者における精神科入院の減少に対する、気分安定薬および抗精神病薬の単剤療法と併用療法の有効性を実臨床下で評価した最大規模の研究である。双極症に対する気分安定薬と抗精神病薬の単剤療法および併用療法は、異なる精神科入院予防効果を示した。これらの知見は、単剤療法では十分な治療反応が得られない場合などに、併用薬を選択する際の指針となる可能性がある」と結論付けている。
(鷹野 敦夫)