安定した対症療法を受けている早期段階のパーキンソン病患者の治療において、prasinezumab(αシヌクレイン凝集体のC末端に結合するヒト化モノクローナル抗体)を追加しても運動症状の進行の有意な遅延をもたらさないが、探索的解析の結果などから有望な疾患修飾治療となる可能性が示唆されることが、スイス・F. Hoffmann-La RocheのTania Nikolcheva氏らが実施した「PADOVA試験」で示された。研究の成果は、Lancet誌2026年5月30日号で報告された。
9ヵ国の第IIb相無作為化プラセボ対照比較試験
PADOVA試験は、欧州と北米の9ヵ国110施設で実施した第IIb相二重盲検無作為化プラセボ対照比較優越性試験(F. Hoffmann-La Rocheの助成を受けた)。2021年5月~2023年3月に、年齢50~85歳、パーキンソン病の診断後3ヵ月~3年が経過し、Hoehn-Yahr重症度分類の1または2度で、レボドパまたはMAO-B阻害薬による対症療法(単剤)を3ヵ月以上受けている患者586例(平均年齢64.2[SD 7.3]歳、女性214例[37%])を登録した。
被験者を、対症療法に加え、prasinezumab(1,500mg、4週ごと)を静脈内投与する群(293例)またはプラセボ群(293例)に無作為に割り付け、76週間以上投与した。
主要エンドポイントは、確認された運動症状の進行イベントまでの期間(運動障害学会統一パーキンソン病評価尺度[MDS-UPDRS]パートIIIによる休薬時スコアの5点以上の上昇)とし、最大の解析対象集団で評価した。
主要エンドポイントは達成されず、安全性/忍容性プロファイルは良好
550例(prasinezumab群277例、プラセボ群273例)が二重盲検下の治療を完了した。ベースラインで586例中435例(74%)がレボドパ、151例(26%)はMAO-B阻害薬の投与を受けていた。
主要エンドポイントは達成されなかった。主解析では、プラセボ群との比較において、prasinezumab群で運動症状の進行の遅延は認めなかった(ハザード比[HR]:0.84、95%信頼区間[CI]:0.69~1.01、p=0.066)。
また、prasinezumab群における確認された運動症状の進行までの期間中央値は61.1週間(95%CI:52.3~71.9)であったのに対し、プラセボ群は49.7週間(95%CI:40.1~58.1)であった。
一方、事前に規定された探索的解析では、レボドパによる対症療法を受けているサブグループにおいて、prasinezumab群で運動症状の進行の遅延がみられた(HR:0.79、95%CI:0.63~0.99、名目上のp=0.044)。
prasinezumab群の安全性および忍容性プロファイルは良好であった。最も頻度の高い有害事象(器官別大分類[SOC])は、感染症/寄生生物(prasinezumab群58%[169/292例]、プラセボ群54%[157/290例])だった。
1件以上の重篤な有害事象の発生率は両群で同程度であった(prasinezumab群12%[34/292例]、プラセボ群12%[34/290例])。prasinezumab群で2例が重篤な有害事象(急性心筋梗塞1例、心内膜炎1例)により投与中止に至り、このうち心内膜炎はprasinezumab関連と判定された。試験期間中に3例が死亡したが、いずれも試験薬とは関連がなかった(prasinezumab群1例[<1%]、プラセボ群2例[1%])。
著者は、「主要エンドポイントは達成されなかったものの、本試験のエビデンスからは、prasinezumabを効果的な対症療法と併用することで、早期パーキンソン病患者において進行を遅らせる可能性があることが示唆される」「第III相試験(PARAISO)におけるprasinezumabの継続的な検討が正当化される」としている。
(医学ライター 菅野 守)