貧血は認知症発症リスクの上昇と関連することが知られているが、アルツハイマー病(AD)に関連する血液バイオマーカーとの関係は十分に明らかではなかった。今回、認知症を発症していない高齢者を対象としたコホート研究において、貧血は横断的にADバイオマーカー値の上昇と関連し、縦断的には認知症発症リスクの上昇と関連していたことを、スウェーデン・カロリンスカ研究所/ストックホルム大学のMartina Valletta氏らが明らかにした。JAMA Network Open誌2026年4月17日号掲載の報告。
研究グループは、スウェーデンの地域住民コホート研究(SNAC-K)のデータを用い、ヘモグロビン値とADバイオマーカーとの横断的関連に加え、ヘモグロビン値およびADバイオマーカーと認知症発症との縦断的関連を検討した。対象はベースライン時点で認知症を発症していない60歳以上の参加者で、2001年から2019年まで年齢に応じて3年または6年ごとに追跡された。貧血はWHOのヘモグロビン値の基準(女性12g/dL以下、男性13g/dL以下)で定義した。
主要アウトカムはDSM-IVに基づく認知症の発症、リン酸化タウ217(p-tau217)、神経フィラメント軽鎖(NfL)、グリア線維性酸性タンパク質(GFAP)の血清濃度であった。統計解析にはCox比例ハザード回帰および分位点回帰を用い、さらにヘモグロビンとADバイオマーカーの組み合わせによる認知症発症リスクの関連も検討した。
主な結果は以下のとおり。
・ベースラインで認知症を発症していない2,282例(年齢中央値72.2歳、女性61.6%)を解析対象とし、うち199例(8.7%)が貧血であった。
・平均9.3年の追跡期間中に362例(15.9%)が認知症を発症した。
・貧血群は、非貧血群と比較して認知症発症リスクが66%高かった(ハザード比[HR]:1.66、95%信頼区間[CI]:1.21~2.28)。
・ヘモグロビン値と認知症リスクの関係は非線形であり、約14g/dLを下回るとリスク上昇がみられ、それ以上では頭打ちとなった。
・貧血群は、p-tau217(β=0.22、95%CI:0.15~0.30)、NfL(β=0.25、95%CI:0.19~0.31)、GFAP(β=0.08、95%CI:0.03~0.12)の血清濃度が高かった。
・貧血とADバイオマーカー高値が併存する群では、いずれも正常な群と比較して認知症リスクはさらに高かった(貧血+高NfLのHR:3.64)。
・これらの関連は男性でより強い傾向がみられた。
これらの結果から、研究グループは「ヘモグロビン値が低く、ADバイオマーカーが高い場合に認知症リスクが最も高かったことから、認知症の発症において貧血と神経病理の間に相互作用が存在する可能性が示唆される。貧血は認知症リスクの層別化において臨床的に重要な因子であり、認知症予防戦略における修正可能な標的となる可能性がある」とまとめた。
(ケアネット 森)