小児および思春期の精神疾患に対する薬物治療反応の予測因子

これまで、小児および思春期の精神疾患患者に対する薬物療法の治療反応の予測に関する研究は、十分に行われていなかった。慶應義塾大学の辻井 崇氏らは、米国国立精神衛生研究所(NIMH)によるサポートで実施された、小児および思春期の精神疾患患者を対象とした4つの二重盲検プラセボ対照試験のデータを分析し、薬物治療反応の予測因子の特定を試みた。その結果、小児および思春期の精神疾患患者に対する薬物療法の治療反応予測因子として、実薬による薬物療法の実施、女性、早期での改善が特定された。Neuropsychopharmacology Reports誌オンライン版2022年11月3日号の報告。
分析対象データは、不安症に対するセルトラリンおよびフルボキサミン治療、自閉スペクトラム症に対するリスペリドン治療、うつ病に対するfluoxetine治療を評価した4つの二重盲検プラセボ対照試験より抽出した。治療反応の定義は、エンドポイントでの臨床全般印象度の改善度(CGI-I)スコア1または2とした。治療反応と性別、診断、治療の割り付け、ベースライン時の臨床全般印象度の重症度(CGI-S)スコアとの関連を評価するため、ロジスティック回帰分析を用いた。さらに、1週目の早期改善(CGI-Iスコア3以下)は、2つの研究データを用いて、追加のバイナリロジスティック回帰分析により評価した。
主な結果は以下のとおり。
・分析対象の患者数は、599例であった。
・バイナリロジスティック回帰分析では、治療反応と有意に関連していた因子は、実薬の使用(オッズ比[OR]:8.64、p<0.001)、女性(OR:1.89、p=0.002)であった。
・追加のバイナリロジスティック回帰分析では、CGI-Iでの早期改善(OR:3.47、p=0.009)、実薬の使用(OR:15.05、p<0.001)、女性(OR:2.87、p=0.016)が、その後の治療反応と関連していた。
(鷹野 敦夫)
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