サッカーやラグビーなどの競技中は、運動そのものによる身体的疲労に加え、連続的な状況判断による脳の疲労、すなわち認知疲労が生じる。認知疲労は、運動時の精神的疲労感を増強させるだけでなく、運動中の判断力を低下させることが知られている。こうした認知疲労下で有酸素性運動を行った場合、カカオの有効成分であるココアフラバノールを高用量含むサプリメントを摂取することで判断力が向上する可能性があるという研究結果が報告された。早稲田大学スポーツ科学学術院講師の塚本 敏人氏らによる本研究は、Psychopharmacology誌2025年12月号に掲載された。
本研究は、二重盲検ランダム化クロスオーバー試験として実施された。対象は健康な成人男性18例(22±2歳)で、低用量(50mg)または高用量(500mg)のココアフラバノールのサプリメントを摂取し、1時間後に認知疲労運動(中等度強度のサイクリング+ストループ課題[CWST])を実施した。認知疲労運動はサッカーの試合を想定し、50分間のプロトコルとして設定された。
主要評価項目は、反応時間および逆ストループ干渉スコア(自動反応の抑制指標)とし、そのほか、心拍数、血圧、血液バイオマーカー、気分指標(精神的疲労感、主観的集中力、意欲、不快感、いらだち、覚醒度)を評価した。
主な結果は以下のとおり。
・サプリメント摂取後1時間の運動前時点において、高用量群は低用量群と比較して、反応時間が有意に短縮した(低用量774±146ms vs.高用量731±101ms)。また、逆ストループ干渉スコアも有意に改善した(低用量6.2[3.2~15.5]vs.高用量4.6[1.2~11.4])。
・50分間の認知疲労運動中においても、高用量群は低用量群と比較して、反応時間が短縮し(低用量712±122ms vs.高用量685±111ms)、抑制指標も改善した(低用量8.4±5.0 vs.高用量6.6±3.5)。
・心拍数や主観的疲労感、心理状態指標については、高用量摂取による有意差は認められなかった。また、血中酸化ストレスマーカーおよびBDNF(脳由来神経栄養因子)についても、明確な差は観察されなかった。
研究者らは、「高用量のココアフラバノールを摂取しても精神的疲労感の軽減は認められなかった一方で、認知疲労下における運動中の判断力は向上した。長時間の認知的活動は、サッカーなど多くのスポーツにおいて必要とされる。本研究は、こうした長時間の認知活動を伴う有酸素性運動中の判断力が、高用量のココアフラバノール摂取によって改善し得ることを示した。ココアフラバノール摂取の作用機序については、今後さらなる検証が必要である」と述べている。
(ケアネット 杉崎 真名)