治療抵抗性統合失調症におけるGAD1およびGABAB受容体遺伝子の関連

統合失調症、とくに認知機能障害の病因として、GABA作動システムの機能不全が関係しているといわれている。治療抵抗性統合失調症(TRS)患者の多くは、重度の陽性症状や認知機能障害に苦しんでおり、これにはGABAシステムの機能障害が関連している可能性が示唆されている。千葉大学大学院医学研究院の宮澤 惇宏氏らは、TRS患者を対象に4つのSNPを同定し、さらに5つのSNPの関連研究を実施した。Molecular Biology Reports誌オンライン版2021年11月29日号の報告。
本研究では、TRS患者14例を対象に、エクソームシーケンシングを実施し、GAD1、GABBR1、GABBR2遺伝子で4つのSNPを同定した。その後、これら4つのSNPとGAD1上のrs3749034を含む5つのSNPの関連研究を、TRS患者357例、非TRS患者682例、健康対照者508例で実施した。
主な結果は以下のとおり。
・5つのSNPのいずれにおいても、対立遺伝子および/または遺伝的分布に有意な差が認められなかった。
・しかし、統合失調症患者と健康対照者との比較におけるサブグループ解析では、3群ともに、GAD1ではrs3749034、GABBR2ではrs10985765/rs3750344の名義レベル(nominal-level)の有意な差が認められた。
・とくに女性では、rs3749034のより厳格な分析において、統合失調症患者と健康対照者、TRS患者と健康対照者との間で統計学的に有意な差が認められた。
著者らは「今回のサブグループ解析で示された統合失調症またはTRS患者に対するGABAシステムの遺伝的脆弱性は、性別またはサンプリング領域の影響を受けることが示唆された。全体として、GAD1のrs3749034、GABBR2のrs10985765がTRSと関連している可能性がある。ただし、本研究では少数のSNPのみが検証され、GABA関連遺伝子の他の領域にある遺伝的変異を考慮していなかった可能性も考えられる」としている。
(鷹野 敦夫)
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