ESR1変異を有するHR+進行乳がん、フルベストラント+パルボシクリブへの早期切り替えでPFS改善(PADA-1)/SABCS2021

提供元:ケアネット

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公開日:2021/12/16

 

 ホルモン受容体陽性(HR+)/HER2陰性(HER2-)進行乳がんに対する1次治療として、アロマターゼ阻害薬(AI)とパルボシクリブの併用療法で治療中の患者のうち、疾患進行前に血液中で検出されたESR1変異を有する患者は、フルベストラントとパルボシクリブの併用療法に早期に切り替えることで、無増悪生存期間(PFS)の改善がみられた。第III相PADA-1試験の結果を、フランス・Institut Curie and Paris-Saclay UniversityのFrancois-Clement Bidard氏が発表した。

・対象:アロマターゼ阻害薬とパルボシクリブの併用による1次治療中の転移を有するHR+/ HER2-乳がん患者(ECOG PS 0~2) 1,017例
・試験の構成:
[STEP1]組み入れ時、1ヵ月後、その後2ヵ月後おきにリキッドバイオプシーで採取した血中循環腫瘍DNA(ctDNA)からdroplet digital PCR(ddPCR)を用いてESR1変異の状況を確認
[STEP2]ESR1変異が確認され、その時点で疾患進行のみられない患者(172例)を無作為化:
AI+パルボシクリブ(Pal)併用群 84例
フルベストラント(Ful)+パルボシクリブ(Pal)併用群 88例
[STEP3]AI+パルボシクリブ併用群において疾患増悪後、フルベストラント+パルボシクリブへのクロスオーバーが認められた
・評価項目:
[主要評価項目]STEP2における治験担当医師評価による無増悪生存期間(PFS)、安全性(Grade3以上の血液毒性)
[副次評価項目]クロスオーバー後のPFS、安全性(Grade3以上の非血液毒性、SAE)など

 主な結果は以下のとおり。

・データカットオフは2021年7月31日で、追跡期間中央値は34.5ヵ月(STEP1~3まで0~52ヵ月)。
・STEP2での両群の患者特性は、年齢中央値がAI+Pal群60歳vs. Ful+Pal群62歳、術後AI療法歴を有する患者が37% vs. 34%、ESR1変異発現までの期間12ヵ月以上が65% vs. 61%と両群でバランスがとれていた。
・STEP2の追跡期間中央値は26ヵ月。PFS中央値はAI+Pal群5.7ヵ月に対しFul+Pal群11.9ヵ月とFul+Pal群で有意な改善がみられた(層別ハザード比:0.61、95%信頼区間[CI]:0.43~0.86、p=0.005)。
・安全性について、Grade3以上の血液毒性/非血液毒性いずれも両群で差はみられず、新たな安全性上の懸念も認められなかった。
・STEP2のAI+Pal群のうち、69例がPDとなり、うち47例がクロスオーバーコホートとしてFul+Pal併用療法へ切り替えた(STEP3)。
・STEP3の追跡期間中央値は14.7ヵ月。PFS中央値は3.5ヵ月(95%CI:2.7~5.1)だった。

 Bidard氏はctDNAによるESR1変異のモニタリングはCDK4/6阻害薬との併用療法を最適化するために有用とし、治療中にオプションとしてこの戦略を取り入れていくことがベネフィットにつながる可能性があるとした。

(ケアネット 遊佐 なつみ)

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