ESR1変異を有するHR+進行乳がん、フルベストラント+パルボシクリブへの早期切り替えでPFS改善(PADA-1)/SABCS2021

ホルモン受容体陽性(HR+)/HER2陰性(HER2-)進行乳がんに対する1次治療として、アロマターゼ阻害薬(AI)とパルボシクリブの併用療法で治療中の患者のうち、疾患進行前に血液中で検出されたESR1変異を有する患者は、フルベストラントとパルボシクリブの併用療法に早期に切り替えることで、無増悪生存期間(PFS)の改善がみられた。第III相PADA-1試験の結果を、フランス・Institut Curie and Paris-Saclay UniversityのFrancois-Clement Bidard氏が発表した。
・対象:アロマターゼ阻害薬とパルボシクリブの併用による1次治療中の転移を有するHR+/ HER2-乳がん患者(ECOG PS 0~2) 1,017例
・試験の構成:
[STEP1]組み入れ時、1ヵ月後、その後2ヵ月後おきにリキッドバイオプシーで採取した血中循環腫瘍DNA(ctDNA)からdroplet digital PCR(ddPCR)を用いてESR1変異の状況を確認
[STEP2]ESR1変異が確認され、その時点で疾患進行のみられない患者(172例)を無作為化:
AI+パルボシクリブ(Pal)併用群 84例
フルベストラント(Ful)+パルボシクリブ(Pal)併用群 88例
[STEP3]AI+パルボシクリブ併用群において疾患増悪後、フルベストラント+パルボシクリブへのクロスオーバーが認められた
・評価項目:
[主要評価項目]STEP2における治験担当医師評価による無増悪生存期間(PFS)、安全性(Grade3以上の血液毒性)
[副次評価項目]クロスオーバー後のPFS、安全性(Grade3以上の非血液毒性、SAE)など
主な結果は以下のとおり。
・データカットオフは2021年7月31日で、追跡期間中央値は34.5ヵ月(STEP1~3まで0~52ヵ月)。
・STEP2での両群の患者特性は、年齢中央値がAI+Pal群60歳vs. Ful+Pal群62歳、術後AI療法歴を有する患者が37% vs. 34%、ESR1変異発現までの期間12ヵ月以上が65% vs. 61%と両群でバランスがとれていた。
・STEP2の追跡期間中央値は26ヵ月。PFS中央値はAI+Pal群5.7ヵ月に対しFul+Pal群11.9ヵ月とFul+Pal群で有意な改善がみられた(層別ハザード比:0.61、95%信頼区間[CI]:0.43~0.86、p=0.005)。
・安全性について、Grade3以上の血液毒性/非血液毒性いずれも両群で差はみられず、新たな安全性上の懸念も認められなかった。
・STEP2のAI+Pal群のうち、69例がPDとなり、うち47例がクロスオーバーコホートとしてFul+Pal併用療法へ切り替えた(STEP3)。
・STEP3の追跡期間中央値は14.7ヵ月。PFS中央値は3.5ヵ月(95%CI:2.7~5.1)だった。
Bidard氏はctDNAによるESR1変異のモニタリングはCDK4/6阻害薬との併用療法を最適化するために有用とし、治療中にオプションとしてこの戦略を取り入れていくことがベネフィットにつながる可能性があるとした。
(ケアネット 遊佐 なつみ)
参考文献・参考サイトはこちら
関連記事

新薬elacestrantがHR+進行乳がん2~3次治療でPFS改善、初の経口SERD(EMERALD)/SABCS2021
医療一般(2021/12/13)

HR+/HER2-進行乳がんへのCDK4/6阻害薬+フルベストラントのOS、FDAがプール解析/Lancet Oncol
医療一般(2021/11/02)

新規CDK4/6阻害薬dalpiciclib+フルベストラント、進行乳がんのPFS改善(DAWNA-1)/ASCO2021
医療一般(2021/06/22)
[ 最新ニュース ]

子宮内膜症、レルゴリクス併用療法が有効か/Lancet(2022/07/01)

費用対効果分析へのスポンサーバイアスは?/BMJ(2022/07/01)

抗体-薬物複合免疫賦活薬(iADC)の創製で戦略的提携/アステラス・Sutro(2022/07/01)

追加接種のタイミング、6ヵ月以上でより高い有効性か(2022/07/01)

男性の肥満のないNAFLD、テストステロン低下が要因か/日本抗加齢医学会(2022/07/01)

日本人労働者の睡眠負債がプレゼンティズムや心理的苦痛に及ぼす影響(2022/07/01)

新型コロナ発症から15ヵ月後も多くの患者で後遺症が持続(2022/07/01)

糖尿病患者の便秘が冠動脈疾患に独立して関連―江戸川病院(2022/07/01)
[ あわせて読みたい ]
脳血管内治療STANDARD(2020/12/10)
Dr.岡の感染症プラチナレクチャー 医療関連感染症編(2020/02/10)
消化器がん特集(2018/06/21)
突然やってくる!? 外国人患者さん対応エピソード集(2017/02/15)
スキンヘッド脳外科医 Dr. 中島の 新・徒然草(2016/01/14)
侍オンコロジスト奮闘記~Dr.白井 in USA~(2015/06/04)
サン・アントニオ乳癌シンポジウム2014〔会員聴講レポート〕 (2014/12/25)
Dr.みやざきの鼠径ヘルニア手術テクニックコレクション (2014/11/06)
スキンヘッド脳外科医 Dr. 中島の 新・徒然草(2014/01/20)
ASCO2014 乳がん 会員聴講レポート(2014/06/30)