乳児・遅発型のポンペ病の標準治療となるか?/サノフィ

提供元:ケアネット

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公開日:2021/12/03

 

 サノフィ株式会社は、ポンペ病治療剤アバルグルコシダーゼアルファ(遺伝子組換え)(商品名:ネクスビアザイム)点滴静注用100mgを、11月26日に発売した。

 アバルグルコシダーゼアルファは、ポンペ病(糖原病II型)において、乳児型ポンペ病(IOPD)および遅発型ポンペ病(LOPD)の新たな標準治療となる可能性がある。

世界で5万人の患者が推定されているポンペ病

 ポンペ病は進行性の筋疾患で、運動機能や呼吸機能の低下を来す希少疾患。ライソゾーム酵素の1つである酸性α-グルコシダーゼ(GAA)の遺伝子の異常によりGAA活性の低下または欠損が原因で生じる疾患で、複合多糖(グリコーゲン)が全身の筋肉内に蓄積する。このグリコーゲンの蓄積が、不可逆的な筋損傷を引き起こし、肺を支える横隔膜などの呼吸筋や、運動機能に必要な骨格筋に影響を及ぼす。世界でのポンペ病の患者数は5万人と推定されて、わが国では、指定難病研究班により実施された全国疫学調査において、患者数は134人と報告されている。

 ネクスビアザイムは、筋細胞の中にあるライソゾームにGAAを送り届け、グリコーゲンの分解を促すことで、本症がもたらす重大な症状である呼吸機能、筋力・身体機能(運動能力など)を標準治療薬であるマイオザイム(アルグルコシダーゼアルファ)よりも改善させる目的で開発された。

 わが国では2020年11月27日に希少疾病用医薬品に指定され、米国食品医薬品局は、2021年8月に承認、英国の医薬品・医療製品規制庁は、本剤を有望な革新的医薬品に指定している。

 2021年9月のわが国での製造販売承認取得では、ピボタル第III相二重盲検比較試験のCOMET試験と第II相Mini-COMET試験の肯定的な結果が審査された。前者では、遅発型ポンペ病の患者を対象としてネクスビアザイムの安全性と有効性を標準治療薬であるアルグルコシダーゼアルファとの比較で検討した。後者では、アルグルコシダーゼアルファの投与経験のある乳児型ポンペ病患者を対象にネクスビアザイムの安全性を主に評価するとともに、探索的に有効性の評価を行った。

 その結果、前者の試験では、アルグルコシダーゼアルファに比べネクスビアザイムは、第49週時点における努力肺活量(%FVC)が2.4ポイント改善し、主要評価項目である非劣性が示された(p=0.0074;95%CI,-0.13,4.99)。

 また、後者の試験では、6ヵ月時点では、アルグルコシダーゼアルファの治療時に悪化または効果不良がみられた患者において、有効性の評価項目である粗大運動能力尺度-88、簡易運動機能検査、ポンペPaediatric Evaluation of Disability Inventory、左室心筋重量のZスコアおよび眼瞼の位置に改善または安定化がみられた。

 いずれの試験でも重篤または重度の治療と関連する有害事象は認められなかった。

アバルグルコシダーゼアルファの概要
一般名:アバルグルコシダーゼアルファ(遺伝子組換え)
販売名:ネクスビアザイム点滴静注用100mg
効能または効果:ポンペ病
用法および用量:
通常、アバルグルコシダーゼアルファ(遺伝子組換え)として、遅発型の患者には1回体重1kgあたり20mgを、乳児型の患者には1回体重1kgあたり40mgを隔週点滴静脈内投与する。
国内製造販売承認取得日:2021年9月27日
薬価収載日:2021年11月25日
発売日:2021年11月26日
製造販売会社:サノフィ株式会社

(ケアネット 稲川 進)

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