ポンペ病は早く気付いてほしい難病

2017年3月30日、都内においてサノフィ株式会社は、4月15日の「国際ポンペ病の日」を前に、「治療方法がありながらも診断がつきにくい希少疾患『ポンペ病』」をテーマとしたメディアセミナーを開催した。セミナーでは、ポンペ病の概要についての講演のほか、患者・患者家族から「早く確定診断がなされ、治療ができる体制を望みたい」と要望が寄せられた。
ポンペ病は小児だけの疾患ではない
はじめに埜中 征哉氏(国立精神・神経医療研究センター病院 名誉院長)が、「治療可能になった遺伝性筋疾患~糖原病II型(ポンペ病)~」と題して、疾患概要を解説した。ポンペ病は、筋疾患の中でも遺伝性代謝疾患である糖原病の1つに分類され、グリコーゲン分解に不可欠なライソゾーム酵素の欠損により、グリコーゲンの蓄積とライソゾームの巨大化を招き、筋肉に多量のグリコーゲンが蓄積される病態である。
ポンペ病の患者数は、わが国では10万人当たり0.1~0.3例とされているが、多くの見逃し例があると考えられている(参考にオランダでは10万人当たり2.5例、台湾では10万人当り5.9例)。
ポンペ病の症状は、大きく乳児型と遅発型(小児/成人型)の2種類に分けられる。
乳児型は生後数ヵ月より発育の遅れが観察され、特徴として頸屈筋の筋力低下、早期からの呼吸障害、心筋障害、肝臓腫大のほか、独歩・歩行困難がみられ、大腿部の筋肉の成長がみられないという。
遅発型は1~70歳と幅広い年代で発症が報告され、特徴として筋ジストロフィーに似た筋力低下(とくに下肢)、高血清クレアチンキナーゼ(CK)値の異常、呼吸筋が侵されやすいなどが挙げられる。とくに背部筋肉の萎縮は強く、側彎などもみられるという。
ポンペ病は新生児スクリーニングで早期診断を
ポンペ病の診断としては、臨床的診断のほか、病理診断で筋生検によるライソゾームの確認、生化学診断によるろ紙スクリーニング検査での酵素活性測定などが行われる(現在、国立成育医療センターをはじめ国内4ヵ所で可能)。また、遅発型であれば、CT所見で筋肉の萎縮(手の筋肉は維持されているのに、下腿が萎縮しているのが特徴)なども診断の助けとなる。ポンペ病の治療では、呼吸管理、嚥下障害や歩行困難への対症療法のほかに、ヒト型酵素アルグルコシダーゼ アルファ(商品名:マイオザイム)が酵素補充療法として使用されている。マイオザイムは、隔週にて点滴静脈内投与を行うもので、患者は生涯続けることとなる。わが国では2017年3月現在、86例(乳児型11例、遅発型75例)のポンペ病患者が同薬で治療中という。
実際の効果について台湾から新生児スクリーニングで見いだされた5例の乳児型(生後11週以内に治療開始)では、24ヵ月を超えて生存できなかった従来群と比較して生存率が80ヵ月を超え、独歩ができない従来群と比較し20ヵ月までには独歩できる状態まで回復したことが報告され、早期の治療介入がより有効であることが示された1)。また、遅発型での治療では、乳児型のような劇的な効果は期待できないが、症状の進展を防ぐ、たとえば呼吸機能の維持などが期待できるという。
最後に埜中氏は、「本症は、まだ臨床現場で見逃されている可能性があり、とくに(1)筋ジストロフィーと診断された例、(2)筋疾患で診断がついていない例、(3)CK値が高い患者には、本症も念頭に入れて診断していただきたい。また、ポンペ病の簡単な診断法としてろ紙血による酵素活性測定があるので、わが国でも新生児の網羅的な検査ができるようになれば、早期の診断で有効な治療ができるのだから、早く制度化されることを望む」と述べ、講演を締めくくった。
ポンペ病コールセンター
電話番号 0120-740-540
2017年4月15日(土)~5月12日(金)の期間限定
平日 9:00~17:00(土日祝日はお休み。ただし4月15・16日は受付)
(ケアネット 稲川 進)
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