片頭痛へのフレマネズマブ、日本人対象の試験結果からみえる特徴は

提供元:ケアネット

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公開日:2021/07/30

 

 「片頭痛発作の発症抑制」を適応として、抗CGRPモノクローナル抗体薬フレマネズマブ(商品名:アジョビ)が6月23日に製造販売承認を取得した。7月12日にオンラインメディアセミナーが開催され(主催:大塚製薬)、寺山 靖夫氏(湘南慶育病院副院長・脳神経センター長)、坂井 文彦氏(埼玉精神神経センター・埼玉国際頭痛センター長)が登壇。同薬の片頭痛治療における位置づけと臨床試験結果について講演した。

片頭痛患者さんの治療ニーズは、痛みを取り除くことだけではない?

 日本における片頭痛の推計患者数は約840万人、女性は男性の3.6倍多く、20~40代の働き盛りの世代で多い疾患となっている。予兆・前兆に続くズキンズキンとした拍動性頭痛が1ヵ月に1~2回、多い人だと1週間に1回、4~72時間持続するとされ、この間の生産性は著しく低下してしまう。さらにこれらの頭痛が治まった後も、繰り返すことへの不安や焦燥感を感じる患者さんも多く、QOL低下への影響は大きい。

 寺山氏は、「いま真っ盛りの頭痛の痛みに耐え、過ぎればしばらくは来ないと考えながらも、次にくる頭痛発作におびえ、頭痛によくないことを控えながら毎月毎月慎重に生きることを考える」というある片頭痛患者さんの言葉を紹介。治療に求められているのは痛みを取り除くことに加えて、QOLの改善、生活意欲の改善、そして創造性や生産性の向上ではないかと指摘した。CGRP製剤は、臨床試験結果から一度注射をすることで、3ヵ月~約1年にわたって痛みから解放される症例がみられている。同氏は「急性期治療に使えるトリプタンだけでなく、CGRP製剤を活用していくことで、片頭痛患者さんのQOLの改善につなげていけるのではないか」と期待感を示した。

フレマネズマブの日本人を含む日韓国際共同臨床試験結果

 続いて登壇した坂井氏は、フレマネズマブについての臨床試験として、反復性片頭痛患者を対象としたプラセボ対照二重盲検試験(日韓国際共同第IIb/III相試験)の概要と結果について解説した。

<試験概要>
・対象:日本人および韓国人の反復性片頭痛患者 357例
・試験群:
 フレマネズマブ1回/12週投与群(119例):初回675mg、以降2回はプラセボ投与
 フレマネズマブ1回/4週投与群(121例):225mg×3回投与
 プラセボ群(117例)
・主要評価項目:初回投与後12週間での1ヵ月(28日)当たりの片頭痛日数のベースラインからの平均変化量
・副次評価項目:初回投与後12週間での1ヵ月当たりの片頭痛日数が50%以上減少した患者(50%レスポンダー)割合、初回投与後12週間での1ヵ月当たりの急性期頭痛治療薬の使用日数のベースラインからの平均変化量など

<主な結果>
・主要評価項目である1ヵ月当たりの片頭痛日数は、フレマネズマブ1回/12週投与群で-4.02日、1回/4週投与群で-4.00日であった(ともにプラセボ群と比較してp<0.0001)。
・副次的評価項目である50%レスポンダー割合は、観察期間全体で1回/12週投与群で45.3%、1回/4週投与群で41.3%であった(ともにプラセボ群と比較してp<0.0001)。
・1ヵ月当たりの急性期頭痛治療薬の使用日数のベースラインからの平均変化量(各群ベースラインでは約8日の使用を報告)は、1回/12週投与群で-3.29日、1回/4週投与群で-3.30日であった(ともにプラセボ群と比較してp<0.0001)。
・安全性については、投与群とプラセボ群の間で有害事象の発生率に差はみられず、投与法による違いもみられなかった。重篤な有害事象についても差はみられなかった。

 坂井氏は、上記結果に加え、投与開始1週間後というかなり早い段階から効果がみられたことを説明。また、効果の持続をみたHALO長期試験(国際共同第III相試験)の結果も紹介した。反復性片頭痛患者で、片頭痛日数の低下は投与後1ヵ月から12ヵ月にわたって持続していた。慢性片頭痛患者においても同様の傾向がみられている。

 同氏はこれらの結果から、フレマネズマブは投与1週目からの早い効果発現と持続した有効性を示し、安全性も高く、発作頻度や重症度の低減による患者さんの支障度の低減に寄与する片頭痛発作の発症抑制薬であるとまとめている。

(ケアネット 遊佐 なつみ)