最前線の医療従事者におけるCOVID-19発生による不安・抑うつへの影響

提供元:ケアネット

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公開日:2020/12/07

 

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックは、人々の健康やウェルビーイングに深刻な影響を及ぼしている。最前線でCOVID-19への対応が求められる医療従事者では、その影響はさらに大きくなると考えられる。中国・山東大学のLi-Qun Xing氏らは、最前線で勤務する医療従事者の不安、抑うつ、ストレスに対するCOVID-19の心理的影響を明らかにするため、検討を行った。The International Journal of Social Psychiatry誌オンライン版2020年10月24日号の報告。

 中国・済南市にある病院において最前線で勤務する医療従事者を対象に、横断的調査を実施した。基本的な人口統計データ、10項目のCOVID-19によるストレスに関する質問票、自己評価式不安尺度(SAS)、うつ性自己評価尺度(SDS)を含む自己評価質問票を用いて、対象者よりデータを収集した。COVID-19による不安、抑うつ、ストレスのリスクと頻度を推定した。

 主な結果は以下のとおり。

・対象者309人中、不安症は88人(28.5%)、うつ病は172人(56.0%)であった。
・多変量ロジスティック回帰分析において、不安または抑うつと独立して関連が認められた因子は以下のとおりであった。

【不安との関連】
 ●30歳以下(OR:4.4、95%信頼区間[CI]:1.6~12.2)
 ●31~45歳(OR:3.1、95%CI:1.1~8.8)
 ●COVID-19隔離病棟での勤務(OR:2.3、95%CI:1.4~4.0)
 ●消毒対策が不十分だと感じる(OR:2.5、95%CI:1.5~4.3)
【抑うつとの関連】
 ●30歳以下(OR:3.8、95%CI:1.8~7.8)
 ●31~45歳(OR:2.7、95%CI:1.3~5.7)
 ●看護師(OR:2.5、95%CI:1.1~5.6)
 ●消毒対策が不十分だと感じる(OR:2.1、95%CI:1.3~3.5)

 著者らは「最前線の医療従事者では、COVID-19発生により、不安や抑うつ症状の有症率が増加していた。とくに若年スタッフや看護師では、心理的ケアの必要性が高かった。専門家による感染予防対策は、医療従事者の心身の健康を守るために重要である」としている。

(鷹野 敦夫)