統合失調症患者の再入院減少のための長時間作用型持効性注射剤の実際の効果

提供元:ケアネット

印刷ボタン

公開日:2020/02/21

 

 抗精神病薬の長時間作用型持効性注射剤(LAI)と経口剤の有効性に関する比較は、さまざまな方法論的な問題により明確になっていない。韓国・健康保険審査評価院のHye Ok Kim氏らは、統合失調症患者の再入院に対するLAIと経口抗精神病薬との比較を実施した。Annals of General Psychiatry誌2020年1月14日号の報告。

 2008~17年の統合失調症入院患者7万5,274例を対象に、LAIと経口抗精神病薬の再入院に対する予防効果を比較するため、被験者内分析を実施した。再入院率は、非薬物療法、経口剤単独療法、LAI療法で比較を行った。各入院エピソードについて、入院前の治療の状態に従って比較を行った。

 主な結果は以下のとおり。

・13万2,028件の入院エピソードについて分析を行った。
・総観測期間25万5,664患者年の間に発生したアウトカムイベントは、10万1,589件であった。
・LAI療法と経口剤単独療法の比較において、LAI療法の再入院の発生率比(IRR)は0.71(0.64~0.78、p<0.001)であった。
・LAI療法の初回入院のIRRは、0.74(0.65~0.86)であり、入院回数が2回目(IRR:0.65[0.53~0.79])、3回目(IRR:0.56[0.43~0.76])、4回目(IRR:0.42[0.31~0.56])と増えるにつれ、IRRの減少が認められた。

 著者らは「実臨床におけるLAI療法は、経口剤単独療法と比較し、統合失調症患者の再入院率を29%低下させることが示唆された。さらに、入院を繰り返す患者において、再入院率を58%低下させた。LAIは経口抗精神病薬と比較し、再入院回数が多い統合失調症患者において、再入院リスクの低減により寄与する」としている。

(鷹野 敦夫)