進展型小細胞肺がん(ED-SCLC)に対する1次治療として、抗PD-L1抗体とプラチナ製剤を含む化学療法の併用療法(免疫化学療法)が標準治療となっているが、実臨床における報告は限定的である。そこで、平林 太郎氏(信州大学)らの研究グループは、実臨床において免疫化学療法を受けたED-SCLC患者と、化学療法を受けたED-SCLC患者の臨床背景や治療成績などを比較した。その結果、免疫化学療法が選択された患者は、化学療法が選択された患者よりも全生存期間(OS)が良好な傾向にあったが、免疫化学療法が選択された患者は約半数であり、実臨床におけるED-SCLC治療にはさまざまな課題が存在することが示された。本研究結果は、Respiratory Investigation誌2025年9月号に掲載された。
本研究は、日本の11施設が参加した多施設共同後ろ向き研究である。2019年8月~2023年6月に、1次治療として免疫化学療法または化学療法を受けたED-SCLC患者181例を対象とした。対象患者を、免疫化学療法を受けた群(免疫化学療法群、96例)と、プラチナ製剤を含む化学療法のみを受けた群(化学療法群、85例)に分け、患者背景、治療成績、免疫化学療法が選択されなかった理由などを後ろ向きに調べた。
主な結果は以下のとおり。
・免疫化学療法群は化学療法群と比較して、75歳以上の割合(28.1%vs.56.5%、p<0.001)、間質性肺炎(IP)合併の割合(9.4%vs.41.2%、p<0.001)が有意に低かった。
・OS中央値は、免疫化学療法群15.0ヵ月(95%信頼区間[CI]:12.3~17.6)、化学療法群9.7ヵ月(同:7.3~12.2)であった。1年OS率は、それぞれ59.9%、34.5%であり、2年OS率は、それぞれ17.7%、2.9%であった。
・無増悪生存期間中央値は、免疫化学療法群5.1ヵ月(95%CI:4.7~5.5)、化学療法群4.9ヵ月(同:4.5~5.3)であった。
・奏効率は、免疫化学療法群80.2%、化学療法群64.7%であり、病勢コントロール率は、それぞれ90.6%、88.2%であった。
・1次治療で免疫化学療法が選択されなかった理由として多かったのは、IP合併(18.8%)、高齢(14.9%)、PS不良(13.3%)であった。
・治療中止に至った有害事象は、免疫化学療法群12.5%、化学療法群9.4%に発現した。肺臓炎による治療中止の割合は、それぞれ7.3%、1.2%であった。
本研究結果について、著者らは「ED-SCLC患者に対する免疫化学療法の有効性が実臨床でも示唆されたものの、実際にこの治療法が選択されているのは約半数にとどまっていた」と指摘し「IP合併、高齢、PS不良といった背景を有する患者に対して、免疫化学療法と化学療法のいずれを選択すべきか明確な結論は得られておらず、臨床背景や併存疾患に応じた治療選択にはさまざまな課題があり、今後の検証が必要である」と結論付けている。
(ケアネット 佐藤 亮)