潰瘍性大腸炎治療の高度化に対応する方法とは

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ケアネット

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 2015~16年に行われた全国疫学調査1)によると、潰瘍性大腸炎の全国有病者数は推計22万人であり、クローン病(推計7.1万人)と合わせると29万人を超える。炎症性腸疾患(IBD)は、もはや“common disease”と言えるのかもしれない。

 2019年5月、ファイザー株式会社が「潰瘍性大腸炎とチーム医療の重要性」をテーマに、都内にてセミナーを開催した。併せて、新しくオープンした潰瘍性大腸炎に関する情報提供サイト「UC tomorrow」の紹介が行われた。

治療は進歩しているが、治療選択は容易でない
 セミナーでは、伊藤 裕章氏(医療法人錦秀会 インフュージョンクリニック 院長)が「潰瘍性大腸炎診療の歩み」について講演を行った。

 潰瘍性大腸炎は指定難病だが、国は「難病の医療提供体制の在り方の基本理念2)」として、「診断後はより身近な医療機関で適切な医療を受けることができる体制」が望ましいと示しており、非専門医が診る機会も増えている。これに対し同氏は、「潰瘍性大腸炎の治療は高度化しており、たとえ消化器内科医であっても、必ずしも適切な治療選択ができるとは限らない」と、治療の難しさを指摘した。

新薬登場も、揺るがないステロイドの立ち位置
 潰瘍性大腸炎の治療は、2010年に抗TNF-α抗体製剤インフリキシマブ(商品名:レミケード)が承認されて以降、バイオ医薬品も1つの選択肢となり、2018年には抗α4β7インテグリン抗体製剤ベドリズマブ(同:エンタイビオ)、JAK阻害薬トファシチニブ(同:ゼルヤンツ)など、新しい作用機序を持つ新薬が発売されている。

 一方で、ステロイドはいまだに重要な位置を占めているという。同氏は、「ステロイドの使用は全身的な副作用につながるため、できるだけ早くやめるべき。維持療法のゴールは、ステロイドがない状態での寛解維持だ。ステロイドの離脱にはチオプリン製剤が有用である」と注意を促した。

患者個別の対応をするためにはチーム医療が不可欠
 新薬についてはまだエビデンスが十分でないため、優先的な使用は推奨されていない。バイオ医薬品は患者への経済的・身体的負担が大きいこと、JAK阻害薬は経口投与可能だが、胎盤を通過しやすいため若年女性への投与には注意を要するなど、それぞれの薬剤に考慮すべき点がある。まずは従来使用されている薬から開始して、患者の年齢、性別、重症度などを考慮し、希望によってはバイオシミラーの使用も検討するなど、個別の対応が求められる。

 最後に同氏は、「患者さんは不安を抱えながら治療を受けていることを念頭に置き、情報を共有したうえで治療を進めていくことが重要。一方的な治療は、薬の効果が十分に得られなくなったり、他の薬による副作用がこの薬のせいだと思い込まれたりする恐れがある。そういったことを防ぐためにも、医師、看護師、メディカルスタッフそれぞれが高い専門性を持ち、チームとして総合的なケアを行うことが不可欠だ」とまとめた。

 同氏が院長を務めるインフュージョン・クリニックでは、患者の意思決定支援や自己管理能力の向上に積極的に取り組んでおり、アプリを使った遠隔診療システムなども導入しているという。

潰瘍性大腸炎の疾患啓発サイトをリリース
 講演後、湯井 篤志氏(ファイザー株式会社 炎症・免疫部門)により、伊藤氏らが監修を行った潰瘍性大腸炎に関する情報提供サイト「UC tomorrow」が紹介された。

 本サイトは、潰瘍性大腸炎の患者や家族に向けた疾患啓発・説明サイトとして構成され、主なコンテンツは「病気を知る」「治療を知る」「医師への相談シート」の3つ。疾患や治療方法などの基本情報をQ&A方式で掲載し、疾患理解や治療ステージに応じた治療選択肢の認知向上を促す。医師と患者のコミュニケーションが円滑に進むように「治療目標の重要性」を伝えるページもある。

 サイト名には、潰瘍性大腸炎の患者・家族が「未来(明日)を前向きに生活できるように」という思いが込められている。

(ケアネット 堀間 莉穂)

参考文献・参考サイトはこちら

1)厚生労働科学研究成果データベース 2016年度 難治性疾患の継続的な疫学データの収集・解析に関する研究 潰瘍性大腸炎およびクローン病の有病者数推計に関する全国疫学調査/西脇祐司他

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