警告後、認知症への抗精神病薬処方は減少したのか

提供元:ケアネット

印刷ボタン

公開日:2016/08/22

 

 一般的に、認知症の行動症状に対し、抗精神病薬が使用されているにもかかわらず、欧州医薬品庁や英国の医薬品・医療製品規制庁、イタリア医薬品庁の規制当局は、2004年と2009年に認知症への抗精神病薬使用に対する安全性警告を発行した。イタリア・メッシーナ大学のJanet Sultana氏らは、英国とイタリアのデータベースを使用し、両国の認知症者への抗精神病薬使用に対する安全性警告の短期的および長期的な影響を調査した。CNS drugs誌オンライン版2016年7月16日号の報告。

 英国ではHealth Improvement Network(THIN)、イタリアではHealth Search Database-Cegedim-Strategic Data-Longitudinal Patient Database(HSD-CSD-LPD)をデータベースとして使用した。65歳以上の認知症者におけるクラス別、薬剤別のAP使用率を四半期ごとに算出し、安全性警告の効果を調査するため、一般化線形モデルを使用した。

 主な結果は以下のとおり。

・2000~12年の65歳以上の認知症者は、THINデータベースより5万8,497例、HSD-CSD-LPDデータベースより1万857例が抽出された。
・2004年の警告後2009年まで、両国ともに非定型抗精神病薬使用が減少し、定型抗精神病薬使用が増加した。
・リスペリドン、オランザピンの使用が減少し、クエチアピンの使用は増加していた。
・2009年の警告後2012年まで、英国では非定型、定型抗精神病薬の使用は減少していたが(11→9%、5→3%)、イタリアでは増加していた(11→18%、9→14%)。

 著者らは「2004年の警告後、オランザピンとリスペリドンの使用が減少し、クエチアピン、定型抗精神病薬の使用が増加した。そして2009年からは、英国でのみ抗精神病薬の使用が減少した。2国間の違いは、英国ではイタリアよりも、抗精神病薬使用削減に向け、より積極的なアプローチを行ったためだと考えられる」としている。

関連医療ニュース
認知症者への抗精神病薬投与の現状は
BPSDに対する抗精神病薬使用、脳血管障害リスクとの関連
認知症のBPSDに対する抗精神病薬のメリット、デメリット

(鷹野 敦夫)