認知症のBPSDに対する抗精神病薬のメリット、デメリット

提供元:ケアネット

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公開日:2014/03/17

 

 多くの認知症患者において精神症状や抑うつを含むBPSDがみられる。抗精神病薬が適応外使用でしばしば処方されているが、それらは著明な副作用を発現しうる。さらに、抗精神病薬の薬効を比較した前臨床試験はきわめて少なく、新規薬物療法の開発は遅れていた。ポーランド・Adamed社のMarcin Kolaczkowski氏らは、認知症患者にみられるBPSDに対して処方される抗精神病薬の有用性を検討するため、ラットを用いて抗精神病薬8剤の抗うつ活性および認知障害を検討した。Naunyn-Schmiedeberg's Archives of Pharmacology誌オンライン版2014年3月6日号の掲載報告。

 研究グループは、新規薬剤の前臨床評価の基礎として、抗精神病薬8剤(クロルプロマジン、ハロペリドール、クロザピン、オランザピン、リスペリドン、アリピプラゾール、ルラシドン、アセナピン)の抗うつ活性、認知障害をラット行動試験により比較検討。MK-801誘発活動亢進の抑制、強制水泳試験(FST)、受動回避(PA)、自発運動、カタレプシーなどを調べた。

 主な結果は以下のとおり。

・8剤ともMK-801試験において抗精神病様活性を示したが、その他の試験モデルでは薬剤の種類により多様なプロファイルを示した。
・リスペリドンは、MK-801試験で活性を示した用量のうち、いくつかの用量でPA行動を抑制した。これに対し、クロザピン、オランザピン、ルラシドン(国内未承認)、アセナピン(国内未承認)は、用量による作用の違いはほとんど(またはまったく)みられなかった。また、アリピプラゾールは、PA行動を抑制しなかった。
・FSTにおいても、以下のような多様な作用が認められた。
クロルプロマジンは活性を示さず、その他の薬剤の大半は狭い用量範囲で不動性を軽減した。
クロザピンは抗精神病活性と重複する広い用量範囲で不動性を軽減した。
・第2世代抗精神病薬によるカタレプシーの発現傾向は小さかったが、いずれも著明な鎮静を惹起した。
・以上のように、現在処方可能な第2世代抗精神病薬の大半は、治療用量とほとんど変わらない用量で認知および運動の副作用を引き起こすことが示された。それらは、臨床データと矛盾しない結果であった。
・本研究は、BPSDに対する有望な薬剤の開発にあたり、in vivoにおける比較研究の基礎的知見を提供するものである。

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(ケアネット)