クロザピン誘発性副作用のリスク遺伝子同定:藤田保健衛生大学

提供元:ケアネット

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公開日:2016/03/16

 

 クロザピン誘発性無顆粒球症・顆粒球減少症(CIA・CIG;CIAG)は、クロザピン治療を受ける統合失調症患者の生命に影響を与える問題である。藤田保健衛生大学の齊藤 竹生氏らは、CIAGの遺伝的要因を調査するため、日本人のCIAG患者50人と正常対照者2,905人について、全ゲノム関連解析を行った。Biological psychiatry誌オンライン版2016年2月11日号の報告。

 主な結果は以下のとおり。

・ヒト白血球抗原(HLA)領域との有意な関連を同定した。そのため、HLA遺伝子の型ごとに検討を行った。
・CIAGとHLA-B*59:01型との有意な関連が認められた(p=3.81×10-8、OR:10.7)。そして、独立したクロザピン耐性対照群との比較により、この関連が確認された(n=380、p=2.97×10-5、OR:6.3)。
・クロザピン誘発性無顆粒球症のOR(9.3~15.8)は、顆粒球減少症(OR:4.4~7.4)の約2倍であったことから、顆粒球減少症患者群は、潜在的な無顆粒球症患者群と非無顆粒球症患者群からなる混合集団であるというモデルを想定した。
・この仮説よりに、顆粒球減少症患者の中に、どの程度、非無顆粒球症患者が存在するかを推計でき、その非リスク対立遺伝子の陽性予測値を推定することができる。
・この仮説モデルの結果から、(1)顆粒球減少症患者の約50%が非無顆粒球症患者である、(2)HLA-B*59:01型を保有しない顆粒球減少症患者の約60%が非無顆粒球症患者であり、無顆粒球症に進展しないということが推定された。

 著者らは、「日本人において、HLA-B*59:01型はクロザピン誘発性無顆粒球症・顆粒球減少症の危険因子であるとこが示唆された」とし、「このモデルが正しいならば、顆粒球減少症患者群においても、一部の患者に対しては、クロザピンの再投与が絶対的な禁忌ではないことが示唆された」とまとめている。

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(鷹野 敦夫)