心筋を凍死させる 心房細動治療の新たな選択肢

提供元:ケアネット

印刷ボタン

公開日:2015/10/28

 

 日本メドトロニック株式会社は2015年10月23日、薬剤抵抗性を有する再発性症候性の発作性心房細動治療を目的とした「Arctic Front Advance冷凍アブレーションカテーテル(以下、Arctic Front Advance)」の発売開始を記念し、プレスセミナー「心房細動におけるアブレーション技術の最前線」を開催した。そのセミナーの中で、日本不整脈心電学会理事長 奥村 謙氏は「心房細動治療最前線と冷凍アブレーションへの期待」と題する講演を行った。

 従来のカテーテルアブレーションは、心房細動の異常な信号の発生部位である肺静脈入口部を点状・線状に高周波電流で焼灼することにより、電気回路を遮断していた(肺静脈隔離術)。Arctic Front Advanceは液化窒素ガスを利用したバルーン形状のカテーテルを用い、標的となる肺静脈を円周状に冷却、いわば、ターゲットとなる心筋を“凍死させる”ことで、肺静脈隔離を一括に行う。この新たな技術により、手術時間の短縮や血栓形成、結合組織の傷害などの合併症の軽減につながると期待される。

 米国での臨床試験の結果、不整脈非再発率は高周波アブレーションと同等であり、手術時間は約190分と高周波アブレーション(約280分)に比べ有意に短かった。また、本邦で行われたCRYO-JAPAN試験では、急性期肺静脈隔離成功率99.8%、手術時間187分、6ヵ月後の心房細動非再発率89%という結果であった。

 Arctic Front Advanceは優先審査の対象となり2014年2月に薬事承認を受け、同年7月に保険償還。その後、PMSを経て本年(2015年)10月5日より全国発売が開始された。適応は、薬剤抵抗性かつ再発性症候性の発作性心房細動。使用には、心房細動に対する経皮的カテーテル心筋焼灼術を年間30症例以上実施している不整脈専門医研修施設であること、所定の研修を修了した常勤の医師が1名以上配置されていること、亜酸化窒素ガスを排気する設備があることなど、「経皮的カテーテル心筋冷凍焼灼術に関する施設基準及び資格要件」を満たしていることが必要。

 高齢化が進んだ本邦において、潜在患者を含め心房細動患者は多い。心房細動による心原性脳梗塞は非常に重篤な病態を示すことが多く、発作性心房細動に対するカテーテルアブレーションの件数は増加していくと予測される。今後は、長期有効性の確認とともに、左心房、肺静脈の形状などさまざまな条件を評価しながら、新たな選択肢としてArctic Front Advanceの適応を決めていくことになるだろうと、奥村氏は述べた。

日本メドトロニックのプレスリリースはこちら

(ケアネット 細田 雅之)