浴槽内アルコール関連死の疫学

提供元:ケアネット

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公開日:2015/09/28

 

 浴槽内での死亡は、50歳以上の習慣的に飲酒をする人、とくにアルコール関連の胃腸疾患を持つ人で多いことが、東京都監察医務院の鈴木 秀人氏らによる研究で明らかになった。浴槽内での死亡を減少させるためには、これらの人々をターゲットに予防戦略を立てるべきであると考えられる。日本アルコール・薬物医学会雑誌2015年4月号の報告。

 入浴前のアルコール摂取は、浴槽での突然死のリスク因子の1つであり、日本では比較的頻繁に発生している。本研究は、浴槽でのアルコール関連死の疫学を明確にすることを目的として実施された。

 2009年から2010年の間に東京都監察医務院で行われた剖検5,635例のうち、浴槽で死亡した357例の年齢、性別、血中エタノール濃度、死因およびその種類、アルコール摂取、アルコール関連の胃腸疾患に関するデータを抽出し、評価した。また、血中エタノール濃度によって3群[なし(対照群)、低値(低値群)、高値(高値群)]に分け、それらのデータを比較した。

 主な結果は以下のとおり。

・すべての群の大多数が50~89歳であった。
・血中エタノール高値群の平均年齢(61.7歳)は、対照群(71.1歳)に比べて有意に若かった(p<0.01)。
・男性の割合は、血中エタノール低値群で70.1%、高値群で75.5%であり、対照群(55.9%)と比べて有意に多かった(p<0.05)。
・毎日の飲酒の割合は、血中エタノール低値群で49.5%、高値群で87.8%であり、対照群(23.2%)と比べて有意に多かった(p<0.01)。
・アルコール関連の胃腸疾患は、血中エタノール低値群で26.8%、高値群で63.3%に認められ、対照群(4.3%)と比べて有意に多かった(p<0.01)。

(ケアネット 武田 真貴子)