パロキセチンは他の抗うつ薬よりも優れているのか

パロキセチンは、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRIs)の中で最も強力な作用を有し、多くの無作為化比較試験(RCTs)で検討されてきた。しかし、これらの比較結果やRCTsのシステマティックレビューは、通常、SSRIsに分類される薬剤全体のエビデンスであり、パロキセチン単独に適用可能なものではない。そこで、イタリア・ヴェローナ大学のMarianna Purgato氏らは、パロキセチンの有効性と忍容性プロファイルを、三環系抗うつ薬(TCAs)、SSRIsおよび新規または非従来型の薬剤と比較評価するシステマティックレビューを行った。その結果、治療1~4週の早期の治療効果において、パロキセチンはレボキセチン(国内未承認)よりも効果が高く、ミルタザピンより低いなど、いくつかのエビデンスは示されたものの、他の抗うつ薬との有効性の相違に関する明確なエビデンスは得られなかったことを報告した。Cochrane Database of Systematic Reviewsオンライン版2014年4月3日号の掲載報告。
パロキセチンとその他の抗うつ薬、従来の薬剤、非従来型の薬剤を比較検討
著者らは、パロキセチンの有効性と忍容性プロファイルを TCAs、SSRIsおよび新規または非従来型の薬剤と比較評価するためシステマティックレビューを行った。具体的には、(1)大うつ病性障害の急性症状軽減効果、(2)治療の受容性、(3)有害事象発現状況、を比較検討した。2012年9月30日までのCochrane Depression, Anxiety and Neurosis Review Group's Specialized Register(CCDANCTR)を検索した。同レジスターには、代表的な無作為化比較試験が含まれていた(The Cochrane Library:全年、EMBASE:1974年以降、MEDLINE:1950年以降、PsycINFO:1967年以降)。また、代表的な文献と過去のシステマティックレビューの参考リストを手作業で検索し、パロキセチン販売メーカーおよび同領域の専門家らに連絡を取り、補足データを収集した。大うつ病患者を対象に、パロキセチンとその他の抗うつ薬(ADs)、従来の薬剤(TCAs、SSRIsなど)、新規または天然ハーブのヒペリカムのような非従来型の薬剤を比較検討した、すべての無作為化比較試験を検索対象とした。クロスオーバーデザインの試験については、最初の無作為化期間における結果のみを考慮に入れた。独立した2名のレビュワーが適格性をチェックし、試験、患者背景、介入の詳細、試験のセッティング、有効性、受容性、忍容性などの情報を抽出した。
パロキセチンはレボキセチンと比較して早期に反応する患者が多い
パロキセチンの有効性と忍容性プロファイルの主な結果は以下のとおり。・115件の無作為化比較試験(2万6,134例)が選択された。内訳は、パロキセチンvs. 旧来ADs:54件、vs. その他SSRI:21件、vs. 新規または非従来型SSRI以外の抗うつ薬:40件であった。
・主要アウトカム(治療反応性)において、パロキセチンはレボキセチンと比較して早期に反応する患者が多く(オッズ比[OR]:0.66、95%信頼区間[CI]:0.50~0.87/ ベネフィットを得るための治療必要数(NNTb)=16、95%CI:10~50/ 1~4週時、3試験、1,375例、エビデンスの質:中等度)、ミルタザピンと比較して少なかった(OR:2.39、95%CI:1.42~4.02/ NNTb=8、95%CI:5~14/ 1~4週時、3試験、726例、エビデンスの質:中等度)。
・パロキセチンは、治療反応性の改善においてシタロプラムと比較して効果が低かった (OR:1.54、95%CI:1.04~2.28/ NNTb=9、95%CI:5~102/ 6~12週時、1試験、406例、エビデンスの質:中等度)。
・急性期(6~12週)、早期(1~4週時)または長期(4~6ヵ月)において、治療反応性の向上に関して、パロキセチンがその他の抗うつ薬と比較して有効性が高い(または低い)という明らかなエビデンスは見出せなかった。
・パロキセチンは、アミトリプチリン、イミプラミンおよび旧来ADsと比較して、有害事象の発現頻度が低かったが、アゴメラチン(国内未承認)およびヒペリカムと比べ忍容性は不良であった。
・検討対象とした試験は、無作為化の詳細やアウトカムの評価が不明、アウトカムの報告が不十分なため、概してバイアスが不明確または高かった。
・パロキセチンとその他のADsとの間に、臨床的に意味のある差がいくつかみられたが、これらから明確な結論を導くことはできなかった。反応性については、パロキセチンに比較してシタロプラムが急性期(6~12週)において有効というエビデンス(質:中等度)が示されたが、これは1件の試験データのみによるものであった。
・早期の治療効果(1~4週時)に関しては、パロキセチンはレボキセチンよりも効果が高く、ミルタザピンより低いというエビデンス(質:中等度)が示されたが、各評価時点でパロキセチンがその他の抗うつ薬と比較して反応性が良好または不良であることを示す明らかなエビデンスはなかった。
・いくつかの差が認められたものの、本レビューは仮説の検証という以前の、あくまで仮説構築の域を超えないものであり、将来の試験で再現可能な結論を見出すために再検証すべきであることが示唆された。また、対象とした試験の大半はバイアスが不明または高く、メーカー主導であり、治療効果が過大評価された可能性がある点に留意する必要があった。
(ケアネット)
関連記事

抗うつ薬が奏効しないうつ病患者への抗精神病薬追加投与は本当に有効か
比較(2014/03/31)

うつ病患者、SSRI治療開始1年以内に約半数がセカンド治療に
医療一般(2014/04/09)

うつ病治療におけるNaSSA+SNRIの薬理学的メリット
医療一般 日本発エビデンス(2012/06/22)
[ 最新ニュース ]

妊娠高血圧、自己モニタリング+遠隔指導で産後の長期血圧が改善/JAMA(2023/12/01)

完全磁気浮上LVAD装着の重症心不全、アスピリンは不要?/JAMA(2023/12/01)

肥満2型糖尿病患者に強化インスリン療法は必要か?(解説:住谷哲氏)(2023/12/01)

世界初のsa-mRNAコロナワクチンが国内承認/CSL・Meiji Seika(2023/12/01)

医師数が少なく検査機器数が多い日本の医療/OECD(2023/12/01)

非定型抗精神病薬の胃腸穿孔・腸閉塞リスク~MID-NETデータに基づく医薬品安全性評価(2023/12/01)

若~中年での高血圧、大腸がん死亡リスクが増加~NIPPON DATA80(2023/12/01)

赤身肉の摂取量が多いと糖尿病リスクが上昇(2023/12/01)
[ あわせて読みたい ]
~プライマリ・ケアの疑問~ Dr.前野のスペシャリストにQ!【精神科編】(2019/06/15)
Dr.松崎のここまで!これだけ!うつ病診療 (2016/03/07)
薬剤性QT延長症候群とは(2015/09/30)
全国在宅医療・介護連携研修フォーラム(2015/03/31)
ひと・身体をみる認知症医療(2015/03/15)
診療よろず相談TV(2013/10/25)
在宅医療推進のための地域における多職種連携研修会 領域別セッション(2013/11/12)
「てんかんと社会」国際シンポジウム(2013/09/24)
柏市 在宅医療推進のための地域における多職種連携研修会(2013/06/24)
松戸市 在宅医療推進のための地域における多職種連携研修会(2013/06/20)