日本語でわかる最新の海外医学論文|page:22

Lp(a)測定の国際標準化、新薬登場までに解決か/日本動脈硬化学会

 60年前に初めて発見され、LDLコレステロール(LDL-C)と独立して動脈硬化を促進させる血清リポプロテイン(a)(以下「Lp(a)」)。その存在自体は医師にも知られているが、「一生に一度測定すればよい」との勧告や治療薬が存在しないことも相まって、測定する意義や基準値に関する理解が今ひとつ進んでいないのが実情である。しかし、数年後にLp(a)を低下させる新薬が登場すると期待されている今、これらの解決が急務とされている。そこで、日本動脈硬化学会が「Lp(a)と測定値の標準化について」と題し、プレスセミナーを開催。三井田 孝氏(順天堂大学医療科学部 臨床検査科)がLp(a)測定を推進していく中で問題となる測定値の標準化にフォーカスして解説した。

不妊治療中、男性はコーヒーの飲み過ぎに注意

 不妊治療中カップルの男性におけるコーヒー、紅茶、蒸留酒の摂取量と生児出生確率が逆相関していた一方、ビールでは正相関がみられたことが、米国・ハーバード公衆衛生大学院のAlbert Salas-Huetos氏らの研究で示された。Andrology誌2025年3月号に掲載。  これまでの飲料と生殖に関する健康との関係を調べた研究は相反する結果が得られている。今回、男性343人から採取した精液896サンプルについて、女性が妊娠する前の男性の飲料摂取量と精液の質との関係を調べた。714周期(子宮内人工授精306周期、体外受精408周期)の生殖補助医療を受けた296人の男性とそのパートナーの女性を対象に、飲料摂取量と生殖補助医療によるアウトカム(受精、着床、臨床的妊娠、全/臨床的流産、生児出生)との関係を評価した。

新型コロナ入院患者、退院後も2年以上にわたり死亡リスクは高い

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による入院歴がある人は、回復して自宅に戻れたとしても、決して安心できる状態とは言えないことが新たな研究で示唆された。COVID-19で入院した患者は、初回の感染から最長で2年半の間、全死亡リスクの高いことが明らかになったという。パリ・ビシャ病院(フランス)のSarah Tubiana氏らによるこの研究の詳細は、「Infectious Diseases」に2月27日掲載された。  Tubiana氏は、「これまで人々の関心の多くは新型コロナウイルスの短期的な危険性に向けられてきたが、われわれの研究では、COVID-19による入院歴のある人では、数カ月後、さらには数年後まで、重度の合併症リスクが高い状態が続くことが示された。この公衆衛生に対する長期的な影響は重大だ」と指摘する。

各非定型抗精神病薬の抗精神病薬関連便秘リスク〜米国FDA有害事象報告

 抗精神病薬に関連する便秘は、日常診療において多くの患者にみられる副作用であるが、その研究は十分に行われているとはいえない。便秘は、患者の身体的健康に影響を及ぼすだけでなく、疾患負担に対する心理的ストレスを増大させる要因となるため、一層の注意が求められる。中国・Affiliated Guangji Hospital of Soochow UniversityのSidi He氏らは、米国FDA有害事象報告システムより、抗精神病薬関連の便秘に関する潜在的なリスクを分析した。Expert Opinion on Drug Safety誌オンライン版2025年2月17日号の報告。

ビタミンD補充、多発性硬化症の疾患活動性を抑制するか/JAMA

 ビタミンD欠乏は多発性硬化症(MS)のリスク因子であり、疾患活動性上昇のリスクと関連しているが、補充による有益性のデータは相反している。フランス・モンペリエ大学のEric Thouvenot氏らD-Lay MS Investigatorsは、プラセボと比較して高用量ビタミンD(コレカルシフェロール10万IU、2週ごと)は、clinically isolated syndrome(CIS)および再発寛解型MS(RRMS)の疾患活動性を有意に低下させることを示した。研究の成果は、JAMA誌オンライン版2025年3月10日号に掲載された。  D-Lay MS試験は、高用量コレカルシフェロール単剤療法がCIS患者の疾患活動性を抑制するか評価することを目的とする二重盲検無作為化プラセボ対照第III相試験であり、2013年7月~2020年12月にフランスの36のMS施設で患者を登録した(French Ministry of Healthの助成を受けた)。

デジタルアドヒアランス技術は、結核の治療アウトカムを改善するか/Lancet

 結核治療では、治療のアドヒアランスが不良であると治療アウトカムの悪化のリスクも高まることが知られており、近年、服薬アドヒアランスを改善するためのデジタル技術の評価が進められ、WHOは条件付きでこれを推奨している。オランダ・KNCV Tuberculosis FoundationのDegu Jerene氏らは、ウェブベースのアドヒアランスプラットフォームと連携したスマートピルボックスまたは薬剤ラベルを用いたデジタルアドヒアランス技術(digital adherence technologies:DAT)は、薬剤感受性結核患者における不良な治療アウトカムを低減しないことを示した。研究の詳細は、Lancet誌オンライン版2025年3月11日号で報告された。

細胞免疫療法~CAR T-cell・T-cell engager~の進歩と今後の展望/日本臨床腫瘍学会

 手術療法、抗がん剤療法、放射線療法に続くがん治療の第4の柱として、細胞免疫療法が国内外で徐々に広がりつつある。とくに、最近は通常の免疫機能などでは治癒が困難な難治性のがんに対する治療法として、キメラ抗原受容体T(CAR-T)細胞療法やT細胞誘導抗体(T-cell engager:TCE)が、一部の血液がんに対する効果的な治療法として期待されている。  2025年3月6~8日に開催された第22回日本臨床腫瘍学会学術集会では、日本血液学会と日本臨床腫瘍学会の合同シンポジウムが開催され、細胞免疫療法の現状や課題、今後の展望などについて議論が交わされた。

認知症予防、どのくらいの聴力低下から補聴器を使ったほうがよいか

 難聴が中年期における認知症の予防可能な最大のリスク因子の1つであると報告され、注目を集めているものの、どの程度の難聴になったら認知症予防として補聴器を使うべきなのかは明らかになっていない。慶應義塾大学の西山 崇経氏らは、55歳以上の補聴器の装用経験がない難聴者のグループにおいて、聴力閾値と認知機能検査結果が負の相関関係を示し、4つの音の高さの聴力閾値の平均値が38.75dB HLを超えた場合に、認知症のリスクとなりうることを明らかにした。NPJ Aging誌2025年2月24日号掲載の報告。

不眠症が泌尿器、生殖器系疾患に及ぼす影響

 不眠症が、さまざまな泌尿器系および生殖器系の疾患に及ぼす影響や因果関係は、明らかになっていない。中国・Fifth People's Hospital of Shanghai Fudan UniversityのYougen Wu氏らは、不眠症が10種類の泌尿器系および生殖器系の疾患に及ぼす影響を調査し、この関連を評価するため、メンデルランダム化(MR)研究を実施した。Translational Andrology and Urology誌2025年1月31日号の報告。  UK Biobank、23andMe、FinnGen、遺伝子コンソーシアムより、不眠症と10種類の泌尿器系および生殖器系の疾患のデータを収集した。主なMR分析として、逆分散加重アプローチを用いた。推定値のロバストを調査するため、MR-PRESSO検定(MR多面性残差和、外れ値)、最尤法、MR-Egger法、加重中央値法を用いて感度分析を行った。

高血圧患者、CVD死亡リスクがとくに高い年齢層は?/東北医科薬科大

 高血圧は、心血管疾患(CVD)のリスクとなることは知られている。では、そのリスクは、日本人ではどの程度の血圧(BP)分類や年齢から発生するのであろうか。東北医科薬科大学医学部公衆衛生学・衛生学教室の佐藤 倫広氏らの研究グループは、このテーマについてEPOCH-JAPAN研究における7万人の10年追跡データを用いて、現在用いられているBP分類と脳心CVD死亡リスクの関連を検討した。その結果、高血圧とCVD死亡リスクは関連があり、その傾向はとくに非高齢者で顕著だった。この研究はHypertension Research誌オンライン版に2025年2月20日に公開された。

非糖尿病者では間歇スキャン式血糖測定の値が高値となる

 糖尿病ではない人が間歇スキャン式持続血糖測定(isCGM)を行った場合、測定値が高値を示す傾向のあることが報告された。英バース大学のJavier Gonzalez氏らの研究によるもので、詳細は「The American Journal of Clinical Nutrition」に2月26日掲載された。  isCGMは指先穿刺を必要とせずに血糖値をリアルタイムで確認できるため、「糖尿病患者の人生を変え得る機器」といったアピールとともに普及してきている。しかし、新たな研究によると、健康な人の場合、血糖自己測定のゴールドスタンダードである指先穿刺による測定(SMBG)に比べてisCGMは、高値を示すことが多いようだ。論文の上席著者であるGonzalez氏は、「isCGMは糖尿病患者にとって素晴らしいツールだ。糖尿病患者の場合、たとえ測定結果が完璧に正確ではないとしても、全く測定しないよりは良い。しかし、健康な人が用いると、不必要な食事制限や不適切な食事選択につながる可能性がある。血糖値を正確に評価したいのであれば、依然として従来の方法が最適だ」と話している。

世界中で43秒に1人が自殺により死亡

 自殺リスクに関する新たな世界的評価において、世界中で43秒に1人が自殺により死亡していることが明らかになった。2021年の統計では、自殺による死亡者数は男性の方が女性に比べて多かったが、死亡には至らない自殺未遂の発生率は女性の方が男性よりはるかに高かったという。米ワシントン大学医学部健康指標評価研究所(IHME)のプロジェクト責任者であるEmily Rosenblad氏らによるこの研究結果は、「The Lancet Public Health」に2月19日掲載された。  今回の研究でRosenblad氏らは、世界疾病負担研究(GBD 2021)の推定データを基に、1990年から2021年までの間の204の国と地域での自殺による死亡数、および年齢調整死亡率を分析し、経時的推移や年齢・性別・地域ごとの違いなどを評価した。GBD 2021では、自殺の手段を、「銃器によるもの」と「その他の特定された手段によるもの」に分類している。本研究では、自殺による死亡時の平均年齢、自殺未遂の発生率(死亡と比較した場合)、および銃器を用いた自殺による年齢調整死亡率(10万人当たり)も推定した。

パーキンソン病患者数、30年後には約2倍か/BMJ

 パーキンソン病の患者数は、2050年には2021年の2.1倍となる2,520万人に達し、この増加傾向は世界疾病負担研究(Global Burden of Disease:GBD)の地域分類で規定する東アジア地域の、社会人口統計学的指数(SDI)が中程度の国の男性でより顕著になると予測されることを、中国・首都医科大学のDongning Su氏らがGBD 2021のデータを解析し報告した。著者は、「パーキンソン病は、2050年までに患者とその家族、介護者、地域、そして社会にとって大きな公衆衛生上の課題となると予測され、今回の結果はヘルスリサーチの推進、政策決定への情報提供およびリソース配分の一助となるだろう」とまとめている。BMJ誌2025年3月5日号掲載の報告。

切除不能進行胃がんに対するPD-L1抗体sugemalimab+化学療法の有用性(解説:上村直実氏)

食道胃接合部腺がんを含む手術不能な進行胃がんに対する第1選択の薬物療法とは、従来、5-FUを代表とするフッ化ピリミジン系薬剤とシスプラチンなどのプラチナ系薬剤の併用療法が標準化学治療となっていた。最近、細胞増殖に関わるHER2遺伝子の有無により、HER2陽性胃がんに対しては抗HER2抗体であるトラスツズマブ(商品名:ハーセプチン)を追加した3剤併用レジメンが第1選択の標準治療として推奨されており、さらに免疫チェックポイント阻害薬(ICI)を追加した4剤併用療法の有用性も報告されている。

非弁膜症性心房細動に対するDOAC3剤、1日の服薬回数は治療効果に影響せず?

 非弁膜症性心房細動(NVAF)に対する第Xa因子(FXa)阻害薬の治療効果において、3剤間で安全性プロファイルが異なる可能性が示唆されており、まだ不明点は多い。そこで諏訪 道博氏(北摂総合病院循環器内科臨床検査科 部長)らがリバーロキサバン(商品名:イグザレルト)、アピキサバン(同:エリキュース)、エドキサバン(同:リクシアナ)の3剤の有効性と安全性を評価する目的で、薬物血漿濃度(plasma concentration:PC)と凝固活性をモニタリングして相関関係を調査した。その結果、1日1回投与のリバーロキサバンやエドキサバンの薬物PCはピークとトラフ間で大きく変動したが、凝固活性マーカーのフィブリンモノマー複合体(FMC)は、1日2回投与のアピキサバンと同様に、ピーク/トラフ間で日内変動することなく正常範囲内に維持された。本研究では3剤の時間経過での薬物PCのピークの変動も調査したが、リバーロキサバンについては経時的に蓄積する傾向がみられた。Pharmaceuticals誌2024年10月25日号掲載の報告。

HER2陽性転移乳がん、術後放射線療法でOS改善~SEERデータ

 HER2陽性転移乳がん(MBC)において、抗HER2療法の下での術後放射線療法(PORT)の役割をリアルワールドデータで検討したところ、PORTが全生存期間(OS)をさらに改善していたことがわかった。また、サブグループ解析では、局所進行(T3~4、N2~3)、Grade3、ホルモン受容体(HR)陽性、骨・内臓転移あり、乳房切除を受けた患者において、有意にベネフィットがあることが示唆された。中国・The First Affiliated Hospital of Bengbu Medical UniversityのLing-Xiao Xie氏らがBreast Cancer Research and Treatment誌オンライン版2025年3月14日号で報告した。

リンパ腫・骨髄腫に対する新たな免疫治療/日本臨床腫瘍学会

 キメラ抗原受容体T(CAR-T)細胞療法や二重特異性抗体など、最近の免疫治療の進歩は目覚ましく、とくに悪性リンパ腫と多発性骨髄腫に対しては生命予後を大幅に改善させている。今後もさらに治療成績が向上することが期待され、最適な治療法を選択していくためには、本邦における免疫治療の現状や課題、今後の治療法の開発状況などについてよく理解しておく必要がある。  2025年3月6~8日に開催された第22回日本臨床腫瘍学会学術集会では、リンパ腫・骨髄腫に対する新たな免疫治療についてのシンポジウムが開催され、国内外の4人の演者が最新の知見や今後の展望などについて講演した。

高齢NSCLCへのICI、2次治療への移行率と治療成績(NEJ057)/日本臨床腫瘍学会

 高齢の非小細胞肺がん(NSCLC)患者における免疫チェックポイント阻害薬(ICI)による治療後の2次治療への移行率や、2次治療の有効性に関する報告は乏しい。そこで、75歳以上の進行・再発NSCLC患者を対象とした後ろ向きコホート研究(NEJ057)において、ICIによる治療後の2次治療への移行率および2次治療の治療成績が検討された。山口 央氏(埼玉医科大学国際医療センター)が、第22回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO2025)で本結果を報告した。 ・試験デザイン:多施設(58施設)後ろ向きコホート研究 ・対象:未治療の75歳以上の進行・再発NSCLC患者のうち、ICI+化学療法、ICI単剤、プラチナダブレット、単剤化学療法のいずれかで2018年12月~2021年3月に治療を開始した患者(初回治療に分子標的薬を使用した患者とEGFR遺伝子変異ALK融合遺伝子を有する患者は除外) ・評価項目:全生存期間(OS)、無増悪生存期間(PFS)、安全性など

ビタミンBが影響を及ぼす神経精神疾患〜メタ解析

 最近、食事や栄養が身体的および精神的な健康にどのような影響を及ぼすかが、注目されている。多くの研究において、ビタミンBが神経精神疾患に潜在的な影響を及ぼすことが示唆されているが、ビタミンBと神経精神疾患との関連における因果関係は不明である。中国・Shaoxing Seventh People's HospitalのMengfei Ye氏らは、ビタミンBと神経精神疾患との関連を明らかにするため、メンデルランダム化(MR)メタ解析を実施した。Neuroscience and Biobehavioral Reviews誌2025年3月号の報告。  本MRメタ解析は、これまでのMR研究、UK Biobank、FinnGenのデータを用いて行った。ビタミンB(VB6、VB12、葉酸)と神経精神疾患との関連を調査した。

抗うつ薬は認知症患者の認知機能低下を加速させる?

 不安、抑うつ、攻撃性、不眠などの症状がある認知症患者に対しては、抗うつ薬が処方されることが多い。しかし、新たな研究で、抗うつ薬の使用は認知機能の低下速度を速める可能性があり、特に、高用量の選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)の使用は、重度の認知症や骨折、あらゆる原因による死亡(全死亡)のリスク上昇と関連することが明らかにされた。カロリンスカ研究所(スウェーデン)神経学分野のSara Garcia-Ptacek氏らによるこの研究結果は、「BMC Medicine」に2月25日掲載された。  この研究でGarcia-Ptacek氏らは、2007年5月から2018年10月までの間にスウェーデン認知・認知症レジストリ(Swedish Registry for Cognitive/Dementia Disorders-;SveDem)に登録された認知症患者1万8,740人(女性1万205人、平均年齢78.2歳)を対象に、抗うつ薬の使用と認知機能低下との関連を検討した。さらに、抗うつ薬のクラス、具体的な薬剤、用量ごとの重度認知症、骨折、死亡のリスクを推定した。