日本語でわかる最新の海外医学論文|page:20

市中肺炎へのセフトリアキソン、1g1日2回vs.2g1日1回~日本の前向きコホート

 セフトリアキソンは、日本感染症学会/日本化学療法学会の感染症治療ガイドラインにおいて市中肺炎入院患者におけるエンピリック治療の第1選択薬の1つに挙げられている。投与方法は1g1日2回点滴静注または2g1日1回点滴静注が推奨されているが、これらを比較した前向き研究は限られている。今回、倉敷中央病院の中西 陽祐氏らが、これらの投与方法の有効性と安全性を前向きコホート研究で比較し、報告した。Journal of Infection and Chemotherapy誌2025年1月号に掲載。

抗精神病薬の血中濃度、年齢や性別の影響が最も大きい薬剤は

 抗精神病薬は、高齢患者にも処方されるが、高齢者における安全性および有効性に関する報告は限られている。ノルウェー・Diakonhjemmet HospitalのVigdis Solhaug氏らは、一般的に使用される6種類の抗精神病薬の用量調節血中濃度(C:D比)に対する年齢の影響を男女別に調査し、比較を行った。Therapeutic Drug Monitoring誌オンライン版2025年2月25日号の報告。  対象とした抗精神病薬は、amisulpride、アリピプラゾール、クロザピン、オランザピン、リスペリドン、zuclopenthixol。抗精神病薬の血中濃度を測定した患者を治療薬モニタリングサービスよりレトロスペクティブに組み入れた。各抗精神病薬の主なアウトカムは、性別、年齢(18〜49歳群、50〜74歳群、75歳以上群)で分類したグループ間で評価したC:D比とした。データ分析には、制限付き最尤推定法による線形混合モデルを用いた。

遺伝性消化管腫瘍診療に対する多施設ネットワークの試み/日本臨床腫瘍学会

 進行がんに対する治療薬選択目的で実施されるがんゲノムプロファイリング検査やマイクロサテライト不安定性検査の結果から、2次的所見として消化器領域を含む遺伝性腫瘍の可能性が疑われる症例が増加している。しかし、実臨床でそれらの患者が遺伝コンサルティングを受けることは多くない。これには医療者の理解が不十分であることも要因として考えられる。遺伝性消化器がん(HGC)における多施設多職種ネットワークの取り組みについて、第22回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO2025)で富山大学の安藤 孝将氏が発表した。  安藤氏らは、HGC患者・家族に最適な医療を提供することを目的に多施設多職種のネットワークHGiT-N(Hereditary Gastrointestinal Tumor Network)を設立した。HGiT-Nは6つの主要機関(京都大学、三重大学、滋賀医科大学、富山大学、関西医科大学、愛媛大学)とその関連施設を合わせ30施設で運営されている。

幹細胞治療が角膜の不可逆的な損傷を修復

 実験段階にある画期的な幹細胞治療によって、視力を奪う角膜の損傷を修復できる可能性のあることが、米ハーバード大学附属マサチューセッツ眼科耳鼻科病院のUla Jurkunas氏らによる新たな研究で示された。眼球の一番外側の透明な層である角膜は、傷害や疾患などによって新しい細胞を再生する能力が失われる不可逆的な損傷を受ける可能性がある。新たな治療法は、幹細胞を使って損傷した眼球の角膜を再生させるというもの。初期段階の臨床試験では、治療後18カ月間にわたって追跡された参加者において、この治療法の実行可能性と安全性が確認されたという。詳細は、「Nature Communications」に3月4日掲載された。

普通車と軽自動車、どちらが安全?

 人はそれぞれ、価格、燃費、デザイン、安全性などを基準に車を選ぶが、軽自動車は普通車と比べ、交通事故後の院内死亡率が上昇するという研究結果が報告された。また軽自動車では、頭頸部、胸部、腹部、骨盤および四肢に重度の外傷、重傷を負うリスクが高かったという。神戸大学大学院医学研究科外科系講座災害・救急医学分野の大野雄康氏らによるこの研究結果は、「PLOS One」に2月5日掲載された。  軽自動車は「ミニカー」とも呼ばれ、日本だけでなく海外での人気も高まっている。人気の理由の1つとして、車体のコンパクトさが挙げられるが、それは車内空間が狭まることも意味する。車内空間が狭くなると、衝突時の衝撃による変形に対して乗員がダイレクトに危険に晒されることになる。しかしながら、車内空間の狭さが生存率の低下や、重度の外傷にあたえる影響については十分に検証されてこなかった。こうした背景から、大野氏らは過去に自動車事故で負傷・入院した患者を対象とした単施設の後ろ向きコホート研究を行った。主要評価項目は事故後の院内死亡率とした。

5価髄膜炎菌ワクチン、単回接種で良好な免疫応答/Lancet

 生後9~15ヵ月の乳幼児における通常小児ワクチンに併用接種する髄膜炎菌ワクチンについて、血清型A、C、Y、W、Xを標的とする5価髄膜炎菌結合ワクチン(NmCV-5)の併用接種は、承認済みの4価髄膜炎菌結合ワクチン(MenACWY-TT)の併用接種と比較して安全性に問題はなく、非劣性の免疫応答が惹起されたことが、マリ・Centre pour le Developpement des Vaccins-MaliのFatoumata Diallo氏らNmCV-5 EPI study teamによる第III相単施設二重盲検無作為化対照非劣性試験の結果で示された。侵襲性髄膜炎菌感染症は、アフリカのセネガルからエチオピアにかけて広がるmeningitis belt(髄膜炎ベルト)と呼ばれる国々において、壊滅的な被害をもたらす公衆衛生上の問題となっている。

ARDSの鎮静、セボフルラン対プロポフォール/JAMA

 急性呼吸窮迫症候群(ARDS)患者の管理では機械換気が重要とされ、多くの場合鎮静を要するが、至適な鎮静法は依然として不明だという。フランス・Universite Clermont AuvergneのMatthieu Jabaudon氏らSESAR Trial Investigatorsは「SESAR試験」において、中等症~重症のARDS患者では、プロポフォール静脈内投与と比較してセボフルラン吸入による鎮静は、28日の時点での換気を必要としない日数(無換気日数)が少なく、90日生存率が低いことを示した。研究の詳細は、JAMA誌オンライン版2025年3月18日号に掲載された。  SESAR試験は、ARDS患者の鎮静におけるセボフルラン吸入の有効性と安全性の評価を目的とする医師主導型の非盲検評価者盲検無作為化第III相試験であり、2020年5月~2023年10月にフランスの37の集中治療室(ICU)で患者を登録した(French Ministry of Healthなどの助成を受けた)。

日本人へのbempedoic acid、LDL-C20%超の低下を認める(CLEAR-J)/日本循環器学会

 スタチンで効果不十分あるいはスタチン不耐の高コレステロール血症の日本人患者に対する12週後のbempedoic acidの安全性と有効性が明らかになった―。3月28~30日に開催された第89回日本循環器学会学術集会のLate Breaking Clinical Studies2において山下 静也氏(りんくう総合医療センター 理事長)が発表し、Circulation Journal誌2025年3月28日号に同時掲載された。

造血幹細胞移植後のLTFUを支える試み/日本造血・免疫細胞療法学会

 2025年2月27日~3月1日に第47回日本造血・免疫細胞療法学会総会が開催され、2月28日のシンポジウム「未来型LTFU:多彩なサバイバーシップを支える次世代のケア」では、がん領域におけるデジタルセラピューティクス(Digital Therapeutics:DTx)の有用性および造血幹細胞移植治療におけるDTx開発の試みや、移植後長期フォローアップ(Long Term Follow Up:LTFU)の課題解決のためのICT(Information and Communication Technology)活用と遠隔LTFUの取り組み、さらに主に小児・思春期・若年成人(Children, Adolescent and Young Adult:CAYA)世代の造血幹細胞移植における妊孕性温存と温存後生殖補助医療についての話題が紹介された。造血器腫瘍は多彩なサバイバーシップケアの重要性が増しており、次世代ケアの試みが着々と進められている。

PTSDに対するブレクスピプラゾール治療、単剤療法と併用療法の有効性

 心的外傷後ストレス障害(PTSD)に対するブレクスピプラゾールのセルトラリン併用療法および単剤療法の有効性、安全性、忍容性を評価するため、米国・Otsuka Pharmaceutical Development & Commercialization Inc.のMary Hobart氏らは、ランダム化比較試験を実施し、その結果を報告した。The Journal of Clinical Psychiatry誌2025年2月19日号の報告。  本試験では、1週間のプラセボ導入期間とその後11週間のランダム化二重盲検実薬参照プラセボ対照並行群間治療期間(フォローアップ期間14日間を含む)で構成された。

非専門医とはすでに同等!?医師vs.生成AIの診断能力を比較

 生成AIと医師の診断能力を比較した系統的レビューおよびメタアナリシスの結果、非専門医と比較した場合の正確度の差はわずか0.6%ほどにとどまった(p=0.93)。さらに、一部の最新モデルでは、統計学的な有意差は認められなかったものの非専門医をわずかに上回る性能を示していた。大阪公立大学の田北 大昂氏らによる、NPJ Digital Medicine誌2025年3月22日号掲載の報告より。  本研究では、診断業務における生成AIモデルの妥当性を検証した研究を対象に、2018年6月~2024年6月までに発表された文献の系統的レビューおよびメタアナリシスを実施した。

母乳育児は子どもの血圧低下に関連

 母乳育児には、子どもの血圧を下げる効果があるようだ。最新の研究で、生後1週間と1カ月時点で腸内細菌の多様性が高く、特にビフィズス菌に代表されるBifidobacterium属が多く存在する場合、6カ月以上にわたる母乳育児が6歳時の血圧に対して保護的に働く可能性のあることが明らかになった。米コロラド大学アンシュッツメディカルキャンパスのNoel Mueller氏らによるこの研究の詳細は、「Journal of the American Heart Association」に2月27日掲載された。Mueller氏は、「われわれの研究結果は、幼児期の腸内細菌叢が小児期の心血管の健康に潜在的に重要な意味を持つことを示唆している」と話している。

マラリア対策のための高解像度地図の最新版、COVID-19の影響は?/Lancet

 オーストラリア・カーティン大学のDaniel J. Weiss氏らは、マラリアの空間的に不均一な進展を追跡し、戦略的なマラリア対策に役立てる目的で、マラリアの感染有病率、発生率、死亡率に関する世界的な高解像度地図を作成した。この地図により、2000年代初頭からのマラリア対策への前例のない投資によって、マラリアがもたらす莫大な負担が回避されたが、アフリカの症例発生率は横ばいで推移しており、リスク人口の急速な増加によりアフリカの症例発生数は増加し、その結果として世界の熱帯熱マラリア原虫(Plasmodium falciparum)を病原体とする症例発生数は、大規模投資以前の水準に戻っていることが示された。研究の成果は、Lancet誌2025年3月22日号に掲載された。

2型DMへの自動インスリン投与システム、HbA1c値を改善/NEJM

 自動インスリン投与(AID)システムの有用性は、1型糖尿病では十分に確立されているが、2型糖尿病における有効性と安全性は確立されていない。米国・メイヨークリニックのYogish C. Kudva氏ら2IQP Study Groupは「2IQP試験」において、インスリン治療を受けている成人2型糖尿病患者では、従来法のインスリン投与と持続血糖測定器(CGM)の併用と比較して、AIDとCGMの併用は、糖化ヘモグロビン(HbA1c)値の有意な低下をもたらし、CGMで測定した低血糖の頻度は両群とも低いことを示した。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2025年3月19日号で報告された。

胃がんT-DXd、日本における販売後調査の最終解析/日本胃癌学会

 抗HER2抗体薬物複合体トラスツズマブ デルクステカン(T-DXd)は「がん化学療法後に増悪したHER2陽性の治癒切除不能な進行・再発の胃癌」に対し2020年9月に承認された。現在では胃がん3次治療以降に広く使用されているが、間質性肺疾患(ILD)の発現が重要なリスクとして認識されており、ILDリスクを評価する観察期間12ヵ月の製造販売後調査(PMS)が実施された。2025年3月12~14日に行われた第97回日本胃癌学会総会では、愛知県がんセンターの室 圭氏が本調査の最終解析結果を発表した。  主な結果は以下のとおり。

閉塞性肥大型心筋症へのmavacamten、長期有効性・安全性の中間解析(HORIZON-HCM)/日本循環器学会

 閉塞性肥大型心筋症(HCM)治療薬の選択的心筋ミオシン阻害薬mavacamten は、3月27日にブリストル マイヤーズ スクイブが製造販売承認を取得し、年内の国内販売が見込まれる。今回、泉 知里氏(国立循環器病研究センター 心不全・移植部門 部門長)が、mavacamtenの54週での有効性・安全性・忍容性について、3月28~30日に開催された第89回日本循環器学会学術集会のLate Breaking Clinical Trials1で報告した。  日本人における症状を有する閉塞性HCM患者の治療効果検証のため、第III相非盲検単群試験HORIZON-HCMが実施されており、昨年の同学会において北岡 裕章氏(高知大学医学部老年病・循環器内科学 教授)が30週の短期有効性・安全性を報告している。今回の報告では、108週の長期試験の中間解析として54週時点の効果が示された。

腸管GVHDの発症・重症化および予防・治療における腸内細菌叢の役割/日本造血・免疫細胞療法学会

 腸管移植片対宿主病(GVHD)は同種造血幹細胞移植における特徴的な合併症で、予後を左右するだけでなく、移植後の生活の質も低下させる。近年、腸管GVHDと腸内細菌叢との関連に注目した研究は増えているが、まだ不明な点も多い。  2025年2月27日~3月1日に開催された第47回日本造血・免疫細胞療法学会総会では、「腸内細菌叢とGVHD:治療への新たな道を切り開く」と題したシンポジウムが行われ、腸内細菌叢とGVHDとの関連についての研究が4名から報告された。

OTC薬の乱用と精神症状発症リスクとの関係

 市販(OTC)薬の入手しやすさは、現代の医療システムにおいて重要な役割を果たしており、個人が軽度の健康課題を自身で管理できるようになっている。しかし、覚醒剤、下剤、鎮痛薬、麻薬の含有製剤など、一部のOTC薬には、誤用や乱用につながりやすい薬理学的特性がある。不適切な用量、期間、適応症に伴う誤用、精神活性作用やその他の違法な目的のための非治療的な使用に伴う乱用は、依存症や中毒につながるリスクがある。イタリア・G. D'Annunzio UniversityのAlessio Mosca氏らは、既存のエビデンスを統合し、抗ヒスタミン薬、鎮咳薬、充血除去薬の誤用と精神症状の発症との関係を包括的に検討した。Current Neuropharmacology誌オンライン版2025年2月18日号の報告。

「血痰は喀血」、繰り返す喀血は軽症でも精査を~喀血診療指針

 本邦初となる喀血診療に関する指針「喀血診療指針」が、2024年11月に日本呼吸器内視鏡学会の学会誌「気管支学」に全文掲載された。そこで、喀血ガイドライン作成ワーキンググループ座長の丹羽 崇氏(神奈川県立循環器呼吸器病センター 呼吸器内科 医長 兼 喀血・肺循環・気管支鏡治療センター長)に、本指針の作成の背景やポイントなどを聞いた。  「喀血診療の現場では、長年にわたって公式な診療指針が存在せず、個々の医師が経験と知識を基に対応していたことに、大きなジレンマを感じていた」と丹羽氏は述べる。自身でカテーテル治療や内視鏡治療を行うなかで、より体系的な診療指針の必要性を実感していたところ、日本呼吸器内視鏡学会の大崎 能伸理事長(当時)より「ガイドラインを作ってみないか」と声をかけられたことから、喀血ガイドライン作成ワーキンググループが立ち上がり、作成が始まったとのことである。

敗血症性ショック、強化学習モデルのバソプレシン投与で死亡率低下/JAMA

 すでにノルエピネフリンを投与されている敗血症性ショック患者において、臨床医による実際の平均的な治療パターンと比較して強化学習(reinforcement learning)モデルは、より多くの患者で、より早期に、ノルエピネフリンの用量がより少ない時点でのバソプレシンの投与開始を推奨し、これに準拠すると死亡率が低下することが、フランス・パリ・シテ大学のAlexandre Kalimouttou氏らが実施した「OVISS試験」で示された。研究の成果は、JAMA誌オンライン版2025年3月18日号で報告された。  研究グループは、複数の電子健康記録のデータセットに強化学習を適用し、ノルエピネフリンの投与を受けている敗血症性ショックの成人の重症患者において、短期的アウトカムと入院中のアウトカムの両方を改善するよう最適化されたバソプレシンの投与開始規則の治療結果を導き出し、これを検証し、評価を行った(米国国立衛生研究所[NIH]などの助成を受けた)。