日本語でわかる最新の海外医学論文|page:17

cagrilintide/セマグルチド配合薬、肥満糖尿病の減量に有効/NEJM

 過体重または肥満の2型糖尿病の成人患者において、プラセボと比較してcagrilintide(長時間作用型アミリン類似体)とセマグルチド(GLP-1受容体作動薬)の配合薬の週1回投与は、68週の時点で有意な体重減少をもたらし、5%以上の体重減少の達成率が高く、良好な血糖コントロールを示すことが、英国・University of LeicesterのMelanie J. Davies氏らが実施した「REDEFINE 2試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2025年6月22日号で報告された。  REDEFINE 2試験は、欧州、北米、アジアの12ヵ国の施設が参加した68週間の二重盲検無作為化プラセボ対照第IIIa相試験であり、2023年2~8月に患者のスクリーニングを行った(Novo Nordiskの助成を受けた)。

オンデキサの周術期投与に関する提言、4団体が発出

 日本心臓血管麻酔学会、日本胸部外科学会、日本心臓血管外科学会、日本体外循環技術医学会の4学会は、直接作用型第Xa因子阻害薬の中和剤であるアンデキサネット アルファ(商品名:オンデキサ)が高度なヘパリン抵抗性を惹起する可能性について、医療現場への一層の周知が必要と判断し、「アンデキサネット アルファの周術期投与に関する提言」を6月30日に発出した。  ヘパリンを用いる心臓血管外科手術の術前または術中にアンデキサネット アルファを投与した後、著明なヘパリン抵抗性を呈し、手術遂行に重大な支障を来した症例が複数報告されている。これを受け、2023年9月に日本心臓血管麻酔学会が注意喚起を出していたが、その後も類似の症例が継続して報告されていた。

自殺リスクに相反する影響を及ぼすコーヒーとエナジードリンク

 コーヒー、紅茶、エナジードリンクなどに含まれるカフェインは、世界で最も多く消費されている精神活性物質であり、世界人口の約80%は毎日摂取している。近年の研究では、カフェイン摂取後に生じる可能性のあるメンタルヘルスのアウトカムへの影響に関して、より複雑な関係性が示唆されている。シンガポール国立大学のChen Ee Low氏らは、カフェイン摂取が自殺企図、自殺念慮、自傷行為リスクに及ぼす影響を調査するため、初のシステマティックレビューおよびメタ解析を実施した。Nutrients誌2025年6月2日号の報告。  PRISMAに準拠し、カフェイン摂取が自殺企図、自殺念慮、自傷行為リスクに及ぼす影響を評価したすべての研究を、PubMed、Embase、Cochrane、PsycINFOよりシステマティックに検索した。主要解析には、ランダム効果メタ解析およびメタ回帰分析を用いた。

再発/難治性多発性骨髄腫へのベネトクラクス+ボルテゾミブ+デキサメタゾン、BELLINI試験最終OS解析

 再発/難治多発性骨髄腫におけるボルテゾミブ+デキサメタゾンへのベネトクラクス上乗せの効果を検討した第III相BELLINI試験では、すでに主要評価項目である独立評価委員会による無増悪生存期間(PFS)は達成したが早期死亡率の増加を示したことが報告されている。今回、米国・Mayo ClinicのShaji K. Kumar氏らが、本試験の全生存期間(OS)の最終解析結果をLancet Haematology誌オンライン版2025年6月27日号で報告した。Kumar氏らは「OSはプラセボがベネトクラクスを上回り、PFSはベネトクラクスがプラセボを上回っていたことから、一般的な再発/難治性の多発性骨髄腫患者ではベネトクラクスの使用を避けるべきであることが示唆された」としている。

ピロリ除菌後の胃がんリスク~日本の大規模コホート

 Helicobacter pylori(H. pylori)感染は胃がんの主要なリスク因子である。わが国では2013年からH. pylori関連胃炎に対する除菌治療が保険適用に追加されたものの、2023年のがん死亡原因で胃がんが第4位であり、胃がん罹患率は依然として高い。今回、自治医科大学の菅野 健太郎氏らは、H. pylori関連胃炎、胃潰瘍、十二指腸潰瘍、胃潰瘍および十二指腸潰瘍の患者におけるH. pylori除菌後の胃がんリスクの違いを大規模後ろ向きコホートで調査した。その結果、H. pylori関連胃炎と胃潰瘍の患者は十二指腸潰瘍患者よりも胃がんリスクが高く、H. pylori除菌後も胃萎縮が胃がんリスク因子として残ることが示唆された。BMC Gastroenterology誌2025年7月1日号に掲載。

ウェイトベストは減量に伴う骨密度低下の抑制に効果なし

 ウェイトベストは、減量に伴う骨密度の低下を予防する手段として期待が寄せられている。これは、ウェイトベストを着用してウォーキングやジョギングを行うことで、体にかかる負荷を維持しながら骨組織に機械的ストレスを与えることができ、減量に伴う骨量の喪失を最小限に抑えられると考えられているからだ。しかし、新たな臨床試験により、この考え方は科学的に裏付けられないことが明らかになった。ウェイトベストを着用しても、減量に伴う骨密度の低下を有意に抑制する効果は確認されなかったのである。この研究の詳細は、「JAMA Network Open」に6月20日掲載された。

AIが皮膚疾患に対する医師の診断精度を向上させる

 実験的なAIツールが、メラノーマ(悪性黒色腫)やその他の皮膚疾患の検出を迅速化するのに役立つ可能性のあることが、新たな研究で明らかにされた。この「PanDerm」と呼ばれるツールを医師が使用した場合、皮膚がんの診断精度が11%向上したことが示されたという。モナシュ大学(オーストラリア)情報技術学部AIM for Health研究室のZongyuan Ge氏らによるこの研究結果は、「Nature Medicine」に6月6日掲載された。  皮膚疾患の診断と治療には、領域横断的な高度な視覚的能力と、複数の画像診断法(モダリティ)からの情報を統合する能力を要する。しかし、現在の深層学習モデルは、ダーモスコピー画像からの皮膚がんの診断など特定のタスクでは優れているものの、臨床現場の複雑でマルチモーダルな情報の処理は得意ではない。こうした弱点を克服するために国際的な研究者チームによって開発されたPanDermは、11の医療機関から集められた4種類の画像モダリティにまたがる200万枚以上の皮膚画像でトレーニングされた、皮膚科領域のAIモデルである。

認知症患者の介護者は認知症関連因子の保有率が高い傾向

 認知症患者の介護者(以下、認知症介護者)は、健康的ではない脳の老化に関連するライフスタイル因子を持っている傾向が強く、そのため自身の認知症リスクも高まる可能性のあることが、新たな研究で明らかにされた。米アルツハイマー病協会のPublic Health Center of Excellence on Dementia Risk Reduction(認知症リスク低減のための公衆衛生卓越センター)および米ミネソタ大学を拠点とするPublic Health Center of Excellence on Dementia Caregiving(認知症の介護に関する公衆衛生卓越センター)によるこの研究は、「Risk Factors For Cognitive Decline Among Dementia Caregivers(認知症介護者における認知機能低下のリスク因子)」のタイトルで6月12日に公表された。

骨盤臓器脱へのペッサリー、膣エストロゲンクリームで継続率に差は?/BMJ

 症候性骨盤臓器脱患者において、リングペッサリーのエストロゲンクリーム使用は満足度の高いペッサリー使用継続を改善しなかったが、一般的な有害事象のリスク低下と関連している可能性があることが示された。中国・Chinese Academy of Medical Sciences & Peking Union Medical CollegeのYing Zhou氏らが、同国5地域8省の12施設で実施した無作為化二重盲検プラセボ対照比較試験の結果を報告した。骨盤臓器脱は閉経後女性によく見られ、生活の質に影響を与える。ペッサリーの使用は、症候性骨盤臓器脱に対する第1選択であるが、使用に伴う不満や合併症により、多くの女性が使用を中止している。膣エストロゲンがペッサリーの使用に及ぼす影響を調査した研究は限られており、症例数が少なく方法論的な問題があるため、エビデンスの質は低かった。結果を踏まえて著者は、「膣エストロゲンの使用に関する臨床的判断は、その有益性とリスク、そして患者の個人的な希望を考慮する必要がある」とまとめている。BMJ誌2025年6月27日号掲載の報告。

基礎インスリン治療中の2型糖尿病、efsitoraはデグルデクに非劣性/Lancet

 基礎インスリンを投与中の2型糖尿病成人患者において、insulin efsitora alfa(efsitora)週1回投与はインスリン デグルデク(デグルデク)1日1回投与と比較し、HbA1c値の改善に関して非劣性であることが示された。米国・Scripps Whittier Diabetes InstituteのAthena Philis-Tsimikas氏らが、日本を含む9ヵ国127施設で実施された78週間の第III相無作為化非盲検treat-to-target非劣性試験「QWINT-3試験」の結果を報告した。結果を踏まえて著者は、「2型糖尿病成人患者の治療において、efsitoraは週1回投与と注射回数が少なく、忍容性と有効性は良好であり、1日1回投与の基礎インスリンの代わりとなるインスリン製剤である」とまとめている。Lancet誌2025年6月28日号掲載の報告。

遺伝子治療市場の縮小を超えて:長期成績が示す血友病B治療の未来(解説:長尾梓氏)

NEJM誌6月12日号に掲載された“Sustained Clinical Benefit of AAV Gene Therapy in Severe Hemophilia B”は、AAVベースの遺伝子治療治験薬scAAV2/8-LP1-hFIXcoを投与した血友病B 10例を13年間追跡し、FIX活性と出血抑制が初期報告からほぼ減衰せず、安全性上の深刻なシグナルも認めなかったことを示した。AAVベクターによる遺伝子治療が「十年以上効く」ことを実証した初の報告であり、臨床現場にとって画期的である。一方、市場環境には逆風が続く。Pfizerは今年2月、FDA承認済みだった血友病B遺伝子治療薬Beqvez(fidanacogene elaparvovec-dzkt)の世界的な販売・開発を突然打ち切った。理由は「患者・医師の需要の低さ」とされる。さらにBioMarinは血友病A遺伝子治療薬Roctavian(valoctocogene roxaparvovec)の商業展開を米国、ドイツ、イタリアの3ヵ国に限定し、その他地域への投資を凍結すると発表した。こうした撤退・縮小の動きを受け、ISTH、WFH、EAHADなどの国際学会は本年5月に「遺伝子治療開発を止めないでほしい」とする緊急声明を共同発出し、産学官・患者団体に継続的な投資とアクセス確保を要請している。

「日本版敗血症診療ガイドライン2024」改訂のポイント、適切な抗菌薬選択の重要性

 2024年12月、日本集中治療医学会と日本救急医学会は合同で『日本版敗血症診療ガイドライン2024(J-SSCG 2024)』を公開した。今回の改訂では、前版の2020年版から重要臨床課題(CQ)の数が118個から78個に絞り込まれ、より臨床現場での活用を意識した構成となっている。5月8~10日に開催された第99回日本感染症学会総会・学術講演会/第73回日本化学療法学会総会 合同学会にて、本ガイドライン特別委員会委員長を務めた志馬 伸朗氏(広島大学大学院 救急集中治療医学 教授)が、とくに感染症診療領域で臨床上重要と考えられる変更点および主要なポイントを解説した。

うつ病の認知機能に対するセロトニン5-HT1A受容体パーシャルアゴニストの影響

 統合失調症に対するセロトニン5-HT1A受容体パーシャルアゴニスト(5-HT1A-PA)補助療法は、注意力/処理速度の改善と関連していることが報告されている。また、5-HT1A受容体は、気分障害の病態生理においても重要な役割を果たしていることが示唆されている。さらに、5-HT1A受容体への刺激が抗うつ効果を増強することを示す説得力のあるエビデンスも報告されている。国立精神・神経医療研究センターの山田 理沙氏らは、気分障害患者の認知機能改善に対する5-HT1A-PA補助療法の有効性を評価するため、ランダム化比較試験(RCT)のシステマティックレビューを実施した。Neuropsychopharmacology Reports誌2025年6月号の報告。

順天堂大学病院管理学研究室 医療MBAエグゼクティブコース2025年度開講決定【ご案内】

 順天堂大学病院管理学研究室が、ケアネットと共同で病院経営に特化したMBAエッセンスを短期集中で学びたい医師を対象とした『順天堂大学病院管理学研究室 医療MBAエグゼクティブコース』を2025年9月に開講する。  本プログラムは猪俣 武範氏(順天堂大学病院管理学・眼科准教授/医学博士/MBA)がコースディレクターを務め、MBAの各分野の最前線で活躍する講師を招き、ケーススタディなどを通じて双方向的で実践的なプログラムを目指す。全13回のプログラムを受講することで、MBAのエッセンスのほか、医療DXなど、変化の大きい医療状況を乗り越えるために必要な、病院経営者に役立つ実践的なスキルを身に付けることができる。  なお、修了者には順天堂大学病院管理学研究室から「修了証」が発行される。

マルチターゲット便DNA検査は免疫学的便潜血検査よりも大腸がん発見のコストが高い

 マルチターゲット便DNA検査(MSDT)および次世代MSDT(N-G MSDT)を用いたスクリーニングは、免疫学的便潜血検査(FIT)と比較して、発見できるAdvanced neoplasiaや早期大腸がん(CRC)1例当たりのコストが高いというリサーチレターが、「Annals of Internal Medicine」に5月13日掲載された。  ドイツがん研究センターのHermann Brenner氏らは、MSDTがFITと比較して高感度であり、米国でCRCスクリーニングに使用される機会が増えていることに着目し、2件の研究の結果に基づいて、FIT、MSDT、N-G MSDTを用いたCRCスクリーニングにおいて発見できる標的所見1件当たりのコストを比較検討した。

PFASが子どもの血圧上昇と関連

 ほとんど分解されず環境中に長期間存在し続けるため、「永遠の化学物質」と呼ばれているPFAS(ペルフルオロアルキル化合物やポリフルオロアルキル化合物)への胎児期の曝露と、出生後の小児期から思春期の血圧上昇との関連を示すデータが報告された。米ジョンズ・ホプキンス大学ブルームバーグ公衆衛生学大学院のZeyu Li氏らの研究の結果であり、詳細は「Journal of the American Heart Association(JAHA)」に6月12日掲載された。同氏は、「PFASが及ぼす潜在的な有害性は、生後何年も経過してから初めて明らかになる可能性がある」と述べている。

週1回のカプセル剤が統合失調症の服薬スケジュールを簡略化

 週1回のみの服用で胃の中から徐々に薬を放出する新しいタイプのカプセル剤によって、統合失調症患者の服薬スケジュールを大幅に簡略化できる可能性が新たな研究で明らかになった。この新たに開発された長時間作用型経口リスペリドンは、患者の体内のリスペリドン濃度を一定に保ち、毎日服用する従来の治療と同程度の症状コントロールをもたらすことが臨床試験で示されたという。製薬企業のLyndra Therapeutics社の資金提供を受けて米マサチューセッツ工科大学(MIT)機械工学准教授のGiovanni Traverso氏らが実施したこの研究の詳細は、「The Lancet Psychiatry」7月号に掲載された。

月1回投与の肥満治療薬maridebart cafraglutide、体重を大幅減/NEJM

 月1回投与のmaridebart cafraglutide(MariTideとして知られる)は、2型糖尿病の有無にかかわらず肥満者の体重を大幅に減少させたことが、米国・イェール大学のAnia M. Jastreboff氏らMariTide Phase 2 Obesity Trial Investigatorsによる第II相試験で示された。maridebart cafraglutideは、GLP-1受容体アゴニスト作用とグルコース依存性インスリン分泌刺激ポリペプチド(GIP)受容体アンタゴニスト作用を組み合わせた長時間作用型ペプチド抗体複合体で、肥満症の治療を目的として開発が進められている。第II相試験では、2型糖尿病の有無を問わない肥満成人を対象に、maridebart cafraglutideのさまざまな用量、用量漸増の有無における有効性、副作用プロファイルおよび安全性が評価された。NEJM誌オンライン版2025年6月23日号掲載の報告。

WHO予防接種アジェンダ2030は達成可能か?/Lancet

 WHOは2019年に「予防接種アジェンダ2030(IA2030)」を策定し、2030年までに世界中のワクチン接種率を向上する野心的な目標を設定した。米国・ワシントン大学のJonathan F. Mosser氏らGBD 2023 Vaccine Coverage Collaboratorsは、目標期間の半ばに差し掛かった現状を調べ、IA2030が掲げる「2019年と比べて未接種児を半減させる」や「生涯を通じた予防接種(三種混合ワクチン[DPT]の3回接種、肺炎球菌ワクチン[PCV]の3回接種、麻疹ワクチン[MCV]の2回接種)の世界の接種率を90%に到達させる」といった目標の達成には、残り5年に加速度的な進展が必要な状況であることを報告した。1974年に始まったWHOの「拡大予防接種計画(EPI)」は顕著な成功を収め、小児の定期予防接種により世界で推定1億5,400万児の死亡が回避されたという。しかし、ここ数十年は接種の格差や進捗の停滞が続いており、さらにそうした状況が新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミックによって助長されていることが懸念されていた。Lancet誌オンライン版2025年6月24日号掲載の報告。

難聴への早期介入には難聴者への啓発が重要/日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会

 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会は、本年11月15~26日にわが国で初めてデフ(きこえない・きこえにくい)アスリートのための国際スポーツ大会「東京2025デフリンピック」が開催されることを記念し、都内でスポーツから難聴を考えるメディアセミナーを開催した。セミナーでは、難聴のアスリートである医師の軌跡、高齢者と聴力と健康、難聴への早期介入の重要性などが講演された。  東京2025デフリンピックは、上記12日間の日程で都内を中心に、約80ヵ国のアスリート3,000人を迎え、21競技で開催される。