内科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:22

高齢患者の抗菌薬使用は認知機能に影響するか

 高齢患者の抗菌薬の使用は認知機能の低下とは関連しないことが、新たな研究で明らかにされた。論文の上席著者である米ハーバード大学医学大学院のAndrew Chan氏は、「高齢患者は抗菌薬を処方されることが多く、また、認知機能低下のリスクも高いことを考えると、これらの薬の使用について安心感を与える研究結果だ」と述べている。この研究の詳細は、「Neurology」に12月18日掲載された。  研究グループは、人間の腸内には何兆個もの微生物が存在し、その中には認知機能を高めるものもあれば低下させるものもあると説明する。また、過去の研究では、抗菌薬を使用すると、腸内細菌叢のバランスが崩れる可能性のあることが示されているという。Chan氏は、「腸内細菌叢は、全体的な健康の維持だけでなく、おそらくは認知機能の維持にも重要とされている。そのため、抗菌薬が脳に長期的な悪影響を及ぼす可能性が懸念されている」と話す。

新しい認知症観と疫学(解説:岡村毅氏)

「新しい認知症観」という言葉がキーワードになっている。昨年12月に閣議決定された「認知症施策推進基本計画」には、お役所とは思えない情熱的な表現がちりばめられている。  このような熱い思いで国の方針を考えている人がいることに胸が熱くなる。なぜ「新しい認知症観」かというと、認知症ほど、概念が変化しているものはないからだ。近年では「疾病ですらない」というやや極端な意見もある。  私の理解する歴史的変遷を簡単に述べよう。

身近な血圧計から心房細動の早期発見に寄与する新システム発表/オムロン

 オムロンヘルスケアは、血圧測定時に同時に得られるバイタルデータを解析することで「脈の乱れ」をを検知するシステムの完成に合わせ、プレセミナーを開催した。  セミナーでは、心房細動(AF)におけるバイタルデータの重要性や開発された血圧測定でAFのリスク検出をする次世代アルゴリズム“Intellisense AFib”の説明が行われた。  「脳・心血管イベントの抑制における心房細動管理の重要性」をテーマに清水 渉氏(日本医科大学大学院医学研究科循環器内科学分野 教授)がAFの発症リスクと家庭におけるバイタルデータ計測の重要性について、説明を行った。

緑茶に認知症予防効果?~65歳以上の日本人約9千人の脳を解析

 緑茶の摂取が認知症の予防につながる可能性が報告された。柴田 修太郎氏(金沢大学医薬保健学総合研究科 脳神経内科学)らの研究グループは、認知症のない65歳以上の日本人を対象として、緑茶およびコーヒーの摂取量と脳MRIの関係を検討した。その結果、緑茶の摂取量が多いほど、脳白質病変容積が小さい傾向にあった。一方、コーヒーには脳MRIの解析結果との関連はみられなかった。本研究結果は、npj Science of Food誌2025年1月7日号に掲載された。  健康長寿社会の実現を目指し、65歳以上の1万人超を対象として実施されている認知症コホート研究「JPSC-AD研究」の参加者のうち、認知症がなく脳MRIデータを取得できた8,766人を対象として、本研究を実施した。対象者を緑茶、コーヒーの1日当たりの摂取量(200mL以下、201~400mL、401~600mL、601mL以上)で分類し、脳白質病変、海馬、全脳の容積との関連を検討した。

人工甘味料の摂取は非健康的な食生活と関連

 人工甘味料の摂取量が多い人ほど、食生活が非健康的であるという関連性を示すデータが報告された。米ジョージ・ワシントン大学のAllison Sylvetsky氏らの研究によるもので、詳細は「The American Journal of Clinical Nutrition」に11月25日掲載された。  砂糖などの添加糖の代わりに人工甘味料が使われることがあるが、それが人々の食生活の質を高めているのか、または反対に食生活の質の低下と関連しているのかという点は、よく分かっていない。これを背景としてSylvetsky氏らは横断的研究により、人工甘味料の摂取と食生活の質との関連を検討した。

服薬アドヒアランスの悪い心血管疾患の患者に対して、一般的なテキストメッセージ、ナッジを追加したテキストメッセージ、ナッジとチャットボットによるテキストメッセージを提供しても、通常のケアと比較して12ヵ月後のアドヒアランスを改善しなかった(解説:名郷直樹氏)

ナッジやチャットボットという新しい介入手段が出現し、患者の服薬アドヒアランスを改善できるのではないかという視点で行われたランダム化比較試験である。服薬アドヒアランスの悪い心血管疾患の18歳から90歳までの患者を対象に、一般的なテキストメッセージ、ナッジを追加したテキストメッセージ、ナッジとチャットボットによるテキストメッセージのそれぞれの提供を通常のケアと比較し、12ヵ月後のリフィルの処方箋の発行のギャップを服薬アドヒアランスのアウトカムとして検討している。

血圧の経時的変動は高齢者の認知機能に悪影響を及ぼす

 血圧の管理は、心臓の健康のためだけでなく、加齢に伴い低下する頭脳の明晰さを保つ上でも重要であるようだ。時間の経過に伴い血圧が大きく変動していた高齢者は、思考力や記憶力が低下する可能性の高いことが、新たな研究で明らかになった。米ラッシュ大学のAnisa Dhana氏らによるこの研究結果は、「Neurology」に12月11日掲載された。Dhana氏は、「これらの結果は、血圧の変動が高血圧自体の悪影響を超えて認知障害のリスク因子であることを示唆している」と述べている。  この研究では、白人と黒人を対象に実施されたシカゴ健康と加齢プロジェクト(1993〜2012年)への65歳以上の参加者4,770人(平均年齢71.3歳、女性62.9%、黒人66.0%)を対象に、経時的な血圧変動と認知機能との関連が検討された。試験参加者は、3年ごとに18年間にわたって血圧測定を受けていた。収縮期血圧と拡張期血圧は、前回の測定値との差の絶対値を全て合計し、それを測定回数から1を引いた数(n−1)で割って算出した。認知機能は、標準化された認知テストで評価して総合スコアを算出し、zスコアとして表した。

歩くのが速いと自認している肥満者、代謝性疾患が少ない

 肥満者において、主観的歩行速度が代謝性疾患のリスクと関連のあることを示唆するデータが報告された。同志社大学大学院スポーツ健康科学研究科の山本結子氏、石井好二郎氏らが行った横断的解析の結果であり、詳細は「Scientific Reports」に11月15日掲載された。  歩行速度は、体温、脈拍、呼吸、血圧、酸素飽和度に続く“第6のバイタルサイン”と呼ばれ、死亡リスクと関連のあることが知られている。しかし、歩行速度を客観的に把握するにはスペースと時間が必要とされる。よって健診などでは、「あなたの歩く速度は同世代の同性と比べて速い方ですか?」という質問の答えを主観的歩行速度として評価することが多い。この主観的歩行速度も代謝性疾患リスクと関連のあることが報告されているが、疾患ハイリスク集団である肥満者での知見は限られている。これらを背景として山本氏らは健診受診者データを用いて、肥満者の主観的歩行速度が代謝性疾患の罹患状況と関連しているかを検討した。

鳥インフルエンザA(H5N1)、ヒト感染例の特徴/NEJM

 米国疾病予防管理センター(CDC)のShikha Garg氏らは、米国で2024年3月~10月に確認された高病原性鳥インフルエンザA(H5N1)のヒト感染症例46例の特徴について報告した。1例を除き、感染動物への曝露により短期間の軽度の症状を呈し、ほとんどの患者は迅速な抗ウイルス治療を受け、ヒトからヒトへのA(H5N1)ウイルスの伝播は認められなかったという。NEJM誌オンライン版2024年12月31日号掲載の報告。  米国の州および地域の公衆衛生当局は、A(H5N1)ウイルスの感染疑いまたは感染が確認された動物(家禽、乳牛)に、職業上曝露した人々を曝露後10日間モニタリングし、症状のある人から検体を採取してCDCのヒトインフルエンザリアルタイムRT-PCR診断パネルインフルエンザA(H5)亜型アッセイを用いてA(H5N1)ウイルスが検出された人を特定した。感染が確認された患者に対し、標準化された新型インフルエンザ症例報告書を用いて調査が行われた。

CKDを有する高血圧患者にも厳格降圧は有益?

 SPRINT試験で認められた厳格降圧(収縮期血圧目標:120mmHg未満)および標準降圧(同:140mmHg未満)のリスク・ベネフィットが、慢性腎臓病(CKD)を有するSPRINT試験適格の高血圧患者にも適用できるかどうかを調査した結果、SPRINT試験と同様に厳格降圧による予後改善効果は認められたものの、重篤な有害事象も多かったことを、米国・スタンフォード大学のManjula Kurella Tamura氏らが明らかにした。JAMA Network Open誌2025年1月7日号掲載の報告。  SPRINT試験において、糖尿病または脳卒中の既往がなく、心血管イベントリスクが高い高血圧患者では、厳格降圧のほうが標準降圧よりも死亡や心血管イベントのリスクが低減した。その一方で、急性腎障害などの特定の有害事象が増加したことや、進行したCKD患者では厳格降圧による心血管系へのメリットが減弱する可能性があることも示唆されている。そこで研究グループは、SPRINT試験の結果が、実臨床におけるCKDを有する高血圧患者にも適用可能かどうかを評価するために比較有効性試験を実施した。