抗アレルギー点鼻薬がコロナ感染リスクを低減

提供元:ケアネット

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公開日:2025/09/16

 

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の曝露前予防には、ワクチン接種以外の医薬品の選択肢は限られている。今回、抗アレルギー薬であるヒスタミン受容体拮抗薬アゼラスチンの点鼻スプレーは、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染の発生率の有意な減少と関連し、SARS-CoV-2以外の呼吸器病原体の総感染リスク低減とも関連していたことを、ドイツ・ザールランド大学のThorsten Lehr氏らが明らかにした。JAMA Internal Medicine誌オンライン版2025年9月2日号掲載の報告。
※抗アレルギー点鼻薬としてのアゼラスチンは海外では一般用医薬品として発売されているが、わが国では未発売。

 ワクチン接種と集団免疫の確立により、COVID-19の重症度は大幅に軽減された。しかし、引き続き公衆衛生上の大きな負担であり、とくに高リスク集団に対する効果的な曝露前予防の方法が求められている。そこで研究グループは、SARS-CoV-2およびその他の呼吸器病原体に対する曝露前予防としてのアゼラスチン0.1%点鼻スプレーの有効性を評価するため、第II相二重盲検プラセボ対照試験を実施した。

 対象は、急性感染症の兆候がなく、SARS-CoV-2迅速抗原検査が陰性の18~65歳の健康なボランティア450人で、2023年3月~2024年7月に登録された。アゼラスチン点鼻スプレー群またはプラセボスプレー群に1:1の割合で無作為に割り付けられ、1日3回、56日間、鼻孔ごとに投与した。感染の高リスク状況においては1日5回への増量投与を任意に選択できた。

 参加者は週2回、研究スタッフによるSARS-CoV-2迅速抗原検査を受け、陽性の場合はPCR検査で確認された。症状があるにもかかわらず迅速抗原検査が陰性の場合には、SARS-CoV-2を含む呼吸器病原体に対してマルチプレックスPCR検査を実施した。主要評価項目は、試験開始から56日までにPCR検査で確認されたSARS-CoV-2感染の発生率であり、両群の比較には2群間の比率の差を検定するz検定を用いた。

 主な結果は以下のとおり。

・450人のうち227人がアゼラスチン群、223人がプラセボ群に無作為に割り付けられた。平均年齢は33.5歳、女性66.4%、白人92.7%、アフリカ系0.9%、アジア系4.9%、その他の民族が1.6%であった。
・主要評価項目であるSARS-CoV-2感染の発生率は、アゼラスチン群はプラセボ群と比較して有意に低かった。
 -アゼラスチン群2.2%(5/227例)vs.プラセボ群6.7%(15/223例)
 -リスク差:-4.5%ポイント、95%信頼区間(CI):-8.3~-0.7、p=0.02
 -オッズ比:0.31、95%CI:0.11~0.87
・アゼラスチン群では、症候性SARS-CoV-2感染の発生が少なく(1.8%vs.6.3%)、感染者におけるSARS-CoV-2感染までの期間が長く(31.2日vs.19.5日)、迅速抗原検査の陽性期間が短く(3.4日vs.5.1日)、SARS-CoV-2以外の呼吸器病原体を含む総感染者数が少なかった(21人vs.49人)。
・PCR検査で確認されたライノウイルス感染症の発生率は、アゼラスチン群のほうがプラセボ群よりも低かった(1.8%vs.6.3%)。
・有害事象の発現率は両群で同程度であったが、薬剤との関連が疑われる有害事象(主に苦味、鼻出血、倦怠感)はアゼラスチン群で多く報告された。

 研究グループは、「本試験はサンプルサイズが小さく、主に健康なワクチン接種済みの集団を対象としていたため、これらの知見を他の状況に一般化できるかどうかは限定的」としたうえで、「これらの結果は、アゼラスチン点鼻スプレーがSARS-CoV-2による呼吸器感染症の発生率を低下させる可能性を示唆している。アゼラスチン点鼻スプレーは、確立された安全性プロファイル、入手しやすさ、使いやすさから、とくに大規模な集会や旅行といった感染リスクの高い状況における曝露前予防としての可能性がある」とまとめた。

(ケアネット 森)