主要5クラスの降圧薬、単剤・併用の降圧効果を定量化/Lancet

提供元:ケアネット

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公開日:2025/09/15

 

 オーストラリア・University of New South WalesのNelson Wang氏らは、主要5クラスの降圧薬の降圧効果およびそれらの組み合わせによる降圧効果の定量化を目的に、無作為化二重盲検プラセボ対照試験のシステマティックレビューとメタ解析を行った。降圧薬のあらゆる組み合わせについて、期待される降圧効果の強固な推定値を提示し、その降圧効果の程度を低強度・中強度・高強度に分類可能であることを示した。著者は、「得られた知見は、世界中の高血圧治療を受ける人々の、不良な血圧コントロールを改善するための処方決定に役立つ情報となるだろう」と述べている。Lancet誌2025年8月30日号掲載の報告。

診察室SBPの低下を定量化、各療法の降圧効果の強度を低・中・高に分類

 研究グループは、成人参加者がアンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬、アンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)、β遮断薬、Ca拮抗薬、利尿薬のいずれかまたは組み合わせの投与を受けた無作為化二重盲検プラセボ対照試験を対象に、システマティックレビューとメタ解析を行った。適格基準は、追跡期間は4~26週、降圧薬治療(投与量と種類)が血圧のフォローアップ前4週間以上にわたり固定していること、治療群間の収縮期血圧(SBP)の平均群間差を算出するために診察室血圧が利用できることとした。クロスオーバー期間のウォッシュアウト期間が2週間未満のクロスオーバー試験は除外した。

 データベースの公開~2022年12月31日に発表された適格試験を、Cochrane Central Register of Controlled Trials、MEDLINE、Epistemonikosを検索して特定した。さらに検索の更新を行い、2023年1月1日~2025年2月28日に発表された試験を含めた。

 主要アウトカムは、プラセボと比較した実薬治療の診察室SBPの低下(ベースラインから最長追跡時点[最短4週]までの平均SBP変化量の差)とした。

 降圧効果は、ベースライン血圧(包含試験全体の平均ベースライン血圧154/100mmHg)により標準化し、固定効果メタ解析を用いて平均差と95%信頼区間(CI)を推算した。また、単剤・併用それぞれの薬物療法を、SBPのベースライン値154mmHgからの低下の程度で、低強度(<10mmHg低下)、中強度(10~19mmHg低下)、高強度(≧20mmHg低下)に分類した。あらゆる降圧薬の併用療法の有効性を計算するモデルを開発し、2剤併用または3剤併用の外部試験で検証した。

標準用量単剤療法、SBP低下8.7mmHg、79%が低強度

 解析には、484試験の10万4,176例が含まれた。平均年齢は54歳(SD 8)、男性5万7,422例(55%)、女性4万6,754例(45%)であり、平均追跡期間は8.6週(SD 5.2)であった。

 平均して、標準用量での単剤療法によるSBP低下は8.7mmHg(95%CI:8.2~9.2)であった。クラス別では、ACE阻害薬6.8mmHg、ARB 8.5mmHg、β遮断薬8.9mmHg、Ca拮抗薬9.5mmHg、利尿薬10.8mmHg。複数のメタ解析で薬剤クラスによってかなりの異質性が認められ(I2>50%)、同一クラスでも薬剤間の有効性は異なることが示唆された。

 また、単剤療法では用量倍増で、SBPは追加で1.5mmHg(1.2~1.7)低下した。用量反応性はβ遮断薬が最も小さく0.5mmHg、Ca拮抗薬が最も大きく2.6mmHgだった。

 さらに、単剤療法ではベースラインSBPが10mmHg低下するごとに、降圧効果は1.3mmHg(95%CI:1.0~1.5)低下したが、薬剤クラス間で差がみられた。

 降圧の程度は、標準用量での単剤療法57種のうち45種(79%)が低強度に分類された。

標準用量2剤併用療法、SBP低下14.9mmHg、58%が中強度、11%が高強度

 平均して、標準用量での2剤併用療法によるSBP低下は14.9mmHg(95%CI:13.1~16.8)であった。併用する両剤の用量倍増で、SBPは追加で2.5mmHg(1.4~3.7)低下した。

 降圧の程度は、2剤併用療法の異なる薬剤・用量の組み合わせ189種のうち、110種(58%)が中強度に分類され、21種(11%)が高強度に分類された。

 あらゆる併用療法の有効性モデルを外部試験で検証した結果、SBPの予測値と測定値の間に高い相関関係があることが示された(r=0.76、p<0.0001)。

(ケアネット)