冠動脈疾患(CAD)の2次予防において、アスピリン単剤療法と比較してクロピドグレル単剤療法は、大出血のリスク増加を伴うことなく、主要有害心・脳血管イベント(MACCE)の発生低下をもたらすことが、スイス・University of Italian SwitzerlandのMarco Valgimigli氏らによるシステマティックレビューとメタ解析で示された。CAD既往患者には、無期限のアスピリン単剤療法が推奨されているが、本検討の結果を受けて著者は、「CAD患者における2次予防は、アスピリンよりクロピドグレルを優先して使用することが支持される」とまとめている。Lancet誌オンライン版2025年8月31日号掲載の報告。
CAD2次予防としてのクロピドグレルvs.アスピリン単剤療法を比較した無作為化試験をメタ解析
研究グループは、PubMed、Scopus、Web of Science、Embaseを用いて、データベース公開から2025年4月12日までに発表された、CADと確認された患者(かつ抗血小板薬2剤併用療法を中止、または開始していない患者)を対象に、クロピドグレル単剤療法とアスピリン単剤療法を比較した無作為化試験を系統的に検索し、無作為化後に導入期として抗血小板薬2剤併用療法を行った試験を組み入れ、個別の患者データのメタ解析を行った。
主要解析では、試験間のベースラインハザード差を調整するためのランダム切片と、治療効果の差を調整するためのランダムスロープを含む、セミパラメトリック共有対数正規フレイルティモデル(1段階解析)を用いた。
有効性の主要アウトカムは、心血管死、心筋梗塞または脳卒中の複合(MACCE)。安全性の主要アウトカムは大出血(BARC出血基準タイプ3または5、あるいは試験固有の定義)であった。
MACCEリスク、クロピドグレル単剤療法がアスピリン単剤療法より有意に低い
検索で特定された1万1,754報のスクリーニングに基づき54件の研究が精査され、このうち適格と認められた7件の無作為化試験(ASCET、CADET、CAPRIE、HOST-EXAM、STOPDAPT-2、STOPDAPT-3、SMART-CHOICE 3)が解析に組み込まれた。
解析対象は計2万8,982例(クロピドグレル単剤療法群1万4,507例、アスピリン単剤療法群1万4,475例)で、追跡期間中央値は2.3年(四分位範囲:1.1~4.0)であった。
5.5年時点で、MACCEの発現頻度はクロピドグレル群(929件[2.61/100患者年])がアスピリン群(1,062件[2.99])より低かった(ハザード比[HR]:0.86、95%信頼区間[CI]:0.77~0.96、p=0.0082)。
死亡および大出血の発現頻度は、クロピドグレル群(256件[0.71/100患者年])とアスピリン群(279件[0.77])で差はなかった(HR:0.94、95%CI:0.74~1.21、p=0.64)。
(医学ライター 吉尾 幸恵)