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年を取っても「新庄監督のように真っ白な歯にしたい!」、口元は社会交流の出発点【外来で役立つ!認知症Topics】第37回

歯科領域と認知障害の密接な関係筆者は東京科学大学(旧:東京医科歯科大学)の同窓会館内で勤務しているので、歯科関係者との連携も少なくない。それだけに、軽度認知障害(MCI)の診察をしている他の先生方と比べて、口腔領域の話題に触れることが多いほうだろう。認知障害に関わる歯科領域の課題としては、咀嚼や嚥下障害、誤嚥性肺炎、また基本となる「口からの食物摂取」といったものがすぐに思い浮かぶ。ところが実際には、それら以上に「自分の口元の美醜や口の臭いなどが人からどう見られるか」を密かに悩む人が少なくないようだ。当然かもしれないが、これは難聴者が他者との交流を遠慮して積極的になれないのと似た傾向を生む。「口腔ケア」の真意と認知症予防への期待さて本稿のテーマである「口腔ケア」だが、私自身、以前はこの言葉を漠然と使っており、正しく理解してこなかった。改めて調べてみると、口腔ケアとは、単に歯磨きなどで口腔内の清潔を保つだけでなく、口腔機能の維持やその健康度向上のためのリハビリまでを含む幅広い内容を指す。歯や歯茎、舌、口腔粘膜、義歯を含む口の中の清掃、口腔内や口周りのマッサージ、咀嚼や嚥下のトレーニングまでが含まれる。こうした口腔ケアは「器質的ケア」と「機能的ケア」の2種類に分類される。前者は歯周病や誤嚥性肺炎の予防のために口の中を清潔に保つための口腔ケアを、後者は口腔機能つまり食べる、話す、表情をつくるなど口の働きの維持、回復を目指すケアを指す。口腔ケアの一般的な効果と目的は次のようにまとめられる。1.虫歯や歯周病など口腔内トラブルの減少2.口腔中の細菌が原因となる誤嚥性肺炎や感染症などの予防3.味覚改善による食欲増進4.発音改善による円滑なコミュニケーションの獲得5.認知症予防5つ目の「認知症予防」については、従来、口の開け閉めや咀嚼することが、脳(とくに海馬)に刺激を与えて脳の活性化につながるといわれてきた。それに加え、最近では「歯周病菌が脳内の炎症を惹起することで、アルツハイマー病を発生・悪化させるのではないか」とする観点からも注目されている。社会交流を妨げる「口元劣等感」の正体一方で、認知症予防における「社会交流」の重要性は確立している。冒頭で触れたMCIの領域において、他者とのコミュニケーションへの積極性という観点からの口腔ケアは、これまではさほど注目されてはこなかった。しかし、社会交流を妨げるのが、この口周囲の問題から生じる「会話しない」「しゃべらない」である。経験上、そこには2つの要因がある。1つは、口元の外見に自信がないことである。ある程度お年を召しても、いや、お年を召したからこそ、口元の美しさを気にする人は結構多い。人と会話するとき、「相手に口元を見られて、歯並びが悪いことがわかってしまうので、口をしっかり開けてしゃべれない」「人前でマスクを外せない」と言う人もいる。こうした口元劣等感は歯並びだけではなく、残歯の数、義歯の状態、歯の色なども関係する。そしてもう1つは口臭である。もっとも、その多くは主観にすぎず、実際には問題ないことも少なくない。しかしいずれにせよ、こうした悩みは他者との会話を減らし、社会交流を通した脳の活性化や「脳トレ」が不十分になりやすい。また、大きな声で滑舌良く喋ったり歌ったりすることができにくくなれば、発声や咀嚼・嚥下、さらには呼吸機能面にも悪影響を及ぼしかねない。若者だけではない「白い歯」願望こうした口元への劣等感の中で、比較的対応が容易と思われるのが「歯の色」である。筆者はこれまで、歯のホワイトニングは10代・20代の若者が主体だと思っていた。ところが実際には、中年期以降の利用者が多いということを最近知った。ホワイトニングの希望に関して尋ねてみると、あっけにとられる返事がよく返ってくる。「テレビで見る歌手や、プロ野球日本ハム新庄 剛志監督のように真っ白にしたい」と言うのである。筆者が「あまりに白いのは不自然では。年齢相応の白さがあると思うのだが」などと伝えても、「見栄えを良くするには、あれくらい真っ白でないと」と述べる人も少なくない。実際、ホワイトニングの素材にはさまざまな白さの度合いが選べ、歯科医院ばかりでなく自宅で行えるものも普及している。自覚しにくい口臭への対策また、口臭は自己識別が難しいだけに、問題ないのに気にする人が多い反面、強い臭いに自覚がない人も多い。最近では「口臭チェッカー」といって、1万円以内程度で購入できる口臭を客観評価する機器も出回っている。口臭の大部分は口腔内に原因があり、その多くは舌苔と歯周病だが、とくに前者の関わりがより大きい。原因物質では硫化水素とメチルメルカプタンが約90%を占める。これらは口腔内の嫌気性菌が、唾液・血液・剥離上皮細胞・食物残渣中の含硫アミノ酸を分解・腐敗させて産生される揮発性硫黄化合物である。歯周病には、歯磨きならぬ「歯茎磨き」が何よりだそうだ。筆者の後輩の歯科医は、1日6回の歯茎磨きをやれば、1ヵ月以内に効果てきめんと教えてくれた。舌苔に対しては、専用の舌ブラシやスポンジブラシなどを使って、舌表面を清潔にすることである。認知障害の有無にかかわらず、口元コンプレックスが、社会交流、つまり他者とのコミュニケーションに及ぼす影響は少なくないようだ。それだけに、MCIの方々の診察において、適切なアドバイスや歯科医への紹介は欠かせない。

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認知症患者への抗精神病薬、各薬剤の最適な投与量は?

 アルツハイマー病を含む認知症の神経精神症状(NPS)に対する抗精神病薬は、広く使用されている一方で、有効性と安全性のバランスが依然として大きな臨床課題となっている。東京・iこころクリニック日本橋の寺尾 樹氏らは、認知症のNPSに対する各種抗精神病薬の用量依存的な有効性と忍容性を比較するため、用量反応モデルに基づくネットワークメタ解析を実施した。Acta Psychiatrica Scandinavica誌2026年2月号の報告。 CENTRAL、PubMed、CINAHL、ClinicalTrials.govより網羅的に検索し、認知症のNPSに対する抗精神病薬を評価したランダム化比較試験を特定した。アルツハイマー病を含む認知症患者を対象に、アリピプラゾール、ブレクスピプラゾール、リスペリドン、クエチアピン、オランザピンのさまざまな用量における有効性(NPS重症度の変化)および忍容性(有害事象による治療中止)を評価するため、用量反応モデルに基づくネットワークメタ解析を実施した。 主な結果は以下のとおり。・分析には、20研究、5,844例を含めた。・研究に含まれた抗精神病薬のほとんどが、有効性と忍容性の両方で、おおむね正の用量反応関係を示した。しかし、オランザピンは有効性に関してベル型曲線を示した。・アリピプラゾール10mg、ブレクスピプラゾール1~2.5mg、リスペリドン1~2mg、オランザピン2.5~5mgのみが、プラセボよりも有意に有効であった。・アリピプラゾール10mgまで、ブレクスピプラゾール3mgまで、リスペリドン1mgまで、オランザピン2.5mgまでおよび15mg、クエチアピン200mgまでであれば、プラセボと比較し忍容性が有意に低下することはなかった。・さらに、いくつかの抗精神病薬では、特定の用量間で有効性と忍容性に有意差が認められた。 著者らは「アリピプラゾール10mg、ブレクスピプラゾール1~2.5mg、リスペリドン1mg、オランザピン2.5mgは、いずれも有効性と忍容性が良好であり、好ましい治療選択肢となる可能性が示唆された。本モデルにはいくつかの不確実性要因が含まれているため、本知見は慎重に解釈する必要があり、臨床的意思決定を支援するための暫定的な枠組みとして捉えるべきである」としている。

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高脂肪乳製品は認知症から脳を守る可能性

 チーズは休日の集まりにしばしば登場する食品だが、実は脳の健康を守っているかもしれないと誰が想像しただろうか。ルンド大学(スウェーデン)栄養学准教授のEmily Sonestedt氏らの研究によると、高脂肪のチーズやクリームの摂取量が多いことは、認知症リスクの低下に関連している可能性のあることが明らかになったという。この研究結果は、「Neurology」に12月17日掲載された。 Sonestedt氏は、「何十年もの間、高脂肪食と低脂肪食のどちらが良いのかを巡る議論に基づき健康に関するアドバイスが行われてきたが、その過程で、チーズは摂取を制限すべき不健康な食品と見なされることもあった。われわれの研究では、一部の高脂肪乳製品が、実際には認知症リスクを低下させる可能性のあることが示された。これは、脂肪と脳の健康に関する長年の前提に疑問を投げかける研究結果だ」とニュースリリースの中で述べている。 この研究では、平均年齢58.1歳のスウェーデン人2万7,670人のデータを用いて、高脂肪チーズの摂取量が多い(1日50g以上)群と、少ない(1日15g未満)群の脳の健康状態を比較した。高脂肪チーズとは脂肪分が20%超のものを指し、チェダー、ブリー、ゴーダなどが該当する。一方、高脂肪クリームは通常、脂肪分が30~40%で、ホイップクリームやクロテッドクリームなどが該当する。研究参加者は、過去1週間の食事の記録を提出したほか、過去数年間に特定の食品をどの程度の頻度で食べていたかや、食品の調理方法についても報告した。 中央値25年間の追跡期間中に3,208人が認知症を発症した。解析の結果、高脂肪チーズの摂取量が多い群では少ない群に比べて、全ての認知症のリスクが13%、血管性認知症のリスクが29%、それぞれ低いことが示された。アルツハイマー型認知症に関しては、その遺伝的リスク因子(APOE ε4)を保有していない人においてのみ、高脂肪チーズの摂取量の多いことが13%のリスク低下と関連していた。さらに、1日20g以上の高脂肪クリームを摂取していた群では、全く摂取していなかった群と比較して認知症リスクが16%低いことが示された。一方、低脂肪のチーズまたはクリーム、牛乳(高脂肪および低脂肪)、バター、ヨーグルトやバターミルクなどの発酵乳製品(高脂肪および低脂肪)の摂取と認知症リスクとの間に関連は認められなかった。 ただし、この研究デザインでは高脂肪のチーズやクリームの摂取と認知症のリスク低下に因果関係があることは証明できず、関連が示されたに過ぎないことを研究チームは付け加えている。 Sonestedt氏は、「この結果は、脳の健康への影響という観点では、全ての乳製品が同じではないことを示唆している。高脂肪のチーズやクリームの摂取量が多いことは認知症リスクの低下と関連していたが、他の乳製品や低脂肪の代替品では同様の関連は認められなかった」と述べている。また、「今回の結果を確認するとともに、特定の高脂肪乳製品に実際に脳の保護効果があるのかを詳細に調べるため、さらなる研究が必要である」としている。 台北医学大学(台湾)のTian-Shin Yeh氏は付随論評の中で、本研究の重要な限界として、食事摂取が評価されたのは追跡開始時の1回のみであり、25年間の追跡期間における長期的な食習慣が反映されていない可能性があることを指摘している。同氏は、「今後、異なる食習慣を持つ多様な集団において、この結果の再現性を確認することが不可欠である。食事摂取の長期的な変化をより正確に捉えるためには、食事評価を繰り返し行う前向きコホート研究を実施する必要がある」と述べている。

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片頭痛患者のアルコール制限は必要か?

 アルコールは、世界中で広く消費されている飲料である。一方、片頭痛、緊張型頭痛(TTH)、そのほかの一次性頭痛を含む頭痛は、有病率が非常に高い。疫学研究においてアルコール摂取と頭痛の相関関係が示されているが、特定の病態生理学的メカニズムはいまだに解明されていない。ポーランド・ワルシャワ医科大学のAnna Zdunska氏らは、さまざまな頭痛の誘因となるアルコールの問題、頭痛を有する患者のアルコール摂取について報告した論文、アルコールと頭痛の病態生理学的および臨床的側面を扱った論文をレビューした。Nutrients誌2025年11月20日号の報告。 主な結果は以下のとおり。・本レビューにおいて、アルコールは片頭痛および非片頭痛性の頭痛のいずれにも影響を及ぼすと結論付けられた。・二次性頭痛に分類されるアルコール誘発頭痛は、拍動性の両側性頭痛で、身体活動によって悪化し、アルコール摂取によって誘発される。・TTHはアルコール摂取によって誘発される可能性があり、TTH患者は片頭痛患者よりもアルコール関連の問題を抱えている。・群発頭痛(CH)はアルコールによって引き起こされることが多いが、驚くべきことに多くのCH患者は発作中であってもアルコールを摂取していた。・アルコールと片頭痛との関係は複雑であり、アルコール飲料に含まれる多くの成分が痛みの誘発に影響を及ぼし、片頭痛発作の原因となる可能性が示唆された。・赤ワインは片頭痛発作の誘因として最も頻繁に挙げられるアルコール飲料の1つであるが、少数のプロスペクティブ研究においては必ずしもこの知見が裏付けられているわけではない。・アルコールの安全な摂取量は存在しないため、できるだけアルコール摂取を避けることが推奨される。

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高用量リファンピシン、結核性髄膜炎の予後を改善するか/NEJM

 結核性髄膜炎患者に対する治療において、リファンピシンの高用量投与は標準用量投与と比較して6ヵ月以内の死亡率を改善せず、有害な作用をもたらす可能性も否定できないことが、ウガンダ・Makerere UniversityのDavid B. Meya氏らHARVEST Trial Teamが実施した「HARVEST試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌2025年12月18・25日号に掲載された。3ヵ国の無作為化プラセボ対照第III相試験 HARVEST試験は、インドネシア、南アフリカ、ウガンダの9ヵ所の病院で実施した二重盲検無作為化プラセボ対照第III相試験であり(英国医学研究審議会[MRC]などの助成を受けた)、2021年3月~2024年7月に成人(18歳以上)の結核性髄膜炎患者499例(ITT集団)を登録した。 被験者を、標準用量のイソニアジド+リファンピシン(10mg/kg/日)+エタンブトール+ピラジナミド(配合錠)に加え、追加リファンピシン錠(総投与量35mg/kg/日)を連日経口投与する群(高用量群、249例)、またはプラセボを投与する群(標準用量群、250例)のいずれかに無作為に割り付け、8週間投与した。両群とも、9~12ヵ月の治療期間の残りの期間は標準治療を受けた。 主要アウトカムは、無作為化から6ヵ月以内の死亡であった。 ITT集団(499例)の年齢中央値は37歳(四分位範囲[IQR]:28~45)で、222例(44.5%)が女性であった。428例(85.8%)はdefinite/probableの結核性髄膜炎だった。また、306例(61.3%)がMRC疾患重症度分類のグレード2で、304例(60.9%)はHIV感染者であった。ベースラインで348例(69.7%)が抗結核治療(中央値で3日間)を受け、473例(94.8%)がグルココルチコイドを処方されていた。サブグループ、副次アウトカムにも有益性はない 無作為化から6ヵ月以内の死亡(主要アウトカム)は、高用量群で109例(Kaplan-Meier推定値44.6%)、標準用量群で100例(40.7%)に発生し、両群間で有意差を認めなかった(ハザード比[HR]:1.17、95%信頼区間[CI]:0.89~1.54、p=0.25)。 また、6ヵ月以内に死亡した被験者の死亡までの期間中央値は、高用量群が13日(IQR:4~39)、標準用量群は24日(6~56)だった。 サブグループ解析でも、高用量群で有益な作用を示すエビデンスは認めなかった。高用量群で死亡率が高いサブグループとして、ベースラインで抗レトロウイルス療法(ART)を受けていたHIVの被験者(高用量群42%vs. 標準用量群25%、HR:2.01、95%CI:1.07~3.78)と、脳脊髄液(CSF)中の白血球数が<5/mm3の被験者(59%vs.36%、2.01、1.14~3.54)を認めた。 Kaplan-Meier法による12ヵ月時の死亡率(高用量群47.0%vs.標準用量群43.7%、HR:1.14、95%CI:0.88~1.49)や、24週時の修正Rankinスケールスコア(オッズ比:0.80、95%CI:0.58~1.11)にも両群間で有意差はみられなかった。また、他の副次アウトカム(Liverpool Outcomeスコア、グラスゴー・コーマ・スケールスコアなど)にも、両群間で有意差はなかった。新たな安全性シグナルの発現はない 新たな安全性シグナルは観察されなかった。重篤な有害事象(高用量群33.7%vs.標準用量群40.4%、p=0.12)の頻度は両群で同程度だった。グレード3~5の誤嚥性肺炎(6.4%vs.1.6%、p=0.006)が、高用量群で多く発生した。 グレード3/4の肝イベントのうち、総ビリルビン値の上昇(≧2.6×基準範囲上限[ULN]、9.6%vs.3.6%、p=0.007)が高用量群で高頻度にみられた。グレード3/4の薬剤性肝障害(8.0%vs.4.4%、p=0.09)は高用量群で頻度が高い傾向を認めたが、薬剤性肝障害による死亡は両群とも発生しなかった。 著者は、「高用量リファンピシンによる有益性が得られなかった説明として、次の2点が挙げられる。(1)高用量群では、肝代謝の誘導がより強かったため、グルココルチコイドの曝露量が低かった可能性がある、(2)高用量リファンピシンによるマイコバクテリアのより迅速な殺菌が、理論上は、より強い(有害な)免疫学的反応を引き起こした可能性がある」としている。

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抗コリン薬負荷と認知症リスクの評価に有用な予測ツールを検証

 抗コリン薬の使用は、認知機能低下などの副作用と関連している。英国・リバプール大学のInnocent Gerald Asiimwe氏らは、ベースライン時の抗コリン薬の投与量と認知症リスクとの関連性を調査し、抗コリン薬投与指数(ACMI)の外部検証を行った。Age and Ageing誌2025年10月30日号の報告。 2つの大規模前向きコホートであるUKバイオバンク(UKB、研究期間:2000〜15年、参加者:12万5,260例)および米国All of Us(AoU、研究期間:2000〜22年、参加者:9万2,047例)のデータを分析した。臨床的および遺伝的共変量を調整し、死亡を競合リスクとしてCox比例ハザードモデルを用いて、ACMIで算出されたベースライン時の年間抗コリン薬投与量と認知症リスクとの関連性を評価した。探索的遺伝子解析では、UKBにおけるアセチルコリンシグナル伝達経路遺伝子の候補遺伝子解析とAoUにおける多遺伝子ハザードスコアの開発を行った。 主な結果は以下のとおり。・ベースラインにおけるACMIリストに掲載されている88種類の薬剤のいずれかの使用は、認知症リスク上昇(UKBハザード比[HR]:1.15、95%信頼区間[CI]:1.09〜1.21、AoU:1.06、1.04〜1.09)および死亡率上昇(UKB:1.23、1.19〜1.27、AoU:1.16、1.13〜1.19)との関連が認められた。・APOEが認知症リスクに及ぼす遺伝的影響が示唆された(UKB[APOEε4 vs.ε3キャリア]HR:2.05、95%CI:1.86〜2.26、AoU:1.61、1.44〜1.80)。・有意な遺伝子と薬剤間の相互作用は認められなかった。 著者らは「2つの大規模コホートにおいて、ベースライン時のACMIスコアの高さが認知症および死亡リスクの上昇と関連していることから、ACMIの外部検証が成功したといえる。因果関係の推論はできないが、これらの知見は、リスク層別化のための予後予測ツールとして、またより安全な抗コリン薬使用に関する将来の研究に役立つ情報として、ACMIが潜在的に有用であることを裏付けている」としている。

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退職後でも認知機能が維持される人の特徴は?

 多くの先進国において、公的年金の受給年齢の引き上げが行われている。これは、退職を遅らせることで認知機能の老化に影響を与える可能性がある。しかし、退職が認知機能に及ぼす影響は個人や状況によって異なる可能性が高いと考えられる。慶應義塾大学の佐藤 豪竜氏らは、退職と認知機能の異質性について、その関連性を調査した。International Journal of Epidemiology誌2025年10月14日号の報告。 米国、英国、欧州で行われた3つの縦断研究(Health and Retirement Study、English Longitudinal Study on Ageing、Survey of Health, Ageing and Retirement in Europe)より得られたデータを統合し、分析した。本データセットは、2014〜19年に19ヵ国で実施された3つのwave調査を網羅している。本研究では、wave1では、就労していた1万2,811人を対象とし、各調査で共変量情報を収集した。wave2では、50〜80歳の参加者の退職状況を評価した。wave3では、単語想起テストを用いて認知機能を測定した。本分析では、退職の判断基準として公的年金受給年齢を用いた操作変数因果フォレスト推定法を採用した。 主な結果は以下のとおり。・退職傾向スコアが0.1〜0.9であった7,432人のうち、2,165人(29.1%)がwave2で退職していた。・分析の結果、退職者は労働者よりも平均1.348語多く記憶していたことが明らかになった。・退職と認知機能の関連は異質性を示した。・より大きな認知的利益が観察された人の特徴は、女性、社会経済的地位の高い人、退職前の健康状態が良好な人、退職前に身体活動を行っていた人であった。 著者らは「観察された異質性の関連は、政策立案者が年金制度に早期退職の選択肢を組み込み、個人がそれぞれの状況に基づいて退職を決定できるようにすることを検討すべきであることを示唆している」とまとめている。

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ヘルペス陽性早期アルツハイマー病、バラシクロビルは有効か?/JAMA

 神経科学的、疫学的、および電子的健康記録を用いた研究において、単純ヘルペスウイルス(HSV)がアルツハイマー病(AD)の病態形成に関与する可能性が示唆されている。米国・New York State Psychiatric InstituteのD. P. Devanand氏らは、早期AD症状を有するHSV(HSV-1またはHSV-2)陽性の患者を対象に、HSVに有効な抗ウイルス薬であるバラシクロビルの臨床的ベネフィットを検討するプラセボ対照無作為化試験「VALAD試験」を実施。主要アウトカムの認知機能の悪化に関して、バラシクロビルの有効性は示されなかったことを報告した。著者は、「早期AD症状を有するHSV陽性患者に対する治療に、バラシクロビルは推奨されないことが示唆された」とまとめている。JAMA誌オンライン版2025年12月17日号掲載の報告。対プラセボで78週の認知機能の変化を評価 VALAD試験は、臨床的にADが疑われると診断またはADバイオマーカーが陽性で軽度認知障害(MCI)と診断され、HSV-1またはHSV-2の血清抗体検査(IgGまたはIgM)が陽性、ミニメンタルステート検査(MMSE)スコアが18~28の成人を対象とした。 試験は、米国の記憶障害に関する外来専門クリニック3施設で実施された。被験者募集は2018年1月~2022年5月に行われ、適格被験者はバラシクロビル4g/日投与群または適合プラセボ群に無作為に割り付けられ追跡評価を受けた。最終フォローアップは2024年9月であった。 主要アウトカムは、11項目のAlzheimer's Disease Assessment Scale Cognitive(ADAS-Cognitive)サブスケールスコア(範囲:0~70、高スコアほど障害が重いことを示す)について、78週時点における最小二乗平均(LSM)変化量であった。 副次アウトカムは、(1)Alzheimer's Disease Cooperative Study-Activities of Daily Living(ADCS-ADL)スケールスコアのLSM変化量、(2)6つの脳領域(内側眼窩前頭皮質、前帯状皮質、頭頂葉、後帯状皮質、側頭葉、楔前部)に関する、18F-florbetapirを用いたアミロイドPETの標準化集積比(SUVR、高スコアほどアミロイドが高レベルであることを示す)のLSM変化量、(3)4つの脳領域(扁桃体、海馬、嗅内野、海馬傍回)に関する、18F-MK-6240を用いたタウPETの側頭葉内側部SUVR(高スコアほどタウが高レベルであることを示す)のLSM変化量であった。 有害事象の発現頻度を安全性アウトカムとした。バラシクロビル群のほうが認知機能の悪化が大きい 120例が無作為化され(バラシクロビル群60例、プラセボ群60例)、うち93例(77.5%、バラシクロビル群45例、プラセボ群48例)が試験を完遂した。被験者120例は、平均年齢71.4歳(SD 8.6)、女性が55%、ADと診断された者が75%、MCIと診断された者が25%であった。人種別では白人が両群とも76.7%を占めている。 78週時点で、11項目のADAS-CognitiveサブスケールスコアのLSM変化量(主要アウトカム)は、バラシクロビル群10.86(95%信頼区間[CI]:8.80~12.91)vs.プラセボ群6.92(4.88~8.97)であり、バラシクロビル群がプラセボ群よりも認知機能の悪化が大きいことが示唆された(群間差:3.93、95%CI:1.03~6.83、p=0.01)。 副次アウトカムは、いずれも78週時点で、(1)ADCS-ADLスケールスコアのLSM変化量はバラシクロビル群-13.78(95%CI:-17.00~-10.56)vs.プラセボ群-10.16(-13.37~-6.96)であり(群間差:-3.62、95%CI:-8.16~0.93)、(2)18F-florbetapirアミロイドPET SUVRのLSM変化量は0.03(-0.04~0.10)vs.0.01(-0.06~0.08)であり(群間差:0.02、-0.08~0.12)、(3)18F-MK-6240タウPET側頭葉内側部SUVRのLSM変化量は0.07(-0.06~0.19)vs.-0.04(-0.15~0.07)であった(群間差:0.11、-0.06~0.28)。 最もよくみられた有害事象は、クレアチニン値上昇(バラシクロビル群5例[8.3%]vs.プラセボ群2例[3.3%])、COVID-19感染(3例[5.0%]vs.2例[3.3%])であった。

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小児にも使用しやすい脳腱黄色腫症治療薬「フジケノン粒状錠125」【最新!DI情報】第54回

小児にも使用しやすい脳腱黄色腫症治療薬「フジケノン粒状錠125」今回は、脳腱黄色腫症治療薬「ケノデオキシコール酸(商品名:フジケノン粒状錠125、製造販売元:藤本製薬)」を紹介します。脳腱黄色腫症は小児期からの継続した治療が必要ですが、わが国ではこれまで本疾患を効能・効果とするケノデオキシコール酸(CDCA)製剤がなく、開発が望まれていました。<効能・効果>脳腱黄色腫症の適応で、2025年9月19日に製造販売承認を取得し、11月21日より販売されています。<用法・用量>成人:通常、ケノデオキシコール酸として1日量250mgより投与開始し、250mgずつ増量した後、維持量として1日量750mgを1日3回に分けて連日経口投与します。患者の状態により適宜増減しますが、1日量として1,000mg、1回当たりの投与量として375mgを超えないこととします。小児:通常、ケノデオキシコール酸として1日量5mg/kgより投与開始し、5mg/kgずつ増量した後、維持量として1日量15mg/kgを1日3回に分けて連日経口投与します。患者の状態により適宜増減しますが、1日量として15mg/kgおよび750mg、1回当たりの投与量として250mgを超えないこととします。<安全性>副作用として、肝機能異常、鼓腸(いずれも5%以上)、ALT上昇、AST上昇、ALP上昇、ビリルビン上昇、下痢、軟便、悪心、嘔吐、食欲不振、腹痛、胸やけ、腹部不快感、腹部膨満感、発疹、そう痒、倦怠感、めまい、顔のむくみ(いずれも頻度不明)があります。<患者さんへの指導例>1.この薬は、脳腱黄色腫症の治療に用いられます。血中コレスタノールを低下させることで症状を改善します。2.かまずに服用してください。3.制酸薬などと併用すると作用が弱まることがあるので、他の薬を使用するときは薬剤師に相談してください。<ここがポイント!>脳腱黄色腫症(Cerebrotendinous xanthomatosis:CTX)は、ステロール27位水酸化酵素をコードするCYP27A1遺伝子の変異により、その酵素活性が著しく低下する常染色体劣性遺伝疾患です。27位水酸化酵素は、肝臓における一次胆汁酸の合成に必須の酵素であり、この酵素が欠損するとケノデオキシコール酸(CDCA)の合成が著減し、血清中のコレスタノールが上昇します。また、CDCAは胆汁酸合成経路の律速酵素であるコレステロール7α-水酸化酵素の発現を抑制する役割も担っています。しかし、CDCAが減少すると、このネガティブフィードバックが抑えられ、血清中のコレスタノールがさらに上昇します。上昇したコレスタノールは、脳、脊髄、腱、水晶体、血管など全身の臓器に沈着し、進行性の神経障害(知能低下・錐体路症状・小脳症状など)、皮膚・腱黄色腫、若年性白内障、早発性心血管疾患など、さまざまな臓器障害を引き起こします。治療は、胆汁酸プールの補充を目的としたCDCA製剤の投与が中心となっており、コレステロール7α-水酸化酵素へのネガティブフィードバックを正常化することで、コレスタノールの産生・蓄積を抑制します。しかし、国内で承認されているCDCA製剤の適応は「外殻石灰化を認めないコレステロール系胆石の溶解」に限られており、CTXを効能・効果とするCDCA 製剤は承認されていませんでした。そのため、日本神経治療学会は、医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議に対し、CTXを効能・効果とするCDCA製剤の開発要望書を提出していました。本剤は、一次胆汁酸であるケノデオキシコール酸を有効成分とするCTX治療剤であり、成人および小児に使用できます。CTXは遺伝性疾患であり、小児期から継続した治療が必要と考えられるため、小児でも服用可能な用量調節が容易な粒状錠となっています。また、苦みをマスキングするため、フィルムコーティング錠を採用しています。日本人CTX患者を対象とした国内第III相試験(FPF1011-03-01試験:非盲検非対照試験)において、主要評価項目である血清コレスタノール濃度(平均値±標準偏差)の推移は、診断時22.25±12.66μg/mL、投与52週時は6.73±5.67μg/mLでした。※2026年1月27日に一部内容の修正を行いました。

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アルツハイマー病/MCI患者の認知機能保護にω3脂肪酸は有効か?〜メタ解析

 アルツハイマー病や軽度認知障害(MCI)患者において、ω3多価不飽和脂肪酸(n-3 PUFA)が脳活動に有益な効果をもたらすことが報告されている。しかし、認知機能改善に対するn-3 PUFAによる食事介入の有効性については、一貫した知見が得られていない。中国・鄭州大学のPipasha Khatun氏らは、n-3 PUFAによる食事介入がアルツハイマー病またはMCIと診断された患者の認知機能に及ぼす影響を明らかにするため、システマティックレビューおよびメタ解析を実施した。Nutrition Reviews誌オンライン版2025年10月1日号の報告。 n-3 PUFA摂取量と認知機能関連アウトカムとの関連性を検証したランダム化比較試験をPubMed、PubMed Central Library、Cochrane Libraryよりシステマティックに検索した。9研究の包括的評価を行い、そのうち7研究をメタ解析に含めた。著者、出版年、研究分野、研究種類、病態(アルツハイマー病またはMCI)などの重要な詳細情報をデータ抽出手順に組み込んだ。対象研究の評価には、コクランのバイアスリスク評価尺度、ランダム効果モデル、標準化平均差(SMD)、95%信頼区間(CI)を用いた。 主な結果は以下のとおり。・n-3 PUFA摂取は、全検査IQ(FSIQ)(SMD:-0.82、95%CI:-1.57〜-0.08、p=0.000)、情報処理(SMD:-2.90、95%CI:-5.25〜-0.56、p=0.000)、認知機能における数字記憶/ワーキングメモリ/注意力(SMD:-1.89、95%CI:-3.27〜-0.51、p=0.000)の改善に有効であることが示唆された。・一方、n-3 PUFA摂取は、画像補完(SMD:-0.07、95%CI:-0.50〜0.35、p=0.000)、図の配置(SMD:-0.08、95%CI:-0.32〜0.16、p=0.075)、ブロックデザイン(SMD:-0.15、95%CI:-0.37〜0.03、p=0.123)、算数的側面(SMD:-0.33、95%CI:-0.61〜0.04、p=0.007)に対する有効性は認められなかった。 著者らは「n-3 PUFAは、MCI患者のFSIQ、情報処理、数字記憶/ワーキングメモリ/注意力などの認知機能改善に有意な影響を及ぼすことが示唆されたが、絵の完成や配置など一部の認知機能領域に対する有効性は認められなかった」とまとめている。

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若々しい脳を保つ秘訣は筋肉量の維持と脂肪のカット

 身体が健康的で筋肉量が多いと脳の健康状態が良好に維持されやすいことが、米セントルイス・ワシントン大学放射線学・神経学准教授のCyrus Raji氏らによる新たな研究で示された。Raji氏は、「筋肉量が多く内臓脂肪が少ない健康的な身体では、脳もより健康的で若々しい傾向にある」と話している。この研究結果は、北米放射線学会年次学術集会(RSNA 2025、11月30日~12月4日、米シカゴ)で発表された。 Raji氏は、「年齢を重ねると、筋肉量が減り内臓脂肪が増えることは広く知られているが、こうした健康指標が脳の老化そのものに関連していることが、今回の研究で示された。体内の筋肉量と脂肪量は、脳年齢に基づいた脳の健康状態を反映する重要な指標であることが明らかになった」と説明している。 Raji氏らは今回の研究で、1,164人の健康な成人(平均年齢55.17歳、52%女性)の全身のMRI画像を収集した。MRI画像は、脂肪は明るく、体液は暗く映るT1強調画像という手法を使って撮影された。次に、AIアルゴリズムを用いて各参加者の筋肉量や脂肪量(皮下脂肪と内臓脂肪)、および推定「脳年齢」を数値化し、それらの指標と脳年齢との関係を解析した。 その結果、内臓脂肪と筋肉の比率が高い人ほど脳年齢が高いことが明らかになった。一方、皮下脂肪は脳年齢とはほとんど関係していなかった。この結果についてRaji氏は、「筋肉量が多い参加者では脳が若々しい傾向にあった一方、筋肉量に対して内臓脂肪の量が多い参加者では脳が老化している傾向にあった」と言う。また、同氏は「皮下脂肪は脳の老化には関連していなかった。つまり、筋肉量が多く、筋肉量に対する内臓脂肪量の比率が低いほど脳が若いということだ」と説明している。 Raji氏は、この研究は身体と脳の健康が密接に結び付いていることを示していると指摘し、「この研究は、体組成のバイオマーカーと脳の健康との関連について広く信じられていた仮説を実証し、今後のさまざまな代謝介入や治療の臨床試験に、これらのバイオマーカーを組み込む基盤を提供するものだ」と述べている。 またRaji氏は、「本研究から、筋肉量を維持しながら脂肪、特に内臓脂肪を減らすことが、脳の老化や脳の健康に最も良い影響を与えることが示唆された」と述べている。近年、GLP-1受容体作動薬の登場により、多くの人が余分な脂肪を減らすためにこれらの減量薬に頼るようになっている。しかし、Raji氏らによれば、GLP-1受容体作動薬は筋肉量を減らす可能性もあるという。この点を踏まえ同氏は、「今回の研究から得られた知見は、内臓脂肪のみを標的とし、筋肉量への影響を最小限に抑えたGLP-1受容体作動薬の開発に役立つ可能性がある」との見方を示している。 なお、学会発表された研究は、査読を受けて医学誌に掲載されるまでは一般に予備的なものと見なされる。

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抗CGRP抗体は中止したほうが良いのか? 中止後、片頭痛症状はどう変化する?

 抗カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)抗体による治療は、片頭痛の予防に有意な効果をもたらしたが、抗CGRP抗体治療中止による長期的な影響は依然としてよくわかっていない。ブラジル・Clinical Hospital of the Federal University of ParanaのLuana Miyahira Makita氏らは、抗CGRP抗体治療中止後の臨床アウトカムに及ぼす影響を評価するため、システマティックレビューおよびメタ解析を実施した。CNS Drugs誌オンライン版2025年9月30日号の報告。 2024年9月までに報告された研究をPubMed、Embase、Cochraneデータベースより検索した。対象研究は、抗CGRPモノクローナル抗体またはゲバントによる予防的治療を受けた反復性または慢性片頭痛患者における治療中止後の影響を報告したランダム化研究または観察研究とした。主要アウトカムは、ベースラインから中止後までの1ヵ月当たりの片頭痛日数の平均変化とした。副次的アウトカムは、急性頭痛薬の使用、積極的治療から治療中止までの片頭痛頻度の平均変化、50%以上の治療反応率とした。異質性は、二値アウトカムについては予測区間(PI)、連続データについてはI2を用いて評価した。ランダム効果モデルを用いて平均差(MD)とリスク比(RR)をプールし、フォローアップ期間、研究デザイン、慢性片頭痛患者に基づくサブグループ解析を行った。 主な結果は以下のとおり。・8研究(1,012例)をメタ解析に含めた。・ゲバントの治療中止後の影響を評価した研究は、見当たらなかった。・1ヵ月当たりの片頭痛日数は、投与中止後、ベースラインと比較して有意に減少した(MD:-3.78、95%信頼区間[CI]:-4.89〜-2.67、I2=57%、p<0.05)。・減少日数は、1ヵ月時点で5.70日、3ヵ月時点で3.62日であった。・慢性片頭痛患者では、投与中止後と投与前期間において、1ヵ月当たりの片頭痛日数が持続的に減少した(MD:-6.54、95%CI:-8.64〜-4.43、I2=68%、p<0.05)。・1ヵ月当たりの急性頭痛薬服用日数は、ベースラインと比較して減少した(MD:-1.74、95%CI:-2.84〜-0.64、I2=0%、p<0.05)。・治療中止3ヵ月後の1ヵ月当たりの片頭痛日数は、中止直前と比較して増加した(MD:4.43、95%CI:2.61〜6.25、I2=86%、p<0.05)。また、1ヵ月当たりの急性頭痛薬の使用日数は3.22日増加した。・50%以上の治療反応率は低下した(RR:0.42、95%CI:0.33〜0.53、PI:0.17〜1.03、p<0.05)。 著者らは「抗CGRP抗体の治療中止後、片頭痛の負担は悪化したが、治療前のレベルよりは低いままであった。抗CGRP抗体の疾患修飾作用と最適な治療中止戦略を明らかにするためにも、さらなる研究が求められる」としている。

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疼痛治療薬の副作用が心不全の誤診を招く?

 オピオイドに代わる鎮痛薬として使用されている薬剤のせいで、医師が心不全と誤診してしまう例が少なくないことが、新たな研究で示された。米カリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)医学部教授のMichael Steinman氏らによるこの研究の詳細は、「JAMA Network Open」に12月2日掲載された。 ガバペンチンやプレガバリンなどのガバペンチノイドと呼ばれる種類の薬剤は、神経痛の治療目的で処方されることが多い。しかし、これらの薬剤の副作用の一つに、下肢のむくみ(浮腫)の原因となる体液貯留がある。体液貯留は、心不全の症状としても広く知られている。そのため、この副作用が生じた患者の多くに、利尿薬のような本来は不要であるはずの薬剤が追加で処方され、その結果、腎障害やふらつき、転倒によるけがなどのリスク上昇につながっていることが、今回の研究から明らかになった。このように、ある薬の副作用が別の疾患に関わる症状と認識され、それに対してさらに薬が処方される現象は、処方カスケードと呼ばれる。 研究グループによると、オピオイド危機を背景に、ガバペンチノイドの処方はこの10年でほぼ倍増した。Steinman氏は、「ガバペンチノイドは非オピオイド系薬剤であり、比較的安全性が高いと考えられがちだ。しかし、ガバペンチノイドを使用している患者は、それがベストの治療法なのかどうかを評価するために、定期的に医師に相談し、非薬物療法を含めた、より適切な別の治療選択肢について検討すべきだ」とニュースリリースの中で述べている。 Steinman氏らは今回の研究で、ガバペンチノイドとループ利尿薬の処方カスケードを経験している可能性の高い66歳以上の退役軍人120人(平均年齢73.9歳)の医療記録を調べた。120人のうち、106人(88.3%)は、5種類以上の薬を長期にわたって使用していた。73人(60.8%)では、浮腫の原因が記録されていたが、心不全(39.2%)や静脈うっ血(13.3%)を原因とする例が多く、ガバペンチノイドを考慮した医師はわずか4人(3.3%)にとどまっていた。また、116人(96.7%)にループ利尿薬が処方されていたが、そのほとんどは、下肢浮腫(86.7%)、心不全(13.3%)、呼吸困難(12.5%)の治療を目的としていた。 ループ利尿薬による治療開始から60日以内に、28人(23.3%)の患者で、腎機能の低下や起立時のめまい、低ナトリウムや低カリウムなどの電解質異常、転倒などのループ利尿薬に関連した健康問題が37件発生した。入院あるいは救急外来での治療が必要となった患者も6人(5.0%)いた。 Steinman氏らによると、下肢に浮腫が現れてからガバペンチノイドの服用を中止するよう指示した医師は1人だけだったという。一方で、浮腫の原因となり得る命に関わる疾患を除外するため、患者の約5人に1人が画像検査を受けていたことも明らかになった。 論文の筆頭著者であるUCSF医学部のMatthew Growdon氏は、「ガバペンチノイドは必要以上に高用量が処方されたり、効果が期待できない状態に対して処方されたりしている可能性がある。そのようなケースでは、医師はこれらの薬を処方しないこと、あるいは用量を減らして処方カスケードやその他の副作用のリスクを軽減することを検討すべきだ」とニュースリリースの中で述べている。

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認知機能低下のサインは運転行動に現れる?

 運転行動の変化は認知機能低下の早期サインになる可能性があるようだ。車両に設置したGPS付きデータロガーで収集した、走行頻度、走行時間、急ブレーキなどの運転データは、早期認知機能低下のデジタルバイオマーカーになり得ることが、新たな研究で示された。米ワシントン大学医学部のGanesh Babulal氏らによるこの研究結果は、「Neurology」に11月26日掲載された。Babulal氏は、「われわれは、GPSデータ追跡デバイスを使うことで、年齢や認知テストの結果、アルツハイマー病に関連する遺伝的リスクの有無といった要因だけを見るよりも、認知機能に問題が生じた人をより正確に特定することができた」と話している。 Babulal氏は、「交通事故のリスクが高い高齢ドライバーを早期に特定することは、公衆衛生上の重要課題だが、リスクのあるドライバーを見極めることは、既存の方法では時間がかかり困難だ」と指摘する。研究グループによると、軽度認知障害(MCI)の高齢者では、運転行動に微妙な変化が生じることが知られているが、その経時的な変化を実測して評価した研究は多くないという。 今回、研究グループは、実際の縦断的な運転データによりMCIの高齢者と認知機能が正常(normal cognition;NC)な高齢者を識別できるかを検討し、さらにその識別精度を、年齢や性別、APOE ε4遺伝子保有などの従来のリスク因子による予測精度と比較した。対象は298人(平均年齢75.1歳、女性45.6%)の高齢者で、このうち56人はMCI、242人はNCだった。試験参加者には毎年、臨床認知症評価尺度による認知機能の評価と神経心理検査が実施され、また、APOE ε4遺伝子の保有状況についても調査された。運転データは、参加者の車両に設置されたGPS付きデータロガーにより、最長40カ月間にわたって取得された。具体的な測定内容は、運転の頻度、時間、距離、時間帯、スピード、急ブレーキ、空間移動性(エントロピー〔訪れる場所の予測の難しさ〕、最大移動距離、行動範囲)などであった。 研究開始時点では、MCI群とNC群の運転行動にほとんど差は見られなかった。しかし、時間が経つにつれ違いが現れ、MCI群では、月間運転回数と夜間運転の頻度が減少し、また訪れる場所の多様性が低下する傾向が認められた。また、このような運転行動データのみを使った場合、MCI群とNC群を82%の精度で識別できることが示された。運転データに人口統計学的特徴やAPOE ε4遺伝子情報、認知機能評価の結果を加えると、精度は87%に向上した。一方、運転行動データを使用せず、従来のリスク因子のみを使用した場合の精度は76%だった。 Babulal氏は、「日常的な運転行動を観察することは、認知機能や日常生活能力を評価する上で、負担が少なく、邪魔にもならない方法だ。これにより、事故やヒヤリハットが起きる前の段階でリスクのあるドライバーを早期に発見し、介入につなげられる可能性がある。もちろん、個人の自律性やプライバシー、インフォームド・コンセントを尊重し、倫理基準を満たすことも不可欠だ」と述べている。

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ミトコンドリア活性化技術で希少疾患に挑む、その機序や効果とは

 “細胞のエネルギー生産工場”とも呼ばれ、ほぼすべての細胞に存在する細胞小器官ミトコンドリア。これを用いた希少疾患の根本治療や加齢対策が、今、現実味を帯びている。先日開催された第7回ヘルスケアベンチャー大賞では、マイトジェニックの「ミトコンドリア活性化による抗加齢ソリューション『マイトルビン』事業」が将来性や抗加齢への観点を評価され、大賞を受賞した。同社が期待を集める創薬技術や将来ビジョンとは―。なぜ今、ミトコンドリア活性化が注目される? 同社は“ミトコンドリア研究の成果を世の中に還元する”を理念に掲げる学習院大学発のベンチャー企業である。同社が開発・特許出願を行った植物由来の低分子化合物「マイトルビン(Mitorubin)」を用いた“ミトコンドリア活性化”という新たな健康軸から、老化予防や加齢性疾患治療薬の創出を目標に掲げて活動を行っている。 ミトコンドリアは身体のエネルギー源をATPとして供給し、その副産物として活性酸素を発生させるが、ミトコンドリアの機能が低下すると、エネルギー産生の過程で電子の渋滞が起こり、過剰な活性酸素が発生して細胞やDNAを傷付けてしまう。その結果、パーキンソン病などの神経変性疾患、心疾患、フレイル、シミ・シワといった皮膚の外見変化などに影響を及ぼすため、いかにして「ミトコンドリアを活性化させるか」が焦点となっている。これまでにコエンザイムQ10(CoQ10)やニコチンアミドモノヌクレオチド(NMN)、5-アミノレブリン酸(5-ALA)などの成分によるミトコンドリアの活性化・増殖促進が産学で試みられているが、同社の開発するマイトルビンはそれらとは一線を画す。マイトルビンによるミトコンドリア活性化の機序 その理由は、ミトコンドリアを活性化させる作用機序が一つひとつ丁寧に解明されつつあるからである。遡ること2006年、ミトコンドリア機能を制御するミトコンドリア酵素Mitochondrial Ubiquitin Ligase(MITOL、マイトル)を柳 茂氏(学習院大学理学部生命科学科分子生化学 教授)らの研究グループが発見したことに端を発する1)。MITOLはミトコンドリアの分裂を進めるタンパク質「Drp1」を分解してその分裂を抑えるほか、小胞体との融合を助けるタンパク質「Mfn2」を活性化させる役割を担う1,2)。近年では、ミトコンドリアと小胞体が接触するミトコンドリア関連小胞体膜(Mitochondria-associated ER membrane、MAM)における酸化ストレスや細胞運命の制御機構にも注目が集まっており3,4)、その機能低下がアルツハイマー病やパーキンソン病といった神経変性疾患の病態、さらには心臓の老化に関与することなどから、ミトコンドリアにおける老化制御因子として多彩な研究が進められている5-7)。そして、マイトルビンは前述の柳氏らにより生薬成分ベルベリンから合成された一連の誘導体群の総称で、これがMITOLをはじめとしたミトコンドリアタンパク質を増強しつつ、ミトコンドリアの量そのものを増加させる。それにより、ミトコンドリアでのエネルギー産生が有意に高まることが培養細胞およびマウスモデルで確認された8)。 今回の受賞において、登壇した谷若氏はマイトルビンの有効性について、「筋肉由来の培養細胞に添加することで、エネルギー産生に適した細く長い高品質のミトコンドリアが増加し、ミトコンドリアの呼吸活性が上昇した。これらの実験を踏まえて高齢マウスに飲水投与を行ったところ、心筋ミトコンドリアの呼吸活性が強化され、心エコーなどで心機能の回復が認められた」とコメント。また、安全性については、「同条件下での長期投与による死亡リスクはなく、さらに高脂肪食負荷マウスにおいて、23%の寿命延長効果を確認した」と老齢マウスにおけるアンチエイジング効果が実証されたことを説明した8)。ミトコンドリア病や加齢性疾患の創薬実現に向けて これらの研究結果から、同社は指定難病であるミトコンドリア病患者のアンメットメディカルニーズに応えるべく治療薬開発でも前進している。「某大学医学部と共同研究を行い、MELASと呼ばれるミトコンドリア病の患者由来細胞にマイトルビンを添加した結果、ミトコンドリア機能の改善を認めた」とし、論文化についても言及した。さらに同社は、一般消費者向けにマイトルビン含有植物由来原料を使用したサプリメント「MitoRubin(R)」や入浴剤を販売するなどし、認知度の拡大や収益モデルを構築しながら、ミトコンドリア病治療薬の前臨床試験実施に向けた取り組みを行っている。 最後に同氏は「われわれの目標は希少疾患への創薬提供であり、それに続いて加齢性疾患への適応拡大を目指す。さまざまな領域の研究者・臨床医との連携を強化しつつ、マイトルビンを通じて、すべての世代にミトコンドリアの活性化と健康を届けたい」と締めくくった。ヘルスケアベンチャー大賞とは ヘルスケアベンチャー大賞とは、アンチエイジング領域においてさまざまなシーズをもとに新しい可能性を開き、社会課題の解決につなげていく試みとして、坪田 一男氏(日本抗加齢医学会イノベーション委員会委員長)らが2019年に立ち上げ、今年で7回目の開催を迎えた。■参考第7回ヘルスケアベンチャー大賞株式会社マイトジェニック1)Yonashiro R, et al. EMBO J. 2006;25:3618-3626.2)Sugiura A, et al. Mol Cell. 2013;51:20-34.3)Nakashima A, et al. Life Sci Alliance. 2019;2:e201800045-e201800045.4)Takeda K, et al. EMBO J. 2019;38:e100999.5)Shiiba I, et al. EMBO Rep, 2021;22:e49097.6)Takeda K, et al. Commun Biol. 2021;4:192.7)Tokuyama T, et al. iScience. 2022;25:104582.8)Sato M, et al. bioRxiv 2025. May 3. [Epub ahead of print]

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不眠症は認知機能低下および認知障害リスクと関連

 不眠症は、認知機能の低下および認知障害(cognitive impairment;CI)のリスクと関連があるとする研究結果が、「Neurology」10月7日号に掲載された。 米メイヨー・クリニックのDiego Z. Carvalho氏らは、高齢者における慢性不眠症と、縦断的な認知機能アウトカムおよび脳の健康指標との関連を評価した。対象は、認知機能に障害のない高齢者で、年1回の神経心理学的評価と、連続的な画像評価としてアミロイドPETによるアミロイド負荷量(センチロイド単位)およびMRIで測定した白質高信号(WMH、頭蓋内容積に対する割合)のデータが取得された。全般的認知機能モデルには2,750人、Cox回帰ハザードモデルには2,814人が組み入れられ、追跡期間の中央値は5.6年であった。また、WMHモデルには1,027人、アミロイドPETモデルには561人が組み入れられた。 解析の結果、不眠症は、全般的認知機能スコアの年当たりの低下を0.011ポイント加速させ、認知障害のリスクを有意に高めていた(ハザード比1.4)。また、睡眠時間の減少を伴う不眠症は、ベースライン時の認知機能(β=-0.211)、WMH負荷(β=0.147)、アミロイドPET負荷量(β=10.5)と関連していた。一方、睡眠時間が比較的長かった不眠症患者では、ベースライン時のWMH負荷が低かった(β=−0.142)。不眠症は、WMHやアミロイド蓄積の経時的な変化とは関連していなかった。 Carvalho氏は、「不眠症は翌日の気分に影響を与えるだけでなく、経時的に脳の健康にも影響を及ぼす可能性がある。思考能力の低下の加速や脳の変化が観察されたことから、慢性不眠症は将来的な認知機能障害の早期警告サイン、あるいは寄与因子である可能性が示唆された」と述べている。 なお複数の著者が、バイオ医薬品企業との利益相反(COI)に関する情報を明らかにしている。

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「かかりつけ医・認知症サポート医のためのBPSDに対応する向精神薬使用ガイドライン(第3版)」改訂のポイント

 2025年6月、日本認知症学会、日本老年精神医学会、日本神経学会、日本精神神経学会、日本老年医学会、日本神経治療学会の監修により、「かかりつけ医・認知症サポート医のためのBPSDに対応する向精神薬使用ガイドライン(第3版)」が公表された1)。2016年の第2版公表から9年ぶりとなる今回の改訂では、最新のエビデンスと新規薬剤の登場を踏まえた、より実践的な治療アルゴリズムが示されている。 本稿では、本ガイドラインのワーキンググループの主任研究者を務めた筑波大学医学医療系臨床医学域精神医学 教授の新井 哲明氏による解説を基に、改訂のポイントと臨床における留意点をまとめる。地域医療におけるBPSD対応の切実なニーズ 認知症患者数は2025年に約471万例、2060年には約645万例に達すると推計されている2)。認知症患者の60〜90%が最低1つは経験するとされるBPSD(行動・心理症状)は、患者本人のQOL低下や早期の施設入所リスクを高めるだけでなく、とくにBPSDにおける過活動・攻撃的行動は、介護者への負担増大により不適切なケアを誘発する「悪循環」を招く最大の要因となっている。 認知症におけるBPSD(行動・心理症状)は、心理症状として、抑うつ、不安、焦燥、無気力・無関心、妄想などがあり、行動症状として、興奮、大声を出す、叩くなどの攻撃的な行動、同じ行動を繰り返す常同行動、徘徊などがある。 この悪循環を防ぐためには、BPSDへの早期かつ適切な介入が不可欠である。地域での支援体制が不可欠であり、とくにかかりつけ医の役割が大きく、早期発見や家族支援、地域包括支援センターや専門医との連携を通じて、認知症の人と家族を支える役割が求められている。 新井氏が紹介した、かかりつけ医200人(内科、精神科、脳神経内科、脳神経外科、老年科)を対象としたアンケート調査では、以下の実態が明らかになった。・処方実態:非専門医であっても約8割がBPSDに対して抗精神病薬を処方している。・処方理由:「危険度が高い時」「介護負担が高い時」が主な理由となっている。・66%の医師が従来のガイドライン(第2版)を活用(参照・利用)している。 この結果は、地域医療の現場においてBPSDへの薬物療法がすでに広く行われていることを示唆しており、より安全で適正な使用指針の普及が急務であった。ガイドライン第3版:BPSDへの対応の原則 今回のガイドライン改訂(第3版)は、新規薬剤の登場やエビデンスの蓄積を反映し、より実践的なアルゴリズムへと刷新された。BPSDへの対応においては、まず以下の原則を順守することが重要となる。 原則として、「緊急性が高く速やかな薬物治療の開始を要するような精神症状が認められた場合には、認知症疾患医療センターを含めた認知症専門医がいる医療機関に紹介する」とされている。たとえば、重度のうつ状態、他者に危害を加える可能性が非常に高い妄想、自分自身や他者を危険にさらす原因となる攻撃性などがそれに相当する。 かかりつけ医・認知症サポート医で対応する場合は以下を考慮する。・せん妄の除外・BPSD様症状を引き起こし得る病態の鑑別:感染症、脱水、便秘、疼痛など・BPSD様症状を引き起こし得る薬剤の除外・レビー小体型認知症の可能性:幻視や妄想、抗精神病薬への過敏性に注意が必要 上記のとおり病態を把握した後、環境調整、ケアの変更、リハビリテーションの利用など、非薬物的介入を優先する。症状が改善しない場合にのみ薬物療法を検討する。薬物治療を開始する際は、低用量で開始する。 向精神薬を使用する場合には、本人・家族との共同意思決定(SDM:Shared Decision Making)のプロセスを経ることが明記された。本人の意思が確認できる場合は、アドバンス・ケア・プランニング(advance care planning:ACP)などによる話し合いを尊重し、本人の理解が不十分な場合や意思が確認できない場合は、家族などと繰り返し話し合い、本人の推定意思と最善利益を踏まえて方針を決定する。向精神薬の使用中は常に減量・中止を念頭に置き、長期使用は避ける、などが明記されている。5つのカテゴリー分類とアルゴリズムの明確化 第2版からの大きな変更点として、BPSDの症状分類が整理された。「過食・異食・徘徊・介護の抵抗」といった薬剤効果が乏しい症状は独立カテゴリーから外れた(非薬物的対応を推奨)。症状は以下の5つに分類され、それぞれの対応方針がアルゴリズムで示されている。・幻覚・妄想:まずメマンチンや抑肝散の投与を検討する。これらにより標的症状が改善せず緊急性が高い場合、抗精神病薬の投与を検討する。レビー小体型認知症にみられる幻視には、まずコリンエステラーゼ阻害薬を投与することが望ましい。・易刺激性・焦燥性興奮(アジテーション):アルツハイマー型認知症に伴う焦燥感、易刺激性、興奮に起因する、過活動または攻撃的言動に対しては、ブレクスピプラゾールが保険適用を有する。・不安・抑うつ:抗うつ薬やタンドスピロン、抑肝散、クエチアピンの使用を検討する。・アパシー:非薬物的介入が基本だが、コリンエステラーゼ阻害薬が有効なことがある。・睡眠障害:睡眠衛生指導や睡眠覚醒リズムの確立のための環境調整を行った上で、病態に応じてオレキシン受容体拮抗薬、メラトニン受容体作動薬、抗うつ薬(トラゾドン)の使用を検討する。 BPSDに対する薬剤開始後は、副作用のモニタリングを行った後、患者本人の苦痛や介護者/家族の負担が軽減したかどうかを評価する。NPI-Q(Neuropsychiatric Inventory - Questionnaire)を用いて効果の定量的な評価を行うことが望ましい。抗精神病薬の適正使用と各薬剤の臨床的位置づけ とくに介護負担の大きい易刺激性・焦燥性興奮(アジテーション)について、アルツハイマー型と診断された患者には、非薬物的介入が無効な場合、ブレクスピプラゾールのみ保険適用となっている。 クエチアピン、ハロペリドール、ペロスピロン、リスペリドンに関しては、原則として、器質的疾患に伴うせん妄・精神運動興奮状態・易怒性に対して処方した場合、当該使用事例を審査上認めるとの通達がある(2011年9月28日、厚生労働省保険局医療課長、保医発0928第1号、社会保険診療報酬支払基金、第9次審査情報提供)。このうち、ハロペリドールは錐体外路系副作用が強いことから、パーキンソン病、レビー小体型認知症には使用禁忌である。 チアプリドは、脳梗塞後遺症に伴う精神興奮・徘徊・せん妄に保険適用があるため、血管性認知症患者における易刺激性・焦燥性興奮に対して使用を考慮してもよい。 睡眠障害に対しては、睡眠薬の項の記載に従った薬剤選択を行い、それでも改善のない場合は、クエチアピンの使用を考慮してもよい。レビー小体型認知症の幻覚・妄想、易刺激性・焦燥性興奮、不安・抑うつ、睡眠障害に対しても、クエチアピンの使用を考慮してもよいと記載されている。 本ガイドラインでは、抗精神病薬の副作用についても詳細に記載されている。留意点として以下のような項目が記載されている。・抗精神病薬の併用(2剤以上)は避ける。・2週間くらいの時間をかけて薬効を評価する。・常に減量・中止が可能かを検討し、長期使用は避ける。抗精神病薬でBPSDが軽快した場合には、投与開始4ヵ月以内に減量・中止を試みる。ブレクスピプラゾールへの期待 2024年9月、ブレクスピプラゾールは「アルツハイマー型認知症に伴う焦燥感、易刺激性、興奮に起因する過活動又は攻撃的言動」に対し、国内で初めて効能・効果を取得した。・対象:易刺激性・焦燥性興奮といった内的な不穏を背景とする攻撃的言動に適応となる。単なる徘徊や、これらを伴わない幻覚・妄想は適応外である。・有効性:国内第II/III相試験(BRIDGE試験)において、CMAIスコア(アジテーション指標)を有意に改善させた。・安全性:錐体外路症状などの副作用リスクは比較的低いとされるが、他の抗精神病薬と同様に、傾眠、運動緩慢、流涎過多などへの注意は必要である。 本ガイドライン改訂を受けて、大塚製薬主催で6月23日に開催されたプレスセミナーにて、新井氏は自ら経験した症例として「夫婦間で、妻の妄想から暴言・暴力に発展したケース」を紹介した。ブレクスピプラゾールの投与によって症状が落ち着き、夫婦関係も良好になったことを挙げ、本剤が患者の在宅生活の継続に寄与する可能性を示唆した。 新井氏は、「ガイドラインが改訂され、治療アルゴリズムや薬剤の位置づけが明確化された。これらの情報が広くかかりつけ医・認知症サポート医に普及することで、より適切なBPSD診療が実現し、本人のQOL向上や介護負担の軽減といった社会的課題の解決につながることが期待される」と結んだ。

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多発性硬化症と口腔内細菌の意外な関係、最新研究が示す病態理解の可能性

 多発性硬化症(MS)は、中枢神経系の神経線維を包むミエリンが自己免疫反応によって障害される希少疾患で、視覚障害や運動麻痺、感覚障害などさまざまな症状を引き起こす。最新の研究で、MS患者の口腔内に存在する特定の歯周病菌、Fusobacterium nucleatum(F. nucleatum)の量が、病気の重症度や進行に関わる可能性が示された。研究は、広島大学大学院医系科学研究科脳神経内科学の内藤裕之氏、中森正博氏らによるもので、詳細は11月3日付で「Scientific Reports」に掲載された。 MSの発症には遺伝的素因に加え、ウイルス感染や喫煙、ビタミン欠乏などの環境因子が関与すると考えられ、近年は腸内細菌の異常も病態形成に影響することが示唆されている。また、口腔内細菌、特に歯周病菌も中枢神経疾患に影響することが報告されており、慢性的な炎症や免疫応答を介してMSの進行や重症度に関与する可能性がある。これまでに歯周病とMSの関連や、MS患者における特定菌種の増加が報告されているものの、臨床指標や再発・進行との具体的な関連や菌種ごとの差異は不明である。こうした背景を踏まえ著者らは、MSや視神経脊髄炎スペクトラム障害(NMOSD)、抗MOG抗体関連疾患(MOGAD)の患者の舌苔サンプルから歯周病菌量を定量し、臨床特徴やMRI所見との関連、さらに菌種ごとの影響を探索する横断的研究を実施した。 本研究は2023年5~11月にかけて実施され、広島大学病院脳神経内科を受診した15歳以上のMS、NMOSD、MOGAD患者112人が解析対象となった。患者から採取した舌苔サンプルは4種の歯周病菌種 (F. nucleatum、P. gingivalis、P. intermedia、T. denticola)を標的とした定量的PCRを用いて分析した。先行研究に倣い、細菌の総存在量に対する比率が第3四分位数を超える場合「高相対量」と定義された。患者の重症度は総合障害度評価尺度(EDSS)で評価し、スコア4をカットオフとした。 本研究の最終的な解析対象は98人(平均年齢48.6歳、女性77.6%)となった。これらのうち、56人がMS、31人がNMOSD、11人がMOGADとそれぞれ診断された。MS、NMOSD、MOGADで歯周病菌の高相対量に有意差はなく、口腔衛生習慣もほぼ同等であった。 単変量解析により、MS患者における各歯周病菌とEDSSスコアの関係を調べたところ、F. nucleatumの相対量が高いMS患者は、低い患者に比べてEDSSスコアが有意に高く、EDSS ≥4の割合も多かった(61.5% vs 18.6%、P=0.003)。多重比較補正(Benjamini-Hochberg法)を行った後も、MS患者におけるF. nucleatumの高相対量とEDSS ≥4の関連のみが有意であった(P=0.036)。一方、他の歯周病菌の相対量は、EDSS ≥4との有意な関連は認められなかった。また、NMOSDおよびMOGAD患者においても、EDSSスコアと各菌の高相対量との関連は認められなかった。 単変量解析では、MS患者の重症度(EDSS ≥4)に影響を与える要因として、F. nucleatumの高相対量に加え、年齢、MSのサブタイプ、発作回数、罹病期間も示唆された。しかし、これらの因子を考慮した多変量解析では、F. nucleatumの高相対量のみが独立して有意であった(オッズ比10.0、95%信頼区間1.45~69.4、P=0.020)。 著者らは、「本研究は、MS患者において口腔内のF. nucleatum相対量がEDSSスコアと強く関連することを示した。因果関係は示せないが、将来的な研究課題としては、サイトカイン関連機構などの免疫学的メカニズムの解明や、口腔ケアなどの介入による影響の検討が挙げられる」と述べている。 本研究の限界として、単施設の横断的観察研究であり、MS以外の疾患群やF. nucleatum陽性患者が少なくサンプルサイズが限られていたこと、歯周病の臨床評価や抗菌薬使用歴、口腔行動の影響、免疫指標測定が不十分であり、残存交絡や因果関係の推定は困難であったことを挙げている。

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