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脳深部刺激療法で外傷性脳損傷後の発話・嚥下機能が改善か

 脳に電極を植え込んで電気刺激を与える脳深部刺激療法(DBS)が、外傷性脳損傷(TBI)後の構音障害や嚥下障害の改善を促す可能性が、新たな研究で示された。このDBSは、脳深部の領域である運動視床に低周波の電気刺激を与えるもの。今回の小規模研究では、薬物治療抵抗性の左右非対称な本態性振戦の治療目的でDBS用電極の植え込みを受けた8人を対象に低周波のDBSを行ったところ、顔面筋および口腔咽頭筋の運動出力が増強したことが確認された。さらに、TBI後に重度の構音障害と中等度の嚥下障害を来した患者1人でも、発話や嚥下機能の改善が認められた。米ピッツバーグ大学身体医学・リハビリテーション学分野のElvira Pirondini氏らによるこの研究の詳細は、7月18日付で「Nature Communications」に掲載された。 Pirondini氏は、「外傷後の構音障害をリハビリテーションによって改善することは、多くの患者にとって最優先事項であり、しばしば移動能力の回復以上に重要とされている。多くの人にとって、発話能力を失うことは仕事や自立した生活、人間関係に影響を及ぼし、その人生を根底から一変させかねない」と指摘している。 論文の背景情報によると、米国では500万人を超える人が構音障害や嚥下障害を抱えている。DBSは現在、パーキンソン病による振戦をはじめとする一部の神経疾患の治療に用いられている。しかし、DBSが発話能力の回復に有効かどうかについては、いまだ統一見解は得られていない。 今回の研究では、一般的な高周波刺激(約130 Hz)より低い50~80 Hzの電気刺激を用いるDBSの有用性を、2つのサブスタディを通じて検討した。研究グループによると、高周波刺激は発話を抑制し、構音障害を引き起こす可能性があることが示されているという。 研究には計9人が参加した。第1のサブスタディの対象は、薬物治療抵抗性の左右非対称な本態性振戦の治療のため、運動視床へのDBS用電極の植え込みを受ける患者8人(男性5人、平均年齢67歳)、第2のサブスタディの対象は、MRIで皮質延髄路に病変が認められ、重度の構音障害と中等度の嚥下障害を有するTBI患者1人だった。 その結果、第1のサブスタディでは、低周波DBSにより、発話や嚥下に関わる顔面筋および口腔咽頭筋(咬筋、口輪筋、顎舌骨筋、オトガイ筋、輪状甲状筋)の運動出力が即座に増強することが示された。また、発話機能を評価した3人では、低周波DBSによる発話の悪化は認められなかった。一方、第2のサブスタディのTBI患者では、低周波DBSにより、舌の出し入れや笑う動作などの顔面の随意運動と嚥下効率が向上し、呼吸・発声・構音の制御や発話の明瞭度と質も改善した。 論文の共著者であるピッツバーグ大学脳神経外科学教授のJorge Gonzalez-Martinez氏はニュースリリースで、「今回の研究は、刺激パラメータが重要であることを示している。適切な脳回路を低周波刺激の標的とすることで、脳損傷後の患者の発話や嚥下の助けとなる残存神経経路の働きを促進できる可能性がある」と述べている。 ただし、安全性や有効性、長期的なアウトカムを検証するためには、脳卒中を含むさまざまなタイプの脳損傷を有する、より多くの患者を対象とした大規模研究が必要であると研究グループは強調している。

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第313回 「安い薬価」が薬を遠ざける?-「ドラッグラグ」から「ドラッグロス」の時代へ

新薬がわが国に入ってこない「ドラッグロス」の現実海外では標準的に承認され使用されている医薬品が、日本では使えない--。かつては欧米より承認が遅れる「ドラッグラグ」が問題視されていましたが、近年はより深刻な「ドラッグロス」への懸念が急速に高まっています。ドラッグロスとは、「欧米の製薬企業が日本国内での治験や発売自体を見送り、新薬がいつまで待っても国内に入ってこなくなる事態」を指します。医師にとっても患者にとっても看過できないこの問題の背景には、国際的な薬価政策の地殻変動があります。米国・トランプ政権の「最恵国待遇(MFN)」政策がもたらす余波背景として急浮上しているのが、米国における薬価政策の大転換です。トランプ大統領は2025年、米国内の薬価引き下げを目的に「最恵国待遇(MFN)」に関する大統領令に署名しました。これは、わが国や欧州など他国の実質価格(ネット価格)を参照し、バスケットの中で「2番目に低い価格」などを基準に米国の公的保険などの価格を引き下げる政策です。世界最大の医薬品市場である米国は、グローバル新薬の売上・利益の大部分を支えています。その一方で、わが国の薬価は、算定時に米英独仏の平均価格を参照する外国平均価格調整があるものの、毎年の薬価改定や市場拡大再算定などにより、収載後に価格が急速に削られていく仕組みになっています。そのため、国際的に見ても低水準にとどまる品目が少なくありません。もし、わが国で安く設定された薬価が米国の参照価格の底を押し下げ、巨大市場である米国内の薬価引き下げに直撃するのであれば、製薬企業にとっては「わが国で安価に発売するより、わが国への投入自体を見送るか遅らせたほうが得策」という経営判断が成り立ってしまいます。国内企業の4割に影響、スイスでも起きている「新薬見送り」この懸念はすでに現実化しつつあります。日本製薬工業協会が加盟16社を対象に行った調査では、37.5%が「すでに米国の薬価政策による影響が生じている」と回答しました。国内での治験や開発プロジェクトの縮小、承認申請・発売時期の見直しといった動きが報告されています。ロシュやノバルティスなどの大手製薬企業が本拠を置くスイスでも同様の事態が進行しています。同国では2025年1月~2026年6月に承認された革新的新薬22品目のうち、約3割に当たる7品目で国内の保険適用申請が見送られました。米国との価格差が本国市場での収益に及ぼす影響を警戒した結果とみられており、わが国にとっても対岸の火事ではありません。低薬価の歪み-チルゼパチドの教訓と未発売新薬低薬価による歪みは、臨床現場にもすでに現れています。糖尿病治療薬チルゼパチド(商品名:マンジャロ)は、わが国の薬価が主要国の中で最も低い水準に抑えられた結果、安価な入手を求めて近隣国から来日する「医療ツーリズム」や、自由診療による適応外の痩身目的処方が問題視されました。本来治療を必要とする患者への供給不安を招き、イノベーション評価と供給維持の難しさを浮き彫りにしています。さらに深刻な実例として、日経新聞(「がんや糖尿病、承認済み新薬の発売遅れ 割安な薬価を米欧勢が警戒か」)が報じたように、国内で製造販売承認を取得しながら薬価が決まらず発売に至っていない経口乳がん治療薬などの事例も出現し始めています。従来、診療報酬改定のたびに「薬価引き下げ」を財源として捻出し、医療費を調整してきたわが国の手法は、世界の薬価が連動する時代を迎えて完全に限界を迎えつつあります。海外ガイドラインで「標準治療」とされる分子標的薬や遺伝子治療薬にわが国だけアクセスできないという、医療の後進国化すら危惧される状況です。「薬価(単価)」から「処方量(ボリューム)」の適正化へでは、国民皆保険を維持しながら新薬アクセスを守るために、わが国はどう舵を切るべきでしょうか。第1に、医薬品の価値に応じたメリハリのある薬価制度(Value-based Pricing)の確立です。これまでにない治療効果をもたらす画期的新薬や、生命予後を有意に改善する薬剤には国際水準に見合う十分な薬価を認め、特許期間中は予見性の高い薬価を維持する一方で、既存薬と大差のない新薬は厳格に評価するという優先順位付けが不可欠です。残念ながらわが国で行われている費用対効果評価制度では、2019年に制度が始まって以降の価格調整の実績(図)で見ると特許期間中の45品目中36品目で薬価が引き下げられ、わずか9品目のみが薬価維持という状況でした。評価をしても薬価が引き上げられた新薬は1つもありませんでした(中央社会保険医療協議会費用対効果評価専門部会)。製薬企業の業界団体からは議論が十分されないままであり、制度面の議論が尽くされず、かつ薬価を引き下げる局面にない現状では、費用対効果評価制度による価格調整は当面凍結すべきと提言しています。図 費用対効果評価制度における価格調整の実績画像を拡大する第2に、医師である私たちが向き合うべき課題が「薬剤使用量(ボリューム)」の適正化です。米国のシンクタンクであるランド(RAND)研究所の調査によると、わが国の1人当たり処方薬使用量、とりわけ新薬の数量シェアは経済協力開発機構(OECD)平均や米国を大きく上回っています。高齢者のポリファーマシーによる薬剤量の是正、不必要な抗菌薬の処方削減、バイオシミラーの活用、さらには患者の体格やエビデンスに基づいた抗がん剤の投与量・投与期間の適正化を進める必要があります。すなわち、「必要な新薬には適正な対価を支払い、必要性の低い投薬を減らす」という構造転換が求められるのです。おわりに国民皆保険の真の強みは、価値ある新薬が収載されれば全国民が公平に地域に関係なく治療を受けられる点にあります。しかし、この仕組みを維持するためには、「世界で最も薬価が安い国」を目指すのではなく、「真に必要な新薬を世界と同時に導入し、無駄な処方を削って確実に患者へ届ける国」を目指さなければなりません。政府が創薬・先端医療を国家成長戦略の柱に位置付ける今、臨床現場のわれわれ医師も、患者に求められるがままの漫然とした処方を見直し、医療資源の適正配分に主体的に関わっていく姿勢が求められています。 参考 1) 「新薬の薬価算定において価値評価をどのように導入すべきか」坂巻弘之(日本医事新報) 2) 米国の薬価政策が「新薬開発に影響」、国内4割…日本では薬が使えない「ドラッグロス」につながる恐れ(読売新聞) 3) がんや糖尿病、承認済み新薬の発売遅れ割安な薬価を米欧勢が警戒か(日経新聞) 4) スイスで「ドラッグロス」米との医薬品価格に差 革新薬3割、保険申請見送り(同) 5) 薬価引き下げは革新を阻害英アストラゼネカ マーク・デュノワイエCSO(同) 6) トランプ大統領MFN政策導入で処方薬価格は3.9%下落 今後10年間の上市新薬で5,290億ドル削減へ(ミクスオンライン) 7) 米国トランプ薬価政策がわが国に与える影響-わが国の薬剤費政策の根本的転換の好機-(日本総研) 8) 中央社会保険医療協議会費用対効果評価専門部会意見陳述 資料(中医協)

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何年禁煙すればアルツハイマー病リスクが元に戻るのか?

 喫煙は、アルツハイマー病の修正可能なリスク因子の1つである。しかし、禁煙後のアルツハイマー病リスク低下の経時的パターンについては依然として不明であった。韓国・慶熙大学のSeong-Ho Moon氏らは、大規模な全国コホートを用いて、継続的な禁煙期間に応じてアルツハイマー病リスクが低下するかどうかを調査した。Alzheimer's Research & Therapy誌オンライン版2026年6月29日号の報告。 2002~23年の韓国国民健康保険公団(NHIS)のデータベースを用いて、2年ごとの定期健康診断に基づき、長期間にわたり喫煙状況が安定していた成人140万3,636人を特定した。喫煙状況は「非喫煙者」「現在喫煙者」「継続的禁煙者」に分類し、禁煙期間は2年刻みで区分した(2年未満、2~3年、4~5年、6~7年、8年以上)。アルツハイマー病の発症は、NHISへの保険請求が2回以上行われた場合と定義した。人口統計学的因子、生活習慣因子、代謝因子を調整した後、Cox比例ハザードモデルを用いて調整ハザード比(aHR)と95%信頼区間(CI)を推定した。 主な結果は以下のとおり。・平均10.5年のフォローアップ期間中に、5万8,519例のアルツハイマー病発症が確認された。・現在喫煙者と比較し、継続的禁煙者では禁煙期間が長くなるにつれて、アルツハイマー病リスクが段階的に低下し、用量反応関係が認められた。・現在喫煙者と比較し、禁煙期間が2年未満の群では、アルツハイマー病リスクの低下が認められ(aHR:0.899、95%CI:0.819~0.986)、8年以上禁煙を継続した群ではリスクが大幅に低かった(aHR:0.582、95%CI:0.423~0.801)。・非喫煙者を基準とした場合、禁煙期間が2年未満の群では、依然として過剰なリスクが認められた。しかし、2年以上の禁煙群では、アルツハイマー病のリスクが非喫煙者のレベルに近づくことが示された。 著者らは「継続的な禁煙は、アルツハイマー病リスクの段階的な低下と関連しており、非喫煙者のリスクレベルに近づくためには約2年間の禁煙が必要であった」と結論付けている。

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高度なケアを要する高齢者における認知症・BPSDの有病率は

 高齢者において、高度なケアが必要な疾患と認知症を合併した高齢者のケアは複雑化する。台湾・Changhua Christian HospitalのJhang Kai-Ming氏らは、経管栄養、呼吸器ケア、皮下注射、尿道カテーテル、ストーマケアまたは浣腸、創傷ケア、疼痛管理、透析といった高度なケアを要する患者を対象に、認知症およびその行動・心理症状(BPSD)の有病率を明らかにするため、調査を実施した。The Journal of Prevention of Alzheimer's Disease誌オンライン版2026年8月14日号の報告。 本研究は、台湾全国規模の集団ベース横断調査として実施した。多段階層化系統抽出法を用い、2020年9月〜2022年6月に計1万1,297例の参加者を登録した。認知症の診断は、専門医による訪問診療または専門家による合意形成に基づいて行われた。BPSDの有無および特定の高度なケアサービスの利用状況については、訓練を受けた調査員が情報収集を行った。 主な結果は以下のとおり。・全体として、1つ以上の高度なケアを要する患者は732例(6.5%)、認知症と診断された患者は975例(8.6%)であった。・高度なケアを要する患者では、認知症の有病率が高いことが示された(18.0%vs.8.0%、p<0.0001)。・ストーマまたは浣腸ケア(OR:4.92、95%信頼区間[CI]:2.29〜10.59、p<0.0001)、経管栄養(OR:3.20、95%CI:1.99〜5.15、p<0.0001)、透析(OR:2.97、95%CI:1.80〜4.92、p<0.0001)、尿道カテーテル留置または間欠的導尿(OR:2.20、95%CI:1.32〜3.67、p=0.003)、呼吸器ケア(OR:2.01、95%CI:1.14〜3.57、p=0.017)を要する患者は、認知症のリスクが有意に高いことが示唆された。・BPSDに関しては、高度なケアを要する患者において、昼夜逆転(42.0%vs.27.9%、p=0.002)およびケア拒否行動(19.8%vs.12.0%、p=0.019)の頻度が有意に高かった。 著者らは「台湾の集団において、高度なケアを要する患者は、認知症およびBPSDの有病率が有意に高いことが明らかになった。医療従事者は、高度なケアを要する患者における認知症の合併の可能性に十分注意を払うとともに、BPSDを軽減し、ケア提供者の負担を減らすために、より患者中心のアプローチや非薬物療法を実践すべきである」と結論付けている。

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ババシャツをめぐって【Dr. 中島の 新・徒然草】(649)

六百四十九の段 ババシャツをめぐって最近、インフルエンザが流行っているということですが、自分がもらってしまいました。咽頭痛、咳、頭痛、倦怠感、38.5度の発熱、鼻汁、筋肉痛ときて、もうまったくヤル気が出てきません。迅速キットを使うと見事にインフルエンザAのところに赤線が出ました。現在はひたすら寝て治すという作戦をとっているところです。話は変わって昔のこと。入院患者さんの電子カルテに驚くべき記述がありました。病棟看護師さんによるメモ書きです。患者さんからご家族への伝言をお願いします。病院に持ってきてほしいもの。 スプーン 歯ブラシ ババシャツ ちょっと!ババシャツって何ですか、ババシャツって。意味はわかるけど、ほかに呼び方はないんかい。これ、大阪以外でもこう呼ぶんですかね?正式名称は「女性用長袖肌着」とか「スリーマー」とかいうらしいですが、それでは何のことかわかりません。一方、「ババシャツ」で画像検索をすると、確かにイメージどおりのものが出てきます。そんな驚きから数ヵ月たったある日のこと。とある看護師さんと喋っていたらこんな会話になりました。 看護師 「さっき中島先生と話していた内科の○○先生なんですけどね」 中島 「ああ、彼は医学部の同級生やけど」 看護師 「私が看護学生の時に腹痛で診てもらったことがあって」 中島 「そりゃ、だいぶ昔のことやな」 看護師 「その時に腹部エコーをしてくれたんですが、私はボロボロのババシャツを着ていたんで、そればかり気になって。エコーされるとわかっていたら、もう少しマシなのを着てくればよかったと思ったんですよ」 中島 「そ、そんなもんかな」 看護師 「それで、入職したときに○○先生に言い訳をしに行ったんです。そしたら『ババシャツどころか、君を診察したことすら覚えてへんぞ』と言われてしまいました」 中島 「あいつは君自身には興味がなかったのかな」 よほどエコーに集中していたのかもしれません。 看護師 「実は私、中島先生にも診てもらったことがあるんです」 中島 「ホンマか!」 看護師 「勤務中に頭が無茶苦茶に痛くなってERに行ったんですよ。それで、CTでは異常なかったけれども、それだけでは足りないからといって腰椎穿刺をされたんです」 中島 「確かにその病歴でくも膜下出血を否定しようと思ったらCTだけでは足りないし、髄膜炎の可能性もあるからなあ」 看護師 「髄液も異常なかったんで自宅に帰ったんです」 中島 「休むに限るよ」 看護師 「でも頭痛が続くので、後日、脳外科を受診したんですけど、その時の担当が中島先生でした」 中島 「覚えてへんなあ」 何も覚えていないということは、私も彼女自身には興味がなかったのかも。 看護師 「私がゴチャゴチャ喋ったことを中島先生は全部カルテに記録して、すごく真剣に聴いてくれてるというのが伝わってきて嬉しかったです」 よほど問診に集中していたってことなのでしょうか。頭痛の話なので、もちろん下着とは関係ありません。ただ、総合診療科外来のほうでは腹部を診ることもあります。冬なんか、いろいろ着込んでいる人が多いので、目的地であるおなかまで到達するのが一苦労。今度、機会があったら患者さん自身に聞いてみると面白いかも。「つかぬことをお伺いしますけどね。この下着、何て呼んでます?」って。100%の確率で「そりゃあ先生、ババシャツですよ」と返ってきそうですね。ということで、最後に1句 秋深し ババシャツめぐって 盛り上がる 

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糖尿病へのスタチン、開始時期で認知症リスクに差?/ESC2026

高齢化に伴い認知症の負担は増大しており、とくに糖尿病患者ではリスクが高いことが知られている。一方、LDLコレステロールは認知症の修正可能なリスク因子として注目されている。そこで、デンマーク・Copenhagen University Hospital-Herlev and GentofteのTummas Ternhamar氏らは、2型糖尿病診断後のスタチン開始時期と認知症リスクとの関連を検討した。その結果、診断後1年以内の「スタチン早期開始」が、全認知症リスクの有意な低下と関連することが示された。本結果は、2026年8月28~31日にドイツ・ミュンヘンで開催されたEuropean Society of Cardiology 2026(ESC2026、欧州心臓病学会)で発表され、The Lancet Regional Health Europe誌オンライン版2026年8月27日号に掲載された。本研究は、デンマークの全国レジストリを用いた観察研究である。対象は、2006~19年に40歳超で2型糖尿病を発症した、スタチン未使用の13万2,585例。糖尿病診断日から、認知症、死亡、国外移住、診断後10年、または2021年12月31日のいずれか早い時点まで追跡した。Clone-Censor-Weight法を用いて、(1)診断後5年間スタチンを開始しなかった非投与群(対照)、(2)診断後1~5年に開始するスタチン後期開始群、(3)診断後1年以内に開始するスタチン早期開始群における認知症の発症率を解析した。主要評価項目は、死亡を競合リスクとして扱ったAalen-Johansen生存曲線に基づく10年時の全認知症リスクとし、副次評価項目として血管関連認知症(血管性認知症および詳細不明の認知症)およびアルツハイマー型認知症を評価した。主な結果は以下のとおり。・患者13万2,585例の内訳は、スタチン非投与群5万6,693例、スタチン早期開始群5万2,496例、スタチン後期開始群2万3,396例で、診断時の平均年齢はそれぞれ63.5歳、59.8歳、59.5歳であった。・追跡期間中央値は7.1年(四分位範囲[IQR]:3.8~9.9)で、全認知症は3,592例(2.7%)に発症した。血管関連認知症は2,532例(1.9%)、アルツハイマー型認知症は1,571例(1.2%)で、511例(0.4%)は両方の診断を受けていた。・全認知症の10年時の絶対リスクは、非投与群3.9%、早期開始群3.3%、後期開始群3.5%であった。・非投与群と比較した10年時の全認知症相対リスク(RR)は、早期開始群で15%低下(RR:0.85、95%信頼区間[CI]:0.79~0.91)、後期開始群で10%低下(RR:0.90、95%CI:0.85~0.97)であった。・10年時の絶対リスク差(対非投与群)は、早期開始群で0.59%ポイント低下(95%CI:0.34~0.86)、後期開始群で0.38%ポイント低下(95%CI:0.12~0.61)であった。・全認知症リスクは3年、5年、8年時でも非投与群で最も高く、次いで後期開始群、早期開始群の順に低かった(10年間の曲線比較:すべてp<0.001)。・血管関連認知症では早期開始群(絶対リスク差:0.61%ポイント低下)、後期開始群(同:0.44%ポイント低下)ともに段階的なリスク低下が認められたが、アルツハイマー型認知症では明確なパターンはみられなかった。本研究結果について著者らは、2型糖尿病患者におけるスタチン治療は認知症リスクの低下と関連し、その効果は早期に開始した患者で最も顕著であったとまとめている。

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オベポレクストン、ナルコレプシータイプ1の眠気・覚醒を改善/NEJM

 ナルコレプシータイプ1患者において、経口オレキシン2受容体(OX2R)選択的作動薬オベポレクストンは12週間にわたり、覚醒状態、眠気および情動脱力発作(カタプレキシー)の評価尺度を有意に改善したことが、フランス・Centre Hospitalier UniversitaireのYves Dauvilliers氏らが行った2つの第III相試験「First Light試験」「Radiant Light試験」の結果で報告された。オベポレクストン群では最も一般的な有害事象として、頻尿および一過性の不眠が認められた。ナルコレプシータイプ1は、日中の過度の眠気、カタプレキシー、睡眠分断、および入眠時や覚醒時の幻覚などで特徴付けられる。オベポレクストンは第II相試験で、ナルコレプシータイプ1の症状を軽減することが示されていた。NEJM誌オンライン版2026年9月9日号掲載の報告。12週の有効性と安全性を評価した2つの第III相無作為化プラセボ対照試験 First Light試験およびRadiant Light試験は、ナルコレプシータイプ1患者を対象に、オベポレクストンの有効性と安全性を評価した12週の第III相二重盲検無作為化プラセボ対照試験であり、アジア(両試験)、オーストラリア(Radiant Light試験のみ)、欧州(両試験)、北米(First Light試験)で行われた。 研究グループは被験者(16~70歳)を、First Light試験ではオベポレクストン(1mgまたは2mg)またはプラセボを1日2回投与する群に3対3対2の割合で無作為に割り付けた。Radiant Light試験ではオベポレクストン(2mg)またはプラセボを1日2回投与する群に2対1の割合で無作為に割り付けた。 主要評価項目は、覚醒維持検査(MWT、範囲:0~40分、正常値≧20分)における平均睡眠潜時(眠気を誘う条件下で覚醒状態を維持する能力)のベースラインから12週目までの変化量とした。重要な副次評価項目は、エプワース眠気尺度(ESS)の合計スコア(範囲:0~24点、正常値≦10点)のベースラインから12週目までの変化量、および12週時の週当たりカタプレキシー発現率(WCR)などであった。オベポレクストン群で睡眠潜時、ESSスコア、WCRなどが有意に改善 First Light試験では計168例が無作為化され(オベポレクストン1mg群61例、オベポレクストン2mg群66例、プラセボ群41例)、Radiant Light試験では計105例が無作為化された(オベポレクストン2mg群70例、プラセボ群35例)。 MWTにおける平均睡眠潜時のベースラインから12週目までの変化量は、オベポレクストン群では14.3~19.8分の範囲にわたった一方、プラセボ群は-0.8~-0.4分であった(すべての対プラセボの補正後p<0.001)。 ESSの合計スコア平均値の同変化量は、オベポレクストン群では-11.8~-9.7点、プラセボ群では-1.7~-1.5点であった(すべての対プラセボの補正後p<0.001)。WCRの減少率中央値は、オベポレクストン群では79.0~88.8%、プラセボ群では27.7~39.1%であった(すべての対プラセボの補正後p<0.001)。 有害事象の発現はオベポレクストン群では86~89%の被験者に、プラセボ群では43~54%の被験者に認められた。最も多くみられた有害事象は、頻尿および一過性の不眠であり、これらはオベポレクストン群の半数以上の被験者に認められた。

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「Arm drop試験」使っていますか? 心因vs.器質の診察【脳がととのう 神経内科学講座】第5回

<今回のモヤっとPoint>Arm drop試験、使ってはいけない患者がいる?はじめに突然ですが「意識障害」の症例がERに搬送されてきました。バイタルサインや身体所見には異常はなく、神経学的には意識障害が遷延している以外に、麻痺や瞳孔不同など目立った脱落所見はありません。また血液検査や脳MRI検査でも異常はなく、オンコールの脳神経内科医の診察が始まりました。意識障害の診察脳神経内科医は体系的に神経学的所見を確認していきましたが、やはり意識障害のほかには目立った異常所見はありません。そこで、おもむろに患者の右腕を持ち上げました。そして患者の顔の上までその腕を持ち上げ、患者の顔に落とすように、その腕を放したのです。そうすると、落下する腕は顔面を避けるようにして落下しました。無意識のように見えて、意図的に顔面への直撃を避けるリアクションがあったことから、真の器質的な意識障害ではなく、心因性の意識障害と判断されました。この診察手法は「真の意識障害」かどうかをスクリーニングするもので、以前は臨床現場でも広く活用されていました。しかし、その信頼性については、再考が必要かもしれません。Arm drop試験とは脳神経内科医が確認したものは「Arm drop試験」と呼ばれるものです。文字通り、患者の上肢を他動的に、患者の顔面の上まで持ち上げて落とすことで、その上肢が顔面に当たるかどうかを確認するテストです。Arm drop試験の判定顔面にそのまま落下する顔面を避けるように落下する画像を拡大するArm drop試験の目的この診察方法の目的は“真の意識障害と心因性のものを鑑別する”ためにあります。この検査は古典的には、「器質性の高度意識障害では上肢がそのまま顔面へ落下し、機能性の場合には顔面を避けることがある」と説明されてきました。しかし、実際の意識障害では運動反応は一様ではなく、この所見だけで両者を判定することはできません。そのため、「直撃すれば真の意識障害、回避行動があれば心因性と判断できる」というのがこの診察法の判断ポイントとされていますが、果たしてそこまで解像度の高い試験なのでしょうか?Arm drop試験の注意意識障害の鑑別として、このArm drop試験を活用するうえで、注意点が2つあります。1)病歴の長い心因性のケース確かに、心因性の症例でこのArm drop試験を行うと、回避反応が見られることはあるのですが、一方で病歴の長い心因性の患者では、どこかのタイミングでこのArm drop試験の原理を理解していることがあり、あえて「陽性」の所見を示すこともあります。そのため、これまでの病歴について十分把握できていない状況であれば、Arm drop試験の安易な解釈は避けたほうが良いかもしれません。また詐病であれば、回避反応が見られない可能性もありえるでしょう。2)てんかん患者での意識障害てんかん患者の意識障害は大きく分けて2つあります。発作そのものの意識障害と、その発作後の意識朦朧状態の遷延です。一方で、臨床ではてんかん性の意識障害なのか、心因性の意識障害(PNES)なのか、判断に迷うこともしばしばあり、その状況でArm drop試験で確認することもあるでしょう。しかし、そこには大きな注意点があります。実は、てんかん患者による意識障害(つまり真の意識障害)にArm drop試験を用いても「陽性」にも「陰性」にもなりえるので、信頼性の高い判定法とはいえないのです。どういうことかというと、たとえば意識減損発作は、側頭葉てんかんなどで見られる「動作が停止して記憶が保持されなくなる」発作ですが、その発作の程度が軽ければ発作イベント中の出来事をなんとなく患者が覚えていることがあります。つまりやや不完全な意識減損発作のケースがあります。そして痙攣発作後の意識朦朧状態においても、Arm drop試験の当てはめには注意が必要です。そもそも意識とは、「意識清明」と「意識障害」という二元論で捉えられるものではありません。意識は連続的に存在しています。そのため、発作後で意識朦朧としている患者では、何も理解できていないように見えても、そこにはわずかに回復しつつある意識が存在することがあります。そのような状況でArm drop試験を行うと、わずかに残る本能的な防御反応として、「顔面を避けるような形で腕が落ちる」ことが起こり得るのです。例えるなら、深酒で寝落ちしてしまった人がいるとします。いわば「アルコール性」の意識障害ともいえますが、ここでArm drop試験を行えば、陽性となることも、昏睡でありながら防御反応として陰性となることも、ありえるわけです。つまり、陰性だからといって意識障害の質を綺麗に判断はできないのです。以上のことをまとめると…Arm drop試験は心因性の意識障害を鑑別できることがあるが、感度も特異度も確立していない侵襲性もある検査であり、患者の不信感を招く可能性すらあるそうなると、このArm drop試験を臨床で行う必要のあるケースというのはほとんどないように感じます。とくに機能性神経障害(FND)の診断については、1つの診察所見だけで決め打ちすることは危険です。病歴や患者背景などに加えて、神経学的な陽性所見を確認することで総合的に判定する必要があるのです。今回のスッキリ意識障害の評価でArm drop試験というものがあるただし器質性vs.心因性の鑑別には限界がある患者との信頼関係の観点でも、ルーチンで行うものではなさそう

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犬を飼うことで認知症予防は可能か?〜日本人対象研究

 国立環境研究所の谷口 優氏らは、犬の飼育者の身体的、社会的、心理的特性に基づいた傾向スコア重み付け法を用い、犬の飼育と要介護認知症の発症および死亡との関連を調査した。さらに、操作変数モデルを用いて、この関係における因果関係の可能性を検討した。加えて、費用対効果分析を用いて、犬の飼育に伴う費用と効果についても検討を行った。International Journal of Environmental Research and Public Health誌2026年7月22日号の報告。 犬の飼育状況は、「現在飼育中」、「過去に飼育経験あり」、「飼育経験なし」の3つに分類した。要介護認知症は、日本の介護保険制度における医師の判定に基づき定義し、死亡については約7.5年間のフォローアップ期間中に日本の人口動態統計を用いて確認した。 主な内容は以下のとおり。・分析対象は、2016年に層別化ランダム抽出法によって選定された1万1,224人の高齢者。・飼育経験なし群と比較し、現在飼育中群および過去に飼育経験あり群における要介護認知症発症のオッズ比(OR)は、それぞれ0.53(95%信頼区間[CI]:0.43〜0.66)および0.97(95%CI:0.86〜1.09)であった。・死亡に関するORは、現在飼育中群で0.63(95%CI:0.51〜0.79)、過去に飼育経験あり群で0.88(95%CI:0.78〜0.99)であった。・因果関係の分析では、飼育経験なし群と比較し、現在飼育中群(OR:0.52、95%CI:0.27〜0.98)および過去に飼育経験あり群(OR:0.75、95%CI:0.55〜1.03)において、認知症発症のORが低いことが明らかとなった。・死亡に関する同様の分析でも、ORは低かったが、飼育経験なし群と比較し、現在飼育中群(OR:0.59、95%CI:0.35〜1.01)および過去に飼育経験あり群(OR:0.77、95%CI:0.60〜1.00)において、統計的に有意な差は認められなかった。・費用対効果分析の結果、犬の飼育は、質調整生存年(QALY)において小さいながらもプラスの利益をもたらすことが示された。・公的支払者の視点からは、公費負担の医療費および介護費を削減しつつQALYを増加させる結果が得られた。・また、犬の飼育にかかる個人的な費用をシナリオ分析に含めた場合、犬を飼育しない場合と比較した増分費用効果比(ICER)は、1QALY当たり674万4,174円であった。 著者らは「本研究結果は、犬の飼育が、高齢者における生活機能障害を伴う認知症の発症に対して予防的な効果を持つ可能性を示唆している。さらに本研究は、犬の飼育が介護費や医療費といった公的支出を削減できる可能性も明らかにした」としている。

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指先に貼るパッチがパーキンソン病患者の汗からレボドパ濃度を測定

 パーキンソン病患者に投与する薬剤の適切な量を見極めるのは容易ではない。パーキンソン病の標準治療薬であるレボドパは、用量が少な過ぎると患者が動けなくなる一方、多過ぎると重度の制御不能な不随意運動を引き起こす。こうした中、患者の汗を利用してレボドパ濃度を測定できる指先に貼るパッチが、この問題の解決に役立つ可能性があることを示した研究成果が報告された。このパッチは、電池なしで汗中のレボドパ濃度を測定できる。初期段階の試験では、同パッチで測定した汗中のレボドパ濃度は、標準的な血液検査で測定した血中レボドパ濃度と強く相関することが示された。米カリフォルニア大学サンディエゴ校(UCSD)のTamoghna Saha氏らによるこの研究の詳細は、「Proceedings of the National Academy of Sciences(PNAS)」に7月27日掲載された。 Saha氏らは、「われわれが開発した使いやすくエネルギー効率の高いウェアラブルデバイスは、運動や刺激で発汗を促すことなく、リアルタイムでレボドパ濃度をモニタリングできる。将来的には、このデバイスが在宅でのレボドパの用量調整に役立つ可能性もある」と述べている。 現在、医師は患者の症状報告を頼りにレボドパの用量を調整しなくてはならない。問題になるのは、病気が進行するにつれて薬が有効に作用する時間が短くなり、医師が適切なタイミングで適正な用量に調整するのが難しくなってくることだ。 研究グループによると、人間の指先には汗腺が高密度に存在する。今回報告されたパッチには、汗を吸収するスポンジのように設計された吸水性ゲルが備わっている。このゲルには高濃度の塩が含まれており、水が塩分濃度の高い方へ自然に移動する性質を利用して、毛穴から汗を引き出す。患者の汗に含まれるレボドパがパッチ内に埋め込まれた酵素と接触すると化学反応が起こり、レボドパ濃度に応じた電気信号が生じる。この信号を利用して汗中のレボドパ濃度を測定する仕組みである。 試験では、健康な人とパーキンソン病患者のいずれにおいても、このパッチの測定値から推定した血中レボドパ濃度は、標準的な血液検査による測定値とよく一致することが示された。また、パーキンソン病患者では健康な人と比べて、体内からレボドパがより速く消失することも示された。この結果は、レボドパの用量や投与のタイミングが適切でない場合に患者の症状が急激に悪化する理由を説明するものだとSaha氏らは指摘している。 Saha氏らは、「将来的にはこのパッチをポンプと組み合わせることで、患者が必要とするタイミングで適切な量のレボドパを自動的に投与できるようになる可能性がある」との展望を示している。

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オレキシン2受容体を活性化するナルコレプシータイプ1治療薬「オーゼイフル錠0.5mg/1mg/2mg」【最新!DI情報】第71回

オレキシン2受容体を活性化するナルコレプシータイプ1治療薬「オーゼイフル錠0.5mg/1mg/2mg」今回は、オレキシン2受容体選択的作動薬「オベポレクストン(商品名:オーゼイフル錠0.5mg/1mg/2mg、製造販売元:武田薬品工業)」を紹介します。本剤は、ナルコレプシータイプ1に適応のある初のオレキシン2受容体選択的作動薬です。オレキシン2受容体の活性化で覚醒を促進するとともに、入眠時・出眠時幻覚や睡眠麻痺などの症状を軽減すると期待されています。<効能・効果>ナルコレプシータイプ1の適応で、2026年8月24日に製造販売承認を取得しました。<用法・用量>通常、成人にはオベポレクストンとして1mgを1日2回経口投与します。起床時に1回目の投与を行い、3時間から5時間後に2回目の投与を行います。なお、忍容性に問題がなく、十分な効果が認められない場合に限り、2mgを1日2回に増量することができます。<安全性>副作用として、不眠症(55.6%)、頻尿(54.0%)、尿意切迫(16.7%)、流涎過多(2%以上)、錯感覚、尿失禁、血圧上昇(いずれも2%未満)、心拍数増加、トランスアミナーゼ上昇、血中クレアチンホスホキナーゼ増加(頻度不明)があります。<患者さんへの指導例>1.この薬は、ナルコレプシータイプ1の治療薬です。不足しているオレキシンの代わりにオレキシン受容体に結合して持続的な覚醒を促し、異常なレム睡眠関連の症状を軽減させます。2.この薬は、1日2回飲む薬です。朝起きたら1回目の薬を飲み、3~5時間後に2回目の薬を飲みます。3.睡眠リズムへの影響を避けるため、毎日できるだけ同じ時間帯に薬を飲んでください。また、2回目の薬を飲んだ後は、就寝まで10時間程度空けるようにしてください。4.飲み忘れた場合は気付いた時点では飲まずに、次に飲む予定の時間帯に1回分を飲んでください。決して2回分を一度に飲まないでください。5.この薬を飲んでいても覚醒状態が正常なレベルに戻らない可能性があるので、自動車の運転など危険を伴う機械の操作を行う場合には医師と相談してください。また、眠気などが現れた場合には、自動車の運転など危険を伴う機械の操作は行わないでください。【ここがポイント!】ナルコレプシーは、日中の過度の眠気や通常は覚醒している時間帯に本人の意思では制御できない居眠り(睡眠発作)、入眠時・出眠時幻覚、睡眠麻痺などを特徴とする睡眠障害であり、タイプ1(NT1)とタイプ2(NT2)に分類されます。NT1は情動脱力発作(カタプレキシー)を伴うことが特徴であり、神経ペプチドであるオレキシンの脳脊髄液中濃度が著しく低下しています。NT1は、脳内でオレキシン産生細胞が脱落することで発症すると考えられており、オレキシン受容体の活性化による覚醒・睡眠および注意力の調節機能が低下します。本剤の有効成分であるオベポレクストンは、NT1を効能・効果とする世界初のオレキシン2受容体選択的作動薬です。本剤は、オレキシン2受容体を活性化することにより覚醒を促進するとともに、カタプレキシーを含む異常なレム睡眠関連症状に作用し、入眠時・出眠時幻覚や睡眠麻痺などの症状を軽減します。NT1患者を対象とした国際共同第III相試験(FirstLight/TAK-861-3001試験)において、主要評価項目である覚醒維持検査による平均睡眠潜時の12週時におけるベースラインからの変化量は、プラセボ群で-1.3分、本剤1mg群で12.5分、2mg群で15.9分でした。12週時におけるベースラインからの変化量のプラセボ群との差は本剤1mg群で13.83分(95%信頼区間[CI]:10.23~17.44)、本剤2mg群で17.20分(95%CI:13.66~20.73)であり、いずれの用量群においてもプラセボ群に対する優越性が検証されました(いずれもp<0.001)。また、副次評価項目であるエプワース眠気尺度合計スコア、1週間当たりのカタプレキシー発現率、精神運動覚醒検査による平均反応遅延回数、患者による変化の全般的印象度スコア、ナルコレプシー重症度尺度合計スコア、ナルコレプシーの機能的影響の評価尺度(FINI)各ドメインスコアならびに自己報告式の健康状態調査票(SF-36)身体的および精神的コンポーネントサマリースコアは、いずれもプラセボ群と比較して本剤群で有意な改善が認められました。「最新!DI情報」は今回で最終回となります。長らくのご愛読ありがとうございました。

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動作緩慢・むせは薬のせい? DLB疑い高齢者の処方で見直すべき3つのポイント【高齢者処方のデザイン】第6回

【症例】患者82歳・男性認知症(レビー小体型認知症[DLB]疑い)、高血圧、慢性腰痛症で訪問診療、グループホーム入所中、臨床虚弱尺度(Clinical Frailty Scale:CFS)6(中等度の虚弱)※)。数ヵ月前から腰痛が悪化し、近医の整形外科において、もともと内服していたアセトアミノフェンに加え、デュロキセチンが処方された。その後、血圧が上昇したため、訪問診療医によってアムロジピンが増量(5mg→10mg)された。また、認知症による幻視を伴う夜間の興奮に対してドネペジルが開始されたが、効果は限定的であり、不眠が出現した。そのため、ハロペリドールが追加された。最近になり、家族から「急に動作が遅くなり、食事中にむせることが増えた」と相談があった。【Before:前医の処方箋】A)ハロペリドール 1mg 1日1回 夕食後B)ドネペジル 5mg 1日1回 夕食後C)デュロキセチン 20mg 1日1回 朝食後D)アセトアミノフェン 300mg 1日3回 朝昼夕食後E)アムロジピン 10mg 1日1回 朝食後A)ハロペリドール 1mg 1日1回 夕食後B)ドネペジル 5mg 1日1回 夕食後C)デュロキセチン 20mg 1日1回 朝食後D)アセトアミノフェン 300mg 1日3回 朝昼夕食後E)アムロジピン 10mg 1日1回 朝食後この症例に対する前医の処方箋には「替えるべきポイント」が3つ隠れている。あなたは見抜けるか? 1) 日本精神神経学会ほか監修. かかりつけ医・認知症サポート医のためのBPSDに対応する向精神薬使用ガイドライン(第3版). 2025.[\[聡田1\]](#_msocom_1) 2) McCarthy LM, et al. Drugs Aging*.* 2022;39:829-840. 3) Arvanitakis Z , et al. JAMA. 2019;322:1589-1599. 4) Jha MK, et al. J Am Coll Cardiol. 2019;73:1827-1845. ※参考サイト日本老年医学会. 臨床虚弱尺度(Clinical Frailty Scale). Version 2.0 (JA). 2021. 講師紹介

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AF治療中に脳梗塞を招く潜在的要因とは

心房細動(AF)患者における経口抗凝固薬(OAC)投与は、脳梗塞予防の中心であるが、適切に治療されていても脳梗塞を発症する事例が存在する。こうしたブレークスルー脳梗塞(breakthrough ischemic stroke)の潜在的原因や、その後の予後への影響は十分に明らかになっていない。そこで、イタリア・University of L'AquilaのFederico De Santis氏らは、AFでOAC継続中に発症した脳梗塞患者を対象に、潜在的な原因と90日転帰との関連を検討した。その結果、潜在的な原因は約半数で認められ、90日以内の脳梗塞再発リスク上昇と関連していた。本研究結果は、Journal of Neurology誌オンライン版2026年8月17日号に掲載された。本研究は、欧州、北アフリカ、中東9ヵ国の脳卒中センター35施設のデータを用いた多施設共同後ろ向き観察研究で、2020年2月~2025年2月に、AFでOAC服用中に脳梗塞を発症した成人患者を対象に解析を行った。また、対象患者は、指標となる脳梗塞発症時にOACを継続的に服用している必要があり、直接経口抗凝固薬(DOAC)服用中の場合は「指標となる脳卒中発症前の7日間、服用を中断することなく、最後の服用が脳卒中症状発症の48時間前以内であること」、ビタミンK拮抗薬(VKA)服用中の場合は「最後の服用から脳卒中症状発症までの経過時間にかかわらず、国際標準化比(INR)が1.5以上であること」と定義された。ブレークスルー脳梗塞の潜在的原因は、OACと相互作用しうる併用薬、活動性がん、心原性塞栓以外の競合する脳梗塞病因とした。主要評価項目は90日以内の新規脳梗塞で、副次評価項目は90日時点のmodified Rankin Scale(mRS)スコア分布、心筋梗塞、全死亡、血管死(致死的な虚血性または出血性脳卒中、突然心臓死、心筋梗塞、またはそのほかの血管イベントによる死亡)、安全性評価項目は中等度~重度出血および頭蓋内出血とした。主な結果は以下のとおり。・解析対象1,649例の年齢中央値は80.4歳(四分位範囲[IQR]:73.2~85.6、女性860例[52.2%])であった。発症時の服用薬剤はDOAC1,275例(77.3%)、VKA374例(22.7%)であった。・ブレークスルー脳梗塞の潜在的原因が1つ以上認められた患者は724例(43.9%)で、潜在的原因が1つのみの患者は544例(33.0%)、複数の患者は180例(10.9%)であった。・潜在的原因の内訳は、OACと相互作用しうる併用薬が469例(28.4%)、心原性塞栓以外の競合する病因が401例(24.3%)、活動性がんが72例(4.4%)であった。併用薬ではプロトンポンプ阻害薬が450例(27.3%)と大半を占め、抗てんかん薬が31例(1.9%)、H2受容体拮抗薬が3例(0.2%)、デキサメタゾンが3例(0.2%)、ケトコナゾールが1例(0.1%)と続いた。・競合する病因では、頭蓋内/頭蓋外大血管アテローム性動脈硬化が240例(14.6%)で最も多かった。・潜在的原因の有無における結果は以下のとおり(その原因を有する患者vs.原因なしの患者)。・高血圧(87.3%vs.76.3%、p<0.001)・脂質異常症(58.1%vs.45.8%、p<0.001)・糖尿病(30.1%vs.24.3%、p=0.009)・心筋梗塞既往(29.3%vs.16.6%、p<0.001)・脳卒中または一過性脳虚血発作(TIA)の既往(28.7%vs.21.8%、p=0.001)・慢性心不全(21.1%vs.13.4%、p<0.001)・慢性腎不全(20.4%vs.13.0%、p<0.001)・末梢動脈疾患(7.3%vs.2.9%、p<0.001)・90日追跡時点で、新規脳梗塞は57例(3.5%)、心筋梗塞は21例(1.3%)、全死亡は334例(20.3%、うち血管死は215例[13.0%])、中等度~重度出血は55例(3.3%)、頭蓋内出血は28例(1.7%)に認められた。・OAC再開までの期間中央値は7日(IQR:3~12)であった。・主要評価項目である90日以内の新規脳梗塞は、潜在的原因を1つ以上有する患者で4.8%、潜在的原因なしの患者で2.4%であり、潜在的原因を有する患者でリスクが有意に高かった(ハザード比[HR]:2.04、95%信頼区間[CI]:1.18~3.53、p=0.011)。・一方、90日時点のmRSスコア分布のオッズ比は1.15(95%CI:0.97~1.37、p=0.106)で、90日以内の心筋梗塞(1.5%vs.1.1%、HR:1.70、95%CI:0.69~4.14、p=0.246)、90日以内の全死亡(22.7%vs.18.4%、HR:1.24、95%CI:0.99~1.55、p=0.057)、90日以内の血管死(13.7%vs.12.5%、HR:1.06、95%CI:0.80~1.40、p=0.697)は、潜在的原因の有無で有意差が認められなかった。・安全性評価項目についても、中等度~重度出血(4.0%vs.2.8%、HR:1.38、95%CI:0.80~2.38、p=0.245)および頭蓋内出血(2.1%vs.1.4%、HR:1.48、95%CI:0.69~3.18、p=0.310)は、潜在的原因の有無で有意差が認められなかった。・逆確率重み付け解析では、相互作用しうる併用薬あり818例となし831例が比較され、90日以内の新規脳梗塞は併用薬あり群4.3%、なし群4.0%で差はなかった(HR:1.08、95%CI:0.67~1.73、p=0.761)。一方、90日以内の心筋梗塞は併用薬あり群で2.3%、なし群で0.7%であり、併用薬あり群で有意に高かった(HR:3.26、95%CI:1.30~8.17、p=0.012)。本研究結果について著者らは、AFに対するOAC継続中に発症するブレークスルー脳梗塞では、薬物相互作用、心原性塞栓以外の脳梗塞病因、活動性がんといった同定可能で一部修正可能な潜在的原因が相当数で認められ、これらを体系的に同定し、積極的に管理することがブレークスルー脳梗塞の予防や2次予防の最適化につながる可能性があるとまとめている。

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認知症高齢者、診断の何年前から自動車事故リスクが高い?

 アルツハイマー病およびアルツハイマー関連認知症(ADRD)の患者は、認知機能の低下により自動車事故のリスクが高まる。この認知機能低下は、診断の数年前から始まっていることも少なくない。自動車事故は、ADRDに関連する認知機能障害の指標となり、早期診断を促進する可能性がある。米国・ブラウン大学のNina R. Joyce氏らは、ADRD患者の自動車事故発生について、診断前までさかのぼり、調査を行った。Journal of the American Geriatrics Society誌オンライン版2026年8月6日号の報告。 2010~17年にADRDと診断されたニュージャージー州のメディケア受給者(69歳以上)を対象(ADRD群)に、マッチング・コホート研究を実施した。対照群を2つ設定した。1つはネガティブコントロール群として、ADRDを有さず、かつ急性心筋梗塞、喘息、慢性閉塞性肺疾患、糖尿病のいずれかを有する患者を選定した。もう1つは、非ADRD群として、復元抽出法を用いて、性別、年齢、診断または請求が行われた暦四半期を基準にマッチさせ、選定した。診断前6ヵ月、1、2、3年における自動車事故発生率はカイ二乗検定を用いて比較し、事故の経時的傾向を調べるために月ごとの発生率をプロットした。 主な結果は以下のとおり。・2010~17年にADRDと診断された対象者4万3,115例を特定した。・自動車事故の発生率は、診断前のすべての期間において、非ADRD群やネガティブコントロール群よりも、ADRD群で高い値を示した。【6ヵ月】2.99%vs.2.31~2.53%【1年】5.26%vs.4.18~4.65%【2年】9.52%vs.7.88~8.67%【3年】13.64%vs.11.29~12.37%・群間差は統計学的に有意であったが、絶対差は小さかった。・ADRD群は、診断前の期間に複数回の事故を起こす傾向が認められたが、複数回の事故は全体としてまれであった(3%未満)。・事故発生率からは、指標となる診断に至るまでの数年間における認知機能低下の明確な兆候は認められなかった。 著者らは「ADRDを有する高齢者は、診断前の3年間において、対照群よりも自動車事故発生率がわずかに高かったものの、その絶対的な差は小さく、事故の再発もまれであった。自動車事故単独では、ADRDの初期段階を示す指標とするには発生頻度が低すぎるため、より感度の高い指標が必要であることが浮き彫りとなった」としている。

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第76回 「アルツハイマー病の芽」が見つかっても遅くない! 15年間の追跡で見えた、食事と認知症リスク3割減の関連

認知症は「なってから」ではなく「なる前」からの備えが大切だといわれます。スウェーデンで約1,900人の高齢者を最長15年間追跡した新しい研究は、血液検査でアルツハイマー病の変化がすでに疑われる人でも、炎症を起こしにくい食事を続けている人では認知症の発症が少なかったと報告しました1)。この結果をどう受け止めればよいのか、今回はこの研究について解説していきます。血液でわかる「認知症の前触れ」アルツハイマー病では、物忘れなどの症状が現れる20年以上前から、脳の中で病的な変化が静かに始まっていることが知られています。そして近年、この変化を血液検査だけで捉えられるようになってきました。今回の研究では、アルツハイマー病に特徴的な変化を反映する「p-tau217」というタンパク質に加え、神経細胞のダメージを反映する「NfL」、脳内の炎症に関わる「GFAP」という3つの血液マーカーを測定し、値が高い(リスクが高い)人と低い人に分けたうえで、食事との関係が調べられました。対象となったのは、ストックホルムに住む60歳以上で認知症のない1,865人です。地中海食への近さ(AMED)、心臓や血管によい食事の指標(AHEI)、そして食事が炎症をどれだけ起こしにくいかを示す指標(rEDII)という3つの「食事パターン」への当てはまり具合が繰り返し評価され、平均8.4年、最長15年にわたり追跡されました。この間に240人が認知症を発症しています。リスクが高い人ほど際立った「抗炎症の食事」との関連注目すべきは、血液マーカーが高い、いわばリスクの高いグループでの結果です。炎症を起こしにくい食事、具体的には野菜や果物、全粒穀物、魚などが多く、赤身肉・加工肉や甘い飲み物が少ない食事のスコアが高い人ほど認知症の発症リスクは低く、その差はp-tau217が高い人で29%、NfLが高い人で21%、GFAPが高い人で27%と報告されました。さらに、p-tau217が高くても食事の質が高い人では、その後の10年間で認知症のない状態で過ごせる時間の損失が最大で約0.9年分少ないとも推定されています。一方で、地中海食などとの関連はむしろマーカーが低い人で目立つなど、食事パターンごとに関連の現れ方が異なる点も、この研究の興味深いところです。「もう手遅れ」ではない! ただし過信も禁物専門家は、この研究の意義を「脳にすでに病気の芽がある人でも、食事との関連が見られた点」にあると指摘しています2)。これまで食事に関する臨床試験で効果がはっきりと示されなかった背景には、脳の変化がほとんどない健康な人を主な対象としてきたことがあるのかもしれません。血液検査でリスクの高い人を選び、そうした人に食事の介入を試すという、次の世代の臨床試験への足掛かりになると期待されています。ただし、注意も必要です。これはあくまで観察研究であり、食事が認知症を防ぐと証明されたわけではありません。健康的な食事を取る人は運動習慣など他の生活習慣も健康的である可能性がありますし、対象が都市部の比較的教育水準の高い集団に偏っているという限界もあります。それでも、「血液検査で異常が見つかっても、生活習慣を整えることは無意味ではないかもしれない」と示唆した点は、多くの人にとって希望につながる知見といえるでしょう。特別なサプリメントではなく、野菜・果物・魚・全粒穀物を中心とした日々の食卓こそが、脳を守る第一歩なのかもしれません。1) Mrhar A, et al. Diet quality and dementia risk in older adults with Alzheimer pathology. JAMA Netw Open. 2026;9:e2620254.2)Charisis S, et al. Diet and dementia risk in individuals with prevalent neuropathology. JAMA Netw Open. 2026;9:e2620261.

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収益率が高い?ゴミ屋敷は困る?在宅医療、医師1,000人アンケート結果

 今後、本邦では医療・介護の複合ニーズを有する85歳以上の高齢者の増加が見込まれ、2020~40年にかけて、85歳以上の救急搬送は75%増加し、在宅医療需要は62%増加すると推計されている。CareNet.comでは会員医師1,027人を対象に、在宅医療への従事状況・従事意向、魅力やハードルと感じる点について聞くアンケートを実施した(2026年7月23~24日実施)。53.1%が在宅医療への従事経験あり、診療科別では? 現在、または過去の在宅医療(訪問診療または往診)への従事状況について聞いた質問では、「主たる業務として従事している(週4日以上)」が6.5%、「外来診療の合間などに、定期的に従事している」が15.9%、「かかりつけ患者の急変時など、不定期に行っている(往診のみなど)」が7.4%、「過去に従事していたが、現在は行っていない」が23.3%と、従事経験のある医師が53.1%を占めた。「これまで従事したことはない」は46.9%であった。 診療科別にみると、現在何らかの形で従事している医師が最も多かったのは総合診療科(55.5%)で、外科(50.0%)、内科(45.4%)、皮膚科(40.6%)、腫瘍科(37.5%)などが続いた。「積極的に従事したい/従事量を増やしたい」と回答した医師は12.0% 今後の従事意向について聞いた質問では、「積極的に従事したい/従事量を増やしたい」との回答が12.0%で、「機会があれば従事してみたい/現状維持で継続したい」が48.8%と最も多かった一方、39.2%は「従事したくない/減らしたい」と回答した。 年代別にみると、「積極的に従事したい/従事量を増やしたい」との回答は10.7~13.3%と大きな差はなかったが、「従事したくない/減らしたい」との回答は30代では30.0%と最も少ない一方で、60代では46.0%と多い傾向がみられた。魅力/ハードルと感じる点について、最も多かった回答は? 在宅医療への従事状況に応じて「現在従事している」「過去に従事していたが、現在はしていない」「従事したことがない」の3群に分けて、在宅医療の魅力・メリットと感じる点について聞いた結果(上位3つまでの複数回答)、最も多かったのは、すべての群で「1人の患者を全人的に診ることができる(55.6%/51.0%/35.7%)」であった。2番目に多かった回答は、「現在従事している」医師では「生活に寄り添った診療ができる(33.0%)」であったのに対し、「過去に従事していたが、現在はしていない」「従事したことがない」医師では「収入面(28.5%/22.4%)」であった。 同様に、在宅医療に従事するに当たり「ハードル(障壁)」と感じる点について聞いた質問では、従事状況によらず「24時間365日の対応(オンコール負担)」が最も多く(54.9%/69.9%/57.7%)、「緊急時のバックアップ体制の欠如」が続いた(54.9%/48.5%/44.2%)。「自宅にいるときの笑顔がよい」などポジティブな意見がある一方、ゴミ屋敷問題なども… 在宅医療の現場で医師としてやりがいを感じたエピソード、実際に直面した困難、制度や環境の課題と感じる点について、自由記述で聞いた質問では、「自宅にいるときの笑顔がよい(50代・外科)」「1人の人の人生において、医療以外のことを尊重した医療的な提案ができる(40代・内科)」などのポジティブな意見が寄せられた一方、「他人の家へ入ることは危険。以前殺人事件も起こったが対策しようがない(60代・内科)」「ゴミ屋敷は困る(40代・泌尿器科)」といった、安全面・衛生面での懸念も寄せられた。 そのほか、多職種・複数の医療機関や施設間で連携することについて、「グループ診療で相談ができる(60代・内科)」という声がある一方で、「施設往診をしているが、施設ごとに患者データの報告レベルが違いやりにくい(60代・外科)」といった課題も寄せられた。利益面についても、「利益率が高い(60代・糖尿病・代謝・内分泌内科)」「入院医療費がカットできるのは大きい(50代・神経内科)」といったプラスの側面が挙げられた反面、「今後診療報酬が下がりそう(50代・循環器内科)」という声もあった。 その他のアンケート結果・詳細は以下のページに掲載中。「在宅医療への従事状況・従事意向/医師1,000人アンケート」

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「軽度な幻覚」はDLBとADの早期鑑別のバイオマーカーとなりうるか

 アルツハイマー型認知症(AD)とレビー小体型認知症(DLB)の早期鑑別は、とくに認知機能プロファイルの重複が大きい初期段階において、依然として課題となっている。疾患ごとに治療方針が異なるため、ADとDLBの正確な診断の重要性はますます高まっている。スペイン・Hospital San Vicente del RaspeigのMarina Ruiz Pinero氏らは、初期のADとDLBの臨床的、神経心理学的、知覚的特徴を比較し、とくに「軽度な幻覚」に焦点を当てて、両疾患の鑑別における診断的有用性を評価した。Journal of Alzheimer's Disease誌2026年9月号の報告。 本プロスペクティブ横断研究の対象は、疾患特異的バイオマーカーにより診断が確定した、軽度段階(GDS3~4)のAD患者60例およびDLB患者61例。対象者には、標準化された臨床評価、包括的な神経心理学的検査、精神病症状の構造化評価、パレイドリアテストを含む知覚検査を行った。鑑別精度を評価するため、群間比較およびROC解析を実施した。 主な内容は以下のとおり。・全般的認知機能、注意、遂行機能、言語機能、視空間認知能力については、両群間で大きな重複が認められた。・エピソード記憶障害は、すべての再生指標においてAD群のほうが有意に重度であった。・対照的に、DLB群では中核的臨床症状の有病率が高く、「軽度な幻覚」の頻度も著しく高かった(DLB群54.1%vs.AD群13.3%)。・パレイドリア反応は、DLB群で有意に多く認められ、知覚関連の指標の中で最も高い鑑別精度を示した。・「軽度な幻覚」の存在は、DLBに対して高い陽性的中率を示した。 著者らは「疾患の初期段階において、『軽度な幻覚』および知覚異常に対する感受性により、標準的な認知機能検査よりも効果的にDLBとADを鑑別することが可能である。日常臨床において、これらの現象をシステマティックに評価することは、早期診断の精度向上に寄与する可能性がある」と結論付けている。

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アメフト選手は死亡時のCTE有病率が高い/BMJ

 慢性外傷性脳症(CTE)は、反復的な頭部への衝撃を高頻度に受けたコホートにみられる神経変性疾患であり、CTEは死後の神経病理学的評価に基づいてのみ確定診断が可能とされる。米国・ハーバード大学のDaniel H. Daneshvar氏らは、2016~21年に死亡した同国のナショナル・フットボール・リーグ(NFL)の元選手の少なくともほぼ4分の1が、死亡時にCTEに罹患しており、脳提供者では生前の記録に基づく認知症の頻度が高く、認知症はステージIVのCTEと関連することを示した。研究の成果は、BMJ誌2026年8月25日号で報告された。元選手1,712人の後ろ向きコホート研究 研究グループは、元NFL選手における死亡時のCTEの有病率を明らかにし、CTEの重症度と認知症リスクとの関連を評価する目的で、人口ベースの後ろ向きコホート研究を行った(米国国立神経疾患・脳卒中研究所[NINDS]などの助成を受けた)。 2008~21年に死亡した元NFL選手1,712人(死亡時平均年齢70.4歳、NFL選手としての平均期間5.37年)を解析の対象とした。このうち神経病理学的評価のための脳提供者は338人(19.7%)で、これらの元選手の死因が特定された。 病歴や選手歴を伏せた状態で、神経病理学者が死後のCTEの診断およびステージIVのCTEについて評価した。次いで、神経病理学的所見を伏せた状態で、臨床医が脳提供者の医療記録や病歴を確認し、認知症の判定を行った。 主要評価項目は、研究対象の期間中と脳提供が最も多かった6年間(2016~21年)における死亡時のCTEの有病率であった。脳提供者の93.2%がCTE 脳提供者338人のうち315人(93.2%)がCTEと診断された。これにより、死亡した1,712人の元NFL選手における死亡時のCTEの有病率は、18.5~98.7%の範囲と推定された。 また、脳の提供が最も多かった2016~21年の死亡時の推定CTE有病率は、24.5~97.7%の範囲だった。 脳提供者のうち、104人(30.8%)がステージIVのCTEであり、202人(59.8%)は臨床医により認知症(発症年齢63.4[SD 12.5]歳、死亡時年齢73.1[同 10.5]歳)と診断された。また、63人(18.6%)は、神経変性疾患が最も可能性の高い死因と記載されていた。 脳提供者では、ステージIVのCTEは、認知症の診断と関連していた(リスク比:1.44、95%信頼区間:1.16~1.78、p<0.001)。したがって、死亡時のステージIVのCTEは、これを有さない場合に比べ認知症と診断されるリスクが高いとの仮説が証明された。 認知症と診断された脳提供者202人のうち、最も可能性が高いか、2番目に高い死因として神経変性疾患が記載されていたのは40.6%(82例)にすぎなかった。一般人口に比べCTE有病率が高い可能性 著者は、「これらのデータは、神経変性疾患による死亡率の上昇が、CTEの病理とどの程度関連しているかに関する知見を提供し、今後の研究や施策の提言に向けた指針を示すもの」としている。 また、「NFL選手における死亡時のCTE有病率は、これまでに複数の地域社会ベースの研究で示されたものよりも高いことが示唆される」「本研究のデータは、死亡時のCTEの重症度がNFL選手の脳提供者における認知症と関連し、これらの脳提供者では認知症の頻度が高いことを示している」「先行研究では、外傷性脳損傷に繰り返し曝露されたコホートでは、複数の病変が偶然の確率よりも高い頻度で併発し、これらの病変のいくつかは認知症と関連したことから、ある病変の存在が他の病変の発症リスクを高める可能性が示唆される」と指摘している。

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【GET!ザ・トレンド】原因不明の多臓器症状に潜む「ミトコンドリア病」と創薬の最前線

はじめに:早期診断の鍵は、ミトコンドリアの「SOS」を見抜く力にかかっている「少しの運動による著しい疲弊(運動不耐症)」「若年期からの難聴や糖尿病」「発熱や代謝負荷に伴う急激な症状悪化」など、日常外来で単なる「原因不明の慢性疲労」や不定愁訴、あるいは個別の臓器疾患として片付けられがちな症状の背景には、エネルギー代謝の根幹を担うミトコンドリアの機能異常「ミトコンドリア病」が隠れている可能性がある。こうした希少神経筋疾患や先天性代謝異常症の診療・研究の第一線で長年患者と歩んできた、自治医科大学小児科学講座の小坂 仁氏に話を伺った。同氏によれば、ミトコンドリア病は多臓器にまたがる複雑な病態で主訴も多岐にわたるため、一般外来で診断に至らず長年苦しむ患者が少なくないという。そして彼らを早期診断・適切な医療へとつなぐ鍵は、「多臓器症状を細胞のエネルギー不足という共通軸で捉え直す視点」にあると指摘する。なお、毎年9月の第3週は「世界ミトコンドリア病啓発週間(World Mitochondrial Disease Week)」として、International Mito Patients(IMP)を中心に、世界規模で疾患の認知向上と研究推進に向けたキャンペーンが展開されている。この機会に、日常診療の背後に潜むミトコンドリアからの「SOS」にあらためて目を向けてみたい。1. 疲れやすさの影に潜む多臓器症状:「個別の不調」を線でつなぐ視点「細胞のエネルギー不足」という診断の共通軸ミトコンドリア病診療において、小坂氏がまず強調するのは、単なる「疲れ」として見過ごされがちな症状の質だ。「ミトコンドリア病はウルトラレア(超希少)と思われがちですが、決して診る機会のない疾患ではありません。ただ、病態が複雑なため『どう疑うか』が難しいと感じる先生も多いようです。もちろん、単に『疲れやすい』という主訴だけで本症を疑うのは現実的ではありません。重要なのは、疲労感の質と多臓器症状の合併です」と同氏は語る。軽微な労作で著しく体力を消耗する運動不耐症や進行性の筋力低下に加え、エネルギー需要の高い心筋、耳(内耳)、内分泌系(膵臓)などの障害、具体的には若年発症の難聴、糖尿病、心筋症、片頭痛などが複数併存している場合、それらを個別の疾患として捉えるのではなく、細胞のエネルギー不足という共通軸で評価することが診断の第一歩になるという。「増悪のタイミング」を問診するさらに小坂氏が注意を促すのが、過度の代謝負荷がかかった局面に現れる「急激な症状の顕在化」だ。「普段は静かに順応して生活していても、体に急激なエネルギー需要が発生すると、一気に症状が表出する特徴があります」と同氏は指摘する。小児期のリー(Leigh)症候群などでは、発熱や感染症、激しい運動などを契機に、突然の痙攣や意識障害、呼吸不全などが引き起こされる。また成人期のミトコンドリア脳筋症・乳酸アシドーシス・脳卒中様発作症候群(MELAS)などにおいても、過食や過度な運動、精神的ストレスが誘因となり、脳卒中様発作や激しい頭痛として顕在化するケースがあるという。「日常外来において『症状が急激に悪化したとき』の問診を丁寧に拾い上げること、そして小児例であれば脳MRIで脳血管支配に一致しない脳卒中様病変や、両側基底核や脳幹に左右対称性の病変がないかを確認することが、きわめて強力な診断の手掛かりになる」と同氏は語る。「母系遺伝」という固定観念からの脱却診断の過程で留意したいもう1つのポイントが、遺伝形式に対する理解だという。「『ミトコンドリア病=母系遺伝』という印象が強いかもしれませんが、実際には常染色体遺伝やX連鎖遺伝など多様な遺伝形式が存在します。とくに小児発症例では核DNA上の病的バリアントによるものも多く、常染色体潜性遺伝(劣性遺伝)では両親が無症状であることも少なくありません」と同氏は説明する。一方で、成人期に多いMELASなどのミトコンドリアDNA変異では母系遺伝を認める。そのため、「母系親族における若年性の難聴、糖尿病、片頭痛、筋力低下、腎障害などの集積がないか」を問診することは、病型を見抜くうえできわめて有効な鍵になると同氏は強調する。こうした問診や観察のポイントを踏まえ、一般外来でミトコンドリア病を疑うための臨床チェックリストを下表にまとめた。表 一般外来で疑うための臨床チェックリスト疲れの質:少しの労作で極端に疲弊する「運動不耐症」はあるか?多臓器症状:若年難聴、糖尿病、心筋症、片頭痛、腎障害などが「複数」重なっていないか?増悪の契機:発熱・感染・過食・激しい運動・精神的ストレスなどで「急激に増悪」したエピソードはあるか?遺伝形式の解釈:「母系遺伝=すべてのミトコンドリア病」ではない。家族歴がなくても、小児発症例では核DNA上の病的バリアントによるものも多いことを念頭に置く。2. 対症療法から根本病態への介入へ:最新創薬が拓く未来と意外な広がり着実に進む臨床応用への歩み長らく対症療法に限られてきたミトコンドリア病だが、近年は国内外で新薬開発の動きが大きく加速している。小坂氏はその最前線について次のように語る。「現在、世界中で低分子化合物や遺伝子治療など多様なアプローチによる創薬が進んでいます。国内においても、東北大学で見いだされ、第II相臨床試験中であるMitochonic acid-5(MA-5)は、ミトコンドリア病の幅広い遺伝的背景の患者由来細胞でATP産生を促進することが示されている化合物であり、臨床現場からの期待も非常に大きい『希望の星』です。また、パーキンソン病治療薬アポモルフィンの化学構造を出発点に、ドパミン作用を抑え、ミトコンドリア機能改善作用に着目した誘導体を開発しています。現在、安全性の向上を目指しながら前臨床研究を進めています」。さらに、MELASの脳卒中様発作抑制薬としてタウリンが世界に先駆けて日本で承認・実用化された実績もある。「病態の解明から臨床応用まで日本人が主導したこの成功体験は、希少疾患研究における誇るべき足跡なのです」と同氏は強調する。パーキンソン病や老化現象の未来を変えるポテンシャルなぜ、希少疾患とされるミトコンドリア病の創薬にこれほどの期待が寄せられるのか。小坂氏は、その影響範囲が希少疾患にとどまらず、臨床医が日常で遭遇する加齢性疾患や神経変性疾患にまで及ぶ点を示唆する。「ミトコンドリアの機能低下は、パーキンソン病などの神経変性疾患や老化現象とも密接に関与しています。ミトコンドリア病研究から得られた知見が、パーキンソン病などの神経変性疾患や加齢に伴う病態の理解、新たな治療標的の発見につながる可能性があります。希少疾患研究は、私たちが日常的に診ている疾患の治療をも大きく変えるポテンシャルを秘めているのです」と同氏は語る。3. 「患者の熱意が、医師と研究者を突き動かす」:二人三脚の歩み「共に治療法を創るパートナー」へインタビューの終盤、小坂氏が最も熱を込めて語ったのは、長年共に歩んできた患者やその家族との深い絆であった。ミトコンドリア病における患者用ハンドブックの作成や診療マニュアルの編集は、単なる医師主導のプロジェクトではない。かつて患者・家族と医師たちが合宿形式で膝を突き合わせ、情熱を注ぎ込みながら形作られてきた歴史がある。「患者さんや、『わが子を救いたい』というご家族の切実な声に接したとき、私たち医師や研究者のエンジンが一気に掛かるのです」と同氏は振り返る。実際、国内で進む創薬プロジェクトの多くも、患者・家族とアカデミアの強い結びつきから生まれている。患者である「七海(ななみ)ちゃん」のご家族と一般社団法人こいのぼりが主体となり、自ら研究資金を募りアカデミアと連携して治療薬開発を推し進めた「7 SEAS PROJECT(セブン・シーズ・プロジェクト)」はその象徴的な例だ。「こうした動きは、もともと海外で先行して活発に行われてきたものでもあります。海外では患者会が自ら巨額の研究費を募り、米国食品医薬品局(FDA)や世界の研究機関を動かして開発を牽引する活動が行われています。希少疾患の医療においては、患者と医師・研究者が対等なパートナーとして手を取り合い、新たな治療法を一緒に創り出していくという側面が非常に強いと感じています」と同氏は語る。おわりに:日常外来の「1つの選択肢」が患者の未来を変える最後に小坂氏は、一般外来で日々多様な病態と向き合う医師たちに向けて、次のようなメッセージを寄せた。「多臓器にまたがる原因不明の不調を訴える患者さんを前にしたとき、頭の片隅に『ミトコンドリア病かもしれない』という選択肢が存在するかどうか。その可能性への思いが、長年原因がわからず診療科を転々としてきた患者さんを早期の専門医療へとつなぐ鍵となります」。日常診療の背後に潜むミトコンドリアのSOSに耳を傾け、希少疾患領域から発信される最新の知見に目を向ける。そのアプローチは、ミトコンドリア病の克服にとどまらず、多様な疾患の治療法を切り拓く未来の医療への第一歩となる。(ケアネット 三浦 愛子)

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患者さんを泣かせちまった【Dr. 中島の 新・徒然草】(647)

六百四十七の段 患者さんを泣かせちまった日中は暑いですが、夜になると秋の虫が全力で鳴いていますね。知らないうちに8月も終わってしまいました。さて、先日の脳外科外来でのこと。 ナース 「先生、次の患者さん、ちょっとお怒りモードです」 患者さんが診察室に入る前に外来ナースに言われました。40代の女性、病気はてんかんです。 中島 「障害年金が止まってしまったわけですね」 患者 「そうなんですよ!」 中島 「いくらもらっていたんですか?」 患者 「月○万円ですけど、それがなくなると急に苦しくなってしまって」 中島 「そりゃあ大きいですね」 そう言いつつ、前任者が4ヵ月前に作成した診断書を確認しました。形式的な不備はどこにもありません。てんかんの発作回数、脳波の所見、現在の処方、すべて正確に記載されています。おそらく、治療によってコントロール良好と判断されて年金の基準に届かなかったのでしょう。 中島 「で、申請し直したいと」 患者 「そうなんですよ。ちょっと悪めに書いてもらうわけにはいきませんか?」 悪めに書くというのは、たとえば発作回数が年1回だったら年3回にする、といったようなことです。 中島 「いやあ、診断書にウソを書くというわけにはいきませんので」 そう言うと、彼女は目に見えてガッカリしました。 中島 「ただ、診断書作成に当たっては、もう少し詳しくお話を伺ったほうがよさそうですね」 何のことか、彼女は理解できていないようでした。 中島 「発作はどんなタイプですか?」 患者 「全身痙攣です。去年は職場で倒れて救急車を呼ぶ騒ぎになりました」 中島 「なるほどね。今年はまったく起こっていないのでしょうか?」 患者 「ありました。自宅だったからよかったのですが」 中島 「それはいつのことですか」 患者 「1ヵ月ほど前ですね」 前任者が診断書を作成したのは4ヵ月前だから、その後に発作が起きたことになります。これは追加できるぞ! 中島 「そのほかに、ご自身が自覚していない発作なんかありませんか」 患者 「気付いていない発作?」 中島 「たとえば睡眠中の発作ですよ。朝起きたら舌を噛んでいたとか、失禁していたとか」 患者 「それだったら、時々ありますよ」 中島 「平均して月に何回とか」 患者 「月に何回もありません。せいぜい年に2回とか3回とか、かな」 これも貴重な追加情報です。 中島 「それとですね、一時的にボーッとして『あんた何してんの?』と職場の同僚から言われたりしませんか?」 患者 「娘に指摘されます。『お母ちゃん、また魂が抜けてるで!』って」 中島 「おっ、それは平均してどのくらいの回数ですか?」 患者 「平均? 難しいですね」 中島 「すみません。多い時はどのくらいですか?」 患者 「3日くらい連続で指摘されることもあります」 中島 「少ない時は?」 患者 「何ヵ月もありません」 これらを集めれば、ウソをつくことなく支給基準を満たせそうです。 中島 「ところで、娘さんはおいくつですか?」 患者 「18歳で、こないだ大学に入ったばかりなんです」 中島 「それはいろいろとお金もかかりますね」 患者 「そうなんですよ」 中島 「ご主人も娘さんのために馬車馬のように働いているとか?」 患者 「私、離婚してバツイチなんです」 余計なことを言ってしまったかな。 患者 「娘の父親には連絡も取っていません」 中島 「ということは、養育費ももらっていないわけですね」 患者 「99%の父親が子供の養育費を払っていないんじゃないですか?」 中島 「最近は法律も変わって、養育費の支払いも厳しくなったと聞きましたが」 患者 「もう今さら当てにしていません。娘にはね、『お父さんみたいな男に引っ掛かったら駄目よ』と言い聞かせています。物心つく前に別れたんで、父親の顔も知らないんですけど」 中島 「じゃあ、娘さんには良いお婿さんを捕まえてもらいたいですね」 患者 「本当にそうです!」 なんか地雷を踏んでしまったみたい。こうなったら架空のお婿さんを演じることにしましょう。 中島 「お婿さんがね、『お母さん、もうお金の心配はしなくていいですよ』とか言ってくれたら」 患者 「そんな嬉しいことはありません。でも、私もいつまでも年金をもらうつもりはないんです」 中島 「『年金なんかもらっておいたらいいじゃないですか』」 患者 「もらっていいんですか?」 中島 「『いいですよ、実際に病気があるんだし』」 患者 「そうかな」 中島 「『もうね、お母さんが』……えっと、娘さんのお名前は?」 患者 「美しい羽と書いて美羽(みう)と読みます」 中島 「じゃあ、あれですね。『美羽さんをここまで育ててくれただけで、世界一のお母さんですよ!』」 患者 「そんなことを言われたら泣いちゃいます」 中島 「『幸い私はリッチマンですから、美羽さんとお母さんの面倒をまとめて見てあげましょう』とか」 患者 「グスン、グスン、エーン!(泣)」 いや、私は単にお婿さんのフリをしただけですけどね。ついつい泣かせてしまいました。診察の後、私は全力で診断書を作成しましたよ、何一つウソをつくことなく。うまく年金が復活してくれたらいいのですけど。ということで最後に1句 虫の声 ウソを書かない 診断書注:もちろん娘さんの名前は仮名です。念のため。

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