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猛暑は熱中症や心血管イベントのリスク因子として知られているが、認知症発症に対する長期的影響については十分なエビデンスが蓄積されていない。日本の大規模高齢者コホートを用いて、長期にわたる極端な暑熱曝露と認知症発症および全死亡との関連を検討した結果が発表された。東京科学大学・公衆衛生学分野の森田 彩子氏らによる本研究は、Alzheimer's & Dementia誌2026年1月4日号に掲載された。 2016~19年に実施された日本老年学的評価研究(Japan Gerontological Evaluation Study:JAGES)の縦断データを用いた。対象は、同一自治体に30年以上居住し、認知症がなく自立して生活している65歳以上の高齢者5万7,178例であった。認知症発症および死亡は、公的な介護保険データから特定した。極端な暑熱曝露は、地域ごとの気候分布に基づく90パーセンタイルまたは99パーセンタイルを超える高温日数として定義し、曝露指標には、複数年の影響を捉える累積曝露(1~3年間の合計日数)と各年の独立した影響を評価する単年曝露を用いた。 評価項目は認知症発症、全死亡のオッズ比(OR)であった。年齢、性別、社会経済的要因、健康状態などの交絡因子を調整した上で、暑熱曝露と転帰との関連を検討した。 主な結果は以下のとおり。・追跡期間中、2,454例(4.3%)が認知症を発症し、2,375例(4.2%)が死亡した。・1~3年間の曝露量が多いほど、すべての結果におけるORは高くなった。1年間の累積曝露の場合、認知症発症のORは1.081、全死因死亡率は同1.135、複合結果は同1.241だった。また、極端高温日が7日間増加するごとに、認知症発症のオッズは9%、全死亡のオッズは13%上昇した。・さらに著者らは、2016~18年に観測されたレベルの猛暑曝露は、認知症発症のオッズを1.43倍、死亡のオッズを1.63倍に高めたと試算した。 研究者らは、「生物学的メカニズムとしては、熱による神経変性、アポトーシス、記憶に重要な脳領域である海馬におけるアミロイドβプラークの沈着などが考えられる。また、熱ストレスはさまざまなストレス要因をもたらし、運動能力を低下させる可能性がある。これは社会的孤立や運動量の減少、睡眠不足、慢性疾患の不適切な管理といった不健康な行動につながり、これらはすべてその後の数年間で認知機能の低下や死亡を加速させる可能性がある。高齢者診療においては、熱中症予防だけでなく、長期的な脳健康維持の観点からも暑熱対策が重要となる」としている。