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慢性期外傷性脳損傷に初の再生医療 バンデフィテムセル発売/サンバイオ

 サンバイオが開発した細胞治療薬バンデフィテムセル(商品名:アクーゴ)が慢性期外傷性脳損傷(TBI)の治療に承認・発売された。2026年6月に行われた「アクーゴ脳内移植用注発売メディアセミナー」で紹介された基礎と臨床の専門家の知見を詳報する。不可能だと考えられていた脳神経細胞の再活性化を実現 再生医療においては幹細胞が非常に大きな役割を果たす。幹細胞には体を構成するほぼすべての組織に分化可能な多能性幹細胞(iPS細胞やES細胞)と一定の限られた細胞種に分化する体性幹細胞(間葉系幹細胞、造血幹細胞、神経幹細胞など)がある。体性幹細胞は生体組織に存在するため、選択的に増やすあるいは分離することで再生医療に活用できる。 サンバイオ創業科学者で慶応義塾大学再生医療リサーチセンターの岡野 栄之氏による、神経幹細胞マーカーであるRNA結合蛋白質Musashi-1の同定からバンデフィテムセル開発の歴史は始まる。岡野氏らはMusashi-1を活用し、ヒト成人脳に幹細胞があること、脳細胞が新たにニューロンを作っていることを見いだし、サンバイオと製品化に向けた共同研究をスタートした。 バンデフィテムセルはNotch-1細胞内ドメイン遺伝子をヒト骨髄由来の間葉系幹細胞に導入したヒト体性幹細胞加工製品。同細胞は脳内に元々存在するFGF-2などの増殖因子を分泌させることで、神経細胞が本来持つ再生能力を活性化して神経細胞の増殖・分化を促進する。STEMTRA試験が証明したバンデフィテムセルによる慢性期TBIの機能改善1) 川堀 真人氏が所属する北海道大学大学院医学研究科 脳神経外科はバンデフィテムセルの臨床試験であるSTEMTRA試験で最も多くの症例を登録した。川堀氏はTBI診療の最前線で、治らないと宣告される患者の絶望を目の当たりにしてきた。TBIは転落などの日常的な原因で発生し、多様な神経・認知機能障害を伴う疾患である。日本国内では年間約6万人発症、入院患者は1万2,000人とされる。急性期から回復期においては高次脳機能障害や運動機能障害が残る。 バンデフィテムセルを用いた国際共同治験STEMTRA試験は、日・米・ウクライナの多施設で実施された。プラセボ群に偽手術を採用した厳格な二重盲検試験である。頭部外傷後12ヵ月以上経過した患者を対象に、バンデフィテムセルを0個(プラセボ)、250万個、500万個、1,000万個投与の群に無作為に割り付けた。結果として、バンデフィテムセル(500万個)投与群ではFugl-Meyer運動機能スコア(FMMスコア)がプラセボ群に比べ6点(8.3点vs.2.3点)、有意に改善した(p=0.04)。川堀氏は「改善が目で見てわかるのはFMMスコア10点程度」だと言う。FMMスコア10点改善が見られた患者はバンデフィテムセル群で40%、プラセボ群では6%であった。 TBI後の機能改善が確認されたものの、バンデフィテムセルの効果には未解明な点も多々ある。川堀氏は「どの部位に、どの程度の細胞量を投与するのが最適か、そして高次脳機能障害への具体的な効果はどの程度か。これらは今後、実際の臨床現場で医師たちがデータを蓄積し、解明していくべき課題」と述べ、今後のエビデンス構築の重要性を訴えた。再生医療とリハビリテーションの新たな融合 慶應義塾大学リハビリテーション医学教室の川上 途行氏は、再生医療とリハビリテーションの融合が今後重要になると説く。 脳損傷において、急性期と回復期の間はリハビリテーション効果が発揮されるが、この期間を過ぎて慢性期になると治療選択肢は非常に少なくなる。多くのTBI患者は、この後どうやっていけばいいのかと不安を抱えることになる。 STEMTRA試験の成績について川上氏は「通常みられるFMMスコアの改善は2~3点程度。この数値であれば、患者さんも体が動くようになっていることを実感できるのではないか。最適なリハビリテーションを上乗せしたら、スコアはさらに上がる可能性がある」と言う。未来へのビジョン―適応疾患の拡大とグローバル展開 サンバイオ代表取締役社長である森 敬太氏は、25年にわたる開発の道のりを回顧しつつ、未来を見越す。TBIからはじまり、今後は脳梗塞、認知症、アルツハイマーなど、多くのアンメット・メディカル・ニーズに応えるべくバンデフィテムセルの疾患領域を拡大していくと表明した。また、日本だけでなく米国そして世界へと展開させる意向も示した。

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阪神ファンの認知症患者、優勝後にBPSDが大きく改善!?

 認知症は、認知機能の低下とそれに伴う行動・心理症状(BPSD)を特徴とする疾患であり、社会問題として深刻化している。大阪・脳神経内科はつたクリニックの初田 裕幸氏は、日本の関西地方に在住する認知症患者855例を対象に、プロ野球の試合結果とBPSDの変化との関連を調査するため、探索的レトロスペクティブ研究を実施した。Geriatrics & Gerontology International誌2026年5月号の報告。 主な内容は以下のとおり。・阪神タイガースファンの認知症患者19例において、2023年のセントラルリーグ優勝後、BPSDスコアの有意な低下が認められた。・さらに詳細な分析では、攻撃的・侮辱的な言葉の使用、無関心・無気力、興奮・焦燥感、昼夜逆転、抑うつ・憂鬱な気分といった症状の有意な低下が認められた。・これらの結果から、感情的に影響を及ぼすスポーツイベントが、お気に入りのチームに強い愛着を持つ認知症患者のBPSDの変化と関連している可能性が示唆された。 著者らは「サブグループの規模や研究デザインに制約はあるものの、本結果は、とくに注目度の高いスポーツイベント観戦が、認知症ケアにおける行動症状に測定可能な影響をもたらす可能性を示唆するものであり、今後のプロスペクティブ研究でさらに調査する必要があるという予備的な証拠を提供するものである」としている。

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猛暑への長期曝露、認知症発症リスクを高める可能性

 猛暑は熱中症や心血管イベントのリスク因子として知られているが、認知症発症に対する長期的影響については十分なエビデンスが蓄積されていない。日本の大規模高齢者コホートを用いて、長期にわたる極端な暑熱曝露と認知症発症および全死亡との関連を検討した結果が発表された。東京科学大学・公衆衛生学分野の森田 彩子氏らによる本研究は、Alzheimer's & Dementia誌2026年1月4日号に掲載された。 2016~19年に実施された日本老年学的評価研究(Japan Gerontological Evaluation Study:JAGES)の縦断データを用いた。対象は、同一自治体に30年以上居住し、認知症がなく自立して生活している65歳以上の高齢者5万7,178例であった。認知症発症および死亡は、公的な介護保険データから特定した。極端な暑熱曝露は、地域ごとの気候分布に基づく90パーセンタイルまたは99パーセンタイルを超える高温日数として定義し、曝露指標には、複数年の影響を捉える累積曝露(1~3年間の合計日数)と各年の独立した影響を評価する単年曝露を用いた。 評価項目は認知症発症、全死亡のオッズ比(OR)であった。年齢、性別、社会経済的要因、健康状態などの交絡因子を調整した上で、暑熱曝露と転帰との関連を検討した。 主な結果は以下のとおり。・追跡期間中、2,454例(4.3%)が認知症を発症し、2,375例(4.2%)が死亡した。・1~3年間の曝露量が多いほど、すべての結果におけるORは高くなった。1年間の累積曝露の場合、認知症発症のORは1.081、全死因死亡率は同1.135、複合結果は同1.241だった。また、極端高温日が7日間増加するごとに、認知症発症のオッズは9%、全死亡のオッズは13%上昇した。・さらに著者らは、2016~18年に観測されたレベルの猛暑曝露は、認知症発症のオッズを1.43倍、死亡のオッズを1.63倍に高めたと試算した。 研究者らは、「生物学的メカニズムとしては、熱による神経変性、アポトーシス、記憶に重要な脳領域である海馬におけるアミロイドβプラークの沈着などが考えられる。また、熱ストレスはさまざまなストレス要因をもたらし、運動能力を低下させる可能性がある。これは社会的孤立や運動量の減少、睡眠不足、慢性疾患の不適切な管理といった不健康な行動につながり、これらはすべてその後の数年間で認知機能の低下や死亡を加速させる可能性がある。高齢者診療においては、熱中症予防だけでなく、長期的な脳健康維持の観点からも暑熱対策が重要となる」としている。

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タウPET検査、トレーサー選択がアルツハイマー病診断の精度に影響/Lancet

 アルツハイマー病の診断、進行ステージおよび治療の選択において重要なバイオマーカーとして注目されるタウPET画像について、検査で使用する放射性医薬品(トレーサー)の選択により、年齢やアルツハイマー病の進行段階を問わず、タウ病理の検出頻度に違いが生じることが、米国・ピッツバーグ大学のGuilherme Povala氏らによる「HEAD試験」の結果で示された。トレーサーとして、[18F]MK6240はフロルタウシピル(18F)(商品名:タウヴィッド)と比較して、認知機能正常例および認知障害例のいずれにおいても、タウ病理を有する人をより多く特定した。著者らは、「この結果は、臨床試験における患者層別化やより精度の高い治療方針決定に、直接的な影響を与えるものである」とまとめている。Lancet誌2026年5月30日号掲載の報告。フロルタウシピル(18F)と[18F]MK6240の認知障害判別精度とMTL・大脳新皮質のタウ陽性頻度を評価 研究グループは、米国および欧州の臨床現場で現在使用されているフロルタウシピル(18F)と、開発段階のPETトレーサーである[18F]MK6240について、多施設共同前向き非無作為化被験者内比較試験を行った。 被験者は、北米の8施設で募集され、タウPET検査、アミロイドβ(Aβ)PET検査、および詳細な認知機能評価を受けた。両薬剤を用いたタウPET検査は、45日以内に実施された。 主要アウトカムは2つで、アルツハイマー病関連認知障害の判別精度と、内側側頭葉部(MTL)および大脳新皮質領域におけるタウ陽性の頻度であった。 2022年3月2日~2025年8月27日に775例が登録され、682例がすべての試験手順を完了した。 被験者は、女性373例(55%)、男性309例(45%)で、19~27歳38例(6%)、50~65歳214例(31%)、65~89歳430例(63%)であった。また、32例(5%)がヒスパニック/ラテン系、637例(93%)が白人、24例(4%)が黒人/アフリカ系米国人、16例(2%)がアジア人、5例(1%)がその他として、さらに49例(7%)が農村地域出身として特定された。[18F]MK6240のほうがアルツハイマー病と非アルツハイマー病の障害を区別する精度が高い  [18F]MK6240はフロルタウシピル(18F)よりも、アルツハイマー病と非アルツハイマー病の障害を区別する精度が有意に高かった(曲線下面積[AUC]:0.93[95%信頼区間[CI]:0.89~0.95]vs.AUC:0.86[95%CI:0.75~0.91]、p<0.0001)。 高齢の被験者において、両トレーサーでタウ陽性/陰性判定が一致したのは、MTLでは560例(87%)、大脳新皮質領域では603例(94%)であった。また、認知障害のない被験者において、[18F]MK6240はフロルタウシピル(18F)よりも、MTLにおけるタウ陽性例を2倍以上多く特定した(54例[15%]vs.23例[6%])。Aβ陽性の有病率比(PR)は2.43(95%CI:1.50~3.94、p=0.0003)であり、100例につき23例の追加症例が同定された。 不一致症例において、[18F]MK6240のみ陽性であったのは75例(89%)であり、両トレーサーで陰性であった症例よりもAβ負荷(p<0.0001)、APOEε4保有(p<0.0001)、認知障害(p=0.0043)の割合が有意に高かった。 認知障害のある被験者では、大脳新皮質領域のタウ陽性の頻度は、[18F]MK6240がフロルタウシピル(18F)よりも高かった(80例[28%]vs.46例[16%])。Aβ陽性のPRは1.74(95%CI:1.32~2.29、p<0.0001)であり、100例につき15例の軽度認知障害例、21例の認知症例が新たに同定された。

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疫学研究のメタ解析論文は注意して読まないといけない(解説:折笠秀樹氏)

 メタ解析とは、複数の研究結果の統合解析のことである。対象とする研究は薬剤などの臨床試験(主にRCT)が多いが、ここで扱われたのは疫学研究のメタ解析である。前向きコホートのメタ解析が89報、後ろ向きコホートのメタ解析が35報、全部で124報の疫学研究メタ解析を調査対象とした。論文中の主要アウトカムが、当初計画していたのと同じだったかどうかを調査した。当初計画については、登録サイト(ClinicalTrials.gov)を参照した。 主要アウトカムが論文で変更されていた例が60報(48%)もあった。ほぼ半数で何らかの違反があったことになる。主要アウトカムに当初設定したものが論文では消えていた(Omitted)例が32報、主要アウトカムが副次として報告された(Downgrading)例は32報、副次だったのが主要アウトカムに格上げされた(Upgrading)例は2報であった。数字がちょっと合わないのは、アウトカムによっては複数に当てはまるためだろう。そして、後ろ向き研究のメタ解析のほうが違反は1.8倍高かった。どうして主要アウトカムが変更されるのかと言えば、結果が統計学的に有意にならなかったためだろう。それでは、読者はどのようなことに注意すればよいだろうか。それは主要アウトカムの結果だけでなく、副次アウトカムも含め総合的に判断することだろう。登録サイトで確認してから読むことも考えられるが、そんな暇は持ち合わせていないはずだ。 なお、本研究の著者の1人であるAn-Wen Chan博士は以前コンタクトしたことがあるが、最近出版された『CONSORT 2025』および『SPIRIT 2025』の著者にもなっている。

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レビー小体型認知症の発症率は考えられているよりも高い可能性

 米CNN創業者テッド・ターナー(Ted Turner)氏の命を奪った進行性の脳疾患であるレビー小体型認知症(DLB)の発症率は10万人年当たり約4.8例と、これまで考えられていたよりも高い可能性が、新たなエビデンスレビューで示唆された。この発症率は、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、一部の認知症や非定型パーキンソン症候群(非定型パーキンソニズム)などのより広く知られている神経変性疾患の発症率よりも高いという。バーリ大学(イタリア)のDaniele Urso氏らによるこの研究結果は、「JAMA Neurology」に5月11日掲載された。Urso氏らは、「DLBは、主に高齢になってから発症する認知症であり、他のいくつかの比較的まれな神経変性疾患よりも発症頻度が高い」と結論付けている。 米国立衛生研究所(NIH)によると、DLBの発症には、脳内でタンパク質のα-シヌクレインが異常に蓄積することが関与していると考えられている。この異常な蓄積物はレビー小体と呼ばれ、脳内の神経伝達を障害し、思考、運動、行動、気分などにさまざまな症状を引き起こす。DLB自体はよく知られた疾患ではあるものの、研究グループによると、その世界的な発症率や有病率を評価した研究は、これまで実施されていないという。 今回のレビューでは、2024年10月までに発表された、一般住民を対象にDLBの発症率や有病率を調査した研究を選定し、12件の研究データを統合してメタアナリシスを実施した。その結果、DLBの発症率は10万人年当たり4.79例であることが明らかになった。研究グループによると、前頭側頭型認知症の発症率は10万人年当たり約2.3例、ALSは約1.6例、非定型パーキンソニズムは0.3〜0.8例程度であるとされている。 また、解析対象を65歳以上に限定すると、発症率は10万人年当たり46.85例となり、高齢になるほど発症率が急増することが示唆された。性別ごとに検討すると、男性の方が女性よりも発症率が高かった(5.45例対4.32例)。全年齢での有病率を報告した研究は1件のみで、10万人当たり19.13例であった。 こうした結果から研究グループは、DLBが臨床的に診断される症例は少なく、これは診断漏れや診断感度の低さを反映していると考えられると結論付けている。その上で、「標準化された診断方法と専門的な評価への公平なアクセスを確立して、過少診断や誤診を減らす必要性が浮き彫りになった」と述べている。 この研究について、米ノースウェル・ヘルス傘下ファインスタイン医学研究所のJeremy Koppel氏は、「この研究は、DLBの発症率や有病率がこれまで考えられていた以上に高く、前頭側頭型認知症よりも一般的である可能性を示している」とコメントしている。同氏はまた、「少なくとも、ターナー氏の死をきっかけに、特に認知機能障害と精神症状が混在する患者を診察する医師の間で、DLBへの認識が高まることを願っている。正確な診断は極めて重要だ」と話している。 Koppel氏によると、DLBの特徴的な点は、多くの精神症状を伴うことだという。同氏は、「DLBの中核症状の一つに、実際には存在しないものが見える“幻視”がある。また、意識レベルが劇的に変動することも珍しくない。認知機能障害がまだ目立たない段階では、急性の精神病状態や精神疾患のように見えることもある。しかし最終的には、重度の認知障害へと進行していく」と説明する。 さらに、DLB患者は、他の認知症患者によく使われる薬に対して異なる反応を示すことがあるという。Koppel氏は、「DLB患者は、抗精神病薬に対して重篤な副作用を示すことがある。そのため、DLB患者に薬を投与する際には、細心の注意が必要だ」と述べている。

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アルツハイマー病のバイオマーカー、中年期にも検出可能か/Lancet

 アミロイドβ(Aβ)およびリン酸化タウ(p-tau)タンパク質の蓄積を特徴とするアルツハイマー病の神経病理学的所見は、主に高齢者の検体のバイオマーカーを用いて評価しており、中年期の血漿バイオマーカーの状態や、その認知機能との関連はほとんど知られていないという。米国・カリフォルニア大学サンフランシスコ校のXiaqing Jiang氏らは、これらの血漿バイオマーカーによって定義されるアルツハイマー病の神経病理学的陽性所見は、相対的に頻度は低いものの、中年期にも検出可能であり、認知能力の低下やその加速と関連し、特定の集団においてより強い関連性を持つ可能性があることを示した。研究の成果はLancet誌2026年5月30日号で報告された。米国の前向きコホート研究 研究グループは、中年期におけるアルツハイマー病の神経病理学的所見を示す血漿バイオマーカーの特徴と認知能力との関連を検証する目的で、地域ベースの前向きコホート研究を実施した(米国国立心肺血液研究所[NHLBI]などの助成を受けた)。 解析には、Coronary Artery Risk Development in Young Adults(CARDIA)研究の参加者のデータを用いた。CARDIA研究では、1985~86年に米国の4市で年齢18~30歳の黒人と白人5,115人を登録した。 認知機能は、30年目と35年目に5つの標準化された検査で測定した。また、血漿中のAβ42、Aβ40、p-tau217濃度を測定し、p-tau217/Aβ42比とAβ42/Aβ40比を算出した。 アルツハイマー病の神経病理学的状態(陰性、中間的、陽性)は、各バイオマーカー(p-tau217/Aβ42、p-tau217、Aβ42/40)について、アミロイドPETで検証したカットオフ値に基づいて定義した。 アルツハイマー病の神経病理学的所見と、認知機能(Zスコア)および認知機能の急速な低下との関連を、多変量線形回帰とロジスティック回帰を用いて評価した。処理速度と実行機能の能力低下と関連 1,350人が解析の対象となった。平均年齢は61(SD 3.6)歳(範囲:53.0~69.0)、779人(58%)が女性、613人(45%)が黒人、737人(55%)が白人であった。 アルツハイマー病の神経病理学的所見の、バイオマーカー別の陽性者は、p-tau217/Aβ42で86人(6%)、Aβ42/40で196人(15%)、p-tau217で48人(4%)であった。 これは、処理速度に関する能力低下と関連し(アルツハイマー病の神経病理学的所見の陽性群と陰性群を比較した標準化認知機能差が、Aβ42/40、p-tau217、p-tau217/Aβ42で-0.54~-0.25の範囲、p=0.0001~0.0048)、実行機能の能力低下とも関連した(-0.42~-0.19の範囲、p=0.0070~0.049)。 また、アルツハイマー病の神経病理学的所見の陽性者は陰性者と比較して、言語性記憶(Aβ42/40のオッズ比[OR]:4.31[95%信頼区間[CI]:1.71~10.9]、p-tau217/Aβ42のOR:2.44[1.16~5.13])、処理速度(p-tau217のOR:3.98[95%CI:1.71~9.3]、p-tau217/Aβ42のOR:3.35[1.77~6.35])の加速度的低下のオッズが上昇していた。早期発見での価値を強調する知見 一方、これらの血漿バイオマーカーは、全般的認知機能(global cognition)や流暢性(fluency)とは関連しなかった。 また、一貫性はみられなかったが、血漿バイオマーカーと認知機能の関連にはいくつかの効果修飾が観察され、女性や黒人の参加者、およびAPOEε4保有者においてより強い関連性を認めた。 著者は、「これらの知見は、アルツハイマー病は臨床症状が現れる数十年前に始まっているという概念を裏付けており、一般住民における早期発見のための血漿バイオマーカーの潜在的な価値を強調するものである。血漿バイオマーカーを用いたアルツハイマー病の神経病理学的所見の早期検出は、リスクの低減や薬物療法などによる、中年期の成人に対する時宜にかなった予防や介入を可能にすると考えられる」としている。 また、「手軽な血液検査によってアルツハイマー病の初期の神経病理学的変化を有する個人を特定できれば、認知症の発症の遅延や予防を目的とした戦略や臨床試験の対象を絞り込むのに役立ち、臨床現場と公衆衛生施策の両方に重要な示唆を与える」と指摘している。

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【GET!ザ・トレンド】脳血管内治療の新分野「脳血管内電極」の最前線

脳血管内治療の技術を応用して、脳活動を血管内から記録または刺激する「endovascular neural interface(血管内神経インターフェース)」の現状と臨床応用の可能性を整理した総説論文がJournal of NeuroInterventional Surgery(JNIS)に掲載された1)。本記事ではこの論文を紹介する。血管内神経インターフェースの概要と意義脳活動の記録には、従来から頭皮脳波が広く用いられている。頭皮脳波は安全で非侵襲的であり、日常診療でも実施しやすい。一方で、頭蓋骨や頭皮を介して信号を記録するため、信号は減弱し、空間分解能にも限界がある。特に、深部や脳溝内、限局した皮質領域に由来する活動は捉えにくい。これに対して、硬膜下電極や定位的頭蓋内脳波(SEEG)は、より高品質な信号を得ることができるが、開頭や穿頭、脳実質内への電極挿入を伴うため、出血や感染などの侵襲性が課題となる。脳血管内神経インターフェースは、この「低侵襲だが信号に限界がある頭皮脳波」と、「高品質だが侵襲的な頭蓋内電極」の中間に位置する新しいアプローチである。この技術の基本的な発想は、静脈洞や皮質静脈など、脳表に近接する血管内に電極を留置し、血管の内側から脳活動を記録する点にある。脳血管内治療で日常的に用いられているカテーテル操作を応用できるため、開頭を避けながら脳に近い位置から信号を取得できる可能性がある。とくに静脈系は、脳表に近い走行を取るうえ、比較的拍動の影響が少ないことから、電極留置の標的として有望である。ただし、血管内にデバイスを置く以上、血栓形成、血管閉塞、デバイス移動、血管解剖の個人差、抗血栓療法の必要性など、脳血管内治療に共通する管理上の課題を避けて通ることはできない。したがって、この分野では「信号が取れるか」だけでなく、「血管内デバイスとして安全に留置・管理できるか」が臨床応用の鍵となる。臨床応用のフロントランナー:StentrodeとEP-01現在、臨床応用に近い代表的なプラットフォームとして、StentrodeとEP-01が挙げられる。・Stentrode(本邦未承認品)Stentrodeは、Synchronが開発するステント状電極で、主に筋萎縮性側索硬化症の患者に対するbrain–computer interface(BCI)を目的とした慢性留置型デバイスである。上矢状静脈洞に留置し、運動野近傍から長期的に脳活動を記録する。初期のヒト臨床研究では、重度麻痺患者がBCIとしてのStentrodeを用いて、考えるだけでデジタル機器操作が可能となり、12ヵ月時点で重篤なデバイス関連有害事象、静脈閉塞、明らかなデバイス移動は報告されていない。一方で、慢性留置型であるため、抗血小板療法の期間、長期開存性、内皮化、リードやコネクタの耐久性、将来的な再治療や抜去の可否などが、今後の重要な検討課題である。・EP-01(本邦未承認品)EP-01は日本で開発された、難治性てんかんの術前評価を念頭に置いた一時留置型の脳血管内脳波デバイスである。両側内頸静脈からアプローチし、横静脈洞、海綿静脈洞、上矢状静脈洞など複数の静脈内に電極を配置できる点が特徴である。従来の頭皮脳波では検出できないてんかん性放電を、脳表に近い静脈内から検出できる可能性が前臨床・初期臨床研究で示されている。とくに、左右どちらの半球にてんかん焦点があるかを判断する「側方診断」への応用が期待されている。現在進行中のEPSILON IE試験では、従来の頭蓋内脳波との診断一致を主要評価項目として、難治性焦点てんかん患者における有効性と安全性を検証中である。デバイスの使用方法とチーム医療の必要性EP-01はStentrodeとは異なり、長期留置を目的とした完全植込み型ではなく、最大約2週間の一時留置と抜去を前提としている。そのため、既存のてんかんモニタリング環境に接続しやすい一方で、体外に出るリードの固定、感染予防、留置中の血栓リスク管理が重要となる。血管内デバイスでありながら、脳波モニタリング機器でもあるという二面性を持つため、脳血管内治療医、てんかん専門医、臨床神経生理・看護・検査部門を含めたチーム医療が不可欠である。今後の展望:既存技術を補完する新しい選択肢へ本論文の重要なメッセージは、血管内神経インターフェースが既存の頭皮脳波、硬膜下電極、SEEGを直ちに置き換える技術ではなく、症例に応じて補完的に用いられる可能性のある新しい選択肢だという点である。今後の臨床導入には、信号検出の実証だけでなく、診断や治療方針を実際に変える臨床的有用性、安全な手技の標準化、血管開存性の長期評価、デバイス不具合や感染への対応を明確にする必要がある。将来的には、てんかん診断、BCI、ニューロモデュレーション、さらには集中治療領域での脳モニタリングなどへ応用が広がる可能性があり、脳血管内治療と神経科学を結びつける新しいトランスレーショナル分野として注目される。 1) Hosoo H, et al. J NeuroIntervent Surg 2026;0:1-7

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無意識に使う「ピクつき」【脳がととのう 神経内科学講座】第2回

<今回のモヤっとPoint>ピクっとする動きはなんと表現する?けいれんと振えの違いは?はじめに「ピクつき」は臨床ではよく見聞きする表現ですが、実は、標準的な医学用語ではありません。少なくとも日本神経学会の用語集には収載されていません。では、臨床で使ってはいけないのかと言われると、見たままの様子を表現しているという前提であればかまいません。もちろんその場合には、どのような病態を想定して「ピクつき」と表現しているのかも意識しておく必要があります。たとえば、てんかん発作としてのけいれんなのか、あるいは振戦やシバリングなど何を想定しているのかが重要です。そこで、このような少しややこしい「ピクつき」という表現について、本日はととのえていきましょう。ピクつきはどんなときに使う表現?脳神経内科医の立場として、「ピクついていました」という報告を臨床ではよく受けます。「ぴくつく」は国語辞典に載っている一般語であり、意味としては「小刻みに動く」や「ぴくぴくする」だそうです。では、このような用語を神経学領域にどのように当てはめられるのか、整理していきましょう。日常的に、一瞬の動きを「ピクッとなる動き」と表現することがあります。この場合に該当しやすい用語の代表として「ミオクローヌス」があります。ミオクローヌスとは“不随意運動の一つで、自分の意思と無関係に瞬発的な筋収縮が生じる症候”をさします*。たとえば、授業中にうとうとしていて、全身をビクッとさせることがあると思いますが、あれは(生理的な)入眠時のミオクローヌスです。ミオクローヌスは非常に持続時間が短い症候であり、しばしば「電気的な筋収縮」に例えられます。*厳密には、ミオクローヌスには、急な筋収縮による陽性ミオクローヌスと、持続的な筋活動が一瞬途切れる陰性ミオクローヌスがあります。けいれん発作や不随意運動の振戦とどのように違うのかというと、ポイントは持続時間と律動性です。けいれん発作はガクガクと力強い収縮を繰り返す点で持続性があり、強直相に続いて律動性の間代運動がしばしば出現します。また、振戦は比較的一定のリズムで持続するふるえで、律動的かつ持続的です。これに対して、ミオクローヌスは「ビクッ」と1回1回は瞬発的な短時間の症候です。もちろん、ミオクローヌスが断続的に群発することもありますので、その場合は「持続的」に見えることもあります。なお、けいれん発作や振戦には一定のリズムがあるのに対して、ミオクローヌスではイレギュラーであることから、出現様式も異なります。<脳がととのう具体例>「蘇生後脳症の方ですが、昨日からピクつきのけいれんが出ています」「蘇生後脳症の方ですが、昨日からビクッとした一瞬の、ミオクローヌスのような動きが断続的に出ています」ミオクローヌスはあくまでも「症候名」ここまで説明したように、ミオクローヌスとはあくまでも症候を表現する用語です。そのため、その病態(原因)までは説明ができません。なお、ややこしいのですが、ミオクローヌスという症候が、てんかん発作として出現することがあり、この場合は「ミオクロニー発作(myoclonic seizure)」と呼びます。一方で、てんかん発作ではなく、不随意運動として認めるものはそのままミオクローヌスと表現します。ミオクローヌスの判定が難しいときはこのように説明すると、そもそもけいれんなのかミオクローヌスなのか非専門医にはわからないという当然の指摘があると思います。それはごもっともで、専門医ですら診察しても判定に悩むことがあります。よって、そのようなときは変に断定せずに、「ミオクロニー様の動きがありました」や「myoclonicな動きが右上肢に断続的に出現していました」などと表現すれば、解像度を維持できるでしょう。ミオクローヌスの代表的疾患は?ミオクローヌスがどのようなものか、なんとなくイメージはできたかと思います。これより、ミオクローヌスを呈する代表的な3つの疾患を提示します。1)代謝性脳症代謝性脳症では不随意運動として陰性ミオクローヌスを認めます。これは手関節背屈などの姿勢を保たせたときに、筋収縮が一瞬途切れて、手がはばたくようにカクッと落ちる所見です。肝性脳症の所見として有名ですが、尿毒症や高二酸化炭素血症などでもみられます。したがって、代謝性脳症では「ミオクローヌスそのもの」だけでなく、意識変容や陰性ミオクローヌスを捉える必要があります。なお陰性ミオクローヌスは薬剤性として出現することもあるので、とくに神経系の薬剤を新規追加した際には注意します。2)Lance-Adams症候群(LAS)心肺停止などによる低酸素脳症のイベントを経て、意識が回復してくる過程で顕在化してくるミオクローヌスがLASのミオクローヌスです。その診察ポイントとしては、安静時/静止時よりも動作時や姿勢保持時に悪化する点です。刺激でも誘発されるため、「体位変換や吸引処置によってピクつきが出るんです」と看護師から報告を受けたときは、文脈を確認した上でミオクローヌスを想起しましょう。3)若年ミオクロニーてんかん(JME)10代(後半)の発症のてんかんの代表格に若年ミオクロニーてんかん(Juvenile Myoclonic Epilepsy:JME)があります。JMEは主に思春期から若年成人期に発症し、原則として知能が正常で、発作型としてミオクロニー発作と強直間代発作(GTCS)があるという年齢依存性のてんかん症候群です。臨床では、初回のGTCSでERに搬送され、初期対応を終えたのちに専門外来へ紹介されてJMEの診断に至るというパターンが多いのですが、ぜひERの段階で(GTCSの初期対応を終えたのちに)、JMEの可能性も問診で探ってみてください。ポイントは普段から朝のミオクロニー発作があるかどうかです。JMEのミオクロニー発作は、寝不足が誘発因子となるため、とくに朝の起床後が好発時間帯です。具体的には「朝の寝起きの時間帯に、持っているお箸とかスマホを投げ飛ばしたことがあるか?」とクローズドに聞くとよいでしょう。今回のスッキリ「ピクつき」は診断名ではなく、見た目を表す観察用語「ピクつき」では、ミオクローヌスの特徴があるかを意識するとよい次回は、“取扱注意の「けいれん」”について、ととのえていきましょう。お楽しみに!1)Vellieux G, et al. Brain Commun. 2025;7:fcaf329.2)Agarwal R, et al. J Postgrad Med. 2016;62:115-117.

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アルツハイマー病に対するアーモンド効果、その結果は?

 アーモンドは、脳の強壮や記憶力向上において、ペルシャ医学でたびたび推奨されている。また、いくつかのエビデンスにおいても、アーモンドの記憶力への効果が裏付けられている。イラン・Iran University of Medical SciencesのMohsen Mohajeri氏らは、アルツハイマー病患者におけるアーモンドの記憶力および認知機能への影響を評価するため、ランダム化比較試験を実施した。Avicenna Journal of Phytomedicine誌2026年3・4月号の報告。 本ランダム化比較試験では、軽〜中等度の認知機能障害を有するアルツハイマー病患者60例を対象に、アーモンド摂取群(1日10gの粉末スイートアーモンドと小さじ1杯の粉末ロックキャンディを既存の処方薬に加えて摂取)または対照群(既存の処方薬を継続)にランダムに割り付け、3ヵ月間フォローアップを行った。研究開始時と終了時にミニメンタルステート検査(MMSE)、モントリオール認知評価(MoCA)、臨床認知症評価尺度(CDR)、認知症機能評価別病期分類(FAST)の各質問票による評価を行った。睡眠の質は、ピッツバーグ睡眠質問票(PSQI)を用いて評価した。 主な結果は以下のとおり。・各群30例が研究を完了し、分析対象に含めた。・年齢は、アーモンド摂取群で71.86±8.04歳、対照群で71.3±7.18歳(p=0.775)。・記憶障害の持続期間は、アーモンド摂取群で2.8±0.92ヵ月、対照群で3±1.2ヵ月であった(p=0.473)。・アーモンド摂取群では、対照群と比較し、MMSEの見当識尺度(p=0.024)、MoCA(p=0.001)、MoCAの記憶尺度(p=0.005)、FAST(p=0.032)、PSQI(p<0.001)の有意な改善が認められた。 著者らは「アーモンドは、アルツハイマー病患者の記憶力と睡眠の改善に有効な介入となる可能性が示された。より大規模なサンプル、より長期のフォローアップ期間、異なる対照群を用いた研究の実施が、今後推奨される」としている。

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不眠を訴える高齢者。反射的なベンゾジアゼピン処方をどうデザインし直すか【高齢者処方のデザイン】第2回

以下の症例に対する前医での処方箋には「替えるべきポイント」が2つ隠れています。あなたは見抜けますか?【症例】患者75歳・男性高血圧、糖尿病、軽度アルツハイマー型認知症で通院中。数ヵ月前から入眠困難と夜間頻尿による中途覚醒があり、前医でエチゾラムが追加された。以後、日中のふらつきが出現し、中途覚醒は良くならなかったため、エチゾラムは自己中断した。夜間頻尿について詳しく尋ねると、頻尿は夜間のみで日中はないという。また近頃、頻尿に加えて悪夢で目が覚めることも多いという。診察上、両下肢に軽度の浮腫を認める。【Before:前医の処方箋】A)アムロジピン5mg 1日1回 朝食後B)メトホルミン500mg 1日2回 朝・夕食後C)ドネペジル10mg 1日1回 就寝前D)エチゾラム1mg 1日1回 就寝前(すでに自己中断)A)アムロジピン5mg 1日1回 朝食後B)メトホルミン500mg 1日2回 朝・夕食後C)ドネペジル10mg 1日1回 就寝前D)エチゾラム1mg 1日1回 就寝前(すでに自己中断) 1) Eisai Co., Ltd. Aricept (donepezil hydrochloride) package insert. Tokyo: Eisai Co., Ltd. 2) 2023 American Geriatrics Society Beers Criteria Update Expert Panel. J Am Geriatr Soc. 2023;71:2052-2081. 講師紹介

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精神症状の有無でアルツハイマー病に伴うアジテーションに対するブレクスピプラゾールの効果に違いはあるか?

 アルツハイマー病患者は、アジテーションと精神病症状を併発することが少なくない。米国・Banner Alzheimer's InstituteのPierre N. Tariot氏らは、精神病症状を併発するアルツハイマー病患者と併発しない患者におけるアジテーションに対するブレクスピプラゾールの有効性と安全性を明らかにするため、長期試験の事後解析を実施した。Neuropsychiatric Disease and Treatment誌2026年4月21日号の報告。 アルツハイマー病に伴うアジテーションを有する患者を対象に、ブレクスピプラゾールとプラセボを比較した2つの第III相試験(欧州、ロシア、米国で実施された12週間ランダム化二重盲検プラセボ対照固定用量試験)のデータを統合した。対象患者は、ベースライン時に併発する精神症状の有無により、事後的に層別化した。精神症状は、Neuropsychiatric Inventory Questionnaire(NPI)の妄想領域、幻覚領域、またはその両方のスコアが4以上と定義した。有効性は、Cohen-Mansfield Agitation Inventory(CMAI)合計スコアにより評価した。安全性は、治療中に発現した有害事象(TEAE)により評価した。 主な結果は以下のとおり。・対象患者607例中、ベースライン時に精神症状を併発していた患者は142例(23.4%)。・ブレクスピプラゾール2mgまたは3mg/日投与は、精神症状を併発する患者(12週時点での最小二乗平均差[LSMean]:-9.18、95%信頼区間[CI]:-15.2〜-3.12、p=0.004、Cohen's d=0.52)および併発しない患者(LSMean:-4.22、95%CI:-6.91〜-1.54、p=0.002、Cohen's d=0.29)のいずれにおいても、プラセボと比較し、アジテーションの改善が大きかった。・精神症状を併発する患者におけるTEAEの発現率は、ブレクスピプラゾール群で52.9%、プラセボ群で40.0%であり、TEAEによる投与中止率はそれぞれ3.4%、9.1%であった。・精神症状を併発する患者において、死亡した患者はいなかった。・一方、精神症状を併発しない患者におけるTEAEの発現率は、ブレクスピプラゾール群で49.3%、プラセボ群で38.2%であり、TEAEによる投与中止率はそれぞれ5.5%、2.6%であった。・精神症状を併発しない患者では、2例で死亡が認められた。しかし、いずれの死亡もブレクスピプラゾールとの関連は認められなかった。 著者らは「本事後解析において、ブレクスピプラゾールは、併発する精神症状の有無にかかわらず、アルツハイマー病に伴うアジテーションを改善した。また、忍容性も良好であった。これらの予備的データは、ブレクスピプラゾールが、臨床現場でアジテーションや精神症状を呈するアルツハイマー病患者にとって有用である可能性を示唆している」と結論付けている。

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中高年の前兆を伴う片頭痛、脳梗塞リスクの上昇と関連

 前兆を伴う片頭痛を有する中高年では、片頭痛のない中高年と比べて虚血性脳卒中(脳梗塞)リスクが高い可能性があるとする研究結果が報告された。前兆を伴う片頭痛を有する人では、片頭痛のない人に比べて脳梗塞リスクが73%高かった一方、前兆を伴わない片頭痛を有する人では有意なリスク上昇は認められなかったという。米バーモント大学神経学分野のAdam Sprouse-Blum氏らによるこの研究結果は、「Neurology」に5月20日掲載された。 研究グループによれば、片頭痛の前兆とは、片頭痛発作に先立って現れる視覚的または感覚的な異常を指す。具体的には、光の点滅、視野欠損、ジグザグ模様、きらめく点などが現れるという。Sprouse-Blum氏は、「これまでの研究で、前兆を伴う片頭痛は、若年層における脳梗塞リスクの増加と関連することが示されていたが、45歳以上における脳梗塞リスクとの関連については十分に分かっていなかった」と説明している。 今回の研究では、米国の大規模コホート研究参加者のうち、45歳以上の1万1,381人(平均年齢72.1歳、女性55.2%)を対象に、片頭痛と脳梗塞リスクとの関連が前兆の有無によって異なるかを検討した。参加者のうち1,130人(9.9%)が片頭痛を有しており、その内訳は、前兆を伴う片頭痛491人、前兆を伴わない片頭痛639人だった。 平均6.4年間の追跡期間中に、片頭痛群では44人(3.9%;前兆を伴う片頭痛群23人、前兆を伴わない片頭痛群21人)、片頭痛のない群(1万251人)では351人(3.4%)が脳梗塞を発症した。解析の結果、片頭痛群では片頭痛のない群に比べて脳梗塞リスクが35%高かったものの、統計学的有意差は認められなかった(ハザード比1.35、95%信頼区間0.98~1.87)。さらに、片頭痛群を前兆の有無で分けて解析すると、前兆を伴う群では片頭痛のない群と比べて脳梗塞リスクが73%有意に高かった(同1.73、1.12~2.65)。一方、前兆を伴わない群では、脳梗塞リスクに有意な増加は認められなかった(同1.10、0.70~1.72)。サブグループ解析からは、72歳未満の男性では、前兆の有無を問わず片頭痛を有する人で脳梗塞リスクが最も高く、片頭痛のない人に比べて約3.7倍だったことも示された(同3.67、1.96~6.88)。 Sprouse-Blum氏は、「72歳未満の中高年男性で脳梗塞リスクが著しく高かったという結果は予想外だった。若年層を対象としたこれまでの研究では、片頭痛に関連する脳梗塞リスクは女性で高いことが示されていたからだ」と述べている。その上で同氏は、「今回の結果をより深く理解するためには、今後さらなる研究が必要である。もし結果が確認されれば、この年齢層に対して脳梗塞予防に関する重点的な指導が必要になる可能性がある」と語っている。

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不眠の重症度は日本人の認知症リスクに影響するか?

 睡眠障害は、認知症発症の修正可能なリスク因子である可能性が示唆されている。しかし、不眠症と認知症との関連性は依然として明らかになっていない。神奈川県立保健福祉大学のAung Thet Oo氏らは、高齢者における不眠症の重症度が認知症発症を促進させるかどうかを検討するため、本研究を実施した。Archives of Gerontology and Geriatrics誌2026年9月号の報告。 本研究は、山梨県都留市の地域住民を対象とした7年間の縦断研究として実施した。2016年1月に機能障害のない65歳以上のすべての住民を対象にベースライン調査を実施し、高齢者5,255人が回答を行った。最長7年間のフォローアップ調査データを収集し、これを分析に含めた。認知症発症は、介護保険データを用いて評価した。不眠症の重症度は、アテネ不眠尺度を用いて測定した。不眠症の重症度と認知症発症との関連性を検討するため、制限付き3次スプラインモデルと時間変動型Cox比例ハザードモデルを用いた解析を行った。 主な結果は以下のとおり。・フォローアップ期間中に認知症を発症した参加者は、878例(16.7%)。・不眠症の重症度と認知症発症リスクとの間に線形の用量反応関係があることが、スプライン曲線より示された。・社会人口統計学的因子および健康特性を調整した後、不眠症の重症度が高いほど認知症発症率が高いことが示唆された(ハザード比:1.02、95%信頼区間:1.00〜1.04)。・性別、年齢、学歴による層別解析およびベースラインから2年以内に認知症を発症した参加者を除外した感度分析の結果は、主要解析の結果と一致していた。 著者らは「日本人高齢者において、不眠症の重症度が高いほど認知症発症リスクが高まることを示す、用量反応関係が認められた。これらの結果は、認知症予防戦略における不眠症の予防とマネジメントの重要性を裏付けている」としている。

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HSV脳炎後の自己免疫性脳炎に注意、2026年GLでフロー新設/日本神経学会

 2026年3月、『細菌性髄膜炎診療ガイドライン2014』と『単純ヘルペス脳炎診療ガイドライン2017』を統合した『細菌性髄膜炎・単純ヘルペス脳炎診療ガイドライン2026』(日本神経学会・日本神経感染症学会監修、南江堂)が発刊された1)。 5月20~23日に開催された第67回日本神経学会学術大会の生涯教育セミナーにおいて、本ガイドライン作成委員会委員長を務めた中嶋 秀人氏(日本大学医学部内科学系神経内科学分野 主任教授)が「細菌性髄膜炎・単純ヘルペス脳炎診療ガイドライン2026の改訂のポイント」と題して講演を行った。講演レポートとして、「細菌性髄膜炎」を取り上げた前編に続き、後編では「単純ヘルペス脳炎」、そしてガイドライン外の重要なトピックである「水痘・帯状疱疹ウイルス中枢神経感染症」について紹介する。【単純ヘルペス脳炎】初期治療の迅速性と診断のゴールドスタンダード 単純ヘルペス脳炎(HSE)も細菌性髄膜炎と同様に「Time is Brain」の疾患である。発熱・意識障害・けいれんでHSEを疑ったら検査結果を待たず、受診から6時間以内にアシクロビル(ACV)投与を開始するのが望ましい。診断のゴールドスタンダードは髄液HSV PCRであり、高感度PCR(リアルタイムPCR)とFilmArray髄膜炎・脳炎パネルは、いずれも実臨床で有用である。FilmArrayは迅速診断に有用だが、検出感度はリアルタイムPCRより劣る可能性がある。なお発症72時間以内はウイルス量が少なく、4〜24%で偽陰性となりうるため、臨床的に強く疑われる場合は治療を中断せず、3〜7日後に再検する。治療はACV 10 mg/kg/回を8時間ごとに点滴静注し、髄液中HSV-DNAが高感度PCRで2回連続して陰性化するまで継続する(免疫正常例14〜21日間、免疫不全例21日間以上が目安)。HSEと自己免疫性辺縁系脳炎の鑑別 HSEは自己免疫性辺縁系脳炎(ALE)と類似の画像を示すため、初期の鑑別が課題となる。鑑別には実臨床で即座に使えるMRIの3基準が有用で、(1)拡散強調画像(DWI)での拡散制限、(2)側頭葉外(島回・前頭葉眼窩面)への病変進展、(3)ガドリニウム造影効果、のいずれも認めない(3基準すべて陰性)場合、感度95%・特異度100%でHSEを否定し、ALEを支持できる。HSE後自己免疫性脳炎(AE post-HSE) HSE後自己免疫性脳炎(AE post-HSE)は、HSE発症後2週〜3ヵ月に患者の7〜27%で発症し、HSEの治療後に症状の動揺・再燃として顕在化するため注意を要する。ウイルスの再活性化ではなく、ウイルス感染を引き金とした免疫介在性の病態であり、検出される自己抗体は抗NMDA受容体抗体が64〜70%と最多で、約3割は既知抗体陰性(未知の神経表面抗体)である。ガイドラインにはAE post-HSEのフローチャートが新設された。HSE治療後に症状の動揺・新規出現・再発がみられた場合は、まず速やかにACVを再開し、髄液HSV-DNAの高感度PCRを再検する。陰性でAEが疑われれば神経表面抗体スクリーニングを実施し、初期免疫療法(ステロイドパルス[IVMP]・IVIg・血液浄化療法)へ移行する。臨床像は年齢で異なり、乳幼児(4歳以下)では舞踏アテトーゼやジスキネジア、4歳以上の小児・成人では急性発症の異常言動・精神症状・認知機能低下が前景に立つ。HSEの後遺症とサポート HSEは適切なACV治療を行っても予後は楽観できず、生存者の18〜45%に高度な後遺症が残る。その内訳は記憶障害が34〜69%と最多で、次いで人格障害・失語・てんかん・見当識障害・嗅覚障害などがみられる。これらはQOLに甚大な影響を与えるため、認知療法・行動療法・理学療法・作業療法・言語療法を含む多角的なリハビリテーションの継続が望まれる。臨床で急増する水痘・帯状疱疹ウイルス中枢神経感染症(ガイドライン外) 本講演では、神経領域で重要性が増している新たなトピックとして、ガイドライン外である水痘・帯状疱疹ウイルス(VZV)中枢神経感染症についても中嶋氏が補足した。VZV感染は高齢化と免疫抑制薬の普及を背景に実臨床で急増しており、中嶋氏らの自施設における10年間(2013~22年)の解析では、成人の無菌性髄膜炎のうちVZVが約30%を占め、原因が判明した症例の中で最多であった。 診断上のピットフォールとして、VZV中枢神経感染症の約13%は特徴的な皮疹を伴わない(無疹性帯状疱疹、zoster sine herpete)。皮疹がなくとも、激しい頭痛・発熱や神経痛様疼痛があれば躊躇なく髄液PCR(VZV-DNA)を行う必要がある。また70歳以上ではVZV脳炎が増加する一方、50歳以上では頭痛・項部硬直が乏しく診断が遅れやすい。さらにVZVは血管壁に感染して炎症・血管リモデリングを起こすと考えられ、感染後数ヵ月は脳卒中リスクが上昇する。とくに眼部帯状疱疹ではそのリスクが高く(メタ解析でRR 1.91)、発症後6ヵ月間は脳血管イベントを監視する必要がある。すべての臨床医へ:「疑ったらまず治療」―予後を握る初期対応 細菌性髄膜炎、単純ヘルペス脳炎、そしてVZV中枢神経感染症は、いずれも早期診断・早期治療が転帰を決定するTime is Brainの疾患である。中嶋氏は本ガイドラインについて、「これらの疾患を専門とする医師だけでなく、プライマリケアや救急などを担当する多くの医師も鍵を握っています。『疑ったら、検査結果を待たずにまず治療を始める』―細菌性髄膜炎は1時間以内、単純ヘルペス脳炎は6時間以内、という大原則を心に留めていただければと思います。新しい診断ツールや知見を柔軟に活用しつつ、迷ったときに頼れる身近な一冊として、日常診療のそばに置いていただけたら幸いです」と展望を述べた。

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細菌性髄膜炎・HSV脳炎GL改訂、経験的治療の薬剤選択を見直し/日本神経学会

 2026年3月、『細菌性髄膜炎診療ガイドライン2014』と『単純ヘルペス脳炎診療ガイドライン2017』を統合した『細菌性髄膜炎・単純ヘルペス脳炎診療ガイドライン2026』(日本神経学会・日本神経感染症学会監修、南江堂)が発刊された1)。今回の改訂では、ワクチン定期接種化による起炎菌の変遷、薬剤耐性菌の動向、FilmArray髄膜炎・脳炎パネルに代表される遺伝子検査の普及などを反映し、初期治療から退院後のフォローアップに至る一連の流れが大幅に刷新されている。 5月20~23日に開催された第67回日本神経学会学術大会の生涯教育セミナーにおいて、本ガイドライン作成委員会委員長を務めた中嶋 秀人氏(日本大学医学部内科学系神経内科学分野 主任教授)が「細菌性髄膜炎・単純ヘルペス脳炎診療ガイドライン2026の改訂のポイント」と題して講演を行った。講演レポートとして、前編では「細菌性髄膜炎」、後編では「単純ヘルペス脳炎」について、2回にわたって紹介する。ガイドライン改訂の主なポイント【細菌性髄膜炎】初期の経験的治療(エンピリックセラピー)のレジメン変更と迅速性 今回の改訂では、経験的治療の薬剤選択が見直された。髄液由来肺炎球菌では第3世代セフェム耐性率・メロペネム(MEPM)耐性率がともに上昇傾向にあり、2023年のJANIS(厚生労働省院内感染対策サーベイランス事業)データではMEPM耐性率が18.2%に上昇している。一方でバンコマイシン(VCM)は感性を維持している。そのため、第3世代セフェム(セフォタキシム[CTX]/セフトリアキソン[CTRX])またはMEPMのいずれを用いる場合もVCMを併用することが推奨され、年齢・免疫状態に応じた迅速な薬剤選択が求められる。年齢・免疫状態別のレジメン例・免疫正常(16〜49歳):肺炎球菌(60%以上)、髄膜炎菌 第3世代セフェム(CTXまたはCTRX)+VCM MEPM+VCM ・免疫正常(50歳以上):肺炎球菌が最多。リスクの高まるリステリア菌をカバーするためABPCを追加 アンピシリン(ABPC)+第3世代セフェム(CTXまたはCTRX)+VCM MEPM+VCM ・慢性消耗疾患・免疫不全:肺炎球菌・リステリア菌に加え、グラム陰性桿菌(GNR)やMRSAも考慮 ABPC+セフタジジム(CAZ)+VCM MEPM+VCM ・頭部外傷後・外科手術後:ブドウ球菌に加え、緑膿菌を含むGNRを考慮 MEPM+VCM CAZ+VCMTime is Brainの原則 細菌性髄膜炎は「Time is Brain」の病態であり、病院到着から1時間以内の抗菌薬投与開始を目標とする。頭部CTや腰椎穿刺によって投与が遅れる場合は、検査の完了を待たずに抗菌薬を先行投与する。なお、古典的三徴(発熱・項部硬直・意識障害)が揃う例は成人全体でも33%にすぎず、とくに高齢者では発熱が目立たないことや、意識障害が認知症・せん妄と誤認されやすいことから、厳重な警戒を要する。デキサメタゾン併用による炎症反応の抑制 炎症抑制による予後改善のため、すべての成人患者にデキサメタゾンの併用(最初の抗菌薬投与の前または同時開始、4日間)が推奨される。死亡率・神経学的後遺症・聴力障害の減少が期待できる。ただし、起炎菌が肺炎球菌・インフルエンザ菌以外なら中止し、とくにリステリアが起炎菌として判明した場合は死亡率悪化のエビデンスがあるため直ちに中止する。診断技術のアップデート:FilmArray髄膜炎・脳炎パネル 約1時間で主要病原体14種を同定できるマルチプレックスPCR遺伝子検査「FilmArray髄膜炎・脳炎パネル」が2022年10月に保険収載され、診断フローに位置づけられた。従来は培養検査やグラム染色の結果判明まで数日を要していたが、本検査による迅速な病原体同定は、経験的に開始したアシクロビル(ACV)の投与期間短縮など医療資源の適正使用に寄与する。起炎菌・感受性が判明した後は、速やかに狭域スペクトラムの抗菌薬へ変更する(De-escalation)。FilmArray検査のピットフォール 一方で、FilmArray検査には実臨床上の限界(ピットフォール)があり、結果は臨床症状・髄液所見と合わせて総合的に判断する必要がある。細菌性髄膜炎では、本検査で薬剤感受性(耐性菌の有無)が判別できないため、培養検査・グラム染色を省略せず必ず並行して実施しなければならない。また、結核菌はパネルに含まれず、院内感染や基礎疾患を有する例、脳外科術後の髄膜炎例には不向きである点にも注意を要する。抗補体薬を使用する患者への対応 重症筋無力症や視神経脊髄炎スペクトラム障害など神経疾患への抗補体薬(C5阻害薬:エクリズマブ、ラブリズマブ、ジルコプランなど)の適応拡大を反映し、抗補体薬使用患者への対応が新設された。抗補体薬使用患者では侵襲性髄膜炎菌感染症(IMD)のリスクが1,000〜2,000倍に上昇し、劇症型を呈しうる。本邦のIMD致命率は10〜12%と高く、発症から24〜48時間で致命的合併症を来しうるため、予防と早期対応がきわめて重要である。投与開始の2週間前までに4価髄膜炎菌ワクチン(販売名:メンクアッドフィ)を接種する(B群髄膜炎菌は本ワクチンの対象外で、B群ワクチンは国内未承認)。発熱時には髄膜炎症状がなくてもIMDを念頭に血液培養2セットを採取し、結果を待たずに第3世代セフェム(CTRXなど)を直ちに開始する。(後編「単純ヘルペス脳炎」に続く)

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インフルワクチンによるアルツハイマー病リスク低下、高用量ワクチンでより有効

 高用量のインフルエンザワクチンは、高齢者におけるアルツハイマー病のリスクを低下させる可能性があるとする研究結果が報告された。高用量ワクチンを接種した高齢者は、標準用量ワクチン接種者と比べ、アルツハイマー病リスクが有意に低かったという。米国でのアルツハイマー病の患者数は2025年時点で700万人以上に上り、2050年までにこの2倍以上に増加すると予測されている。米テキサス大学ヒューストン健康科学センターの神経学教授であるPaul Schulz氏らによるこの研究結果は、「Neurology」に4月1日掲載された。 この高用量ワクチンは、標準用量の約4倍のインフルエンザウイルス抗原を含んでいる。これまでの研究でも、インフルエンザワクチンの接種は未接種と比べてアルツハイマー病リスクを約40%低下させることが示されていたが、本研究では、高用量ワクチン接種者では、標準用量接種者と比べてアルツハイマー病リスクが有意に低いことが示された。ただし、この高用量ワクチンの存在は、医療従事者を含め、まだ広く知られていないとSchulz氏は指摘している。同氏は、「医師である自分ですら、高用量ワクチンの存在を知らなかったことに驚いた」とニュースリリースで述べている。 今回の研究では、高用量不活化インフルエンザワクチンを接種した12万775人の高齢者(平均年齢74.4歳、女性57.3%)と、標準用量不活化インフルエンザワクチンを接種した高齢者4万4,022人(平均年齢73.0歳、女性56.4%)を対象に、アルツハイマー病リスクを比較した。解析は、初回の接種群に基づいてその後の接種状況にかかわらず追跡するITT解析と、追跡中に他のインフルエンザワクチンを接種した場合に打ち切るPP解析の両方で行われた。 その結果、高用量ワクチン接種群では標準用量接種群と比べて、PP解析では接種後1~25カ月、ITT解析では接種後1~28カ月においてアルツハイマー病リスクが有意に低いことが示された。25カ月時点では、PP解析では185人、ITT解析では270人に高用量ワクチンを接種するとアルツハイマー病の発症が1人減ると推定された。また、このリスク低下は女性でより長期間にわたり認められ、PP解析では1~13カ月、ITT解析では1~17カ月にわたり有意差が認められた。一方、男性では、ITT解析で17~24カ月においてのみ有意差が認められ、PP解析ではいずれの期間でも有意差は認められなかった。 Schulz氏は、「本研究で、高用量ワクチンを接種した65歳以上の人を探し始め、最終的には数千人規模のデータを集めて、高用量と標準用量の接種効果を比較することができた。当然のことながらアルツハイマー病は加齢とともにリスクが高まるため、高齢者は検証に適しており、両者の違いを評価できた」と述べている。 ただし、この研究では、なぜインフルエンザワクチンがアルツハイマー病のリスク低下に寄与するのかは解明されておらず、因果関係を直接示すものではない。研究グループは、ワクチンがなぜアルツハイマー病の予防に効果があるのか、またなぜ高用量の方がより有効なのかを明らかにするために、さらなる研究が必要だとしている。

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【GET!ザ・トレンド】循環器内科医が救う、筋ジストロフィー患者の予後

はじめに:筋肉の病気の予後は、「心臓」が握っているベッカー型筋ジストロフィー(BMD)は、ジストロフィンタンパク質が完全に欠損するデュシェンヌ型(DMD)とは異なり、機能を保持したタンパク質が一部存在するため、長年その「軽症型」と位置づけられてきた。しかし近年の研究により、遺伝子変異とフェノタイプ(臨床症状)の相関が解明されるにつれ、その極めて多様な臨床像が明らかとなってきている。特筆すべきは、骨格筋症状は軽微であるにもかかわらず、心筋症が先行して重症化する症例が少なくないという事実だ。こうしたBMDの病態解明に、モデルマウス研究や自然歴調査等を通じて尽力している、独立行政法人国立病院機構まつもと医療センターの中村昭則氏に話を伺った。同氏によれば、運動機能が良好なために筋疾患の存在が隠れ、成人後に「原因不明の心不全」として循環器内科を初診するケースがあるという。そして彼らの予後を支える鍵は、骨格筋の評価以上に、循環器内科医による早期の心不全管理にある、と語る。骨格筋症状を追い越す心筋症:「急激な進行」という現実BMD診療において、中村氏が最も警鐘を鳴らすのは、骨格筋症状の影に隠れた心不全リスクである。「過去には、骨格筋の異常が軽微であったにもかかわらず、10~20代という若さで、心不全によってともに帰らぬ人となったご兄弟のBMD患者さんがいました」と中村氏は語る。これは、骨格筋の経過に比して心筋病変の進行が先行した結果だという。運動機能が保たれていることは、決して心臓の安全を保証しない。BMDにおける骨格筋の「軽症感」が、心臓の致命的なリスクを覆い隠す事実は、「極めて重要なピットフォールに他ならない」と中村氏は指摘する。循環器内科医の視点:その「気づき」が、患者の命をつなぎ止める中村氏によれば、BMDの病態スペクトラムは驚くほど広く、そこには循環器内科の先生方にこそ知っていただきたい2つの「心筋先行型」のパターンが存在するという。1つは「運動能力の差」に紛れるケースである。幼少期から「足が遅い」「疲れやすい」といった軽微な骨格筋症状は存在するが、それが病態として認識されず、個人の資質や運動能力の差として処理されてしまうパターンである。成人後、心不全の精密検査をきっかけに、潜在していた骨格筋症状と結びつき、初めてBMDの診断に至る。もう1つは、「心不全」が独走するケースである。明らかな骨格筋障害を認めず、心筋症のみが病態の前面に押し出されるパターンで、身体が良好に動くため、医師も患者も「筋肉の病気」という選択肢を想起しにくい。そのため、「原因不明の心筋症」として治療される中で、ジストロフィン異常症という背景が見落とされ、診断の遅れにつながりやすい。こうした潜在的な症例を早期に捉えるために、原因不明の心不全や心筋肥大を呈する若年男性において、たとえ歩行能力に問題がなくとも、「CK値(クレアチンキナーゼ)」の確認をぜひ検討いただきたい、と中村氏は呼びかける。この1歩が、不可逆的な心筋線維化が進行する前の「適切なタイミング」での介入を可能にするといい、「そのタイミングを掴めるのは、循環器内科の先生方をおいて他にいません」と力を込める。家族を診る視点:母親もまた「心筋症リスク」の当事者である患者を支える家族への配慮も、BMD診療においては極めて重要である。特に見過ごされがちなのが、患者の「介護を担う母親」自身が、加齢とともに心筋症を発現するリスクを抱える当事者であるという点だ。母親が女性ジストロフィン異常症(保因者)である場合、息子(患者)の診断をきっかけに、母親の潜在的な心機能異常にも目を向ける必要がある、と中村氏は指摘する。また、母親は「息子に遺伝させてしまった」という深い心理的葛藤を抱えながら、日々のケアを担っていることが多い。その背景には、単なる筋肉の症状に留まらない複雑な困難も存在する。ジストロフィンは脳内にも発現しているため、患者が学習障害や注意欠如・多動症(ADHD)、自閉スペクトラム症(ASD)を合併する場合がある。しかし、「筋ジストロフィーは筋肉だけの病気である」という誤解から、これらが教育現場などで単なる「怠慢」や「本人の性格」として処理されてしまい、患者やその家族が孤立してしまう社会的困難も見受けられるという。「こうした家族全体の負担を理解し、身体的・精神的双方から包括的にケアしていく視点が今、求められています」と中村氏は語る。創薬の最前線:BMD研究がジストロフィン異常症治療の未来を拓くかつて「根本的な治療法がない」とされたBMDの状況は、今、確実に変わりつつある。国内では神経筋疾患患者レジストリ「Remudy(レムディ)」1)や臨床試験ネットワークの整備が加速しており、適切な診断がなされれば、将来的な治験の案内や研究情報へとつながるプラットフォームが整いつつある。現在、世界的には重症型であるDMD(デュシェンヌ型)の治療開発が先行しているが、そこでBMDの精緻な病態解明が果たしている役割は極めて大きい。例えば、DMDの遺伝子治療において鍵となる「機能的なジストロフィンタンパク質の最小構造(マイクロジストロフィン)」などは、軽症BMD患者の遺伝子変異の解析がきっかけで見出され、開発へとつながったものだ。このように、BMDの分子病態から得られる知見は、DMDの治療開発にも不可欠なエビデンスを供給し続けており、ジストロフィン異常症全体の予後を改善するための「最前線」を担っていると言っても過言ではない。また、日本筋ジストロフィー協会2)および同協会内のベッカー型筋ジストロフィー分科会3)といった患者会組織との緊密な連携により、当事者の切実な声を反映した研究開発への理解も深められている。「将来的にBMD特有の治療法が確立され、それが真に効果を発揮するためには、早期診断によって心機能を守り、患者の全身状態を良好に維持しておくことが、我々すべての医師に託された“治療への基盤作り”になります」と中村氏は語る。結びに:診療科の枠を越えBMDを「管理可能な疾患」へBMD診療において最も重要なのは、診療科の枠を越えた連携、とりわけ循環器内科による早期の心保護介入である。「筋肉の病気だから脳神経内科」、「子どもの病気だから小児科」、と完結させるのではなく、特に循環器内科の専門性が介入することで、BMDは初めて「予後を管理可能な疾患」へと進化する。中村氏は「人間対人間として、患者さんならびに家族と信頼関係を築き、診療科の枠を越えシームレスに患者を支え続ける体制こそが重要」と語る。患者さんが生涯を通じて自分らしい生活を全うできるよう、診療科の枠を越えた積極的な関わりと相互協力が今、期待される。(ケアネット 三浦 愛子) 参考 1) 神経筋疾患患者登録Remudy 2) 日本筋ジストロフィー協会 3) ベッカー型筋ジストロフィー分科会

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パーキンソン病患者を支援する遠隔診療への期待/アボット

 アボットは、2025年7月に発売したパーキンソン病(PD)などの治療に使用される脳深部刺激療法(Deep Brain Stimulation:DBS)の治療機器、充電式脳深部刺激システム「Liberta RC DBSシステム」が、2026(令和8)年の診療報酬改定で「遠隔プログラミング」として新たに算定が追加されたことに寄せ、都内でPDの診療に関するメディアセミナーを開催した。 DBSはジスキネジア(自分の意思に反する身体の動き)などにより日常生活に支障がある患者に対し、前胸部の皮下に植え込んだ刺激装置から脳深部に電気刺激を与えることで、異常な神経信号を中断し、運動症状の改善を図る治療法。DBSの認定医は脳神経外科医の約3%程度であり、普及が進まず、遠方などの患者の通院負荷などが課題とされていた。今回のDBSの遠隔プログラミングに対する診療報酬算定追加を機に、DBSへのアクセス向上が期待される。 セミナーでは、「パーキンソン病治療の新たなフェーズ:令和8年診療報酬改定で変わる脳深部刺激療法」をテーマに、PDの診療の概要、DBS遠隔プログラミングが今後のPDの治療へもたらすメリットや臨床での使用知見、患者にもたらされる恩恵などが講演された。パーキンソン病の治療での課題は克服できるか 「失われた動きを取り戻す治療を目指して:パーキンソン病と向き合う最新テクノロジー」をテーマに服部 信孝氏(順天堂大学医学部附属順天堂医院 脳神経内科 特任教授)が、PDの病態と診療の現状を講演した。 PDは、国際パーキンソン病・運動障害学会(MDS)の診断基準により診断される。絶対条件としては、「パーキソニズムがある」ことであり、支持基準として「ドパミン補充療法が有効」「レボドパ誘発性ジスキネジア」「静止時振戦」「嗅覚障害とMIBG心筋シンチ異常」の中で2つ満たすと確定診断となる。 患者数は増加しており、とくに加齢はPDのリスク因子の1つであり、加齢とともに患者数は増えていく。2015年時点で世界には690万人の患者がいるが、2040年には1,400万人になると予測されている。 PDの症状は、うつ、認知症、睡眠障害、パーキソニズム、嗅覚障害、自律神経障害、便秘など多岐にわたり、脳だけの疾患ではなく、全身疾患であると認識される。 PDの治療では、ドパミン補充療法、ドパミンアゴニスト、ドパミン放出促進薬などさまざまな治療薬がある。多くの治療薬が使える一方で、 Lドパ製剤では、大量に内服するとジスキネジアの出現、進行すると効果の時間が短くなるウェアリング・オフが課題となってくる。 また、薬物療法以外では、DBSの手術、神経栄養因子補充療法、リハビリテーション療法などもある。DBSでは、ジスキネジアをターゲットとする淡蒼球内節と薬物量減量をターゲットとする視床下核(STN)への手術がある。とくにSTNへのDBSが多く施行され、10年生存率は77%と高く、その長期治療成果が報告されている1)。 こうした手術の適応要件としては、PDと診断されていること、レボドパ反応が良好であること、適切かつ十分な内服治療を行っても、ジスキネジアやウェアリング・オフなど日内変動が大きいこと、患者本人や介護者がデバイス操作に精通できること、各治療の外科的禁忌事項(脳病変、胃瘻増設が可能かどうかなど)がないことが条件とされる。 今後の治療法では、2026年中盤以降に条件及び期限付承認でiPS治療が開始される。これは、iPS細胞をドーパミン放出神経細胞に変化させ、患者の脳に注射。ドーパミン分泌が増えて症状が改善することを目指す治療である。 おわりに服部氏は「iPS治療で治療薬不要の患者も出てくる。その一方でDBSでも治療薬不要の人もいるので、どちらが適切か、その見極めが今後重要となる」と語り、講演を終えた。患者と医師をつなぐDBSの遠隔プログラミングの有用性 「脳深部刺激療法の重要性」をテーマに波田野 琢氏(順天堂大学附属順天堂医院 脳神経内科 主任教授)が、薬物療法の限界とDBS導入のポイントを講演した。 先の服部氏の講演内容をたどりつつ、PDの治療の中心はLドパ製剤であり、患者からの薬剤の効果の話題ではLドパ製剤であることが多いという。Lドパ製剤は、PDの症状改善や生命予後の延長など恩恵もある一方で、患者の日内変動で予測不能なオフ、突然のオフ、無効化、投与終末リバウンド、オン・オフ現象など治療には限界があることが知られている。 こうした課題に対しDBSがあり、“INTREPID Study”によると登録されたPD患者313例のうち、196例がDBSを受け、191例がランダムに割り付けられた。中間解析に含まれた160例のうち、121例がアクティブ群に、39例がコントロール群に割り付けられ、盲検期間3ヵ月(その後全例open-labelへ)の観察を行った。その結果、DBSは難しいジスキネジアのないオン時間を延長することが判明した2)。 しかし、DBSの普及は進んでいないと波田野氏は現状を指摘する。その理由として適応となる運動機能障害の患者数、患者家族の有無、専門の医療機関の数・地域差・専門医の数など課題があるという。こうした課題、とくに専門医や医療機関の地域偏在などの差を埋めるものとして、遠隔プログラミングによる患者フォローが期待されている。 遠隔診療による自験例として、手術後遠隔診療をした38例についてアンケート調査を行ったところ、患者の回答として「病院へ行く負担が減った」「費用が節約できた」「医師とのコミュニケーションが増えた」という声があった。また、医師の回答として「患者とのコミュニケーションが増えた」「患者の不安を取り除けた」など双方によい結果だった3)。 同時に進行期PD患者のQOLを上げるためには、かかりつけの専門医、専門の看護師、薬剤師、理学療法士を巻き込んだ専門的なチーム治療が必要だと提言を行った。おわりに波田野氏は、「こうした遠隔診療が導入されることで、1人でも多くの患者の治療障壁が取り除かれることに期待したい」と抱負を述べ、講演を終えた。PDへの遠隔プログラムの期待 「DBS 遠隔プログラミングの実際」をテーマに梅村 淳氏(順天堂大学附属順天堂医院 脳神経外科運動障害疾患病態研究・治療講座 教授)が、遠隔プログラミングの実際や見えてきた課題について講演した。 PDにおけるDBSは、脳への電気刺激により神経回路の機能を調整してパーキンソン症状を改善させることにある。最初に外科手術を行い、術後は薬物療法とともに相補的に使用される。DBSでは症状に合わせて刺激の調整を行うことで症状を緩和する。その際に電気の強弱を合わせることを「プログラミング」といい、電極の左右で調整を変えることができる。 近年では遠隔プログラミングができるDBSデバイスも登場し、遠隔プログラミングでは、患者とビデオチャットができるスマホやタブレット端末を通じて、患者と医師が会話しながら調整する。 実際、DBSを受けたPD患者を対象とした無作為化多施設共同試験では、遠隔プログラミングは院内プログラミング(対面)のみの場合と比較し、臨床的改善までの期間を有意に短縮し、有害事象もないことが報告されている4)。 遠隔プログラミングは以前、医師のボランティアで行われていたが、今回の診療報酬改定で保険点数がついたことで拡大することが期待されている。その一方で、現状の課題として遠隔診療では神経学的診察に限界があること、通信環境やデバイスの操作能力の差があること、緊急時の対応、適応患者の選定などがあると梅村氏は指摘する。 また、梅村氏は、遠隔プログラミングの将来的な期待として以下の7項目を掲げる。1)通院負担の軽減とアクセス改善2)患者ごとの生活状況に合わせた柔軟な調整3)専門医療の地域格差の是正4)緊急時・副作用発現時の迅速な対応5)家族・介護者を含めた治療参加の促進6)医療資源の効率化7)将来的な「在宅型・個別化DBS管理」への発展 最後に梅村氏は、「DBS管理によりPDの治療は継続的に個別化・患者中心型に変わっていく可能性がある」と展望を語り、講演を終えた。

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卵は認知症を予防するか?

 アルツハイマー病リスクと修正可能な食事因子との関連性については、依然として多くの知見が不足している。卵は、脳の健康を支える重要な栄養素の供給源の1つである。米国・ロマリンダ大学のJisoo Oh氏らは、卵摂取量とアルツハイマー病発症率との関連性を調査するため、本研究を実施した。The Journal of Nutrition誌オンライン版2026年4月17日号の報告。 米国の大規模なプロスペクティブコホート研究であるAdventist Health Study-2よりデータを抽出した。食事および生活習慣因子は、検証済みの食物摂取頻度調査票を用いて評価した。卵の摂取頻度は、「まったく食べない/ほとんど食べない」から「週5回以上」までの範囲で分類した。多変量調整Cox比例ハザードモデルを用いて、ハザード比(HR)および95%信頼区間(CI)を推定した。卵摂取量(g/日)を連続変数として、制限付き3次スプライン分析を行った。 主な結果は以下のとおり。・解析対象は、3万9,498例の参加者(平均フォローアップ期間:15.3年)で、そのうち2,858例がアルツハイマー病を発症した。・卵摂取量は、アルツハイマー病リスクとの間に負の相関関係を示した。・卵をまったく食べない/ほとんど食べない場合と比較して、人口統計学的要因、生活習慣、食品群、および併存疾患を調整した後のHRは、月1~3回で0.83(95%CI:0.75~0.92)、週1回で0.83(95%CI:0.74~0.94)、週2~4回で0.80(95%CI:0.71~0.90)、週5回以上で0.73(95%CI:0.60~0.89)であった。・スプラインモデルでは、卵を食べない場合、1日10g摂取した場合と比較して、調整済みハザード比は1.22(95%CI:1.11~1.34)であり、曲線的な関連が認められた。 著者らは「健康意識の高い集団において、適度な卵の摂取はアルツハイマー病のリスクを有意に低下させることが示された。これらの研究結果は、バランスの取れた食事の一部として卵に含まれる栄養素を摂取した場合、神経保護効果が得られる可能性があることを示唆している」としている。

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