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アルツハイマー病の脳変化に性差

 アルツハイマー病の進行に伴う脳の変化には性差があり、通常の診断で用いられている認知機能評価ツールでは、女性の変化が見逃される可能性があるようだ。健常者、軽度認知障害(MCI)患者、アルツハイマー病患者の脳MRI画像を用いた研究において、男性は健常からMCIにかけての初期段階から灰白質体積(GMV)が緩やかに減少し、その後も比較的緩やかに推移するのに対し、女性では初期段階ではGMVが保たれているものの、その後、アルツハイマー病発症までの段階で急激に減少する傾向が示された。米ジョージア州立大学物理学・天文学分野のMukesh Dhamala氏らによるこの研究の詳細は、「Brain Communications」に4月3日掲載された。 研究グループは、「標準的なスクリーニング検査ツールであるMMSE(ミニメンタルステート検査)は、万人に同一の基準が該当することを前提としており、脳の変化の仕方が男女で異なることを考慮していない」と指摘している。 この研究では、332人の脳の高解像度MRI画像を用いて、脳を82の領域に分けて解析し、健常状態からMCI、さらにアルツハイマー病へ至る過程における脳の変化を、GMVに着目して男女間で比較した。画像は、健常者(160人;男性77人、女性83人)、MCI患者(112人;男性55人、女性57人)、アルツハイマー病患者(60人;男性34人、女性26人)から取得されたものだった。 その結果、アルツハイマー病へ至る過程で脳に生じる変化は、男女間で有意に異なることが確認された。女性では、健常とMCIとの間ではGMVに有意な変化は認められなかったが(P=1.000)、MCIとアルツハイマー病との間ではGMVが大きく減少した(P<0.001)。これに対し、男性では健常とMCIとの間でGMVが有意に減少し(P<0.001)、健常とアルツハイマー病との間でもGMVが有意に減少したものの、MCIとアルツハイマー病との間では有意な差は認められなかった(P=1.000)。MCIの女性では男性と比べてGMVが有意に大きかったが、アルツハイマー病ではこのパターンが逆転し、女性のGMVは男性と比べて有意に小さかった(P=0.015)。 次に、MMSEと日常生活動作の評価尺度であるFunctional Activities Questionnaire(FAQ)に焦点を当てて脳の変化との関連を検討した。その結果、左上側頭回のGMVはMMSEと正の相関を、FAQとは負の相関を示し、GMVが大きいほど認知機能が高く、日常生活動作も維持されていることが示唆された。さらに女性では、GMVとMMSEおよびFAQとの関連が男性より広範な脳領域で認められた。 以上の結果から、女性ではMMSEスコアが低下し始める頃には、すでに脳の損傷がかなり進んでいる可能性が示唆された。この「見かけ上の正常さ」は、受診や治療開始の遅れにつながる恐れがある。Dhamala氏は、「MCI段階でMMSEスコアが良好な女性でも、そのスコアだけでは捉えきれない脳の変化が進行している可能性がある」と述べている。 研究グループは、今回の知見が個別化医療の実現に向けた基盤になると期待している。Dhamala氏は、「こうした研究の積み重ねにより、将来的には性別ごとの適切なスクリーニング時期が明らかになり、より早期で精度の高い介入につながることが期待される」と述べている。女性の場合、ホルモン変化が脳の健康に大きく影響する中年期や閉経後が、その重要な時期となる可能性がある。また、脳の健康を守るためには、知的・身体的に活動的でいること、血管リスクを管理すること、認知症や関連疾患の家族歴や遺伝的リスクについて医師に相談することが重要だとしている。

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フェニルケトン尿症の新治療薬セピアプテリンへの期待/PTCセラピューティクス

 PTCセラピューティクスは、フェニルケトン尿症(PKU)の治療薬セピアプテリン(商品名:セピエンス)の発売に伴い、都内でメディアセミナーを開催した。わが国のPKUの発生頻度は約6万人の出生に1人の割合で、年間20人前後が診断され、累計で800人以上の患者が報告されている。PKUは未治療や管理が不十分な状態が続くと知的障害、痙攣発作、発達遅延など重度かつ不可逆的な障害が生じる。治療の基本は食事療法で、フェニルアラニン(Phe)が多く含まれる特定の食材(肉・魚・卵など)の摂取が厳しく制限される。 セミナーでは、PKUの病態や治療薬セピアプテリンの臨床試験の概要と今後の治療の位置付けなどについて講演が行われた。新生児マススクリーニング検査で早期診療が可能に 「フェニルケトン尿症に対するセピエンスへの期待」をテーマに濱崎 考史氏(大阪公立大学大学院医学系研究科発達小児医学 教授)が、PKUの病態やセピアプテリンの臨床試験結果、今後の治療の展望などを説明した。 PKUは、いわゆる教科書疾患であり、実臨床で診療する機会は少ない疾患である。PKUは、Pheを代謝するPhe水酸化酵素の先天的な活性低下により、Pheがチロシンに代謝されずに蓄積する。血中Phe濃度の上昇は、発達遅滞や神経症状を来すことがある。そのため無治療の場合、脳の発達障害、小頭症、重度の発達遅滞、行動障害などを来し、治療不十分の場合は、頭痛、うつ状態、神経症、認知能力低下などがある。 PKUは、新生児のマススクリーニング検査の契機となった疾患であり、現在では日齢4または5に血液を採取し、ろ紙検査により診断が行われている。これにより今では早期に診断、治療介入することができるようになっている。 PKUでは血中Phe値を上昇させないために、Pheの摂取を制限する必要があり、治療としては食事からのタンパク質の摂取制限とPheを除去した治療用特殊ミルクによる食事療法が中心となる。食事療法は低タンパク食が中心となり、特別の食材を用意する必要がある。そのため、多額の費用が必要であり(保険適用外)、味も悪く、患者は外食などが難しく社会的孤立を招きやすいという。実際、患者は年齢とともに血中Phe濃度の管理が難しくなることも報告されている1)。 薬物療法について現在わが国で承認されている薬剤では、サプロプテリンとペグバリアーゼの2種類がある。サプロプテリンは顆粒の粉末で服用するが、対象が異型高フェニルアラニン血症など限定されており、全体の20~30%の患者にしか適用がなく普及していない。ペグバリアーゼは皮下注製剤で、成人のみが対象であり、副作用としてアナフィラキシーショックがあるために、アドレナリン自己注射薬(商品名:エピペン)を帯同する必要があるという。 PKU治療の課題として、食事療法ではタンパク制限食へのコスト高やアドヒアランスの問題、薬物療法では使用できる対象年齢や効果不十分の患者への対応などが指摘されている。また、患者からも食事制限への疾病負担や食事への精神的苦痛、QOLの低下などを訴える声も多い。そこで、すべてのPKU患者が血中Phe濃度の管理を負担なく継続できる治療法が求められている。患者の食事の幅を広げるセピアプテリン 今回発売されたセピアプテリンは、Pheの代謝に関わるPAHの補酵素であるBH4の前駆体であり、プテリンのサルベージ経路を介し細胞内BH4に急速に変換され、速やかに細胞内に移行して、細胞内BH4濃度を高める働きがある。 海外で行われた第III相試験のAPHENITY試験では、157例の患者について、導入期にセピアプテリンを14日間投与後に無作為にセピアプテリン群とプラセボ群に割り付け、プラセボ対照を42日間行った。主要評価項目はベースラインから5~6週までの血中Phe値の平均変化量とした。その結果、セピアプテリン投与14日後に血中Phe濃度が30%以上低下した患者割合は66%だった。また、投与5~6週後、血中Phe濃度(5および6週目の平均値、単位:µmol/L)のベースラインからの平均変化量についてプラセボ群(49例)では-16.2だったのに対し、セピアプテリン群(49例)が-410.1とプラセボ群に対する優越性が検証された。安全性については、死亡や重篤な有害事象は報告されず、下痢、胃腸炎などの消化器症状や頭痛などが報告された。 国際共同第III相試験のAPHENITY延長試験では、APHENITY試験後の被験者と非被験者について非盲検継続投与を行い1ヵ月後の平均Pheについて360μmol/Lを基準に分けて、食事によるPhe耐性の評価を行った。主要評価項目はセピアプテリンの長期安全性とベースラインから26週目までの食事中のPhe/タンパク質摂取量の変化である。その結果、血中Phe濃度が360μmol/L未満に維持された患者集団では、食事性Phe摂取量(平均値)が増加した。また、安全性でも主な有害事象は、上気道感染、上咽頭炎、頭痛、下痢、嘔吐、発熱であり、死亡に至るものや重篤なものはなかった。 海外第III相実薬対照試験のAMPLIPHY試験では、セピアプテリンとサプロプテリンの非盲検クロスオーバー試験で効果比較を行った。その結果、平均血中Phe濃度(μmol/L)について、セピアプテリン群(58例)のベースラインが725.8だったものが3、4週目の平均で312.7に低下していた。その一方でサプロプテリン群(56例)はベースラインが790.4だったものが3、4週目の平均で504.8に低下していた。また、血中PheのLS平均変化量について、ベースラインから3、4週目の数値でセピアプテリン群(58例)が-437.0、サプロプテリン群(56例)が-256.6とセピアプテリンはサプロプテリンと比較して血中Phe値を有意に低下させていた。安全性の面でも重篤な有害事象はなく、両薬剤ともに上気道炎、上咽頭炎、下痢などが報告された。 最後に濱崎氏は、わが国の患者の置かれている現状として、次の7項目を挙げた。・食事療法はPKUの治療において大きな役割を担っているが、成人期において継続することが困難・指定難病の対象に加えられたのは、2015年と最近・Phe除去ミルクの医療費負担は軽減されたが、低タンパク食は自己負担・PKUに特化した治療用食品の開発は進んでいない・BH4が反応する可能性はあっても患者が幼少期には負荷試験を実施していないことがある・成人男性PKU患者の通院、食事療法へのアドヒアランスは低いと考えられる・2019年の診療ガイドラインの改訂で、成人の血中Phe濃度の目標値について管理目標値が360μmol/L(6mg/dL)に下がっていることが成人患者には伝わっていない これらの現状を踏まえ、今後のセピアプテリンの臨床的位置付けとして「セピアプテリンは、患者の年齢に制限なく、すべての年代のPKU患者に投与可能な1日1回投与の経口顆粒剤であり、食事療法で非常に困っている患者が、新しい治療薬を服用することで食事療法の幅が広がるものと期待している」と語り、講演を終えた。

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アルツハイマー病に対する4つの第2世代抗精神病薬の死亡リスク比較

 第2世代抗精神病薬(SGA)は、安全性に関する懸念が存在するにもかかわらず、アルツハイマー病の行動症状のマネジメントに対し、適応外で使用されることが少なくない。しかし、特定のSGA間における死亡リスクを比較したエビデンスは、依然として限られている。米国・ピッツバーグ大学のChen Jiang氏らは、一般的に使用されるSGAで治療を行ったアルツハイマー病患者におけるすべての原因による死亡率を比較し、因果機械学習を用いて治療効果の異質性を検討した。CNS Drugs誌オンライン版2026年3月28日号の報告。 Truvetaプラットフォームの匿名化された電子カルテデータを用いて、レトロスペクティブコホート研究を実施した。新規患者デザインを用いて、アリピプラゾール、リスペリドン、クエチアピン、オランザピンによる治療を開始した新規アルツハイマー病患者を特定した。曝露は、Cox比例ハザードモデルにおいて時間変動共変量としてモデル化し、交絡因子を調整するために傾向スコアマッチングを適用した。因果ツリーとターゲット最大尤度推定法を用いて、治療効果に異質性を示すサブグループを特定した。 主な結果は以下のとおり。・アルツハイマー病患者1万7,004例において、アリピプラゾールは、オランザピン(調整ハザード比[aHR]:0.667、95%信頼区間[CI]:0.472〜0.941)およびクエチアピン(aHR:0.677、95%CI:0.462〜0.990)と比較し、死亡率が有意に低かった。・クエチアピンは、オランザピン(aHR:0.833、95%CI:0.702〜0.990)およびリスペリドン(aHR:0.830、95%CI:0.705〜0.978)と比較し、死亡率が低かった。・因果ツリー分析により、とくに2型糖尿病治療薬を使用している患者において、臨床的特徴による治療効果の異質性が明らかになった。・サブグループ解析では、アリピプラゾールは、2型糖尿病治療薬使用患者において保護効果を示した(クエチアピンおよびリスペリドンの併用群と比較し、aHR:0.604、p=0.002)。 著者らは「単剤療法を行っているアルツハイマー病患者において、SGAによる死亡リスクには大きな違いが認められた。アリピプラゾールとクエチアピンは、オランザピンとリスペリドンと比較し、死亡率が低いことが示された。治療効果の異質性は、併存する2型糖尿病などの患者特性に基づいた個別処方の必要性を示唆している」と結論付けている。

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不眠にベンゾジアゼピンは使ったらダメ?【非専門医のための緩和ケアTips】第123回

不眠にベンゾジアゼピンは使ったらダメ?不眠に対する処方はどうしていますか? 従来はベンゾジアゼピン系が広く用いられてきましたが、最近はあまり処方しないほうがよいとも言われています。緩和ケアにおいてはどのように考えるのでしょうか?今日の質問訪問診療で担当している患者から、最近不眠気味なので睡眠薬を処方してほしいと相談がありました。予後は月単位と想定される方ですが、まだトイレなどで歩いていたため、転倒の心配を説明し、ベンゾジアゼピン系以外の睡眠薬を処方しました。ただ、その後もあまり眠れなかったようで、もっと強い睡眠薬はないかと相談されました。終末期が近い患者でもベンゾジアゼピン系睡眠薬は使用しないほうがよいのでしょうか?かなり実践的なご質問をいただきました。最近はベンゾジアゼピン系睡眠薬(以下、ベンゾ)の弊害が強調されるようになり、「不眠=ベンゾはNG」として処方を避ける場面が多くなっています。ただ、今回のように終末期に差し掛かった状況であれば、私自身はベンゾの処方は「あり」だと考えています。もちろん、慢性的な不眠に対して長期間使用することは推奨しませんし、転倒やせん妄といったベンゾによる弊害が強く懸念される場合も処方しません。不眠に対する睡眠薬の位置付けは、「環境調整などの非薬物療法に取り組んだうえでの手段」であり「不眠の原因を取り除く」ことが処方の目的です。そして、薬剤の選択としては、まずはベンゾを避けることが推奨されます。ベンゾは入眠効果が速い一方で、日中の眠気の持ち越し、せん妄、転倒、認知機能への悪影響といったリスクがあり、交通事故なども懸念されます。高齢者ではとくにリスクが強調され、避けられることが多くなっています。私が研修医のころは不眠を訴える入院患者にはルーティンでベンゾを処方していたことを考えると、大きく位置付けが変わったことがわかります。ただ、短期的な強いストレスで入眠困難が著明であり、確実性の高い入眠効果を期待する際には、ベンゾは今でもよい選択肢だと考えます。では、終末期の場合はどうでしょうか。予後がそう長くなく、解決困難な強い身体症状がある、そうした時に「眠れない」という状況はよくあります。身体症状を和らげるためにベストを尽くすのは大切ですが、患者自身や家族が疲弊しないことも大切です。せん妄などの弊害が許容できれば、夜間をしっかり休むことを優先してベンゾの処方も一手でしょう。長期的な予後が期待できない場合には、依存など長期使用の弊害を考慮する必要性も薄まります。このあたりの対応は、専門家間でも統一されていない印象です。ある精神科の先生は「終末期であっても、ベンゾは処方しない」という方針でした。一方、私自身は「ベンゾだからダメ」と思考停止になるのではなく、注意点をよく理解し、患者の苦痛緩和を実現するためにほかの手段がない場合には使用が許容される、というスタンスです。皆さんはどのように考えますか?今日のTips今日のTips終末期の不眠に対しては、ベンゾジアゼピン系睡眠薬の弊害をよく理解し、個々のケースで使用を検討しましょう。

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脳ドックのガイドライン2026

日本脳ドック学会がまとめる最新ガイドライン脳ドックの水準と有効性の向上を目指し、日本脳ドック学会がまとめるガイドラインの最新版。各項目の内容を刷新し、最新の知見をもとにまとめました。脳卒中や認知症の予防など、日常診療にも大いに役立ちます。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。目次を見るPDFで拡大する目次を見るPDFで拡大する脳ドックのガイドライン2026定価5,720円(税込)判型A4判頁数150頁発行2026年2月編集脳ドックのガイドライン2026 改訂委員会/一般社団法人 日本脳ドック学会-脳卒中・認知症予防のための医学会-ご購入(電子版)はこちらご購入(電子版)はこちら紙の書籍の購入はこちら医書.jpでの電子版の購入方法はこちら紙の書籍の購入はこちら

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縦隔腫瘍・重症筋無力症の手術、主流は「低侵襲」へ――全国データ解析

 胸の中央の空間である縦隔に生じる腫瘍(縦隔腫瘍)の手術は、従来は胸を大きく開く開胸手術が主流だった。近年は胸腔鏡やロボットを用いた低侵襲手術の導入が進んでいるが、日本全体での実態は十分に明らかでなかった。今回、全国の医療保険データを解析した研究で、縦隔手術の多くが胸腔鏡で行われ、ロボット手術も増加していることが示された。研究は、稲毛病院整形外科の城戸優充氏、京都府立医科大学呼吸器外科学の岡田悟氏らによるもので、詳細は2月20日付で「International Journal of Clinical Oncology」に掲載された。 胸腺上皮性腫瘍は発生頻度が低いものの、前縦隔に生じる腫瘍の中で最も多い。標準治療は外科切除であり、近年は胸腔鏡やロボット支援手術など低侵襲手術の導入が進んでいる。また、胸腺摘出術が行われる代表的疾患である重症筋無力症(MG)でも同様の手術手技の変化が報告されている。しかし、日本では縦隔手術の全国的な動向は十分に明らかでない。そこで本研究は、全国の医療保険データベースを用いて過去10年間の縦隔腫瘍手術の推移を解析した。 本研究では、日本の保険診療におけるレセプトデータの95%以上を網羅する厚生労働省の匿名医療保険等関連情報データベース(National Database of Health Insurance Claims and Specific Health Checkups:NDB)の公開集計データを用い、2014~2023年に行われた縦隔手術を解析した。手術は疾患区分(良性腫瘍、悪性腫瘍、MG)と手術アプローチ(開胸、胸腔鏡、ロボット支援手術)で分類し、10万人年当たりの手術率を算出した。10年間の経年推移については、手術件数を線形回帰分析、手術率をポアソン回帰分析で評価した。手術率は男性・女性・男女全体に加えて、10歳ごとの各年代についての解析も実施した。年齢調整は2015年標準人口を用いて行った。 2023年に日本で行われた縦隔手術は全6,214件で、内訳は良性腫瘍54.4%、悪性腫瘍41.6%、MG 4.0%だった。手術アプローチでは、胸腔鏡手術が全体の76.4%を占め、ロボット支援手術は全体の29.4%だった。これは胸腔鏡手術の約4割がロボット支援下で行われていた計算になる。一方で、開胸手術は23.6%にとどまった。手術患者の45.1%は65歳以上だった。 過去10年間で、全縦隔腫瘍手術の件数は有意に増加した(P=0.0001)。この増加は、悪性腫瘍手術、胸腔鏡手術、ロボット支援手術件数の増加によるもので、いずれも有意な上昇を示した(いずれもP<0.0001)。一方、MGに対する拡大胸腺摘出術と開胸手術件数は有意に減少していた(それぞれP=0.0019、P<0.0001)。良性腫瘍手術件数には有意な増減を認めなかった。 手術率では、特に悪性縦隔腫瘍に対する手術率が男女ともに増加しており、相対リスクは男性1.051、女性1.065、全体で1.058だった(いずれもP<0.0001)。年代別の解析では、40歳以上の男女で有意に増加していた(P<0.0024)。 著者らは、「日本では過去10年間で悪性縦隔腫瘍に対する手術が増加しており、手術アプローチは開胸から胸腔鏡やロボットなどの低侵襲手術へと大きく移行している」とまとめている。こうした結果は、今後の医療資源配分や外科医育成などを検討する上で参考となる。 なお、本研究は保険請求データに基づく解析であり、腫瘍の組織型や病期などの臨床情報は把握できず、非手術症例も含まれない。また、MGに対する拡大胸腺摘出術の件数が過小評価されている可能性もある。

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配偶者死別後の健康に男女差、男性で死亡・認知症リスク上昇

 配偶者との死別は人生で最もつらい出来事の一つだが、その影響は男女で異なるのだろうか。今回、日本の高齢者を対象とした大規模研究により、配偶者死別後の影響には明確な男女差があり、男性では死亡や認知症リスクの上昇など不良転帰が目立つ一方、女性では時間の経過とともに幸福感や生活満足度が高まる傾向が示された。研究は、千葉大学予防医学センター社会予防医学部門の河口謙二郎氏らによるもので、詳細は2月12日付の「Journal of Affective Disorders」に掲載された。 配偶者の死別は高齢者にとって強いストレスを伴い、うつ症状や不安、死亡リスクの上昇など多様な健康影響が報告されている。特に高齢化が進む日本では死別を経験する人が多い。一方、従来研究はうつ症状や死亡など限られたアウトカムに偏っており、健康の多面的側面を十分に評価していないほか、影響の持続期間や男女差についても知見は限定的である。本研究は、配偶者死別と健康・ウェルビーイングの関連を多面的かつ縦断的に検討し、男女差および時間経過による変化を明らかにすることを目的とした。 本研究は、日本老年学的評価研究(JAGES)の2013年、2016年、2019年の3時点データを用いた縦断研究で、要介護認定を受けていない65歳以上の自立した高齢者約2万6,000人(調査ベース)と約3万4,000人(介護保険データベース)を対象に解析した。2013年時点で既婚であった参加者について、配偶者の死別の有無と時期に基づき、死別なし、2015~2016年に死別、2013~2015年に死別の3群に分類した。解析では、身体・認知機能、メンタルヘルス、主観的幸福感、社会的ウェルビーイングなど7領域にわたる計37項目を対象に、配偶者死別との関連を検討した。死亡や認知症、要介護状態については公的介護保険(LTCI)データと連結して評価し、最大約6年間の影響を追跡した。統計解析にはロジスティック回帰分析、修正ポアソン回帰分析、重回帰分析を使い分け、多重比較に対してボンフェローニ補正を行った。 解析の結果、対象約2万6,000人のうち、解析開始時(2016年)に配偶者を亡くしていたのは1,076人だった。配偶者の死別による影響には男女差が認められ、男性では死亡リスク(3~4年後に約1.9倍)や認知症リスク(4~6年後に約2.3倍)、要介護状態に至るリスクの上昇と関連していた。一方、女性でも認知症や要介護状態との関連は一部でみられたものの、男性に比べて弱く、死亡リスクの上昇は認められなかった。 また、死別後1年以内に、男性では抑うつ症状や絶望感の増加、幸福感の低下がみられたが、これらの影響は時間の経過とともに弱まる傾向があった。これに対し女性では、抑うつ症状の増加は認められず、その後、幸福感や生活満足度、生きがいの上昇がみられた。 社会的ウェルビーイングでは、男女ともに社会参加の増加がみられ、友人との交流や趣味・運動などへの参加が活発化した。一方で、社会的支援の低下は男性のみに認められた。さらに、生活習慣の変化として、男性では飲酒量の増加、女性では健診受診の増加がみられた一方、座位時間の増加も確認された。 本研究により、配偶者の死別が高齢者の健康や生活に及ぼす影響には、男女差と時間経過による違いがあることが示された。男性では身体・認知機能の悪化や社会的支援の低下が目立つ一方、女性ではその後の幸福感向上など適応的変化がみられた。著者らは、こうした結果は死別後の影響が一様ではないことを示すものだとし、「高齢化が進む社会においては、男女の特性に応じた支援体制の構築が重要」と指摘している。 なお、本研究にはいくつかの限界があり、対象が高齢日本人に限られることや、サンプルの偏り、測定方法の制約などから、結果を一般化する際には注意が必要である。

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第316回 米国でサイケデリック薬が超速優先審査に

毎年20人に1人以上もの米国成人が生きるのを辛くし、活動を妨げる深刻な精神不調を被ります。その治療を推進する取り組みの一環として、今月18日にドナルド・トランプ大統領がサイケデリック薬(psychedelic drug)の超速優先審査(Commissioner’s National Priority Vouchers:CNPV)を米国FDAに命じました1,2)。大統領からのその通知によると、1,400万例を超える米国成人が深刻な精神不調を患い、およそ800万例にそれらの治療薬が処方されています。精神疾患の最悪の帰結の自殺率は2000~18年に37%も上昇しましたが、トランプ大統領の1期目に精神疾患患者を助ける取り組みが進展し、2018~20年には幸いにも5%低下しました3)。しかし、トランプ大統領曰く、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)蔓延とバイデン政権下での停滞のせいで進捗は止まり、自殺率は再び上昇して2022年には2018年と同じ最悪の水準に逆戻りしてしまいました。感じ方を変える(perception-altering)とFDAが説明4)するサイケデリック薬は、一通りの標準治療後も不調が続く深刻な精神疾患患者を対象とする試験で有望な成績を上げており、開発中のいくつかはすでに画期性優遇(Breakthrough Therapy)の指定を受けています。トランプ大統領は画期性優遇の指定を得ているサイケデリック薬の目ぼしいものにCNPV権利を付与することを18日に命じました。それを受けてFDA長官Marty Makary氏はLSDやマジックマッシュルームの活性成分のpsilocybinなどが属するセロトニン2A受容体作動薬の3つに権利を付与すると同日の記者会見で述べています5)。いわば大統領の「推し」となり、FDAの厚遇も約束されたサイケデリック薬への投資家の期待は当然ながら一気に膨らみ、AtaiBeckley、Compass Pathways、Enveric BioSciences、GH Research、Definium Therapeutics、Cybinなどのその界隈の会社の株価が軒並み上昇しています6)。そして、大統領命令からおよそ1週間後の先週金曜日24日に、FDAはサイケデリック薬を開発する3社に約束どおりCNPV権利を付与しました4,7)。FDAの発表では具体的な社名は明かされませんでしたが、大統領命令後に株価上昇の恩恵を得た一堂のうちの一社のCompass Pathwaysがその幸運に恵まれたことを明らかにしています8)。Compass社によるとCNPV権利を使うことで承認申請後の審査期間が超速の1~2ヵ月に短縮されます。Compass社はCOMP360という名称の人工のpsilocybinを開発しています。COMP360は治療抵抗性うつ病患者が参加した2つの第III相試験で目標の効果を示しており、先月の同社の発表によるとFDAへの承認申請が今年中に完了する見込みです9)。FDAがCNPV権利を付与したあとの2社の1つは大うつ病へのpsilocybin開発会社、もう1つは心的外傷後ストレス障害(PTSD)へのmethylone開発会社です。Usona InstituteとTranscend Therapeuticsがそれらの治療を開発しており、Reutersからの問い合わせに対してUsona Instituteは権利を得たと回答しています7)。一方、Transcend社はReutersに回答していません。Transcend社が開発しているmethyloneは植物成分のカチノンの類いです。カチノンはアンフェタミン様の作用を求めて使われているアラビア南部やアフリカ東部で育つ植物のカート(Catha edulis)の葉に含まれています10)。Transcend社はTSND-201という名称でmethyloneを開発しており、PTSD患者を対象とした第III相試験が進行中です11)。サイケデリック薬の時代の到来を予想していたのか、わが国の大塚製薬はほかでもないそのTranscend社の買収をつい先月末に発表しています12)。日本でサイケデリック薬が日の目を見ることもそう遠くないうちに実現するかもしれません。参考1)ACCELERATING MEDICAL TREATMENTS FOR SERIOUS MENTAL ILLNESS / THE WHITE HOUSE2)Trump orders FDA to fast-track reviews of psychedelic drugs after lobbying by podcaster / FierceBiotech3)Suicide Data and Statistics / CDC4)FDA Accelerates Action on Treatments for Serious Mental Illness Following Executive Order / FDA5)Trump orders FDA to fast-track reviews of psychedelic drugs after lobbying by podcaster. FierceBiotech.6)Psychedelic drug developers rally after Trump orders FDA to expedite reviews / Reuters7)US FDA moves to fast-track psychedelic drugs after Trump order / Reuters8)Compass Pathways Announces FDA Granted NDA Rolling Review Request and Awarded Commissioner's National Priority Voucher / BusinessWire9)Compass Pathways Announces Fourth Quarter and Full-Year 2025 Financial Results and Business Highlights / BusinessWire10)Effects of Synthetic Cathinones Contained in “Bath Salts” on Motor Behavior and a Functional Observational Battery in Mice NIH11)EMPOWER-1試験(ClinicalTrials.gov)12)大塚製薬のTranscend Therapeutics社買収について

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アルツハイマー病に対する9種の薬物療法の有効性比較〜ネットワークメタ解析

 依然として、アルツハイマー病は世界的な課題である。近年、アルツハイマー病に対する新規薬物療法が次々と承認されているが、これらの薬剤の認知機能に対する有効性の違いは、明らかになっていない。英国・Imperial College LondonのShanshan Huang氏らは、ネットワークメタ解析を用いて、アルツハイマー病患者における主要な認知機能アウトカムについて、プラセボと比較した9種類の薬物療法の有効性に関してランキングを行った。Journal of Alzheimer's Disease Reports誌2026年2月6日号の報告。 対象研究は、アルツハイマー病患者を対象に新規薬物療法を評価したランダム化比較試験。2025年5月までに発表された研究をシステマティックに検索した。新規薬剤には、aducanumab、レカネマブ、ドナネマブ、gosuranemab、semorinemab、tilavonemab、zagotenemab、masupirdine、sodium oligomannateの9剤を含めた。主要評価項目は、臨床認知症評価尺度(CDR-SB)およびアルツハイマー病評価尺度の認知機能サブスケール(ADAS-cog)とした。副次的評価項目は、ミニメンタルステート検査(MMSE)とした。薬物療法ランキングは、累積順位曲線下面積(SUCRA)を用いて行った。 主な結果は以下のとおり。・33の治療群を含む15件のランダム化比較試験をネットワークメタ解析に含めた。・主要評価項目において、プラセボに対する統計学的に有意な優位性を示した薬剤はなかった。・semorinemabとtilavonemabは、SUCRAランキングで最高位を獲得した。しかし、統計学的に有意なペアワイズの優位性は認められなかった。・MMSEについては、aducanumabはプラセボと比較し、わずかな平均差(1.98、95%信頼区間:0.03〜3.93)を示した。しかし、出版バイアスの存在が示唆されたため、信頼性は低かった。 著者らは「現在のアルツハイマー病に対する新規薬物療法は、常にプラセボを上回る効果を示すわけではないことが明らかとなった。タウ標的抗体(semorinemab、tilavonemab)は、わずかな有望性を示しているものの、統計学的に有意ではなかった。Aducanumabについては、見かけ上の効果は出版バイアスによってゆがめられている可能性が高いと考えられた」とし「アルツハイマー病に対する新規薬物療法の開発には、さらなる大規模かつ厳密な無作為化比較試験および改良された前臨床モデルが不可欠である」としている。

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食後高血糖がアルツハイマー型認知症のリスクと関連

 食後高血糖がアルツハイマー型認知症のリスクを高める可能性があることを示すデータが報告された。この関連性は、全脳体積や白質の変化では説明できないものだという。英リバプール大学のAndrew C. Mason氏らの研究の結果であり、詳細は「Diabetes, Obesity and Metabolism」に12月12日掲載された。 疫学研究により、高血糖、2型糖尿病、インスリン抵抗性などが、認知症リスクの上昇を含む脳の健康状態の悪化と関連することが示されている。しかし、そのメカニズムには不明点が多く、直接的な因果関係が存在するかどうかも明らかでない。一方、近年では空腹時血糖値、空腹時インスリン値、糖負荷2時間後血糖値(2hPG)といった糖代謝関連指標について、遺伝的背景との関係を検討することが可能となってきている。これにより、糖代謝異常と認知症との関連や、その基盤となるメカニズムをより詳細に解析できる環境が整いつつある。こうした背景の下、Mason氏らは、英国の一般住民を対象とした大規模疫学研究「UKバイオバンク」のデータを用いた検討を行った。 この研究では、観察研究の弱点である残余交絡や逆因果関係の影響を受けにくい2標本メンデルランダム化解析(2SMR)を実施した。解析対象は35万7,883人で、平均年齢56.9±8.0歳、女性54%、BMI27.4±4.8、脳卒中の既往2.6%だった。遺伝的素因に関して、インスリン抵抗性関連の53変異、空腹時血糖値関連の109変異、空腹時インスリン値関連の48変異、2hPG関連の15変異を採用し、変異と転帰との関連は10個の主成分(PCs)を調整した上で解析した。 2SMR解析の結果、2hPGが高いことが、アルツハイマー型認知症のオッズ比(OR)上昇と関連していた。具体的には、主解析に用いた逆分散重み付け法(IVW)でOR1.69(95%信頼区間1.38~2.07)、感度分析に用いた加重中央値推定法(WME)でOR1.66(同1.25~2.20)だった。つまり、2hPGの高さは、全脳体積や海馬体積の萎縮などとは独立して、アルツハイマー型認知症のリスクを高める可能性が示唆された。また2hPGは、認知症全体(あらゆる原因による認知症)との関連も有意だった(IVWでのOR1.23〔1.06~1.42〕)。ただし血管性認知症との関連は非有意だった。 2hPG以外に検討した、インスリン抵抗性、空腹時血糖値、空腹時インスリン値についてはいずれも、全脳体積、海馬体積、白質高信号病変体積との関連が見られなかった。なお、2hPGとアルツハイマー型認知症との関連の再現性をゲノムワイド関連解析(GWAS)で検討した結果、この関連は再現されなかった。 Mason氏は、「われわれの研究結果は、血糖値の全体的な管理だけでなく、特に食後の血糖値を管理することの重要性を示している。この知見は、今後のアルツハイマー型認知症予防戦略の確立に役立つのではないか」と述べている。 なお、1人の著者がアストラゼネカ社と利益相反(COI)に関する情報を開示している。

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高齢者の貧血で認知症発症リスクが約1.66倍に上昇

 貧血は認知症発症リスクの上昇と関連することが知られているが、アルツハイマー病(AD)に関連する血液バイオマーカーとの関係は十分に明らかではなかった。今回、認知症を発症していない高齢者を対象としたコホート研究において、貧血は横断的にADバイオマーカー値の上昇と関連し、縦断的には認知症発症リスクの上昇と関連していたことを、スウェーデン・カロリンスカ研究所/ストックホルム大学のMartina Valletta氏らが明らかにした。JAMA Network Open誌2026年4月17日号掲載の報告。 研究グループは、スウェーデンの地域住民コホート研究(SNAC-K)のデータを用い、ヘモグロビン値とADバイオマーカーとの横断的関連に加え、ヘモグロビン値およびADバイオマーカーと認知症発症との縦断的関連を検討した。対象はベースライン時点で認知症を発症していない60歳以上の参加者で、2001年から2019年まで年齢に応じて3年または6年ごとに追跡された。貧血はWHOのヘモグロビン値の基準(女性12g/dL以下、男性13g/dL以下)で定義した。 主要アウトカムはDSM-IVに基づく認知症の発症、リン酸化タウ217(p-tau217)、神経フィラメント軽鎖(NfL)、グリア線維性酸性タンパク質(GFAP)の血清濃度であった。統計解析にはCox比例ハザード回帰および分位点回帰を用い、さらにヘモグロビンとADバイオマーカーの組み合わせによる認知症発症リスクの関連も検討した。 主な結果は以下のとおり。・ベースラインで認知症を発症していない2,282例(年齢中央値72.2歳、女性61.6%)を解析対象とし、うち199例(8.7%)が貧血であった。・平均9.3年の追跡期間中に362例(15.9%)が認知症を発症した。・貧血群は、非貧血群と比較して認知症発症リスクが66%高かった(ハザード比[HR]:1.66、95%信頼区間[CI]:1.21~2.28)。・ヘモグロビン値と認知症リスクの関係は非線形であり、約14g/dLを下回るとリスク上昇がみられ、それ以上では頭打ちとなった。・貧血群は、p-tau217(β=0.22、95%CI:0.15~0.30)、NfL(β=0.25、95%CI:0.19~0.31)、GFAP(β=0.08、95%CI:0.03~0.12)の血清濃度が高かった。・貧血とADバイオマーカー高値が併存する群では、いずれも正常な群と比較して認知症リスクはさらに高かった(貧血+高NfLのHR:3.64)。・これらの関連は男性でより強い傾向がみられた。 これらの結果から、研究グループは「ヘモグロビン値が低く、ADバイオマーカーが高い場合に認知症リスクが最も高かったことから、認知症の発症において貧血と神経病理の間に相互作用が存在する可能性が示唆される。貧血は認知症リスクの層別化において臨床的に重要な因子であり、認知症予防戦略における修正可能な標的となる可能性がある」とまとめた。

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日本の実臨床におけるCGRP関連抗体の長期有効性と治療順守

 カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)関連抗体は、片頭痛予防に有効である。しかし、実臨床における1年を超えるデータは限られている。獨協医科大学の鈴木 圭輔氏らは、日本における片頭痛患者における3つのCGRP関連抗体の長期有効性を評価するため、単施設レトロスペクティブ観察コホート研究を実施した。European Journal of Neurology誌2026年3月号の報告。 対象は、獨協医科大学病院の頭痛外来において、2022年4月~2025年2月にCGRP関連抗体(エレヌマブ、ガルカネズマブ、フレマネズマブ)を3ヵ月以上投与した片頭痛患者307例。評価項目は、1ヵ月当たりの片頭痛日数(MMD)、50%以上の奏効率、有害事象(AE)、治療継続率とした。患者は、非治療反応患者と治療反応患者(早期治療反応患者:3ヵ月目までにMMDが50%以上減少、後期治療反応患者:4~5ヵ月目、超後期治療反応患者:6ヵ月目以降)に分類し、評価を行った。 主な結果は以下のとおり。・CGRP関連抗体治療により、24ヵ月にわたるMMDの有意な減少が認められた。・50%以上の治療反応率は、3、6、12、24ヵ月時点でそれぞれ45.9%、57.0%、63.6%、71.0%であった。・AEの発生率は12.6%であり、重症度はおおむね軽度であった。・早期治療反応患者は、ベースラインのMMDおよび片頭痛障害評価(MIDAS)スコアが最も低かった。一方、非治療反応患者は、ベースラインのMMDおよびMIDASスコアが最も高く、薬剤乱用頭痛(MOH)および精神疾患の併存率が最も高かった。・早期治療反応患者と比較し、後期治療反応患者および超後期治療反応患者は、ベースラインのMMD、MIDASスコア、MOHの発現率が高く、過去に予防治療失敗を経験した患者が多かった。・さらに、超後期治療反応患者は、羞明および拍動性頭痛の発現率が最も高く、精神疾患の併存率は最も低かった。・CGRP関連抗体の有効性は、いずれの薬剤においても同程度であった。・12、18、24ヵ月時点での治療継続率は、それぞれ68.3%、58.0%、50.6%であった。 著者らは「日本人片頭痛患者に対するCGRP関連抗体による治療は、片頭痛発作頻度の長期的な減少および良好な忍容性を示す有用な治療選択肢である」と結論付けている。

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鼻腔ブラシ生検でアルツハイマー病が検出可能に?

 将来、嗅裂と呼ばれる鼻の奥の部位から採取した検体を用いた鼻腔ブラシ生検で、アルツハイマー病(AD)の初期兆候を検出できるようになるかもしれない。米デューク・ヘルスが特許を取得した実験段階にあるこのブラシ生検によって、思考力や記憶力の問題が現れる前に神経細胞や免疫細胞の初期の変化を捉えることができたとする研究結果が報告された。この小規模ながら有望な研究は、「Nature Communications」に3月18日掲載された。責任著者である米デューク大学医学部教授のBradley Goldstein氏は、「もし早い段階で診断できれば、臨床的なADの発症を防ぐ治療の開始につなげられる可能性がある」と述べている。 Goldstein氏によると、今回の研究の目的は、「脳にダメージが蓄積する前の極めて早い段階でADを確認できるようにすること」であった。ADは脳の疾患だが、生体内の脳組織を直接調べるのは難しい。一方で、嗅覚は初期から障害されることが多く、嗅覚の神経細胞は嗅裂から採取できる。そこで研究グループは、22人の参加者の嗅裂からブラシを使って嗅上皮の検体を採取し、単一細胞RNA解析により各細胞における遺伝子発現を調べた。参加者は、健常者、脳脊髄液(CSF)バイオマーカー検査でADと診断された人、認知機能は年齢相応だがCSFバイオマーカー検査でADの前臨床段階にあると判定された人で構成されていた。採取された検体から、約22万個の細胞のそれぞれについて数千の遺伝子発現を測定することができ、得られたデータは数百万に上った。 その結果、ADの前臨床段階にある人においても、炎症に関与するT細胞やミエロイド細胞、嗅覚神経細胞の変化が見つかり、また、CD8陽性T細胞の活性化亢進がフローサイトメトリーによって裏付けられた。さらに、これらの変化を組み合わせることで、臨床的ADと前臨床段階のADを区別する一定の性能(ROC曲線下面積〔AUC〕0.81)も示された。 研究グループによると、現行のADの血液検査では、病状が進行してからでないと確認できないマーカーを検出する。一方、今回の検査は、生きた神経や免疫の活動を捉えるため、より直接的に疾患に関連する変化を見つけ、より早期段階で介入できるようになる可能性がある。 論文の筆頭著者でデューク大学医学科学者養成プログラムの学生であるVincent D’Anniballe氏は、「これまでにADについて明らかにされていることの多くは、剖検で得られた組織の解析結果に基づいていた。しかし、生きた神経組織を調べることができるようになり、診断と治療に新たな可能性が生まれた」と述べている。 Mary Umsteadさんは、若年性ADで亡くなった姉のMariah Umsteadさんのために今回の研究に参加した。Mariahさんは57歳でADの診断を受けたが、家族はそれよりはるか以前から症状に気付いていたという。Maryさんは、「研究参加のチャンスが巡ってきたとき、私はすぐに飛びつきました。Mariahを失ったときのような悲しみを、他の家族に味わってほしくないし、どの患者にも私たちが経験したようなつらい思いをしてほしくないからです」と語った。 デューク大学の研究グループは、このブラシ生検が治療の経過を追跡するのに役立つかどうかを明らかにすることを目標に、デューク大学・ノースカロライナ大学アルツハイマー病研究センター(Duke-UNC ADRC)と共同で、研究対象をより大規模な集団に拡大している。なお、今回の研究は米国立衛生研究所(NIH)の助成を受けて実施された。

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認知症の病理を叩く「表街道」、脳を育む「援護射撃」――Lancetの14の危険因子を読み解く(その3)【外来で役立つ!認知症Topics】第40回

前回、私はLancet誌の提唱する認知症の修正可能な14の危険因子1)を、「疾患・障害リスク」と「生活・環境リスク」とに分ける考え方を述べた。前者は従来のアミロイド仮説を軸に、そこから派生した慢性炎症や抗酸化などの病理から説明しやすいもので、糖尿病や高LDLコレステロール(LDL-C)が代表的だ。これはいわば、アルツハイマー病の病理進行をくい止めようという「表街道」の予防法である。一方、後者はアミロイド仮説とは異なり、脳内ネットワークや認知予備能といった考え方で説明される。健常な神経細胞を増やす、あるいは減少させないという、側面からの「援護射撃」ともいえる。この考え方をイラストに示した。以下に示す個々の危険因子について、それが「表街道」と「援護射撃」のどちらに属するかを述べていく。画像を拡大する筆者作成若年期の教育:脳の「控え選手」を育てる援護射撃若年期の危険因子だが、これは「教育」が中心となる。ここで作る大脳の基礎力が十分でなかったとしても、後年これを育み続けることが予防につながると考えればいい。この考え方の基本は、以前から知られる「認知予備能」に関連する。ざっくり言えば、人は生まれ持った脳細胞の一部しか使わないうちに一生を終える。これまで使ってこなかった「控え選手の神経細胞(予備能)」に働きかけるのである。具体的な方法としては、新たな社会交流が勧められる。とくにインターネットリテラシーが低い人こそ、ここで情報を得る習慣を持てば大きな成果が期待できる。教育は、まさに一生続く「援護射撃」なのである。中年期の危険因子:再発とうっかり事故を防ぐ表街道中年期の危険因子のトップは、第38回で述べたとおり難聴と高LDL-Cだが、続いて「うつ病」に触れたい。うつ病経験者は、そうでない者と比べ認知症の危険性が2倍とされる。背景には、神経炎症や、脳由来栄養因子を介した神経の可塑性障害、コルチゾール過剰分泌による海馬体積の減少説などがある。臨床的に大切なのは、うつ病は何度も繰り返しやすく、その再発自体が認知症発症の危険性を高める点だ。だからこそ再発予防が重要であり、主治医と共にフォローを欠かさないことが、病理を抑える「表街道」の対策となる。次に「頭部外傷」については、中等度のもので認知症リスクを2.3倍、重度で4~4.5倍にも増大させる2)。ボクシングなどによる頭部外傷が、50年以上も後にリスクとして現れる。なお高齢者では「転落が脳挫傷原因の3分の2以上」とされるだけに、住環境への配慮が重要になる。照明の改善、手すりやレールの設置、段差の除去や滑りにくい床への改善などが望ましい。身体機能面からは、運動機能の維持、視力や聴力の調整も重要となる。そして、単純ながら基本となるのが「適切な履物」の着用だ。屋内でスリッパなど履かないほうがよい人は多い。これもまた、脳への物理的ダメージを回避する「表街道」の予防といえる。運動不足:座りっぱなしを解消する援護射撃運動不足という危険因子は、従来からいわれてきた運動の予防効果の裏返しである。最近は、単に「たくさん運動すればよい」というより、「身体活動をしない者が運動すれば効果が生まれる」という考え方に変化してきた。最近、老年医学の分野では「座りがちな」という意味の英語で「sedentary」という言葉をよく見かける。そこですべき運動は、有酸素運動の一辺倒ではなく、レジスタンス運動やバランス運動を組み合わせることが重要だ。腰や膝の障害で運動が難しい人の場合でも、皿洗いや掃除、洗濯物干しなどの家事労働を長時間行えば、運動不足をかなり補える。こうした活動の積み重ねが、脳を支える「援護射撃」となる。糖尿病と高血圧:血管から病理を断つ表街道の王道糖尿病は認知症リスクを60%高めるとされるが、アルツハイマー病以上に、血管性認知症の危険性を高める。生物学的メカニズムとしては、直接的な血管障害や神経障害のほかにインスリン分解酵素(IDE)の影響が指摘されている。インスリンとアミロイドβ(Aβ)は同じIDEで分解されるため、高インスリン血症になるとAβの分解が滞り、蓄積していくと考えられる。なお低血糖発作は深刻な危険因子だと強調されている。食事による対応では、地中海食、そこに減塩を超えたダッシュ食、低炭水化物が推奨される。運動では、有酸素運動、レジスタンス運動、バランス運動を組み合わせた「表街道」の包括的な管理が求められる。そして、高血圧こそ認知症発症における最重要な修正可能リスクだろう。40~65歳の中年期の高血圧は、認知症リスクを61~69%増加させるが、降圧薬による治療により、認知症全体で12%、アルツハイマー病で16%のリスクを低減できるとされる3)。高血圧が認知症の危険因子となる理由として複数の説がある。まず脳血管損傷経路、また酸化ストレスと神経炎症経路、血液脳関門破壊経路、さらに脳構造変化と脳萎縮などである。これらをみると、アルツハイマー病の病理が形成されていくプロセスに関わる仮説の多くが高血圧と関連すると改めてわかる。治療面では、とくに血流の改善と脳構造の保護が重要である。わが国のガイドラインでは、年齢別、個人差を考慮した段階的な血圧管理を推奨している。また、いわゆる白衣高血圧の多さを考慮してか、最近では家庭用血圧計における継続的な測定結果が重視される。診察室での血圧よりも、自宅でリラックスして測定した値こそ「真の値」と考えるからだ。『高血圧管理・治療ガイドライン2025』では、全年齢の降圧目標が、「診察室血圧130/80mmHg未満、家庭血圧125/75mmHg未満」に定められている4)。なお言うまでもないが、血圧コントロールのみならず糖尿病や脂質異常症などの関連疾患の包括的な管理を通して、大きな予防効果が期待できる。これも「表街道」の予防法だ。認知症の修正可能な危険因子に関する今回の解説は以上である。14の危険因子のうちあと6つ、主にライフスタイルに関連するものが残っているが、これについては次回に述べることにしよう。参考文献・参考サイト1)Livingston G, et al. Dementia prevention, intervention, and care: 2024 report of the Lancet standing Commission. Lancet. 2024;404:572-628.2)Gottlieb S. Head injury doubles the risk of Alzheimer's disease. BMJ. 2000;321:1100.3)Ding J, et al. Antihypertensive medications and risk for incident dementia and Alzheimer's disease: a meta-analysis of individual participant data from prospective cohort studies. Lancet Neurol. 2020;19:61-70.4)日本高血圧学会高血圧管理・治療ガイドライン委員会編. 高血圧管理・治療ガイドライン2025. ライフサイエンス出版; 2025.

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神経疾患外来で患者と医師に“認識ギャップ”、機械学習モデルが予測可能性示す

 神経疾患の外来診療では、患者と医師の評価や満足度に小さなズレが生じることがある。この認識ギャップは、治療理解の不十分さや信頼関係の低下を通じて、生活の質や長期的な治療アウトカムに影響し得る。今回、パーキンソン病、多発性硬化症、てんかんの患者と医師のペアを対象にアンケートを実施し、認識ギャップを定量化するとともに、機械学習モデルでギャップを予測できることを明らかにした。研究は、順天堂大学医学部附属順天堂医院脳神経内科の大山彦光氏(現:埼玉医科大学医学部脳神経内科)、富沢雄二氏、服部信孝氏らによるもので、詳細は2月9日付で「Scientific Reports」に掲載された。 パーキンソン病、多発性硬化症、てんかんなどの神経疾患は慢性かつ症状が多様で、進行に伴い日常生活動作(ADL)や生活の質(QOL)に大きな影響を及ぼす。近年は共同意思決定(SDM)の重要性が強調されているが、診察時の限られた情報に基づく判断では、患者と医師の間で疾患認識や治療目標に認識ギャップが生じる可能性がある。実際、神経疾患領域でも症状の重要度や治療目標、再発評価などを巡るズレが報告されているが、患者と主治医のペアで直接比較した研究は限られている。さらに、こうした認識ギャップを予測する試みも十分ではない。そこで本研究(GAP-AI研究)は、神経疾患患者と主治医の間の認識ギャップを定量化し、その関連因子を検討するとともに、機械学習モデルによる予測可能性を評価することを目的とした。 本研究は単施設の観察研究であり、患者197人とその主治医12人を対象に、2回の外来受診時に質問票への回答を求めた。質問票には、患者満足度を評価する18項目のPatient Satisfaction Questionnaire Short Formや、患者と医師双方が回答する9項目のShared Decision Making Questionnaire、Barthel Index、SF-36の各下位尺度を用いた。主要評価項目は、患者と医師の回答を項目ごとに対応させて算出した差(すなわち認識ギャップ)とした。差は絶対値でも評価し、ギャップの大きさを中央値で「一致群」と「不一致群」に分類した。患者背景および医師の年齢・経験年数などの属性との関連を単変量解析で検討し、さらに重回帰分析により認識ギャップに影響する独立因子を同定した。 本研究は2023年1~8月に実施された。患者の平均年齢は58.1歳で、女性が60.4%を占めた。疾患はパーキンソン病が最多(69.5%)で、多発性硬化症、てんかんが続き、平均罹病期間は7.4年であった。多くは同居者がおり、介護を要しない軽~中等症例が中心であった。一方、医師の半数は35~44歳で、83.3%が男性であった。4割超が20年以上の経験を有し、多くがパーキンソン病を専門とする神経内科専門医であった。 患者と医師の回答には各質問票で一定の認識ギャップが認められ、総得点は有意に異なり、一致度(κ係数)は全体に低値であった。SF-36下位尺度の一致は19.3%にとどまった。ギャップには患者年齢、診断名、介護者の有無、通院頻度、障害度などの患者側因子に加え、医師の年齢、経験年数、専門医資格、担当患者数などの医師側因子が関連していた。重回帰分析では患者年齢や介護者の有無、医師の経験年数などが独立因子として抽出され、一部疾患では年収も関連していた。 また、研究データに基づき複数の機械学習アルゴリズムを用いて予測モデルを構築したところ、k近傍法(k-nearest neighbors)アルゴリズムが、主要評価項目で定義した患者と医師の認識ギャップの有無を予測する上で最も良好な性能を示した。 著者らは、GAP-AI研究により神経疾患患者と医師の間に認識ギャップが存在することが明らかになったと述べている。ギャップは患者背景や医師の経験など複数の因子に影響され、機械学習により予測可能であるとしている。さらに、その把握と是正が患者中心医療の向上につながる可能性があると指摘している。 なお、本研究の限界として、単施設研究であり特にてんかん症例数が少ないことから一般化に制限がある点、主観的な患者報告アウトカムを用いたことや医師用に十分検証されていない質問票の使用が結果の解釈に影響し得る点などを挙げている。

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添付文書改訂:抗てんかん薬の運転の一律禁止が変更/セリチニブとCYP3A基質薬剤が併用禁忌に ほか【最新!DI情報】第61回

抗てんかん薬<対象薬剤>抗てんかん薬であるカルバマゼピン、バルプロ酸ナトリウム、ラモトリギン、ラコサミド、レベチラセタムを有効成分とする医薬品<改訂年月>2026年3月<改訂項目>[追加]重要な基本的注意自動車の運転等危険を伴う機械操作の適否は、関連学会の留意事項を十分理解の上、医師が慎重に判断し、危険を伴う機械操作を行う場合には十分な注意が必要であることを適切に患者に指導すること。また、眠気等があらわれた場合には、自動車の運転等危険を伴う機械の操作に従事しないよう、患者に指導すること。<ここがポイント!>対象の抗てんかん薬は、眠気、注意力・集中力・反射運動能力等の低下といった中枢神経系に影響を与える副作用を起こすことがあるため、従来の添付文書では「重要な基本的注意」の項において、薬剤投与中の患者には自動車の運転等危険を伴う機械の操作に従事させないよう注意する旨が記載されていました。しかし、道路交通法では、てんかんのある患者の自動車運転を一律に禁止しているわけではありません。運転免許の取得・更新は、一定の条件を満たせば医師の診断書をもとに公安委員会が判断する仕組みとなっており、実際に多くの患者が医師の管理下で安全に運転を継続しています。今回の改訂により、薬剤投与中であっても一律に自動車運転等を禁止するのではなく、医師が関連学会の留意事項※に基づき、個別の患者の病状、服薬順守状況、副作用の有無等を総合的に評価し、自動車運転等の適否を判断できることが添付文書上で明確化されました。これは、患者の社会生活の質(QOL)向上と安全性の確保を両立させるための重要な改訂といえます。なお、対象の抗てんかん薬5剤には欧州および米国の添付文書においても、薬剤服用中の自動車運転等を一律に禁止する記載はなく、今回の改訂は国際的な動向とも合致しています。※抗てんかん発作薬を服用しているてんかんのある人において、自動車運転や危険を伴う機械操作を行う際の留意事項(2026年3月17日)CYP3A基質薬剤<対象薬剤>アゼルニジピン、オルメサルタン メドキソミル・アゼルニジピン、アナモレリン塩酸塩、イバブラジン塩酸塩、イブルチニブ、エプレレノン、エルゴタミン酒石酸塩・無水カフェイン・イソプロピルアンチピリン、キニジン硫酸塩水和物、シンバスタチン、スボレキサント、タダラフィル(アドシルカ)、チカグレロル、トリアゾラム、バルデナフィル塩酸塩水和物、フィネレノン、ブロナンセリン、マシテンタン・タダラフィル、メチルエルゴメトリンマレイン酸塩、ルラシドン塩酸塩、ロミタピドメシル酸塩<改訂年月>2026年3月<改訂項目>[追加]禁忌(次の患者には投与しないこと)および併用禁忌(併用しないこと)「セリチニブ」を追記<ここがポイント!>セリチニブは強力なCYP3A阻害作用を有するため、CYP3A基質薬剤との併用により、これらの薬剤の血中濃度が上昇し、副作用の発現リスクが増大する可能性があります。今回の改訂は、この相互作用による安全性上の懸念から、セリチニブとCYP3A基質薬剤の併用を禁忌とするものです。対象となる20成分には、降圧薬、抗不整脈薬、睡眠薬、抗精神病薬、脂質異常症治療薬など、日常診療で頻用される薬剤が多く含まれており、処方監査時には十分な注意が必要となります。本改訂による医療現場への影響については、診療上の大きな支障が生じないことを関連学会等の意見聴取で確認されています。なお、セリチニブの「2. 禁忌(次の患者には投与しないこと)および10.1 併用禁忌(併用しないこと)」の項にも同様に上記薬剤が追記されました。これにより、双方向での併用禁忌が明確化され、より安全な薬物治療の実施が期待されます。アゼルニジピン、オルメサルタン メドキソミル・アゼルニジピン<対象薬剤>アゼルニジピン、オルメサルタン メドキソミル・アゼルニジピン<改訂年月>2026年3月<改訂項目>[追加]禁忌(次の患者には投与しないこと)および併用禁忌(併用しないこと)「クラリスロマイシン」を追記<ここがポイント!>生理学的薬物速度論モデルの解析により、アゼルニジピンとクラリスロマイシン400mgまたは800mgを併用した場合、アゼルニジピンのAUCが約3.4倍または5.4倍に増加することが予測され、副作用の発現が懸念されます。今回の改訂は、この相互作用による安全性上の懸念から、クラリスロマイシンとアゼルニジピンの併用を禁忌とするものです。アゼルニジピンはCYP3A4で代謝される薬剤であり、CYP3A4阻害薬であるクラリスロマイシンとの併用により、血中濃度の上昇が生じ、過度の血圧低下、めまい、ふらつきなどの副作用リスクが高まることが想定されます。本改訂による医療現場への影響については、診療上の大きな支障が生じないことを関連学会等の意見聴取で確認されています。なお、クラリスロマイシン、ボノプラザンフマル酸塩・アモキシシリン水和物・クラリスロマイシン、ラベプラゾールナトリウム・アモキシシリン水和物・クラリスロマイシンの「2. 禁忌(次の患者には投与しないこと)および10.1併用禁忌(併用しないこと)」の項にも同様にアゼルニジピン、オルメサルタン メドキソミル・アゼルニジピンが追記されました。とくにヘリコバクター・ピロリ除菌療法においてクラリスロマイシンを含む3剤併用療法を行う際には、患者の降圧薬の確認が重要となります。タクロリムス<対象薬剤>タクロリムス水和物(商品名:プログラフカプセル0.5mg/1mg/5mg、同顆粒0.2mg/1mg、同注射液2mg/5mg、グラセプターカプセル0.5mg/1mg/5mg(アステラス製薬株式会社)等)<改訂年月>2026年3月<改訂項目> [追加]妊婦 海外で実施された、Transplant Pregnancy Registry Internationalのデータベースから利用可能な2,905件の肝移植および腎移植患者の妊娠事例に関するコホート研究において、前向きに調査された症例について以下の結果が報告されている。 大奇形が認められた症例は、本剤曝露群では6/297例(2.0%)、本剤非曝露群注1)では1/53例(1.9%)であった注2)。 小奇形が認められた症例は、本剤曝露群では12/297例(4.0%)、本剤非曝露群では認められなかった注2)。 自然流産が認められた症例は、本剤曝露群では33/335例(9.9%)、本剤非曝露群では3/56例(5.4%)であった注2)。 腎移植患者において、子癇前症が認められた症例は、本剤曝露群では84/226例(37.2%)、本剤非曝露群では7/37例(18.9%)であった。 早産児が認められた症例は、本剤曝露群では156/352例(44.3%)、本剤非曝露群では25/59例(42.4%)であった。 妊娠週数に対して児が正常な出生体重であった症例は、本剤曝露群では289/352例(82.1%)、本剤非曝露群では40/59例(67.8%)であった。 注1 アザチオプリン、シクロスポリン、エベロリムス、ミコフェノール酸モフェチル、プレドニゾロン、シロリムスのいずれか1つ以上を含むレジメンによる治療を受けた患者 注2 妊娠の6週間前から出産までの間にミコフェノール酸モフェチルに曝露している患者を除外した解析結果 <ここがポイント!>臓器移植後の妊娠レジストリであるTransplant Pregnancy Registry International(TPRI)データを用いた本剤の児および母体への影響に関する海外疫学研究の結果は、臓器移植患者の妊娠という限定された集団に関する大規模な研究データであるため、本研究結果を添付文書に記載することは臨床上有用であると考えられます。このコホート研究では、2,905件という大規模な症例数を解析しており、タクロリムス曝露群と非曝露群での大奇形発生率に有意な差は認められませんでした(2.0%vs.1.9%)。一方で、小奇形、自然流産、子癇前症については本剤曝露群でやや高い傾向が示されています。とくに腎移植患者における子癇前症の発生率は本剤曝露群で37.2%と高く、慎重な周産期管理が必要となることが示唆されます。このことから、今回の改訂で「9.特定の背景を有する患者に関する注意」の「9.5 妊婦」の項に海外疫学研究の結果を追記することになりました。本データは、移植後妊娠を希望する患者への説明や、妊娠中の管理方針決定において重要な情報となります。

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受診ごとのBMI変動、とくに女性で認知症リスクと関連

 これまでの研究では、認知症リスクを検討する際に、BMIのスロープや変動を別の概念として区別することは一般的ではなかった。東北医科薬科大学の佐藤 倫広氏らは、スロープ調整済み受診ごとのBMI変動と認知症リスクとの関連性を評価した。International Journal of Obesity誌オンライン版2026年3月13日号の報告。 5年間の年次健康診断を受けた50~74歳を対象に、日本の国民健康保険データ(2015~23年)を用いたレトロスペクティブコホート研究を実施した。BMI変動は、経時的な傾向を考慮するため、スロープ調整済み標準偏差(SD)を用いて評価した。抗認知症薬の投与開始を認知症の代理指標とし、死亡を競合リスクとして考慮したFine-Gray競合リスクモデルを用いて解析した。 主な結果は以下のとおり。・参加者30万3,042例(平均年齢:66.6歳、男性の割合:38.6%)を平均2.17±1.19年間フォローアップした結果、665例に抗認知症薬(主にドネペジル:67.4%)の投与が開始され、2,394例に死亡が認められた。・ベースライン時のBMIおよび年間BMI変化量を含む共変量を調整した後、スロープ調整済みBMI-SDの最高三分位群(0.50kg/m2以上)は、最低三分位群(0.31kg/m2以下)と比較して、認知症リスクの増加と有意な関連が認められた。・年間BMI変化量は、認知症リスクとU字型の関連を示し、とくに第1三分位群(BMI減少率が-0.31%以下)で顕著な上昇が認められた(ハザード比:1.60、95%信頼区間:1.32~1.93)。・ベースライン時のBMIを除くベースライン共変量を含む基本モデルでは、ベースライン時のBMIを追加した場合とスロープ調整済みBMI-SDを追加した場合で、C統計量の改善に有意な差は認められなかった(+0.0147 vs.+0.0146)。一方、BMI低下-0.31%以下を追加した場合、C統計量の改善が最大であった。・スロープ調整済みBMI-SDの最高三分位群と認知症リスクとの関連は、男性よりも女性のほうが強かった(p for interaction=0.0039)。 著者らは「スロープ調整済みBMIの変動は、とくに女性において認知症リスクと独立して関連しており、BMI低下パターンは認知症の強力なリスク因子であることが示唆された。ルーチンの認知症スクリーニングに、受診ごとのBMI変動の縦断的モニタリングを組み込むことは有益な可能性がある」と結論付けている。

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経口CGRP受容体拮抗薬「アクイプタ錠」、片頭痛発作の発症抑制の適応で発売/アッヴィ

 アッヴィは2026年4月17日に、アクイプタ錠(一般名:アトゲパント水和物)を発売したと発表した。適応は「片頭痛発作の発症抑制」である。 本剤は、カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)受容体拮抗薬であり、1日1回経口投与する。CGRPとその受容体は片頭痛の病態生理に関与しており、片頭痛発作時にCGRP濃度が上昇することが示されている。現在、世界60ヵ国以上で片頭痛の予防治療薬として承認されており、国内においては2026年2月19日に、片頭痛患者に対する片頭痛発作の発症抑制に関して製造販売承認を取得した。 国内の疫学研究では、15歳以上の片頭痛の有病率は8.4%と報告されており1)、患者の労働生産性の低下や社会的活動への制限が大きな課題となっている2,3)。また、同社は2025年12月に、本剤の片頭痛発作の急性期治療に関する製造販売承認も申請している。 『頭痛の診療ガイドライン2021』では、片頭痛発作が月に2回以上、あるいは生活に支障を来す頭痛が月に3日以上ある患者に対して、予防療法の実施を検討することが推奨されている4)。本剤が新たな選択肢に加わることで、より多様な予防治療ニーズに応えることが期待される。【製品概要】商品名:アクイプタ錠10mg、同30mg、同60mg一般名:アトゲパント水和物効果・効能:片頭痛発作の発症抑制用法・用量:通常、成人にはアトゲパントとして60mgを1日1回経口投与する製造販売承認日:2026年2月19日薬価基準収載日:2026年4月15日発売日:2026年4月17日製造販売元:アッヴィ合同会社

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片頭痛が短期記憶とワーキングメモリに及ぼす影響は

 片頭痛は、世界人口の最大15%が罹患する一般的な神経疾患である。片頭痛は、頭痛、悪心、嘔吐、光や音への過敏症などの身体症状を伴う疾患である。また、視覚性前兆の有無など、特定の症状に基づいて分類されるさまざまな亜型が存在する。さらに、報告頻度の高い認知症状として「ブレインフォグ」がある。これは、主に注意力や記憶力に関連する日常生活における認知機能の低下を表す状態である。片頭痛における記憶機能に関する実証研究の結果は、一貫性が認められていない。一部の研究では、明らかな認知機能低下が報告されている。その一方で、他の研究では軽微あるいはまったく障害がないことが報告されている。さらに、これまでの研究では、特定の記憶領域の検討が限定的であり、片頭痛の特徴に対する影響が一貫して考慮されていなかった。オーストラリア・La Trobe UniversityのKenya McKay氏らは、片頭痛患者の短期記憶およびワーキングメモリのパフォーマンスを、健康対照者と比較して調査するため、システマティックレビューおよびメタ解析を実施した。Journal of Neurology誌2026年3月17日号の報告。 Embase、CINAHL、MEDLINE、PsycINFO、Web of Science Core Collectionよりシステマティックに検索した。片頭痛患者の短期記憶およびワーキングメモリのパフォーマンスを評価した研究を目的に関連する包含基準を用いて、2段階(タイトルや抄録および全文)でスクリーニングを行った。抽出された3,880件の研究のうち、16件が包含基準を満たした。主要アウトカムは、短期記憶およびワーキングメモリとし、片頭痛患者と健康対照者との比較を行った。副次的アウトカムとして、前兆のある片頭痛患者と前兆のない片頭痛患者における記憶パフォーマンスの調査および片頭痛が視覚記憶および言語記憶のパフォーマンスに及ぼす影響を評価した。JASPを用いてランダム効果モデルによる解析を行い、エフェクトサイズとしてHedges’gを用いた評価を行った。異質性は、Q統計量およびI2統計量を用いて評価した。出版バイアスの評価には、Eggerの回帰検定とファンネルプロットを用いた。 主な結果は以下のとおり。・短期記憶において、片頭痛患者と健康対照者との間に有意差は認められなかった。・具体的には、前兆のある片頭痛患者と健康対照者、前兆のない片頭痛患者と健康対照者、あるいは前兆のある片頭痛患者と前兆のない片頭痛患者の間で、短期記憶に有意差は認められなかった。・同様に、短期視覚記憶および短期言語記憶能力においても有意差は認められなかった。・一方、ワーキングメモリにおいては有意差が認められ、片頭痛患者は健康対照者と比較し、作業記憶の低下が認められた。 著者らは「成人片頭痛患者では、短期記憶は維持されているものの、ワーキングメモリは選択的に障害されていることが、本システマティックレビューおよびメタ解析の結果、明らかとなった。このパターンは、片頭痛が全般的な記憶障害と関連しているのではなく、むしろ能動的な操作や認知制御を必要とする高次記憶プロセスにおける脆弱性と関連していることを示唆している。これらの結果は、客観的な認知機能所見と一般的に報告されるブレインフォグの症状を整合させるのに役立っている。また、片頭痛に関連する認知機能の訴えは、発作間欠期における根本的な記憶維持障害ではなく、認知効率の低下を反映している可能性を示唆していると考えられる」と結論付けている。

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