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第80回 κ(カッパ)係数による一致度の評価とは?【統計のそこが知りたい!】

第80回 κ(カッパ)係数による一致度の評価とは?実際の臨床業務ではしばしば起こる事象として、病理診断や画像診断では診断医によって診断が異なる可能性があります。たとえば、IgA腎症の予後を推定するための組織学的分類は、本症の末期腎不全への進展の危険因子と考えられる腎生検組織所見を基に、わが国では、「IgA腎症診療指針 第2版」(日本腎臓学会)において、IgA腎症患者の予後は、メサンギウム細胞増殖と基質増加、糸球体の硬化、半月体の形成、ボウマン嚢との癒着、尿細管・間質病変、血管病変の程度から、以下の4群に分類されています(注:本指針は改訂され第3版が刊行されている)。1:予後良好群(透析療法に至る可能性がほとんどないもの)2:予後比較的良好群(透析療法に至る可能性が低いもの)3:予後比較的不良群(5年以上・20年以内に透析療法に移行する可能性があるもの)4:予後不良群(5年以内に透析療法に移行する可能性があるもの)同じ腎病理組織像をみても、医師Aは「比較的予後不良群」と診断し、医師Bは「比較的予後良好群」と診断するかもしれません。「比較的予後不良」と診断されれば、「5年以上・20年以内に透析に移行する可能性がある」ということですが、「比較的予後良好群」と診断された場合、「透析に至る可能性がかなり低い」ということになり、患者さんが受ける印象は大きく異なりますし、当然ながら治療方針も異なってくる可能性があります。理想的な病理組織分類、画像診断分類とは、正確に予後を予測する分類であることは当然ですが、誰が何度診断しても同じ診断が得られる分類であるべきです。カテゴリー変数(名義変数、順序変数)として表現される診断の一致度(reproducibility)を評価するために、よく利用される統計学的手法が「κ係数(kappa statistic)」です。■κ係数とはある現象を2人の観察者が観察した場合、この結果がどの程度一致しているかを表す統計量を「κ統計量」や「一致率」と言います。0~1までの値をとり、値が大きいほど一致度が高いといえます。一般に、κ係数は、以下のように判定されます。0.8を超える高い一致度0.6〜0.8かなりの一致度0.4〜0.6中等度の一致度0.4以下低い一致度κ係数≧0.6であれば、観察者間の一致度(reproducibility)が十分高いと判断されます。■κ係数の計算方法実際にκ係数を計算してみましょう。ここに40例の患者について、医師Aと医師Bの病理診断データがあるとします。両者のグレード分類は表1のようになりました。表1 医師AとBのグレード分類両者の一致度を調べるために、表2のようにクロス集計を行います。表2 医師AとBのクロス集計次に判別的中率を算出します。次に一致度をκ係数で調べます。判別的中率は「偶然による一致率」を勘案していない点で、「見かけ上の一致率(observed degree of agreement)」と言われています。κ係数は、判別的中率から見かけ上の一致率を除去したもので、偶然の一致率は次のように算出できます。表3に縦計をT1、T2、T3、T4、横計をY1、Y2、Y3、Y4、全度数をnとします。表2 医師AとBのクロス集計表3 偶然の一致率の集計縦計は、表2の縦計の数値(青枠内)を全体n=40で割った値が入ります(表3(1))。横計には、表2の横計の数値(緑枠)を全体n=40で割った値が入ります(表3(2))。(3)、(4)、(3)×(4)は、表2の数値を代入した算出した結果を示しています。κ係数を以下のように求めてみると、κ係数は高い値を示し、検定によるp値は0.000で、2人の病理医の一致度(reproducibility)は十分高いと評価されます。■さらに学習を進めたい人にお薦めのコンテンツ統計のそこが知りたい!第38回 変動係数とは?「わかる統計教室」第3回 理解しておきたい検定セクション13 カイ2乗検定

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脾膿瘍の鑑別診断【1分間で学べる感染症】第16回

画像を拡大するTake home message脾膿瘍には、血行性感染と腹腔内からの直接波及の機序の2つがあることを理解しよう。脾膿瘍に加えて黄色ブドウ球菌や連鎖球菌の菌血症を見たら、感染性心内膜炎の可能性を念頭に置こう。リスクに応じて、ほかの起因菌も幅広く考慮しよう。皆さんは脾膿瘍(ひのうよう)を経験したことがありますか。頻度は高くないものの、非常に重要な疾患の1つです。以下、一緒に見ていきましょう。1)血行性感染感染性心内膜炎などの感染症から、脾臓に播種して膿瘍を形成するケースです。黄色ブドウ球菌や連鎖球菌などが頻度として高いですが、血液培養からこれらの菌が検出され、かつ画像検査で脾膿瘍が確認された場合には、積極的に感染性心内膜炎の精査を行うことが推奨されます。脾臓は腎臓と同様に遠隔転移巣として膿瘍を形成しやすい臓器であることが知られています。経胸壁心エコー、場合によっては経食道心エコーでの精査を検討します。2)腹腔内からの直接波及腹腔内からの感染では、腹膜炎などから直接波及するケースがあり、病原微生物として腸内細菌科細菌、腸球菌、腹腔内嫌気性菌などを考慮します。機序を考えれば複数菌による感染の可能性があることも容易に想像できるでしょう。とくにクレブシエラは高い病原性を持つ菌株が東アジアを中心に報告されており、侵襲性感染を引き起こすことがあるので注意が必要です。教科書的には糖尿病患者の肝膿瘍が有名ですが、脾膿瘍の報告もあり、念頭に置いておく必要があります。まれな病原微生物としては、猫の引っかきによるバルトネラ感染、白血病患者などに多い好中球減少症における肝脾カンジダ症(慢性播種性カンジダ症)などが知られています。この肝脾カンジダ症はフルコナゾールを含めたアゾール系抗真菌薬の予防内服の普及により現在は報告がきわめて少なくなりましたが、予防的抗真菌薬に耐性のカンジダも近年増加傾向であり、視野に入れておく必要があります。日本ではまれであるものの、東南アジアや北オーストラリアではBurkholderia pseudomalleiというブドウ糖非発酵菌が問題になることがあります。この菌による感染症を類鼻疽(るいびそ、英名:メリオイドーシス)と呼びます。これらの流行地域では、「原因不明の脾膿瘍を見たらメリオイドーシスを疑え」と医学生や研修医でも教えられるほど重要な疾患です。頻度は高くないものの、脾膿瘍は診断と治療が遅れると致死率が高い疾患です。皆さんもぜひ、脾膿瘍の成因と病原微生物を頭に入れておきましょう。1)Radcliffe C, et al. Open Forum Infect Dis. 2022;9:ofac085.2)Lee MC, et al. Can J Infect Dis Med Microbiol. 2018:8610657.3)Lee WS, et al. Yonsei Med J. 2011;52:288-92. 4)Guo RF, et al. Infect Dis Rep. 2015;7:5791.

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事例013 不整脈に処方したカルベジロールで査定【斬らレセプト シーズン4】

解説事例では、不整脈の患者に処方をしたカルベジロール錠に対して、A事由(医学的に適応と認められないもの)が適用されて査定になりました。従来、「不整脈」の病名にて保険請求が可能であったと記憶していたために、添付文書などを参照してみました。効能・効果には、「不整脈」の直接の記載はないものの、「頻脈性心房細動」には適応があると記載されていました。『不整脈の診断とリスク評価に関するガイドライン』(日本循環器学会/日本不整脈心電学会)を参照すると、「不整脈」の主な症状には「徐脈」「頻脈」「調律異常」があり、それぞれ治療内容が異なると記載されていました。したがって、「不整脈」のみでは「効果・効能」を満たしていることの説明に不十分と判断されA事由が適用されたものと推測ができました。コンピュータ審査が厳しくなるにつれ、添付文書に沿った傷病名の記載が査定防止の重要な鍵となります。査定対策として、処方時に注意喚起を表示させるように処方チェックシステムを改修し、医師には添付文書に沿った傷病名を記載いただくか、医学的必要性のコメントを入力していただくようにお願いしました。なお、カルベジロールは、投与する錠剤の力価によって適応病名が異なりますのでご留意ください。

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がん診断後の禁煙、6ヵ月内のスタートで予後改善

 喫煙・禁煙ががんの罹患や予後に関連するとの報告は多いが、がん診断後の禁煙治療の開始時期は予後にどの程度関連するのかについて検討した、米国・テキサス大学MDアンダーソンがんセンターのPaul M. Cinciripini氏らによる研究がJAMA Oncology誌オンライン版2024年10月31日号に掲載された。 研究者らは、テキサス州立大学MDアンダーソンがんセンターのたばこ研究・治療プログラムの参加者を対象とした前向きコホート研究を行った。参加者は、がん診断後に6~8回の個別カウンセリングと10~12週間の薬物療法からなる禁煙治療を受けた。禁煙治療開始から3ヵ月、6ヵ月、9ヵ月後に自己申告により禁煙の継続を報告した。がん診断から禁煙治療登録までの期間(6ヵ月以内、6ヵ月~5年、5年以上)に基づいて3つのサブグループに分けて解析を行った。治療は2006年1月1日~2022年3月3日、データ分析は2023年9月~24年5月に実施された。 主な結果は以下のとおり。・解析対象は、当時喫煙しており、がん診断後に禁煙治療を受けた患者4,526例(女性2,254例[49.8%]、年齢中央値55[SD 47~62]歳)で、がん種で多かったのは乳がん(17.5%)、肺がん(17.3%)、頭頸部がん(13.0%)、血液がん(8.3%)だった。追跡期間中央値は7.9(SD 3.3~11.8)年だった。・禁煙継続率は、3ヵ月時点で42%(1,900/4,526例)、6ヵ月時点で40%(1,811/4,526例)、9ヵ月時点で36%(1,635/4,526例)であった。・3ヵ月時点の禁煙者は喫煙者(=禁煙に失敗)と比較して、5年および10年時点での生存率が改善した(65%対61%、77%対73%)。・全コホートの生存率の最低百分位数は56%であったため、生存期間中央値は推定できなかった。75パーセンタイルでの生存期間を推定すると、死亡までの期間は、3ヵ月時点の喫煙者では4.4年だったのに対し、禁煙者では5.7年だった。・3ヵ月、6ヵ月、9ヵ月時点のいずれでも、禁煙者は15年間の生存率が上昇した(3ヵ月時点の調整ハザード比[aHR]:0.75[95%信頼区間[CI]:0.67~0.83]、6ヵ月時点のaHR:0.79[95%CI:0.71~0.88]、9ヵ月時点のaHR:0.85[95%CI:0.76~0.95])。・診断から禁煙治療開始までの期間と生存転帰との関連では、診断から6ヵ月以内に開始した患者では、3ヵ月後の禁煙の有無が5年および10年時点での生存率の改善と関連していた(それぞれ61%対71%、52%対58%)。この有益性は15年まで持続した。同様の関連性は診断から6ヵ月~5年内に開始した患者でも観察されたがその有益性は減少し、5年以上経過して開始した患者では有意な関連性は認められなかった。 著者らは、「治療開始から3ヵ月、6ヵ月、9ヵ月時点の禁煙継続が、生存率の改善と関連していた。がん診断後早期に禁煙治療を開始することも重要で、6ヵ月以内に治療を開始した患者では生存率が最も良好であった」とし、がん診断後早期にエビデンスに基づく禁煙治療を開始し、継続することの重要性を強調した。

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自殺念慮を伴ううつ病は治療抵抗性へつながるのか

 治療抵抗性うつ病は、自殺行動と関連している。自殺リスクは、治療抵抗性うつ病の予測因子であるため、自殺念慮を有するうつ病患者は、将来治療抵抗性うつ病を発症する可能性が高まる。そのため、現在自殺念慮を有するうつ病患者では、治療抵抗性うつ病のリスク因子の早期特定が非常に重要となる。フランス・モンペリエ大学のBenedicte Nobile氏らは、現在自殺念慮を有するうつ病患者におけるうつ病の非寛解率および治療抵抗性うつ病のリスク因子の特定を試みた。また、ベースライン時の自殺念慮が、ベースライン時のうつ病重症度や6週間後のうつ病寛解率に及ぼす影響を評価した。Psychiatry Research誌2024年12月号の報告。 対象は、2つのフランス大規模プロスペクティブ自然主義的コホート研究(LUEUR研究、GENESE研究)より抽出した、うつ病成人外来患者(DSM-IV基準)。抗うつ薬の開始または切り替えから6週間、フォローアップを行った。現在自殺念慮を有する患者とそうでない患者の間で、社会人口統計学的および臨床的特徴、早期症状改善に違いがあるかを比較するため、ロジスティック回帰モデル(単変量、多変量)を用いた。抗うつ薬の開始または切り替えを行った患者は、それぞれ分析した。治療抵抗性うつ病の定義は、抗うつ薬変更後6週間でうつ病が寛解しなかった場合とした。 主な結果は以下のとおり。・抗うつ薬の切り替えを行った患者における非寛解の主な予測因子は、2週間目の不安症状の早期改善不良であった。・抗うつ薬治療開始患者におけるベースライン時の自殺念慮は、ベースライン時のうつ病重症度およびうつ病寛解率との関連が認められた。・ベースライン時のうつ病重症度だけでは、うつ病寛解率を説明することはできなかった。 著者らは「現在自殺念慮を有するうつ病患者では、不安症状および自殺念慮をターゲットとした特定の薬理学的および非薬理学的治療を行い、その効果を短期的に評価することで、うつ病寛解率を向上させる可能性が示唆された」としている。

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非急性硬膜下血腫、中硬膜動脈塞栓術は有効か/NEJM

 症候性の非急性硬膜下血腫患者(多くが穿頭ドレナージを受けた)の治療において、通常治療と比較して中硬膜動脈塞栓術は、90日の時点での症状を伴う硬膜下血腫の再発または進行の発生率はほぼ同じだが、重篤な有害事象の頻度は有意に低いことが、中国・海軍軍医大学のJianmin Liu氏らMAGIC-MT Investigatorsが実施した「MAGIC-MT試験」で示された。研究の詳細は、NEJM誌2024年11月21日号に掲載された。中国の医師主導型無作為化対照比較試験 MAGIC-MT試験は、中国の31施設で実施した医師主導の非盲検無作為化対照比較試験であり、2021年3月~2023年5月に患者を募集した(Shanghai Shenkang Hospital Development Centerなどの助成を受けた)。 年齢18歳以上、症候性の非急性硬膜下血腫でmass effectがみられ、日常的な活動性が自立している(修正Rankin尺度のスコアが0~2点)患者を対象とした。これらの患者を、外科医の裁量で穿頭ドレナージを行う群または非外科的治療を行う群に割り付け、次いで各群の患者を液体塞栓物質を用いた中硬膜動脈塞栓術を受ける群または通常治療を受ける群に、1対1の割合で無作為に割り付けた。開頭術や緊急血腫除去を要する病態の患者は除外した。 主要アウトカムは、無作為化から90日以内における症候性の硬膜下血腫の再発または進行とした。副次アウトカムにも差はない 722例を登録し、塞栓術群に360例、通常治療群に362例を割り付けた。全体の年齢中央値は69歳(四分位範囲[IQR]:61~74)、596例(82.5%)が男性で、診断時に頭部外傷が379例(52.5%)で確認され、53例(7.3%)が抗血栓薬の投与を受けていた。また、565例(78.3%)が穿頭ドレナージを受け、塞栓術群では99.6%の患者が塞栓術後に穿頭ドレナージを受けた。 90日の時点での症候性硬膜下血腫の再発・進行の発生率は、塞栓術群が6.7%(24例)、通常治療群は9.9%(36例)と、両群間に有意な差を認めなかった(群間差:-3.3%ポイント、95%信頼区間[CI]:-7.4~0.8、p=0.10)。 副次アウトカムである90日後の修正Rankin尺度スコア中央値は、両群とも0点(IQR:0~1)であり、変化量の補正済み共通オッズ比は1.10(95%CI:0.82~1.46)であった。また、他の副次アウトカム(90日後の生活の質[EQ-5D-5Lスコア]、平均入院日数、再入院率、退院後のリハビリテーション病院受診、画像上の血腫の変化など)についても両群間に差はなかった。塞栓術関連合併症の発現率は0.8% 安全性の主要アウトカムである90日間に発生した重篤な有害事象(死亡を含む)の割合は、塞栓術群が通常治療群に比べ有意に少なかった(6.7%[24例]vs.11.6%[42例]、相対リスク:0.58、95%CI:0.34~0.98、p=0.02)。また、90日間の死亡率は、塞栓術群0.6%(2例)、通常治療群2.2%(8例)だった(相対リスク:0.27、95%CI:0.06~1.25)。 塞栓術群では、塞栓術関連合併症が3例(0.8%)で発現した(顔面神経麻痺1例、造影剤に対するアレルギー反応2例)。穿頭ドレナージ関連合併症の発生率は、塞栓術群2.5%(9例)、通常治療群1.1%(4例)だった(相対リスク:2.26、95%CI:0.69~7.40)。 著者は、「先行研究における中硬膜動脈塞栓術後の再発または進行の発生率は1.4~8.9%であり、通常治療は9.3~27.5%であるが、本研究では中硬膜動脈塞栓術群で発生率が有意に低いことは示されなかった」とまとめ、「穿頭ドレナージを再度行うか、レスキューとして行うかの判断は、各参加施設の医師の裁量に任され、治療医とコアラボラトリーのメンバーは試験群の割り当てを知っていたため、アウトカムの評価にバイアスが生じた可能性がある」としている。

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新薬muvalaplin、心血管リスク患者のリポ蛋白(a)を大幅減少/JAMA

 心血管イベントのリスクが高く、リポ蛋白(a)濃度が上昇した患者において、プラセボと比較して経口低分子リポ蛋白(a)阻害薬muvalaplinは、12週間の投与でリポ蛋白(a)を大幅に減少させ、忍容性も良好であることが、オーストラリア・モナシュ大学のStephen J. Nicholls氏らが実施した「KRAKEN試験」で示された。研究の成果は、JAMA誌オンライン版2024年11月18日号で報告された。国際的な無作為化プラセボ対照第II相試験 KRAKEN試験は、リポ蛋白(a)濃度が上昇した患者におけるmuvalaplinのリポ蛋白(a)抑制効果の評価を目的とする二重盲検無作為化プラセボ対照第II相試験であり、2022年12月~2023年11月に日本を含む8ヵ国43施設で患者の無作為化を行った(Eli Lilly and Companyの助成を受けた)。 年齢40歳以上で心血管イベントのリスクが高く、リポ蛋白(a)濃度が175nmol/L以上の患者233例(年齢中央値66歳、女性33%)を対象とした。心血管リスクが高い状態は、冠動脈疾患、虚血性脳卒中または末梢動脈疾患の既往歴があるか、2型糖尿病、家族性高コレステロール血症を有する場合と定義した。 これらの患者を、muvalaplin 10mg/日(34例)、同60mg/日(64例)、同240mg/日(68例)、またはプラセボ(67例)を12週間経口投与する4つの群に無作為に割り付けた。 主要エンドポイントは、12週の時点におけるリポ蛋白(a)のモル濃度のベースラインからのプラセボで補正した変化率とし、インタクトなリポ蛋白(a)の測定法と従来のアポリポ蛋白(a)ベースの測定法を用いて評価した。アポリポ蛋白Bも用量依存性に低下 インタクトなリポ蛋白(a)測定法では、プラセボ群と比較したmuvalaplin群のリポ蛋白(a)濃度のプラセボ群で補正した低下率は、10mg/日群で47.6%(95%信頼区間[CI]:35.1~57.7)、60mg/日群で81.7%(78.1~84.6)、240mg/日群で85.8%(83.1~88.0)であった。また、アポリポ蛋白(a)測定法による低下率は、それぞれ40.4%(28.3~50.5)、70.0%(65.0~74.2)、68.9%(63.8~73.3)だった。 副次エンドポイントであるアポリポ蛋白Bのベースラインから12週までの変化率は、プラセボ群に比べ用量依存性に低下し、muvalaplin 10mg群で8.9%(95%CI:-2.2~18.8)、60mg群で13.1%(4.4~20.9)、240mg群で16.1%(7.8~23.7)の低下率であった。 高感度C反応性蛋白については、muvalaplinの3つ用量群のいずれにおいてもプラセボ群と比較して有意な変化はみられなかった。安全性、忍容性に関する懸念は認めなかった 安全性および忍容性に関する懸念は、muvalaplinのいずれの用量にも認めなかった。試験期間中の治療関連有害事象の発現は3つの用量で同程度(49.2~52.9%)、重篤な有害事象は3用量とも6%未満(2.9~5.9%)であり、試験薬の投与中止に至った有害事象は240mg/日群で6例(8.8%)にみられた。 いずれかの用量群で少なくとも5%の患者に発現した治療関連有害事象は、下痢、悪心、インフルエンザ、背部痛、筋肉痛、貧血などであった。 著者は、「市販のリポ蛋白(a)測定法では、muvalaplinと結合したアポリポ蛋白(a)や遊離アポリポ蛋白(a)に加えて、インタクトなリポ蛋白(a)粒子中のアポリポ蛋白Bと結合したアポリポ蛋白(a)を測定するため、muvalaplinのような薬剤によるリポ蛋白(a)の低下の程度を過小評価する可能性があるが、インタクトなリポ蛋白(a)測定法は臨床では使用できず、まだ広く評価されていない」「muvalaplinが臨床イベントを減少させ、心血管疾患の予防において役割を果たすかについては、今後の研究が必要である」としている。

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蒸留酒、ワイン、ビール、最も悪い生活習慣に関係するのはどれ?

 好きな酒の種類が、その人の生活習慣を知る手がかりになる可能性を示す研究結果が報告された。ビール好きの人は、ワインや蒸留酒などを好む人と比べて不健康な生活習慣を送っている人が多いことが明らかになったという。米テュレーン大学医学部研修医プログラムのMadeline Novack氏らによるこの研究結果は、米国肝臓学会議年次学術集会(AASLD 2024、11月15~19日、米サンディエゴ)で発表され、「Nutrients」に11月13日掲載された。 Novack氏は、「米国では、アルコールの過剰摂取が肝硬変の主な要因となっている。また、代謝機能障害関連脂肪性肝疾患(MASLD)も急増している」と話す。同氏はまた、「これらの肝疾患は併存することも多く、管理や予防には生活習慣の改善が重要だ。そのためには、飲酒と栄養不良の関係について理解することから始める必要がある」とAASLDのニュースリリースの中で述べている。 Novack氏らは今回の研究で、飲酒習慣がある1,917人の米国成人(平均年齢46.8±0.8歳、男性56.5%)の全国調査データを分析した。調査の回答者は、食習慣に関する詳細な質問に答えていた。 調査では、回答者の38.9%がビールのみ、21.8%がワインのみ、18.2%が蒸留酒/カクテルのみ、21.0%が複数種類の酒を飲むと回答していた。また、飲んでいる酒の種類にかかわらず、飲酒習慣のある人で食事の質の評価指標である健康食指数(HEI、100点満点)で、十分に健康的な食生活と見なされる80点を達成している人はいなかった。 ビールのみを飲む人は、ワイン、または蒸留酒/カクテルのみを飲む人、複数種類の酒を飲む人と比べて、世帯収入と食事の質が低く、身体活動量が少なく、喫煙者が多い傾向が認められた。具体的には、ビールのみを飲む人では、貧困ラインの閾値を下回る人の割合が高く(12.7%、ワインのみ飲む人5.7%、蒸留酒/カクテルのみ飲む人9.6%、複数種類の酒を飲む人6.0%、以下、同順で記載)、HEIが低く(49.3点、55.1点、52.8点、52.6点)、喫煙者の割合が高く(27.8%、10.0%、19.9%、15.3%)、身体活動量が十分な人の割合が少なかった(42.2%、59.8%、46.1%、59.3%)。さらに、ビールのみを飲む人は、1日当たりの総カロリー摂取量が最も多かった。 Novack氏は、ビールのみを飲む人に多く認められた、食事の質の低さ、身体活動量の少なさ、喫煙といった生活習慣要因は、すでに過度の飲酒習慣があり、肝疾患の発症リスクがある人の健康に大きな影響を与える可能性があることを指摘している。 またNovack氏は、飲む酒の種類によってどんな食品を食べるかが決まる傾向があることも、食事の違いを生んでいる可能性があるとの見方を示している。その例として、ビールは食物繊維が少なく炭水化物が多い食品や、加工肉などとともに飲まれがちである一方で、ワインは肉や野菜、乳製品と一緒に飲む場合が多いことを同氏は指摘している。また、食品の種類によって特定のアルコール飲料を飲みたくなることも、要因の一つとして考えられると同氏は付け加えている。例えば、揚げ物や塩分の多い食べ物は、ワインや蒸留酒よりもビールを飲みたい気持ちにさせる可能性が高いとしている。

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早発卵巣不全は自己免疫疾患と関連

 早発卵巣不全(POI)と診断された女性で、重度の自己免疫疾患の有病率が上昇するという研究結果が、「Human Reproduction」に9月25日掲載された。 オウル大学病院(フィンランド)のSusanna M. Savukoski氏らは、1988~2017年に自然発症のPOIと診断された女性3,972人と一般女性対照群1万5,708人を対象として、集団ベースの登録研究を行い、POI診断前後の重症自己免疫疾患との関連を検討した。 解析の結果、POIの女性における1つ以上の重度の自己免疫疾患の有病率は5.6%であった。POI女性は対照群と比較して、基準日以前に、多腺性自己免疫症候群、アジソン病、血管炎、全身性エリテマトーデス、関節リウマチ、サルコイドーシス、炎症性腸疾患(IBD)、甲状腺機能亢進症を含む、複数の特異的な自己免疫疾患の有病率が高かった。1型糖尿病または強直性脊椎炎の有病率に、差は見られなかった。POI診断後の最初の3年間に重度の自己免疫疾患と初めて診断される標準化罹患比は2.8であったが、12年後には1.3に減少した。 著者らは、「この研究結果は、POIの発症機序に自己免疫機構が重要な役割を果たしているという仮説を補強するものである」と述べている。

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麻疹ワクチン、接種率の世界的な低下により罹患者が増加

 麻疹ワクチン接種率の低下により、2022年から2023年にかけて、世界中で麻疹罹患者が20%増加し、2023年には1030万人以上がこの予防可能な病気を発症したことが、世界保健機関(WHO)と米疾病対策センター(CDC)が共同で実施した研究により明らかになった。この研究の詳細は、「Morbidity and Mortality Weekly Report」11月14日号に掲載された。 CDC所長のMandy Cohen氏は、「麻疹罹患者が世界中で増加しており、人命と健康が危険にさらされている。麻疹ワクチンはウイルスに対する最善の予防策であり、ワクチン接種の普及拡大に向けた取り組みに引き続き投資する必要がある」とCDCのニュースリリースで述べている。 一方、WHOのテドロス事務局長(Tedros Adhanom Ghebreyesus)は、「麻疹ワクチンは過去50年間で、他のどのワクチンよりも多くの命を救ってきた。さらに多くの命を救い、この致死的なウイルスが最も影響を受けやすい人に害を及ぼすのを阻止するためには、居住地を問わず、全ての人がワクチンを接種できるように投資しなければならない」と話している。 WHOとCDCによると、2023年には2220万人の子どもが2回接種の麻疹ワクチンの1回目さえ受けていなかったという。これは、2022年から2%(47万2,000人)の増加であった。2023年の世界全体での子どもの麻疹ワクチンの1回目接種率は83%であったが、2回目を接種したのはわずか74%であった。保健当局は、麻疹のアウトブレイクを防ぐために、麻疹ワクチン接種率を95%以上に維持することを推奨している。また、CDCは、麻疹ウイルスに感染した人がウイルスに対する免疫を保持していない場合、周囲の人の最大90%にウイルスが広がる可能性があるとしている。 麻疹のアウトブレイクが報告された国は、2022年の36カ国から2023年には58%増加の57カ国となった。57カ国中27カ国(47%)はアフリカであった。2023年の麻疹罹患者(1034万1,000人)は、2000年(3694万人)と比べると72%減少していたが、2022年(罹患者864万5,000人)からは20%増加していた。一方、麻疹による2023年の死者数(10万7,500人、主に5歳未満)は、2020年(死亡者80万人)からは87%、2022年(11万6,800人)からは8%減少していた。WHOとCDCは、2022年と比べて2023年に死亡者がわずかに減少したのは、子どもが麻疹に罹患しても、医療環境が整っていて死亡する可能性が低い地域で最大の感染拡大が起きたことが主な理由だと述べている。CDCによると、米国では、2024年の11月21日時点で、すでに31州とワシントンDCで麻疹のアウトブレイクが16回発生し、280症例が報告されている。2023年には、わずか4回のアウトブレイクしか発生していなかった。 麻疹の症状には、高熱、咳、結膜炎、鼻水、口内の白い斑点(コプリック斑)、頭からつま先まで広がる発疹などがある。WHOは、乳幼児は肺炎や脳の腫れなど、麻疹による重篤な合併症のリスクが最も高いとしている。なお、麻疹のワクチン接種率は、新型コロナウイルス感染症パンデミック中に世界的に低下し、2008年以来最低の水準に達した。

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ホルモン受容体陽性HER2陰性進行乳がんに対するSERD+CDK4/6i+PI3Kiによる予後の改善(解説:下村昭彦氏)

 inavolisibは新規PI3K阻害剤である。2023年の「San Antonio Breast Cancer Symposium」で全生存期間(OS)の改善が期待されるデータが公表されてから、その詳細が待たれていた。inavolisibはPI3Kαを特異的に阻害する薬剤で、既存のPI3K阻害剤よりも有害事象が軽減することが期待されていた。 inavolisibの有効性を初めて証明した試験がINAVO120試験であり、2024年10月21日にNEJM誌に発表された。INAVO120試験では、ホルモン受容体陽性HER2陰性(HR+HER2-)進行乳がん(転移乳がんもしくは局所進行乳がん)のうち、組織、もしくはctDNAでPIK3CAの変異が検出された患者を対象として、フルベストラント+パルボシクリブにinavolisibまたはプラセボを上乗せするデザインとなっていた。この試験は進行乳がんの1次治療の試験ではあるが、適格基準に特徴がある。すなわち、術後ホルモン療法中の再発、もしくは術後ホルモン療法完了後12ヵ月以内の再発の患者を対象としており、いわゆるホルモン感受性の低い患者へのエスカレーションとなっている。 inavolisib群に161例、プラセボ群に164例が割り付けられ、主要評価項目の無増悪生存期間(PFS)の中央値は15.0ヵ月vs.7.3ヵ月(ハザード比[HR]:0.43、95%信頼区間[CI]:0.32~059、p<0.001)と統計学的有意にinavolisib群で良好であった。重要な副次評価項目のOSはHR:0.64(95%CI:0.43~0.97、p=0.03)であり、inavolisib群で良好な傾向を認めるものの事前に規定された有意水準は満たさなかった。inavolisib群に特徴的な有害事象として高血糖、粘膜障害、下痢が挙げられ、Grade3以上の頻度は低いものの他のPI3K阻害剤と同様注意が必要と考えられた。 ホルモン感受性の低いHR+HER2-乳がん患者に対するホルモン療法の有効性を高めるのにどのような併用薬が有効かということは、非常に重要なクリニカルクエスチョンの1つである。他にも同様の試験としてAKT阻害剤であるカピバセルチブを併用するCAPItello-292試験も国際共同治験として実施されている(NCT04862663)。一方で、併用薬剤が増加しPFSが改善することで、有害事象の管理は困難になり、また患者の生活への影響は無視できなくなる。比較的有害事象が軽い場合もある抗体医薬複合体(ADCs)も多数開発されている。必ずしもホルモン療法と他の薬剤の併用が化学療法を始めとした他の機序の薬剤と比較して毒性が低いとはいえず、ADCsの時代にはHR+HER2-乳がんの治療ストラテジー全体を再考する必要があるのかもしれない。

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交通事故死亡者の喉頭に残されていた意外なモノ【Dr. 倉原の“おどろき”医学論文】第270回

交通事故死亡者の喉頭に残されていた意外なモノ著作者:pch.vector/出典:Freepik今回紹介する症例報告は、交通事故で亡くなった53歳男性の司法解剖の結果についてです。解剖の過程で意外な発見があり、死因の特定を複雑にしました。Mattu PS, et al. Chewing Gum in the Larynx: Foreign Body Aspiration or Iatrogenic Artifact?Challenges in Determining the Cause of Death in a Road Traffic Accident Victim WithResuscitation Intervention. Cureus. 2024 Aug 17;16(8):e67085.53歳の男性ドライバーが高速道路を運転している最中、事故を起こしました。車は蛇行し、加速して岩壁に衝突し、森林地帯で停止しました。救急隊が到着した時点で、被害者は反応がなく、気管挿管を含めた蘇生処置が行われましたが、蘇生できずそのまま帰らぬ人となりました。司法解剖が行われました。両側の肋骨骨折と胸骨骨折がありましたが、これはおそらく心肺蘇生によって起こった二次的なものであろうと推察されました。全身に多数の擦過傷、鈍的外傷が見られました。さらに、頭蓋骨の骨折がありました。死因はおそらく頭部外傷だろう、と思われました。しかし、喉頭に気になるものがありました。それは、チューインガムです。そもそもなぜこの53歳の男性は突然交通事故を起こしたのか。もしかして、運転中にガムを誤嚥し、それによって喉頭が刺激され、激しい咳や窒息を起こし、運転の妨げになったのではないか。あるいは、蘇生処置を行う際、気管挿管時に口腔内にあったチューインガムが人為的に喉頭に押し込まれてしまったのではないか。もしそうであれば、蘇生がかなわなかった理由というのは、実はチューインガムのせいかもしれません。法医学の世界では、時に複雑な因子が絡み合い、死因の特定を困難にします。今回の症例も、書面上は頭部外傷による死亡であると結論付けられていますが、チューインガムが背後に暗躍していた可能性は残るとしています。一見単純に見える交通事故でも、その背後に複雑な要因が隠れている可能性があることを忘れてはいけないという啓蒙的な結論になっています。

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第240回 消費者向け「遺伝子検査」を受けて思わず動揺!その分析結果とは

消費者向け(Direct-to-Consumer:DTC)遺伝子検査について目にしたことがある医療者も少なくないだろうと思う。私もこれまでネット上で目にはしていたが、眉唾モノとの印象が強く、完全無視を決め込んでいた。しかし、ある取材でこれを受けなければならなくなった。編集者が「早い・安い」で申し込んだ検査キットが届いたのは、今から約1ヵ月前。検査キットと言っても唾液採取のための容器とその補助装備、さらにID・パスワードが書かれた紙が入っていただけだ。まず、そのID・パスワードで検査会社のウェブサイトにアクセスし、個人情報や生活習慣、飲酒・喫煙歴、両親の出身地、自分と親の既往歴などについての簡単なアンケートに回答する。そのうえで同封されていた容器に自分の唾液を充填し、ポストに投函。翌日には検体が無事届いたとのメールが入り、それから1週間で自分のメールアドレスに検査結果終了の案内メールが届いた。体質分析の結果早速アクセスしてみた。200項目超の体質の項目を見る。大まかな項目は以下のとおり。基礎代謝量…高  肥満リスク…低  筋肉の発達能力…高短距離疾走能力…低  有酸素運動適合性…低  運動による減量効果…高アルコール代謝…普通  酒豪遺伝子(意味不明だが)…普通  二日酔い…低アルコール消費量…多  アルコール依存症リスク…中  ワインの好み…赤肌の光沢…低  肌のしわ…多  AGA発症リスク…低まあ、基礎代謝に関しては高いのかどうかわからないが、かつて幼少期の娘からは「お父さんと一緒に寝ていると、お布団の中がコタツを最強にした感じで、冬でも汗をかく」と言われたことがある。体質では「登山家遺伝子」なる項目もあり、そこは“高所登山家タイプ”となっていた。体質の食習慣に関する評価項目では、なぜか芽キャベツと甘いものは好まないとの評価だった(私は仕事場近くの焼き鳥・焼きとん屋に行き、野菜串焼きに芽キャベツがあると喜んで注文し、ムシャムシャ食べてしまうのだが…)。飲酒については、実生活と明確に異なるのは、私の好みのワインは「白」という点だ。肌については自覚がある。男性型脱毛症(AGA)の発症は確かに今のところその兆しはない。しかし、ここまで来ると、大きなお世話と言いたくもなる。いずれにせよ当たらずとも遠からずというか、当たっていると言えるものもあれば、明らかに違うと言えるものもある。ただ、自分の体のことはわかっているようで、わかっていない部分もあるので何とも言えない。性格分析の結果そして性格についても分析があり、同じ項目について事前アンケートの結果と検査結果が並列で記載がある。こちらもアンケート結果と検査結果がほぼ同一のものもあれば違うものもある。どちらかといえばほぼ同一のものがほとんどである。そして「総合性格タイプ」は、持ち前のタフな精神力で、自分の好奇心に従って未知の世界へどんどん飛び込んでいける“サバイバルYouTuber”タイプとの評価である。まあ、当たっていると言えなくもないが、同時にYouTuberと一緒にされるのもなんだかなという感じである。165疾患のリスク、その結果は…さてこの検査の本丸、というか受ける人の多くが気にするであろうと考えられるのが疾患リスクである。私の受けた検査では、「予防」なる大項目があり、さらに一般疾患と各種がんの合計165疾患についてリスクが表示されている。このリスク表示、疾患ごとにオッズ比のような数値と大、中、小の3段階の定性的表現で発症リスクが示してあった。がんの項目を見ていくと、ほとんど問題はなさそうである。が、後半にスクロールしている手が止まった。多発性骨髄腫の発症リスクが「大」とある。思わず「はあ?」と声が漏れてしまった。一瞬動揺してしまうと同時に、検査結果を見る当事者をそういう心理状況に置く結果通知をラーメン店の券売機にある「小」「並」「大」にも似たざっくりした表現で示された腹立たしさも入り混じった何とも言えない不快感である。さて当然のことながら多発性骨髄腫を知らぬわけはない。化学療法が奏功しやすい血液がんの中でも難治で知られるがんである。少なくとも数年前の5年相対生存率は50%未満だ。ちなみにこれ以外でも一般疾患では、痛風、狭心症、そしてなぜか慢性C型肝炎もリスク大と判定された(というか、C型肝炎に未感染であることはたまたま最近行ったある検査で判明している)。だが、やはり多発性骨髄腫のリスク大のインパクトが一番大きい。発症するとかなりの痛みを伴うことや激烈な化学療法が必要になること、そして治癒もコントロールも難しいことがわかっているからだ。もっともDTC遺伝子検査は、正確に言えば遺伝子そのものを調べているわけではなく、「一塩基多型(SNP、スニップ)」と疾患に関する相関を調べた研究を基にリスク判定しているため、各種固形がんや遺伝性乳卵巣症候群(HBOC)のような発症や増悪に関与する遺伝子変異の検査に比べれば、当たるも八卦当たらぬも八卦の域であることは私自身も百も承知である。ただ、実はちょっとだけ安堵感もあった。血液内科専門医の皆さんならご存じのように、昨今、この疾患では新薬開発が活発で治療選択肢も増えているからだ。治療法によっては5年相対生存率も60%近くまで伸びている。そんなこんなで日本血液学会の「造血器腫瘍診療ガイドライン2023」に記載された多発性骨髄腫のパートを改めて通読してみた。私にとってこれはこれで改めて知識の整理ができる利点もあった。ただ、ガイドラインで示されている治療の実際は、やはり文字で読んでいるだけでもきつそうである。とはいえ、今後本当に多発性骨髄腫を発症したとしても「あの時、ああいう結果が出てたしな」という感じで受け止められると考えれば、この検査が自分にとって無意味だったとまでは言えない。神社でおみくじを引いて、「凶」と出た直後にケガをしたら、「おみくじは凶だったし」と自分を納得させようとすることとどこか似ている。一部の専門家がDTC遺伝子検査の持つ不確実性を踏まえ、「占い」と評してしまうのはそうしたところにも起因しているのかもしれない。ただし、私のように割り切れる人はどれだけいるだろうか? 気弱な人、生真面目な人ならばそうは簡単に割り切れない危険性は十分にある。そのように考えると、まったく科学的根拠がないわけではないとはいえ、ただ唾液を投函してこのような結果が示されるという今の在り方は、もう少し改善することも必要なのではないかとも考え始めている。

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映画「ミスト」 ドラマ「ザ・ミスト」(後編・その1)【宗教体験と幻覚妄想は表裏一体!?(統合失調症の二面性)】Part 1

今回のキーワード宗教体験幻聴被害妄想知覚の異常思考の異常宗教妄想皆さんは、「神のお告げが聞こえる」「私たちは罰を受けている」と説かれるとどう思いますか? これらのいわゆる預言や神罰の境地、つまり宗教体験は、古くから世界各地で共通してみられます。一方で、率直なところ、周りで誰も話していないのに声が聞こえる幻聴や、周りから何かされているのではないかと思い込む被害妄想と何が違うのでしょうか?この答えを探るために、今回は、映画「ミスト」とドラマ「ザ・ミスト」を合わせて取り上げます。この2つの作品は、原作が同じで、展開もかなり似ていますが、登場人物の設定が違い、ドラマの方がより複雑な人間関係になっています。ただ、この2つの作品に共通して一際存在感を発揮していくキャラクターがいます。映画では「カーモディさん」、ドラマでは「ナタリー」です。今回は、この2人に焦点を当て、精神医学の視点から、宗教体験と幻覚妄想は表裏一体であるわけを説明し、統合失調症という心の病の二面性について一緒に考えてみましょう。なお、今回は、このシネマセラピーの記事における映画「ミスト」の後編になります。前編「宗教の起源」と中編「マインドコントロールのメカニズム」については、以下の記事をご覧ください。宗教体験が幻覚妄想と表裏一体であるわけは?あるのどかな田舎町に突然立ち込めた濃い霧(ミスト)。その中に入ってしまった町の人たちは、次々と大けがをして死んでいきます。何とかその霧から逃れた人たちは、大きな建物の中に避難しますが、そこに閉じ込められてしまいます。彼らは、わけがわからず恐怖に震え、途方に暮れるだけだったのでした。そんななか、映画ではカーモディさん、ドラマではナタリーが、信仰心によって存在感を発揮していきます。まず、この2人の言動から、宗教体験が幻覚妄想である理由を大きく2つ挙げて、精神医学的に説明しましょう。(1)神のお告げが聞こえる―幻聴映画版のカーモディさんは、異常事態の当初、トイレの中で涙を流しながら神と対話していました。彼女は、「どうか私にこの人たちを助けさせてください」「あなたの言葉を説かせてください」「光で導かせてください」「悪人ばかりではないはずです」「あなたの赦しによって何人かは救うことができるはずです」「天国の門をくぐれるはずです」「1人でも救えたら、私の人生に意義が見いだせます」「私の役割を果たせるのです」「そしてあなたのおそばに行ける」「あなたのご意志を全うできるのです」と語ります。ドラマ版のナタリーは、アリやクモを神格化して、会話しているようなシーンが描かれていました。1つ目の宗教体験は、神のお告げが聞こえ、神と対話することです。これらは、宗教的には預言と見なされますが、精神医学的にはそれぞれ命令幻聴、対話性幻聴が当てはまります。なぜなら、周りで誰も話していないのに声が聞こえてくるという知覚の異常としては、このような宗教体験も幻聴もやはり区別できないからです。(2)私たちは罰を受けている―被害妄想映画版のカーモディさんはやがて、周りの人たちに「真実が見えない?」「私たちは罰を受けている」「神のご意思に背くことをしているから」「禁じられた神の古き掟を破っているから」「月面を歩いたり、原子を分裂させたり、幹細胞の研究や中絶!」「生命の神秘を破壊する」「神だけに許された世界への冒涜よ!」「神の審判が下ったのよ」「地獄の魔物が解き放たれた」「燃える星が天から落ちてきた」などと熱心に説き続けます。ちなみに、この神罰の一連のセリフは、9.11テロの直後にキリスト教原理主義の高名な総帥が言った言葉のパロディです。ドラマ版のナタリーは、以前に森林警備隊員から聞いた話を語り出します。「クマの母親が3頭の子グマを生んだの。でも、その母クマはそのうちの2頭を殺したの。彼はショックを受けたわ。そして、すぐに残りの1頭を保護したの。でも、あとからわかったのは、母グマはその2頭が感染症にかかっていたのを知っていたからなの。残りの1頭の命を守るためだったの」「この霧の目的はそれと同じ」「人間も自然の一部よ」と確信して言っていました。2つ目の宗教体験は、私たちは罰を受けていて、それはもともと人間は罪深いからと思い込むことです。これらは、宗教的には神罰や原罪と見なされますが、精神医学的にはそれぞれ被害妄想と罪業妄想が当てはまります。なぜなら、合理的な根拠なく思い込んでしまう思考の異常としては、このような宗教体験も妄想もやはり区別できないからです。なお、「罰を受ける」根拠を「人間の存在が罪(原罪)だから」としている点では、後付けの関係妄想とも言えます。つまり、すでに問題が起きているという状況(被害)が先であることから、被害妄想がこの宗教体験の本質であると言えます。次のページへ >>

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映画「ミスト」 ドラマ「ザ・ミスト」(後編・その1)【宗教体験と幻覚妄想は表裏一体!?(統合失調症の二面性)】Part 2

じゃあなんで宗教体験は統合失調症と見なされないの?宗教体験と幻覚妄想は、知覚や思考の異常という精神医学的な視点では区別できないことがわかりました。そして、幻覚妄想を主症状とする精神障害は統合失調症ですが、実際の研究でも、宗教体験とこの統合失調症は、同じ脳領域が過活動になっていることがわかっています1)。それでは、なぜ宗教体験は統合失調症と見なされないのでしょうか?その理由は、宗教体験は、宗教という文化として世界中で古くから受け入れられてきたからです。つまり、正常か異常か、健康か病気かは、社会で受け入れられるかどうか、常に多数決で決まっていることがわかります。なお、この健康の概念の詳細については、関連記事1をご覧ください。以上より、同じ知覚や思考の異常でも、社会的に受け入れられている場合は宗教体験、受け入れられていない場合は統合失調症になるわけです。この点で、たとえ宗教体験であっても、それでトラブルを起こし、社会的に受け入れられなくなれば、宗教妄想を呈した統合失調症と診断します。逆に言えば、宗教体験は、統合失調症と同じ心理現象(幻覚妄想)のプラス面を見ているだけと言い換えられます。これが、統合失調症の二面性です。つまり、統合失調症は、宗教に関連した何らかの存在理由があることが想定できます。それは一体、何なのでしょうか?(次回へ続く)1)「宗教の起源」p.246:ロビン・ダンバー、白揚社、2023<< 前のページへ■関連記事ドキュメンタリー「WHOLE」(後編)【自分の足を切り落とすことが健全!?(健康の定義)】

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統合失調症患者が考える抗精神病薬減量の動機と経験

 統合失調症患者の多くは、時間の経過とともに、抗精神病薬の減量または中止を望んでいる。デンマークでは、政府の資金で専門外来クリニックが設立され、抗精神病薬の減量指導が行われてきた。デンマーク・コペンハーゲン大学のAlexander Nostdal氏らは、クリニック通院患者における抗精神病薬減量の動機および過去の経験に関するデータを収集し、報告を行った。Psychiatric Services誌2024年11月1日号の報告。 対象患者は、抗精神病薬の中止または減量についての動機に関する自由記述式調査に回答した。過去の投薬中止経験、症状、動機、副作用レベルに関する情報も併せて収集した。 主な結果は以下のとおり。・88例中76例(86%)が調査に回答した。・抗精神病薬を中止した主な動機は、副作用(71%)、抗精神病薬服用の必要性に関する不安(29%)であった。・その他の要因には、長期的な影響への懸念、診断への同意、効果不十分の経験、服薬によるスティグマを感じるなどが挙げられた。・抗精神病薬中止に関する過去の経験は42例から報告され、そのうち23例は再発経験を報告した。・ほとんどの患者は、減量(75例中73例、97%)または中止(75例中62例、83%)を実現可能だと考えていた。 著者らは「専門家の指導による抗精神病薬の減量の動機付け要因は、中止を選択した患者を対象とした過去の研究結果と一致していた。抗精神病薬中止による再発を経験した患者においても、そのほとんどが減量または中止が実現可能であると考えていた。最適な治療連携を行ううえで、患者の動機と信念を理解することは最も重要である。指示に従い減量を行うことで、抗精神病薬の突然の中止や根拠のない中止を減らすことが可能である」と結論付けている。

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医師の「スーツ」事情、所持数や予算は?/医師1,000人アンケート

 ビジネスパーソンにとってユニフォーム的な存在である「スーツ」。一方、医師の仕事着といえば白衣のイメージがあるが、実際には勤務中に何を着ているのか?スーツを着る機会はいつなのか?ケアネット会員の男性医師を対象に、仕事中の服装やスーツの所有状況などについてアンケート形式で聞いた。対象:ケアネット会員の男性医師1,008人(30代以下、40代、50代、60代以上の年代別で各252人)実施日:2024年10月30日診療中の服装、若手ほどスクラブ派が多数、ベテランはワイシャツ&白衣派も 「Q1. 診察中の服装として、最も多い服装は?」(単一回答)との質問では、「スクラブのみ」「スクラブ&白衣」が同率の27%だった。とくに30代以下の若手医師では7割以上が「スクラブのみ」もしくは「スクラブ+白衣派」だった。一方、ベテランになると「ケーシー」や「スラックス+ワイシャツ(=スーツのジャケットなしの服装)&白衣」という回答が増えた。年配の医師は開業している割合が高く、検査や手技をする機会が限られる、手術を行う機会が減る、といった事情も影響していそうだ。実際、「スラックス+ワイシャツ&白衣」の回答は20床未満の診療所の勤務者で最も多かった(16%)。「その他」の回答としては外科系の医師を中心に「術衣」「術衣+白衣」との回答が目立った。スーツを着るのは「学会参加時」、所有数は3着以内が7割 「Q2. 勤務中にスーツを着るシチュエーションを挙げてください」(複数回答)との質問には「学会に参加するとき」が751人(75%)と最多となった。その後には「講演をするとき」が528人(52%)、「会食・パーティ」が289人(29%)などとなった。一方で、「着る機会はない」「ほぼない」との回答も複数あった。 「Q3. 現在、スーツを何着持っていますか?」(数値で回答)との質問には、平均3.4着、中央値2着という結果だった。0着12人(1%)、1着156人(16%)、2着337人(34%)、3着202人(20%)と3着以内で7割、以後4着95人(9%)、5着101人(10%)と5着以内で9割を占めた。一方で、「50着」「30着」という回答もあった。購入場所は量販店が半数、予算は年齢が上がるにつれ変化 「Q4. 通常、スーツをどこで買うことが最も多いですか?」との質問には洋服の青山、スーツセレクトなどのスーツ量販店が最多で半数近く(47%)を占め、続いてデパート・ブランド店(39%)だった。「Q5. スーツ1着(上下一式)のおおよその予算はいくらですか?」への回答では全体では「5~8万円台」が最多で32%、続いて「2~4万円台」が30%だった。年齢が上がるにつれ量販店での割合が減る一方で、デパート・ブランド店やオーダースーツ専門店の割合が上がり、同時に1着当たりの予算も上がる傾向があった。1着当たりの予算が2万円以下とした人は20代では13%だったが、60代では6%と半分以下に減り、一方で5~8万円台との回答は20代で28%だったが、60代以上では42%に増え、9万円以上との回答者も35%存在した。機能性重視が大半だが、オーダーメイドへの憧れの声も 最後に「Q6.スーツに対する思いや要望」を自由回答で聞いたところ、「動きやすいものがいちばん」(消化器内科・20代)、「洗濯がしやすいもの」(循環器内科・40代)、「伸縮性の良いもの」(循環器内科・40代)、「ポケットがめちゃくちゃ多いもの」(消化器外科・60代)など、機能面の要望に集中した。とくに「学会出張時、シワになりにくい」(糖尿病・代謝・内分泌内科・30代)との回答は多数あった。「内科とはいえ処置の機会が多いため、季節を問わず常に半袖のケーシー。スーツ着用の機会はほとんどないので、とにかく安いものが良い」(内科・60代)といった実用的な回答が目立った。 一方で、「イタリアンスタイルが体格に合う」(内科・60代)、「ずっとアルマーニに決めている」(循環器内科・60代)、「普段は着ないので、着る時は楽しみたい。オーダースーツは裏地もこだわることができるし、生地を決めている時も楽しい」(循環器内科・30代)という、“スーツこだわり派”からの回答もあった。「オーダーメイドスーツを作りたいが敷居が高い」(糖尿病・代謝・内分泌内科・30代)という回答も10人近くから寄せられており、「状況が許せばオーダースーツに挑戦したい」という層も一定数いるようだ。アンケート結果の詳細は以下のページで公開中。スーツに関するアンケート/医師1,000人アンケート

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持続性AF、線状アブレーション+肺静脈隔離術は有益か?/JAMA

 持続性心房細動(AF)患者の治療において、肺静脈隔離術(PVI)にマーシャル静脈内エタノール注入(EIVOM)を併用した線状アブレーションを追加することにより、PVI単独と比較して12ヵ月以内の心房性不整脈再発が有意に改善された。中国・Beijing Anzhen HospitalのCaihua Sang氏らPROMPT-AF investigatorsが、中国の3次医療機関12施設で実施した研究者主導の多施設共同無作為化非盲検試験「PROMPT-AF試験」の結果を報告した。これまでの無作為化試験では、PVI後に線状アブレーションを追加したときのPVI単独に対する優越性は検証されていなかった。EIVOMは僧帽弁輪峡部でのアブレーションを容易にし、線状アブレーション戦略の有効性を改善する可能性があるとされていた。JAMA誌オンライン版2024年11月18日号掲載の報告。EIVOM併用線状アブレーション追加の有効性をPVI単独と比較 研究グループは、2021年8月27日~2023年7月16日に、18~80歳で、少なくとも1種類の抗不整脈薬に抵抗性を示し、AFアブレーション歴のない持続性AF(持続性AFエピソードが3ヵ月以上持続)患者498例を対象に試験を行った。被験者を、PVI群またはPVI+EIVOM+線状アブレーション群(介入群)に、1対1の割合で無作為に割り付けた。 介入群では、最初にEIVOMを行った後、PVIと左房天蓋部、僧帽弁輪峡部、三尖弁下大静脈間峡部の線状アブレーションを行った。 患者にウェアラブル単極誘導心電図(ECG)パッチを1週間に24時間装着してもらいモニタリング。また、症状発現時にECGやホルター心電図を追加した。 主要エンドポイントは、アブレーション後12ヵ月以内(3ヵ月のブランキング期間を除く)に抗不整脈薬を使用せず30秒以上続くあらゆる心房性不整脈が認められなかった患者の割合であった。副次エンドポイントには、心房性不整脈の再発、AF、複数回の処置後の心房性不整脈の再発、抗不整脈薬の有無にかかわらず記録された心房頻拍または心房粗動、AFの重症度、および生活の質(QOL)の改善が含まれた。主要エンドポイントはEIVOM併用線状アブレーション追加が良好 無作為化された患者498例のうち、495例(99.4%)が主要解析に組み入れられた。平均(±SD)年齢は61.1±9.7歳、男性が361例(72.9%)であった。 主要エンドポイントである12ヵ月以内の抗不整脈薬不使用で30秒以上続く心房性不整脈が認められなかった患者の割合は、介入群で246例中174例(70.7%)、PVI単独群で249例中153例(61.5%)であった(ハザード比:0.73、95%信頼区間:0.54~0.99、p=0.045)。介入効果は、事前に規定されたすべてのサブグループで一貫していた。 副次エンドポイントについては、有意な結果は認められなかった。また、手技に関連する有害事象の発現率に両群で差はなかった(p=0.15)。

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子宮内膜症・子宮筋腫の既往、早期死亡リスクと関連/BMJ

 子宮内膜症あるいは子宮筋腫の既往歴のある女性は、生殖可能年齢を超え70歳未満での早期死亡の長期的リスクが高まる可能性があり、主に婦人科系がんによる死亡リスクの増加とも関連し、子宮内膜症はがん以外の死亡リスクの増加とも関連していた。中国・上海交通大学のYi-Xin Wang氏らが、前向きコホート研究の結果を報告した。子宮内膜症と子宮筋腫は、慢性疾患の長期的リスクを高めることが示されているが、早期死亡リスクに及ぼす影響は不明であった。BMJ誌2024年11月20日号掲載の報告。米国の女性看護師、約11万例を追跡 研究グループは、米国で1989年に開始された前向きコホート研究「Nurses’ Health Study II」に登録された25~42歳の女性看護師を対象とした。同研究では2019年までの30年以上にわたり、生殖特性、行動因子および健康状態に関して2年ごとに郵送または電子アンケート調査が行われている。 本検討では、心血管疾患またはがんの診断歴のある女性、子宮内膜症または子宮筋腫の診断前に子宮摘出術を受けた女性、子宮内膜症あるいは子宮筋腫を腹腔鏡検査あるいは超音波検査/子宮摘出で確認されたことがないと報告した女性は除外し、計11万91例を解析対象とした。 主要アウトカムは、2年ごとのアンケートで報告された腹腔鏡検査で確認された子宮内膜症、または超音波検査や子宮摘出で確認された子宮筋腫別の全死因死亡および死因別早期死亡で、Cox比例ハザードモデルによりハザード比(HR)を推定した。70歳未満の死亡を早期死亡と定義した。子宮内膜症や子宮筋腫は、70歳未満の早期死亡と関連 299万4,354人年の追跡調査(1人当たり27.2年)において、早期死亡は4,356例認められ、そのうち1,459例ががん、304例が心血管疾患、90例が呼吸器疾患によるものであった。 腹腔鏡検査で確認された子宮内膜症を有する女性と有していない女性における全死因による早期死亡の粗発生率は、それぞれ1,000人年当たり2.01および1.40であった。年齢補正モデルを用いた場合、腹腔鏡検査で確認された子宮内膜症は早期死亡と関連していた(HR:1.19、95%信頼区間[CI]:1.09~1.30)。行動因子を含む潜在的な交絡因子で補正した年齢調整モデルを用いた場合は、さらに関連が強まった(1.31、1.20~1.44)。 死因別死亡の解析の結果、腹腔鏡検査で確認された子宮内膜症は主に、老衰および原因不明の疾患(HR:1.80、95%CI:1.19~2.73)、非がん性呼吸器疾患(1.95、1.11~3.41)、神経系および感覚器官の疾患(2.50、1.40~4.44)、および婦人科悪性腫瘍(2.76、1.79~4.26)による死亡リスクが高かった。 超音波検査または子宮摘出術で確認された子宮筋腫は、全死因早期死亡とは関連していなかったが(HR:1.03、95%CI:0.95~1.11)、婦人科悪性腫瘍による早期死亡リスクの増加と関連していた(2.32、1.59~3.40)。心血管疾患および呼吸器疾患による死亡リスクは、子宮内膜症と子宮筋腫の併存状況によって異なり、子宮内膜症と子宮筋腫の両方を有している女性では全死因早期死亡リスクが増加した。

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