労働時間や労働形態が中高年のうつ病リスクに及ぼす影響を検討した研究は、比較的少ない。中国・Hangzhou Normal UniversityのYu Zhu氏らは、とくに報告の少ない中国における労働時間や労働形態とうつ病リスクとの関連を調査するため、本研究を実施した。Journal of Affective Disorders誌2025年8月1日号の報告。
本研究は、2011〜20年のChina Health and Retirement Longitudinal Survey(CHARLS)のデータを用いて検討を行った。うつ病の測定には、10項目からなるCESD-10尺度を用いた。潜在成長曲線モデル(LGCM)を用いて労働時間がうつ病リスクに及ぼす影響を分析し、マルチレベル一般化推定方程式を用いて労働形態(職種および雇用形態を含む)とうつ病リスクとの関連を調査した。
主な結果は以下のとおり。
・対象は、45歳以上の中国人3,045人。
・女性労働者の平均うつ病スコアは、男性よりも高かった(9.6 vs.7.1、p<0.001)。
・LGCMでは、初期の労働時間やその変化は、うつ病レベルの変化に有意な影響を及ぼさないことが示唆された。
・職種別では、非農業労働者は農業労働者よりもうつ病レベルが低かった(β:−0.92[−1.14〜−0.70])。
・雇用形態別では、自営業者は雇用労働者よりもうつ病レベルが高かった(β:0.59[0.38〜0.81])。
・労働時間や労働形態がうつ病リスクに及ぼす影響には、男女間で差は認められなかった。
著者らは「中国人の中高年において、労働時間がうつ病リスクと有意に関連しているかどうかは明らかでないが、労働形態の違いは、うつ病リスクに影響を及ぼすことが示唆された。このことから、政府は女性、農業労働者、自営業者のメンタルヘルスにより注意を払うべきである」と結論付けている。
(鷹野 敦夫)