機械換気を受ける集中治療室(ICU)入室患者において、デクスメデトミジンまたはクロニジンをベースとした鎮静はプロポフォールをベースとした鎮静と比較して、抜管までの時間の短縮に関して優越性は示されなかった。英国・エディンバラ大学のTimothy S. Walsh氏らA2B Trial Investigatorsが行った無作為化試験の結果で報告された。α2アドレナリン受容体作動薬をベースとした鎮静が、プロポフォールをベースとした鎮静(通常ケア)と比較して、抜管までの時間を短縮するかどうかは不明であった。JAMA誌オンライン版2025年5月19日号掲載の報告。
デクスメデトミジンまたはクロニジンvs.プロポフォールを評価
研究グループは、英国41のICUにて、デクスメデトミジンまたはクロニジンをベースとした鎮静が通常ケアと比較して、機械換気の時間を短縮するかについて検証するプラグマティックな非盲検無作為化試験を行った。
適格とした患者は、機械換気の開始(挿管)から48時間以内で、鎮静および鎮痛のためにプロポフォール+オピオイドの投与を受けており、48時間以上の機械換気が必要と予想されている18歳以上の成人。被験者の募集は2018年12月~2023年10月に行われ、自動ウェブベースシステムにより、デクスメデトミジンベース鎮静群、クロニジンベース鎮静群、プロポフォール鎮静群の3群に、1対1対1の割合で無作為に割り付けられた。
臨床医がより深い鎮静を要求しない限り、ベッドサイドアルゴリズムの目標は、リッチモンド興奮鎮静スケール(RASS)スコア(範囲:-5~4)-2~1として鎮静介入が行われ、デクスメデトミジン/クロニジンベース鎮静群では漸増投与が、プロポフォール鎮静群では漸減投与が支持された。その他の鎮静薬の使用は推奨されず、必要に応じてプロポフォールの補助的使用は認められたが、主として割り付けられた鎮静薬による介入が、「抜管成功」「死亡」「転院(抜管前に試験非参加のICU施設に)」「機械換気期間が28日」のいずれかに到達するまで継続された。
主要アウトカムは、無作為から抜管成功までの時間であった。副次アウトカムは、死亡率、鎮静の質、せん妄発生率および心血管系の有害事象などであった。
挿管から無作為化までの時間中央値は21.0(四分位範囲:13.2~31.3)時間。また、最終フォローアップは2023年12月10日であった。
無作為化から抜管成功までの時間に関して有意差は示されず
解析集団に組み入れられた1,404例(デクスメデトミジン群457例、クロニジン群476例、プロポフォール群471例)(平均年齢59.2[SD 14.9]歳、男性901例[64%]、平均Acute Physiology and Chronic Health Evaluation[APACHE]IIスコア20.3[SD 8.2])において、抜管成功までの時間に関する部分分布ハザード比(HR)は、デクスメデトミジン群vs.プロポフォール群では1.09(95%信頼区間[CI]:0.96~1.25、p=0.20)、クロニジン群vs.プロポフォール群では1.05(0.95~1.17、p=0.34)であった。
無作為化から抜管成功までの時間中央値は、デクスメデトミジン群136時間(95%CI:117~150)、クロニジン群146時間(124~168)、プロポフォール群162時間(136~170)であった。
事前に規定されたサブグループ解析において、年齢、敗血症の有無、Sequential Organ Failure Assessment(SOFA)スコア、せん妄リスクスコアとの相互作用は認められなかった。
副次アウトカムでは、興奮の発生率がプロポフォール群と比べて、デクスメデトミジン群(リスク比[RR]:1.54、95%CI:1.21~1.97)、クロニジン群(1.55、1.22~1.97)ともに高率であった。また、重度徐脈(心拍<50/分)の発生率が、プロポフォール群と比べて、デクスメデトミジン群(RR:1.62、95%CI:1.36~1.93)、クロニジン群(1.58、1.33~1.88)ともに高率であった。死亡率は、プロポフォール群と比べて、デクスメデトミジン群(HR:0.98、95%CI:0.77~1.24)、クロニジン群(1.04、0.82~1.31)ともに同程度であった。
(ケアネット)