1次治療を受けるびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)患者の予後予測に、治療終了時におけるPhasED-seq(phased variant enrichment and detection sequencing)を用いた循環腫瘍DNAによる測定可能残存病変(ctDNA-MRD)検出が有用であることが、全国規模の前向き多施設共同研究で示された。オランダ・Amsterdam UMC Location Vrije UniversiteitのSteven Wang氏が米国臨床腫瘍学会年次総会(2025 ASCO Annual Meeting)で発表した。
本研究では、オランダとベルギーの50施設を超える医療機関で1次治療を受けるDLBCL患者の前向きリアルワールドコホートにおいてctDNA-MRDを評価した。患者は根治目的の1次治療(R-CHOPまたはDA-EPOCH-R)を受け、無増悪生存期間(PFS)および全生存期間(OS)におけるMRDの有無の予後予測的意義を評価した。フェーズドバリアントはベースラインのサンプル(FFPE検体または治療前の血漿サンプル)から同定し、ctDNA-MRD検出には治療終了時の血漿サンプルを用いた。
主な結果は以下のとおり。
・登録された172例のうち評価可能な患者は163例で、うち160例(98%)でフェーズドバリアントの同定に成功した。年齢中央値は67歳(範囲:18~88歳)、男性が64%であった。DLBCLが90%、高悪性度B細胞リンパ腫/変異型低悪性度非ホジキンリンパ腫が9%、原発性縦隔大細胞型B細胞リンパ腫/血管内大細胞型B細胞リンパ腫が2%であった。90%がR-CHOP療法を受け、免疫化学療法の6サイクルを完了した。
・治療終了時のctDNA-MRD陽性は、PFS(ハザード比[HR]:11.03、95%信頼区間[CI]:6.27~19.40、p<0.0001)およびOS(HR:7.38、95%CI:3.72~14.62、p<0.0001)の予後不良を予測した。
・Ann Arborステージが進行期もしくはIPIスコアが高い患者は、治療終了時にctDNA-MRD陽性となる可能性が高かった。
・標準的な予測因子であるIPIスコアと治療終了時のPET-CTとの比較において、IPIスコア(HR:1.61、95%CI:0.93~2.79、p=0.086)、PET-CT(HR:5.31、95%CI:2.87~9.82、p<0.0001)に比べ、ctDNA-MRD(HR:11.03、95%CI:6.27~19.40、p<0.0001)が最もPFSの予後を予測した。
・治療終了時にPETで完全代謝寛解(CMR)を達成していない患者における3年PFSは、ctDNA-MRD陰性で64%、陽性で4%であった。CMRを達成した患者の3年PFSは、ctDNA-MRD陰性で89%、陽性で36%で、再発の大部分が1次治療後1年以内であった。
・治療終了時のctDNA-MRDと1次治療後の再発時期との相関関係をみたところ、1年以内に再発した患者の80%はctDNA-MRDが陽性であるのに対し、1年を超えて再発した患者のうち陽性は22%だった。
Wang氏は「これらの結果は1次治療中のDLBCL患者におけるctDNA-MRDの予後予測の価値を明らかにし、ctDNA-MRDがPET-CTを超える残存病変のエビデンスを提供することが示された」とし、「本研究は1次治療中のDLBCL患者における奏効評価の標準的な構成要素として、PhasED-seqによるctDNA-MRDの統合を支持するもの」と結論した。
(ケアネット 金沢 浩子)