高齢者の体重増減、何kg以上が死亡リスクに?

提供元:ケアネット

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公開日:2025/10/29

 

 高齢者において1年間で2kg以上の体重減少または3kg以上の体重増加は、要介護状態の発生および全死因死亡のリスク増加と有意に関連することが、静岡社会健康医学大学院大学の田原 康玄氏らによるしずおか研究(静岡多目的コホート研究事業)で明らかになった。結果は、Journal of the American Medical Directors Association誌2025年10月17日号に発表された。

 本研究は、静岡県の健康保険および介護保険データを用いた観察研究で、2年連続で健康診断を受けた65~90歳の日本人高齢者11万7,927例を対象とした。研究チームは、1年間の体重変化と要介護状態の発生および全死因死亡との関連を調査した。ベースラインの臨床特性と1年間の体重変化は健康診断データから、要介護状態の発生と全死因死亡は保険データから取得した。追跡期間の平均は、要介護状態の発生について7.3年、全死因死亡について8.0年であった。

 主な結果は以下のとおり。

・追跡期間中、要介護状態の発生は2万7,719例、全死因死亡は1万7,002例記録された。
・解析の結果、1年間の体重変化と両アウトカムにはU字型の関連が観察され、2kg以上の体重減少、または3kg以上の体重増加が有意なリスク増加と関連していた。この関連性は、若年群(75歳未満)と高齢群の両方で一貫しており、ベースラインのBMIに関わらず認められた。さらに、低体重(BMI<19kg/m2)、肥満(BMI≧30kg/m2)、体重減少(2kg以上)、体重増加(3kg以上)を同じモデルに含めた場合、これらの因子はいずれも両アウトカムと独立して関連していた。

 研究者らは、「高齢者において1年間で2kg以上の体重減少または3kg以上の体重増加が、要介護状態の発生および全死因死亡と有意に関連することを明らかにした。この結果は、高齢者の健康管理において、たとえ小さくても、意図しない体重変化に注意を払うことの重要性を示唆している。体重変化は健康状態の変化を反映しており、早期介入の契機となる可能性がある。本研究は、高齢者の健康維持における体重管理の重要性を裏付けるエビデンスを提供しており、臨床現場での高齢者の健康評価において体重変化のモニタリングが有用である可能性を示している」とした。

(ケアネット 杉崎 真名)