切除不能または転移のあるHER2陽性胃がんに対する標準的な1次治療は、トラスツズマブ+化学療法の併用である。最近のKEYNOTE-811試験の結果に基づき、CPS 1以上であればペムブロリズマブ併用も推奨される。その後の2次治療の標準治療はラムシルマブ+パクリタキセルまたはペムブロリズマブだが、ペムブロリズマブは今後1次治療で使われることが見込まれ、ラムシルマブ+パクリタキセルが実質的な標準治療の位置付けとなる。
DESTINY-Gastric04試験は、現在は切除不能HER2陽性胃がんの3次治療以降に承認されているADC・トラスツズマブ デルクステカン(T-DXd)を、2次治療としてラムシルマブ+パクリタキセル併用療法と直接比較した試験である。米国臨床腫瘍学会年次総会(2025 ASCO Annual Meeting)で国立がん研究センター東病院の設楽 紘平氏が本試験の結果を発表し、この内容はNEJM誌オンライン版2025年5月31日号に同時掲載された。
・試験デザイン:国際共同無作為化第III相試験
・対象:前治療歴のあるHER2陽性の切除不能胃がんまたは胃食道接合部腺がん
・試験群:T-DXd 6.4mg/kgを3週ごと(T-DXd群)
・対照群:ラムシルマブ+パクリタキセル(RAM+PTX群)
・評価項目:
[主要評価項目]全生存期間(OS)
[副次評価項目]無増悪生存期間(PFS)、奏効率(ORR)、病勢コントロール率(DCR)、奏効期間(DOR)、安全性
主な結果は以下のとおり。
・494例がT-DXd群に246例、RAM+PTX群に248例に1対1に割り付けられた。中間解析のデータカットオフ日(2024年10月24日)時点で、T-DXd群18.9%、RAM+PTX群の18.5%が治療を継続していた。アジアからの参加者は23%だった。
・OS中央値はT-DXd群で14.7ヵ月(95%信頼区間[CI]:12.1~16.6)、RAM+PTX群で11.4ヵ月(95%CI:9.9~15.5)、ハザード比(HR)は0.70(95%CI:0.55~0.90)でT-DXd群が有意に延長した。設定されたいずれのサブグループでも同様の傾向だった。
・PFS中央値はT-DXd群で6.7ヵ月(95%CI:5.6~7.1)、RAM+PTX群で5.6ヵ月(95%CI:4.9~5.8)、HRは0.74(95%CI:0.59~0.92)で、こちらも有意な延長を示した。ORRはT-DXd群44.3%対RAM+PTX群29.1%で、こちらも有意な結果が示された。
・治療期間の中央値は、T-DXd群5.4ヵ月、RAM+PTX群で4.6ヵ月だった。薬剤関連有害事象の発現率はT-DXd群で93.0%、RAM+PTX群で91.4%、うちGrade3以上は50.0%と54.1%だった。
・Grade3以上でよくみられたのは、T-DXd群では好中球減少症(28.7%)と貧血(13.9%)、RAM+PTX群では好中球減少症(35.6%)、貧血(13.7%)、白血球減少症(12.4%)であった。薬剤関連間質性肺疾患または肺臓炎はT-DXd群の13.9%、RAM+PTX群の1.3%に認められた。
設楽氏は「HER2陽性胃がんにおいて、T-DXdはラムシルマブとパクリタキセルの併用療法と比較してOSを有意に延長し、PFS、ORR、DORにも改善が見られた。有害事象は両群で多く認められたが、既知の重大なリスクであるT-DXd投与に伴う間質性肺疾患または肺臓炎は低レベルであった。本試験の結果はT-DXdが切除不能HER2陽性胃がんの2次治療の標準治療となることを示すものだ」とした。
現地で発表を聴講した相澤病院・がん集学治療センターの中村 将人氏は「HER2陽性胃がんの2次治療が変わる、まさにプラクティスチェンジとなる発表だった。OSのHRをはじめ、PFS、ORRとも申し分のないデータだ。T-DXdはすでに実臨床で使われており、有害事象も既知の範囲であり、今後の承認が見込まれる」とコメントした。
(ケアネット 杉崎 真名)