閉塞性睡眠時無呼吸症候群、就寝前スルチアムが有望/Lancet

提供元:ケアネット

印刷ボタン

公開日:2025/10/29

 

 閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSA)は有病率が非常に高いが、承認された薬物治療の選択肢はいまだ確立されていない。ドイツ・ケルン大学のWinfried Randerath氏らFLOW study investigatorsは、炭酸脱水酵素阻害薬スルチアムについて有効性と安全性を評価した第II相の二重盲検無作為化プラセボ対照用量設定試験「FLOW試験」を実施。スルチアムの1日1回就寝前経口投与は、OSAの重症度を用量依存性に軽減するとともに、夜間低酸素や日中の過度の眠気などの改善をもたらし、有害事象の多くは軽度または中等度であることを示した。研究の成果は、Lancet誌2025年10月25日号で発表された。

3種の用量とプラセボを比較

 FLOW試験は欧州5ヵ国の28施設で実施され(Desitin Arzneimittelの助成を受けた)、2021年12月~2023年4月に参加者のスクリーニングを行った。

 年齢18~75歳、未治療の中等症または重症のOSAと診断され、無呼吸低呼吸指数(AHI)3a(酸素飽和度の3%以上の低下を伴う低呼吸または覚醒[あるいはこれら双方])の発生が15~50回/時で、BMI値が18.5~35の患者298例(最大の解析対象集団[FAS]:平均年齢56.1歳[SD 10.5]、男性220例[74%]、平均BMI値29.1)を登録した。

 被験者を、プラセボ群(75例)、スルチアム100mg群(74例)、同200mg群(74例)、同300mg群(75例)に無作為に割り付けた。1~3週目までに各群の目標値に達するように用量を漸増し、目標値到達後は12週間経口投与(1日1回、就寝前の1時間以内)した。

 有効性の主要アウトカムは、AHI3aのベースラインから15週目までの相対的変化量とした。

AHI4、ODI、ESS総スコアも良好

 FASにおける15週の時点でのプラセボ群と比較したAHI3aの補正後平均変化量は、スルチアム100mg群が-16.4%(95%信頼区間:-31.3~-1.4、p=0.032)、同200mg群が-30.2%(-45.4~-15.1、p<0.0001)、同300mg群が-34.6%(-49.1~-20.0、p<0.0001)といずれの群も有意に優れ、有効性には用量依存性を認めた。

 ベースラインから15週までのAHI4(酸素飽和度の4%以上の低下を伴う低呼吸)、酸素飽和度低下指数(ODI)、平均酸素飽和度の変化量は、いずれもプラセボ群に比しスルチアム200mg群(それぞれp=0.0006、p=0.0008、p<0.0001)および同300mg群(p<0.0001、p<0.0001、p<0.0001)で有意に改善した。

 ベースラインで主観的な日中の過度の眠気(Epworth sleepiness scale[ESS]総スコア≧11点)を有していた患者(120例)では、15週時のESS総スコアがプラセボ群に比しスルチアム200mg群で有意に改善した(p=0.031)。また、総覚醒指数で評価した睡眠の分断化も、プラセボ群に比べ同200群(p=0.0002)および同300mg群(p<0.0001)で有意に良好だった。

知覚異常が用量依存性に発現

 試験期間中に発現した有害事象の頻度は、プラセボ群で61%(46/75例)、スルチアム100mg群で73%(54/74例)、同200mg群で84%(62/74例)、同300mg群で91%(68/75例)であり、用量依存的に増加した。いずれかの群において10%超の患者で発現した有害事象として、知覚異常(プラセボ群9%、スルチアム100mg群22%、同200mg群43%、同300mg群57%)、頭痛(8%、7%、16%、15%)、COVID-19(4%、4%、8%、13%)、上咽頭炎(12%、4%、9%、9%)を認めた。全体で知覚異常により15例(5%)が試験薬の投与中止に至ったが、118件の知覚異常イベントのうち98件(83%)は1回のみまたは散発的で、99件(84%)は軽度だった。

 有害事象の多くは軽度または中等度であった。重篤な有害事象は11例(プラセボ群2例[3%]、スルチアム100mg群4例[5%]、同200mg群1例[1%]、同300mg群4例[5%])に発現し、このうち3例(100mg群で好中球減少1例および急性骨髄性白血病1例、200mg群で三叉神経障害1例)が治療関連の可能性があると判定された。

 著者は、「睡眠中の気道虚脱には複数の病態生理学的機序が関与している可能性があり、OSAは臨床的な表現型の幅が広いため、病態に応じて個別化された治療戦略が求められる」「本研究は、標準治療である持続陽圧呼吸療法(CPAP)が施行できない患者では、スルチアムによる薬物療法が有望な治療選択肢となる可能性を示唆する」「ベネフィット・リスク比は200mg群で最も良好であった。今後、200mgで十分にコントロールできない場合に、300mgを考慮する研究を続ける必要があるだろう」としている。

(医学ライター 菅野 守)