抗精神病薬維持療法は、初回エピソード精神疾患の再発予防に有効であるが、抗精神病薬使用患者の多くは、寛解後に副作用、長期的な健康上の懸念、スティグマ、自立への希望から、抗精神病薬の減量または中止を望むことは少なくない。現在のガイドラインでは、抗精神病薬の漸減が推奨されているが、とくに初発エピソードから寛解した患者における最適な漸減スピードは依然として不明である。また、抗精神病薬のD2受容体親和性によっても再発リスクに影響を及ぼす可能性がある。オランダ・University of GroningenのShiral S. Gangadin氏らは、初回エピソード精神疾患患者における寛解後の抗精神病薬減量と再発リスクとの関係およびD2受容体親和性の影響を評価した。World Psychiatry誌2025年6月号の報告。
対象は、抗精神病薬を漸減した精神疾患患者227例。初回エピソードから寛解後18ヵ月以内の再発リスクおよび再発までの期間を調査した。再発は、陽性陰性症状評価尺度(PANSS)、精神疾患による入院、または担当精神科医の明確な臨床判断に基づくコンセンサス基準を用いて二分的に定義した。減量スピードは、減量開始時と終了時の抗精神病薬投与量(1日当たりのオランザピン換算量)を日数で割って算出した。抗精神病薬のD2親和性に基づく分類は、パーシャルアゴニスト薬、低親和性薬、高親和性薬とした。年齢、性別、大麻使用、初回エピソードの症状持続期間、D2受容体親和性による薬剤分類の臨床的および社会人口統計学的特性の差について治療確率逆重み付けで調整した後、ロジスティック回帰分析およびCox比例ハザード回帰分析を行った。
主な内容は以下のとおり。
・パーシャルアゴニスト薬使用患者54例、低親和性薬使用患者116例、高親和性薬使用患者57例。
・フォローアップ期間中、減量後に再発した患者は104例(45.8%)。
・平均減量スピードは75日間でオランザピン換算10mgであり、平均減量期間は124日(範囲:6〜334日)であった。
・ロジスティック回帰分析では、減量スピードは再発リスクを予測しないことが示された(z=0.989、p=0.323)。
・高親和性薬使用患者と比較し、低親和性薬使用患者(z=−2.104、オッズ比[OR]=0.48、p=0.035)およびパーシャルアゴニスト使用患者(z=−2.278、OR=0.44、p=0.023)は再発リスクが低かった。
・減量終了から再発までの期間は、高親和性薬使用患者(平均280日)が、低親和性薬使用患者(平均351日、p=0.027)およびパーシャルアゴニスト使用患者(平均357日、p=0.040)よりも短かった。
著者らは「寛解した初回エピソード精神疾患患者における再発予測において、抗精神病薬のD2受容体親和性は、減少スピードよりも重要であった。D2受容体への親和性の高い薬剤の使用は、他の抗精神病薬と比較し、再発リスクが約2倍高かった。減量後の再発リスクの高さは、抗精神病薬を初めて選択する際、考慮すべき因子であると考えられる。初回エピソード精神疾患から寛解後、強力なD2受容体親和性を有する薬剤を使用している患者では、減量期間中に追加のモニタリングが必要であろう」としている。
(鷹野 敦夫)