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准教授 長谷部光泉 先生「すべては病気という敵と闘うために 医師としての強い気持ちを育みたい」

1969年9月14日生まれ。博士(医学)、博士(工学)。1994年3月慶應義塾大学医学部医学科卒業後、同大学病院にて研修94年4月同大学大学院医学研究科博士課程。96年11月ハーバード大学医学部放射線科心臓血管造影およびIVR部門留学(~99年)。98年4月同大学医学部助手。04年4月同大学理工学部機械工学科・鈴木哲也研究室共同研究員および医療班チームリーダー。05年4月国家公務員共済組合連合会立川病院放射線科医長。08年4月東邦大学医療センター佐倉病院放射線科講師。09年8月同病院放射線科准教授。日本血管内治療学会評議員。日本IVR学会代議員、他。10年日本学術振興会 榊奨励賞受賞、第96回北米放射線学会Certificate of Merit受賞、他多数。低侵襲治療としてIVRカテーテル治療に大きな魅力を感じた放射線科領域を大別すると、X線検査、CT、MRI、核医学検査などに代表される放射線診断学とがん治療に代表される放射線治療学があります。CT、MRIなどが登場する前から存在した「血管造影法」は、私が専門とする放射線診断学の根幹です。血管のない臓器は存在しないため、古くから重要な診断法として発展してきました。しかしながら、CT、MRIなどの医療機器の技術革新によって血管造影の役割も変わってきました。皮膚に局所麻酔をしてほんの2㎜だけの傷をつけるだけで血管内に「カテーテル」と呼ばれる管を挿入し、臓器に直接アプローチできるので、たとえば循環器領域であれば心臓にアプローチして狭心症や心筋梗塞を治す。消化器領域では、肝臓がんであれば肝動脈塞栓術のように大腿動脈から患部のすぐそばまで細いカテーテルを挿入して抗がん剤を流して腫瘍を兵糧攻めにする。脳神経領域では、急性期の脳梗塞の血栓溶解療法や動脈瘤を詰めることもできます。また、下肢の動脈硬化の場合、風船付きカテーテルを挿入し直接狭くなった血管を広げ、歩けなかった患者さんが歩いて帰えれるようになる。CTやエコー、MRIなどの画像支援の下に血管内だけでなく臓器を直接穿刺して治療する。画像を使った血管内治療および血管以外の臓器などに対する、画像支援下の低侵襲治療、これが私の専門領域です。医学の世界に入った当初から、IVR(インターベンショナルラジオロジー)に興味があり魅力を感じていました。これからの治療は、身体に大きくメスを入れて手術するだけではなく、患者さんに優しい治療でありながら効果的な治療が求められています。カテーテルの技術にせよ、医療器具にせよ、どんどん進歩してくるであろうと考えました。その進歩と共に、カテーテル治療が今後の医療現場において主流になってくるのではないかとも考えていました。それは現実になってきていると確信しています。IVR治療で劇的に変わる患者さんのQOLIVRでできることは血管を開く、詰める、溶かす、生検のための組織を切除して取り出す、直接腫瘍を穿刺して治療する、簡単にいうとこれらが主な分野です。具体的には、動脈硬化で詰まった血管を開き、血栓で詰まった血管を溶かすことができる。体を大きく切開することなく組織を取り出し診断を確定する、ドレナージといって体内の深い部分の膿をCT・エコー・MRIで見ながら吸い取る。詰めるは塞栓術といって、肝臓がん治療の他、体の中で緊急出血した場合、血圧が低下し、身体を大きく開くことはできないので、救急治療として金属のコイルを詰めて止血し、一命を救うこともできます。今までは大きく開腹、開胸しなくてはならなかった手術が、IVR治療によって足の付け根や腕の部分を局所麻酔で2から3mm切開し、動脈や静脈にカテーテルを挿入して治すことができるようになっています。これにより患者さんの入院日数は劇的に短縮されました。局所麻酔のため危険性も減りますし、入院期間も短くなり、痛みが少ないなど多くのメリットがあります。心臓疾患の場合、以前ならば最低でも1から3ヵ月の入院を余儀なくされましたが、IVR治療では、長くて10日、われわれは3日から1週間入院を目安にしています。ただし、入院期間が短縮されたからといって、簡単な病気だったと勘違いはしないでほしい。血管内で手術は行われていますから、それなりのリスクがあることも十分知っておいてほしいと思います。患者さんにとって簡単そうに思えるIVR治療ですが、医師としては熟練した手技と全身疾患に対して知識や経験がないとできない分野です。実際に治療を行えるようになるまでには、綿密なトレーニングが必要です。東邦大学では後期研修医あるいは大学院生の1年目から血管内治療のトレーニングを本格的に重ねてもらいます。われわれの科では、画像診断もやりながら低侵襲の治療をする、研究にも取り組み積極的に国内外の学会で発表するという3本の柱を忘れることなく、必死で若手の医師が毎日を過ごしています。臨床医としての経験を活かした研究開発私がこの世界に入った時にはすでに、血管内治療のデバイスであるステントやバルーンの8割が輸入品でした。許認可の問題もあって、欧米の製品を平均2年遅れで買わなければいけない現状があります。その上、必ずしも日本人に適しているデバイスではありません。日本人にとって使いにくくて直してもらうにしても、製品ができあがってくるまでに1年、2年、3年かかる場合もあります。目の前の患者さんを治せるツールがあるのに、サイズが合わないだけで使えないという現実にジレンマを感じていました。私が慶應の研修医だった当時、恩師で、放射線医の第一人者であり、日本のIVRの父ともいえる平松京一教授(当時)の計らいで、医師になってから2年半後にハーバード大学で研鑚(けんさん)を積むようにと言われました。そこで約3年半、留学することになってしまいました。研修医が終わったばかりで、何の実力もないし、研究歴もなかった。渡米前には、多くの上司にも心配されました。ハーバード大学で最初の数ヵ月はお客さん扱いでしたし、もう帰国しようかとどまろうかと考えながら細々と実験を始めました。その実験データを基に数ヵ月後に書きあげたプロトコールが運良く認められて潤沢な公的研究費が与えられて、それをきっかけに状況が変わりました。そこのチームのチーフに任命され、血管の中の遺伝子治療研究が始まりました。詰まった心臓血管の中にステント(金属のメッシュ状の筒)を入れると、再狭窄が起こります。ステントは血流を劇的に改善しますが、血管を無理に開くため血管の内皮細胞や血管平滑筋細胞に傷がつきます。血管には破れると修復する作用があって、傷を修復する過程で、金属の周囲に血栓が付き、その刺激が過剰平滑筋細胞の増殖を促し、血管がまた詰まってしまうのです。それを治すために特殊なバルーンカテーテルというのを用いてそこから薬剤を出す。当時は、ステント留置後、20%から40%は半年後には詰まるといわれていました。確かに、血管内の遺伝子治療は実験的に成功し、米国IVR学会やNIHなどで受賞しました。けれども、やはり金属ステントそのものの留置が「諸刃の剣」だということに気づき、帰国後、材料工学の研究を独学で始めました。体になじみにくい金属が、長期的によい成績をだせるわけがないと考えたからです。しかしながら、金属の特性としてしなやかさや耐腐食性などを上回る素材はなかなかありません。それならば、既存のものにコーティングを施したらどうか、と考えました。ただし、コーティングするにしても体に害を及ぼすものでは当然使えません。行き着いたのがダイヤモンド系のコーティングでした。ダイヤモンドは、「物質の王様」といわれるだけあって、非常につるつるしているばかりではなく、耐摩耗性という特性があり、さらに炭素は身体を構成する成分の一つなので、人体に悪影響を及ぼしません。現在、主流となっている薬剤溶出性ステントから出てくる薬剤は薬効が強く正常の血管内皮細胞にダメージを与えるものが主流ですが、ダイヤモンドというのは化学的に安定しているばかりでなく、細胞に毒性を与えない特性を持っています。われわれは、さらにダイヤモンド系コーティングにフッ素を混在させることによって、血液の付着も防げることを初めて発見しました。つまり、フッ素を添加したDLC(ダイヤモンド・ライク・カーボン)というコーティングは、血液をはじき付着を防ぐので、血栓ができにくい。さらに、血管内に残るのは炭素を主流とするダイヤモンド系素材なので、身体に悪いものではありません。これらの研究開発には、医学の知識だけではなく工学知識の力が不可欠でした。そこで、臨床医の立場で工学との通訳をしなければいけないと痛感しました。なぜならば、工学の思考と医学の研究者の思考回路はまったく違うからです。ですが、工学者も研究の応用の幅を広げたいと考えているし、医学者もテクノロジーを利用する考えが必要です。互いの歩み寄りを円滑にするために、私は医学部の栗林幸夫教授のご指導の下、医学博士を取得し、その後、工学部の鈴木哲也教授の下で工学博士を取得しました。これからも研究開発において、医工連携のための通訳になれたらと思いますし、私に続く若い医師や研究者を育成することに力を注いでいます。ゼロからのスタートに惹かれ挑戦慶應からこちらへ来たのは、ここはほぼゼロからということに興味を持ちました。現在の教室の寺田一志教授の誘いもあり、今までやってきたことをここで一度リセットして挑戦してみるのもいいだろうと考えました。慶應もいい環境ではありましたが、東邦大学の伝統と自由な気風、研究に対しても「自由にやれ」というムードがありました。特に、東邦佐倉病院では、他の臨床医の方々も、慶應から来た新参者にすごく親切にしてくれて、雰囲気もよかったし、全体的にやる気の気運が高まっている瞬間でした。今では県内でもトップクラスのIVR症例数を誇る施設になりつつありますが、こちらに来た当時はIVR治療もあまり積極的に行われていませんでした。それでも、循環器センターや消化器センターなど各診療科の多くの先生のご協力があって、現在にいたっています。これは、東邦大学の気風とセンター単位で行われるチーム医療にうまく融合した結果だと思います。前病院長の白井教授が臨床・研究に対する基礎を構築し、現在の田上病院長を中心にした執行部の積極的な支援の賜物だと思います。当院循環器センターの専門外来である「血管内治療・IVR外来」は、循環器内科医、心臓血管外科医、臨床検査医、放射線科医、心臓リハビリ医、形成外科医、糖尿病代謝内科医など本当の意味でのチーム医療ができるように構築してきました。カンファレンスの意思が医師同士の間で一貫しているというのは、患者さんにとっても安心できることだと思います。臨床としては主に肝臓がんや救急出血や動脈瘤などの塞栓術と下肢の閉塞性動脈硬化症(ASO: arteriosclerosis obliterans)に伴い、詰まってしまった血管の血管形成術がメインです。糖尿病や動脈硬化で足が壊死してしまうのを治療するのがメインです。私にとって医療器具の研究はライフワークですが、実は臨床が9割。この臨床の経験があるからこそ研究のテーマが明確に打ち出せるのだと思います。これからは教育にも力を注ぐ私がこれから望むものは、若い人の教育です。まだ私も若いですけど……(笑)。若い人を教育するということは、自分が教育されることでもあります。教えるというのは、教えられることでもあります。先入観のない眼で若い人と日本から何かを発信したい。座右の銘は「感謝して今日もニコニコ働きましょう」。決して一人で仕事をしているのではなく、周りのスタッフ、上司、親、自分の周りの人すべてが笑顔でいられる医療をやりたい。そのために臨床はもちろん、研究や医療器具の開発もしたい。若い医師には、どんどん広い世界を見て、自分のアイデンティティ、日本人であるとか医師になるという明確な自覚を持ってほしい。勇気を持って新しいことにもチャレンジしてほしい。それらを一緒にやっていきたい。だからうちの科では工学部との交流や留学なども積極的にプログラミングしています。若いうちから何でも経験させ、国際学会発表も全員が入局2年以内に経験するように指導しています。敵は病気なので、最高の技術、最高の人間性、患者さんを治したいという気持ちを強く身につけてほしいと考えています。是非、そんなピュアな高い志を持った若い先生と学閥や分野を越えて一緒に働きたいという希望を持っています。質問と回答を公開中!

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准教授 長谷部光泉 先生の答え

研究費の調達方法記事拝見しました。「アメリカからの帰国後、材料工学の研究を独学で始めました」とありますが、研究にかかる費用はどのように捻出したのでしょうか?研究費の調達方法に興味を持っております。是非ご教示ください。これは非常に苦労しました。私は医師になってから帰国するまでの間、米国の教育の方が長くなっていたため、最初は日本での資金調達の勝手がわからず、四苦八苦しました。最初は、少額の市や財団の公的資金を片っ端から応募し少額の研究費でなんとか研究をはじめました。少額の研究費を有効に使い、なんとか国内外の学会で研究を発表し研究をつなぎました。正直なところ、自分の給料をつぎ込み、研究を行っていた苦しい時期もかなりありました。帰国後の研究では、2000年以降、国際学会で賞をとったりすることで、ある程度の注目が集まった段階で、国内施設での共同研究を模索し、その分担研究者となることで資金を調達し、研究を続けていた時期もあります。その後は、慶應大学理工学部(鈴木哲也教授)や東京大学医学部(髙橋孝喜教授)、横浜市立大学(上條亜紀准教授)などとの共同研究を軌道にのせ、日本での医学博士、工学博士を取得し、論文発表を行い始めると、経済産業省(NEDO)の大型プロジェクトや文科省科研費、東邦学内でのプロジェクト研究費、医学部推進研究費などを頂くことができ、ようやく安定的な研究ができるようになりました。しかしこれはごく最近のことで、研究費の調達には常に四苦八苦しているというのが現状でしょうか・・(笑)。やはり日本での資金獲得は、粘り強く自分の研究方向に信念をもって結果をだし、その結果を基に、公的資金を獲得していく方法が一番だとは思います。あるいは、多くの研究費をもった研究室に所属するのも一つの方法でしょう。良い研究の仲間や指導していただける先輩や上司の先生、そして後輩との出会いと研究への熱い思いが研究費の獲得につながることはいうまでもありません。臨床経験は必要?私は医学部生です。実は大学に入るときに、工学部と迷いました。私の将来の希望としては、患者さんを治療するというよりは、より良い治療を行うための機械や道具を開発したいと思っています。なので、この先は研究重視で、と思っていました。しかし、長谷部准教授の記事をみると、臨床経験が大変重要だとあります。やはりそうなのでしょうか?また、工学博士も取得されていますが、そのときも臨床をやりながら取得されたのでしょうか?拙い質問で申し訳ありませんが、ご回答宜しくお願いします。医学部の学生さんでこのような考え方を持っていただける人は非常に貴重と言わざるを得ません。医療機器やデバイスの開発には、現場でのニーズが最も重要です。現場でニーズのないものを開発しても患者様には意味がないからです。そして、工学部の持っているシーズを的確に把握し、それをどのようにものにしていくのかというトレーニングが必要です。ですから、私は、やはりこのような境界領域で活躍するためには臨床経験は必須だと思っています。もし工学部の学生さんであれば、早い段階で医師と接し、現場を垣間見ることができるような環境が必要です。なかなか日本にはまだこういった教育システムはないのですが、今後は医学部学生と工学部学生がカフェテリアや学食で常にディスカッションできるような教育システムが望まれます。もう一つのご質問ですが、工学博士を取得したときは、もちろんフルに臨床を行い、数少ない研究日を研究にあて(バイトは辞めて)、週末や日曜日、夜などに研究を行い、論文を作成しと、必死にやった記憶があります。是非、医工連携を志す医学部の学生さんがもっと増えてくるとうれしいです。また、私の研究室を見学にきていただいても大歓迎です。仕事の進め方(時間の使い方)について臨床も研究も、というと、ほとんど時間が足りないかと推察いたします。仕事の進め方や、時間の使い方で普段心がけていることや、Tips的なことがあればご教示お願いします。おっしゃる通りです。臨床も研究もやるためには、非常に時間の使い方に苦労します。実際は、臨床:研究=8:2といった配分になってしまいますが、現在は医工連携チームで仕事を分担し、それを週1回の合同ミーティングですべての研究のプレゼンを行っていただき、方向性や実験の修正などを行っています。最近は、スカイプを利用したテレビ電話ミーティングも行うこともあります。もちろん、血管内治療(IVR)の緊急症例なども夜間であろうとも積極的に行っていますので、寝る暇がないこともあり、肉体的・精神的に非常につらいことも多々あります。ただ、そういったことも、すべて患者様のためだと思うと乗り切れることもありますし、いつもサポート・理解してくれる上司の先生、後輩の先生や学生、そして家族のアドバイスによって乗り切っているのが現状です。お聞きしにくいですが、報酬について先生のように医療機器や資材の開発に携わっている先生方には敬服しております。常に疑問に思っているのですが、面と向かって聞きにくいので、この場を借りて質問させていただきます。このように研究開発に携わっているときには報酬がでるのでしょうか?場合によりけりだとは思いますが、一般的にはどうなのか、教えていただけるとありがたいです。下世話の話で恐縮ですが宜しくお願いします。現在理工学部に最低、週1回は夜から夜中、朝方までのミーティングで医工連携チームの指導を行っていますが、これは無報酬です。企業との開発を行う場合、研究費が得られる場合もありますが、これは純粋に研究のための資金で給料ではありません。私の海外のボスであった教授は、多くの会社のコンサルタントなり、副収入を得ていましたし、研究費の中には給料も含まれるのも当然というのが海外での状況ですが、日本の研究費のほとんどがそのようなものはありません。そのかわり、日本のような安定的な地位というものも存在せず、すぐにクビになることも多々あります。日本では大学や研究施設などで安定的な地位が得られることもありますが、医師が行う研究という意味では、まだまだボランティア的な要素が多分にあるのが実情かと思います。開発の体制長谷部先生のように、素材や機器の研究開発を行う場合、どんな体制がとられるのでしょうか?どんな役割の人間が何人いるのか?どんなチーム体制で実施されているのか?そのようなことを知りたいです。この分野は素人なので、まさに素人質問で申し訳ないですが。私がチームリーダとなっている医工連携グループの構成は以下の通りです。1)炭素材料やセラミックス、薄膜などの専門:慶應大学鈴木哲也研究室のメンバー教授1名、博士課程2名、修士課程3名、大学生2名2) 高分子・ポリマーなどの専門家:堀田篤准教授研究室のメンバー准教授1名、修士課程2名3) 東邦大学医学部大学院博士課程:3名(+私)4) 横浜市立大学医学部 細胞治療・輸血部:上條亜紀准教授(部長)5) 東京大学附属病院輸血部:髙橋孝喜教授、田中助教6) 東京大学附属病院脳外科:斎藤教授、大学院生博士課程1名以上がコアなメンバーとなっております。この範囲でプロジェクトの内容が完遂できないものに関しては、産業総合研究所や物質材料研究機構、海外研究施設との共同研究によってプロジェクトを推進しています。もちろん、国内外の関連企業との共同研究も必須となります。医工連携のポイントメディトウキングの記事を読みました。医工連携のための通訳が必要とありましたが、他に医工連携を成功させるために必要なポイントがあればご教示いただきたい。やはり、若い人達の教育と互いの文化の違いを認識することが重要なポイントとなります。医学部の博士課程の学生も、最初は全く別の世界に飛び込んだような感覚になってしまうので、かなり面食らってしまい、あまり積極的な参加をしてくれない時期もありました。ただ、現在では、工学部の若い人達と医学部大学院生の間でのコミュニケーションがとれるに従い、積極的なプロジェクトがいくつも進行するようになってきていますし、業績や成果がでるようになってきました。後進を育てるポイント長谷部先生のように臨床だけでなく研究開発も成功させていく人材を育てるのに必要なことはありますでしょうか?長谷部先生のように新しいものをどんどん創り出していく先生が増えることを期待します!激励のお言葉ありがとうございます。やはり医師になってからすぐの段階で、研究や研究開発に慣れておく環境作りが重要だと思います。特に研究していなくとも、違う文化との接触を毎週行っていくことで、皮膚吸収ともいえるような波及効果があるようです。若い時から、急激に頭角を現す後輩も増えてきており、それが臨床にも役に立っているようです。但し、なかなか時間が制約されますので、チームの維持には多くの努力と精力と忍耐が必要です。忍耐が一番重要でしょうか…。これはなくしたいと思う規制日本の医工連携が欧米よりも遅れをとっている理由のひとつに、「様々な規制」があると聞きました。先生のご経験の中で、この制度はいらないなーと思われるものはありますでしょうか?もしあれば(全部かも知れませんが…)是非お話いただきたい。宜しくお願いします。確かに日本の規制が厳しいのはそのとおりではあります。日本は国民皆保険の制度が確立されている状況ですので、欧米とは国の責任の度合いが違うというのも許認可申請が厳しい理由ではあるのでしょう。国には、なるべく、日本が世界に先駆けてよい製品をだせるような、一番になれるようなバックアップを望みたいです。そうでないと、現在抱えているデバイスでの輸入超過の状況は変わらず、日本国民は常に海外ででた製品の型落ちの製品を使用することになり、大きな不利益を受けることになるでしょう。しかし、現在は、PMDA(医薬品医療機器総合機構)や厚生労働省も、早期の許認可申請を目指し、体制は変化してきているように思います。病院のサポート医工連携を進める上で、病院のサポートはあるのでしょうか?もしあるのであれば、どんなサポートかご教示ください。また、こんなサポートがあれば、というものがあれば合わせてご教示お願いします。当院では、私の上司である寺田教授や院長の多大なご理解とサポートがあります。また、東邦大学では、若手研究者に限ったプロジェクト研究費や、重点的な領域に関する医学部推進研究費など、資金に関するバックアップもあることは非常に助かります。病院に工学部の学生や研究者が適宜自由に出入りし、医学部研究者や医学部大学院生と一緒に研究できるのも非常にいい環境といえます。今後は、やはり、抜本的には、どのように早い段階で医学部・工学部若い人達をミックスし、お互いの垣根を早い段階でなくす教育が一番重要と考えます。但し、その医工連携ユニットを指導できる指導者が不足しているもの現状ではないでしょうか。指導者と若手の両方の育成が急務です。医工連携における海外と日本の違い記事を拝見しました。先生は海外でのご経験も豊富ですが、医工連携における海外と日本の違いはなんでしょうか?留学した先生方からは、よく「海外の方が研究しやすいんだよね。」と聞きます。先生もそうだったのでしょうか?これは一長一短です。システムという面では、欧米にかなわない部分もあると思います。欧米だけがいいのではないと思います。日本から留学して、大きな研究室で、一つの研究に没頭しているときには、非常に研究がしやすいと感じるでしょう。但し。欧米では、やはり自由競争の社会であり、研究費がなくなれば、そのまま研究室がつぶれ、全員解散ということもよくあります。その緊迫感と各国から集まる研究者が切磋琢磨しているという点では、とくに米国での研究はやりやすいと感じるのではないでしょうか。日本の研究費が少ないわけではないと思いますし、日本人が劣っているわけでもないと感じました。ある程度の海外経験は非常に役に立ちますが、最終的には国内からの人材の流失がないように、国も対策を考えるべきだとは思います。アジアでは特に、韓国、シンガポールにおいては、すでに欧米化が研究分野では進んできていいますので、現在すでに負けている分野もあると思いますし、今後、どんどん抜かされてしまうかもしれないという驚異を持つ分野も沢山あり、我々も心して研究を進めていかねばなりません。総括大変熱心なご質問、激励のお言葉ありがとうございました。このような医工連携の分野に興味をもっていただけることは大変うれしいですし、私自身励みになります。まだまだ私自身、未熟であり、これからもっと大きな成果を上げて、少しでも患者さまの幸せに貢献できたらと思う次第です。もちろん、私が臨床でやっている血管内治療・IVRの分野においても、国産のすばらしいデバイスがあふれ、それを海外の医師や研究者が学びに来る日を夢見てがんばりたいと思います。また、この記事を読んでいただき、実臨床に即した医工連携や研究に興味を持って頂いた若い先生がいらっしゃるとしたら、是非、私にお声をかけていただき遊びにきていだけることを祈っています。今後とも、皆様のご指導をいただきたいと思っています。よろしくお願い申し上げます。この度は、このような機会をお与えくださりありがとうございました。准教授 長谷部光泉 先生「すべては病気という敵と闘うために 医師としての強い気持ちを育みたい 」

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患者さんのため、被災地の精神科医療施設の診療状況の情報入力を

3月11日(金)に発生した東日本大震災。被災地において、精神障害を持つ方は持たない方に比べ、より過酷な状況におかれている可能性があるという。その中で、NPO法人地域精神保健福祉機構・コンボ(COmmunity Mental Health & Welfare Bonding Organization)は、他団体とともに、いち早く被災地域の精神科病院および地域精神保健活動の状況を把握し共有するためのWebサイトを立ち上げ、情報を提供し始めた。Webサイトを運営する団体の一つであるNPO法人コンボ 丹羽大輔氏に、サイト立ち上げ当時と現在の状況について聞いた。-どのようにして、このWebサイト立ち上げに至ったのでしょうか?震災発生当初は、現地の情報が入りにくく、また被害が広域で何から手をつけてよいのかわからない状態でした。そこで地震の翌日3月12日に関係者が集まり、被災地の精神障害を持った方々に対し、迅速に支援できることは何か検討しました。その結果、彼らが一番必要としているのは、やはり精神科病院の状況についての最新情報だろうという結論にいたりました。ただし現地に入って調べることはできないので、現地にいる精神科病院関係者が書き込めるようなWebサイトを立ち上げ、そのサイトにアクセスすれば被災地域の精神科病院の状況が把握でき、また精神科医療機関同士で情報を共有できる仕組みを作ろうということになりました。Webサイト作成は、ACT全国ネットワーク(http://assertivecommunitytreatment.jp/)、国立精神保健研究所社会復帰研究部(http://www.ncnp.go.jp/nimh/fukki/index.html)と私たちNPO法人コンボで行い、打ち合わせの翌日3月13日には完成させました。そして、その日から現地の関係者に書き込んでもらうため、私たちのメーリングリストやTwitterを使って情報を流しました。そうしたところ、翌14日からすぐに書き込みが始まりました。現地の病院院関係者に情報が届き書き込みが始まる、という一連の流れが非常に短期間に行われたことに驚きました。 全文はこちらhttp://www.carenet.com/psychiatry/original/comhbo/ 《関連リンク》 NPO法人地域精神保健福祉機構・コンボhttp://www.comhbo.net/ 被災地の精神科病院状況リストhttp://assertivecommunitytreatment.jp/ph/編集ページhttp://j.mp/egqdru 被災地における地域精神保健福祉活動の情報http://www.comhbo.net/cr/編集ページhttp://bit.ly/dKZVMB (ケアネット 細田 雅之)

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教授 福島統 先生「国民のための医者をつくる大学 この理念の下に医師を育成する」

1956年3月21日東京都生まれ。1981年東京慈恵会医科大学卒業。84年同大学第1解剖学専攻博士課程修了、自治医科大学第1解剖学講座国内留学。85年東京慈恵会医科大学第1解剖学講座講師。87年ペンシルバニア州立大学分子細胞生物学講座留学。95年東京慈恵会医科大学カリキュラム委員。97年Harvard-Macy Program:Physician Educators修了。99年同大学医学教育研究室助教授。01年同大学同教授。07年同大学教育センター長。(社)日本医学教育学会副理事長、(財)日本医学教育振興財団運営委員・編集委員長、(財)柔道整復試験研修財団理事長。繰り返される医師不足と地域偏在第二次世界大戦後、日本の医学部定員は1万人を超えていました。GHQは医師養成のあり方をみて「医師粗製乱造だ」と、発言しました。当時は戦時下の軍医養成のため教育年限が短く、臨床のトレーニングが十分なされないまま、医師となって巣立っていきました。医師のレベルが下がるということは、日本の医療レベルが下がるとして、定員の削減を断行しました。3 千数名の入学定員とすれば、需要と供給が保たれるうえに医学教育の質も保てるとし、このときにシステムを確立してしまったのです。ですが、昭和36年に国民皆保険が実施されたことによって、安定供給のバランスが崩れます。すべての国民が医療へのアクセスが楽になり、徐々に医師不足が騒がれ始めます。そこで行われたのが、昭和45年3校の私立医科大学、秋田大学医学部設立と1県1医大政策です。なぜ秋田に医大をつくったかというと、今でもそうですが東北地方は慢性的に医師不足だったからです。つまり、診療科の偏在、地域偏在、研究医が少ない、基礎医学に進む医学部出身者がいないという現在と同じことが、昭和30年代にも起きていたのです。問題は、いきなり医大を増やしたので、教員が足りなくなってしまったことです。特に基礎医学を教えられる人材が不足してしまった。当然ですが、十分な教育なくして医師は育ちません。医学生の教育体制を考慮せずに、不十分なままに、定員を増やしてしまったことを反省すべきでしょう。結局のところ、地域偏在だ、診療科偏在だ、医師不足だといって医大をつくってはみたものの、実際に問題の解消にはなりませんでした。 医療現場の変化を捉えシステムを構築する医師不足問題を解決するためには、医療現場がどのように変化しているかを適格に捉えることです。現在医師不足といわれる最大の理由は、専門分化しすぎたからです。昔は内科医だったら、呼吸器、腎臓、心臓の悪い患者さんを分け隔てなく診ていました。一人の患者さんが複数の疾患に罹患していた場合でも、昔は一人の医師でカバーしていました。ですが今は、疾患ごとに専門医が必要になっています。つまり、一人当たりに必要な医師の数が増えているのです。高齢化社会が進めば、多臓器にわたって疾患のある患者さんが増えて、医師の数はもっと必要になるでしょう。すると医師の数は青天井に必要となるのです。これは高度医療の現場で増えているわけです。国民皆保険というフリーアクセスの現状では、どんなささいな病気でも専門家に診てもらいたくなる。それを許してきた。医療に対してフリーアクセスを許してきた日本、患者さんに対して医療レベルの振り分けをしませんでした。高度医療においては、疾患ごとに専門医が細分化されています。多臓器にわたって疾患のある患者さんが増えれば、一人の患者さんに対して必要な医師はますます増えることになります。これから高齢化社会が進むにつれ、医師の数がどれほど必要になるのかを算出するのは難しいことです。医学先進国のほとんどが、高度医療が必要な患者さんとそうでない患者さんを一次医療で振り分けているのは、本当に必要な医療を必要な患者さんが速やかに受けられるようにするためです。ですが、国民皆保険の日本では、極端にいえば単なる風邪であっても、高度医療の現場にいる専門医への受診もフリーアクセスを許してきました。では、何が必要かというと一次医療、二次医療、三次医療のシステム化を体制としても供給する側としても、階層性を構築することが求められています。たとえばイギリスのジェネラルプラテクショナー[General Practitioner (GP)]のようにかかりつけ医がいて、すべての患者さんはそこで診察を受けなければ、二次医療、三次医療には進めない。GPがゲートコントローラーの役割を果たせれば、患者さんは高度医療が本当に必要な人のみが受診し、非常に高度な医療に携わる医師は、その医師にしかできない治療に専念できるのです。大学の存在意義は社会への貢献である大学の存在意義とは、高度な学術や技能を持った人を社会に供給することによって、国民のために存在するものであると考えます。つまり地域に貢献するために存在しているのです。東京慈恵会医科大学の理念は明確で『国民のための医者をつくること』です。ところが各々の大学が社会に対する責任を考えてきたかというと疑問があります。日本はドイツから大学制度を持ってくるのですが、学問の自由とか大学の自治は受け入れたが、なぜそれらが大学にとって必要なのかは忘れてきてしまった。大学とは社会的存在であるという理念を置き忘れてきてしまいました。医師不足についても、ただ増やせばよいのではなく、医療システムそのものを見直さなければ、医療は社会的共通資本であり、つまり国民が守るものだという意識をつくっていかない限り、また同じ過ちを繰り返すだけです。医療はこれからも変化していくでしょう。10年前のデータを基に医師数を算出できても、明日では無理。なぜならば、医学生が独り立ちするまでに11年かかります。つまり、11年後の需要供給計画など立つわけがないのです。地域の教育力を活かす医療者教育私は1年生を地域医療実習へ送り出す前に「君たちは医者になる。医者になったら診る患者の半数は女性で、1.2%は統合失調症で2~3%は知的障害者だ。そして診る患者の10%には人格に偏りがある」と言います。まず1年生には授産・厚生施設へ1週間行かせます。2年生は、重症心身障害児療育体験を1週間実施した次の週に、児童館や幼稚園、保育園などで地域子育て支援体験実習に行かせます。これには理由があって、重度の病気を持つ子どもと元気な子どもをみることによって、病気とは何かを考えてほしいからです。病気であるがゆえに、人間としての活動を障害するとはどのようなことなのかを知ってほしい。医療とは患者さんがその人らしい人生を送れるように、すべてをサポートすることです。病気だけ診ればいいのか……そこで我が校の理念「病気を診ずして病人を診よ」につながるわけです。3年生には医学部なのに訪問看護ステーションで実習してもらいます。ある学生が言いました。「同じ認知症でも、家庭によって違う」。たとえ同じレベルの認知症であっても、その家庭環境が違えば、治療の方法もサポートも変わります。つまり、患者さんを取り巻く環境によって求められる医療のニーズは違うことを学んでほしいのです。それぞれの患者さんのバックグラウンドまでを知り、日常生活を想像した上で治療のできる医師を育成したいのです。4年生では院内の看護部や栄養部、薬剤部などの他職種に配属されます。5年生になると学内の臨床実習だけでなく、家庭医実習というのがあります。これは地域の開業医の下に1週間実習に行かせ、大学病院とは違った医療の現場を見てもらいます。これは、3年次の訪問看護による在宅ケア実習につながるわけです。また、医大の付属病院は高度医療を求めた患者さんが来院するところです。高度医療を必要としている患者さんは1,000分の1に過ぎません。まして、この中に予防医学は入っていないのです。では、あとの999をどこで学ぶか。それは学外で学ぶしかないのです。この実習の実現のために大変だったのは、よい開業医を探すことでした。よい医師でなければ、良い教育はできないからです。そのためは、学閥も何ものにも縛られることなく、高い理想を持った師となっていただく方を探し、お会いし、お願いしました。今では65名の先生にご賛同いただきご協力いただいています。医師は患者さんに貢献して幸せになれる職業臨床の場でわれわれが直接教えることはできません。けれども、学ぶ環境を提供することはできます。その環境をどう活かすかは学生次第です。1年生をいきなり外に出すのは、学びは現場にこそあるからです。現場にいて、自分に何ができて何ができないかを自覚させるためです。また、学生の学びのために臨床実習をさせているのではなく、患者さんへの貢献をするためなのだと教えています。病棟に学生がいたら「まずは、患者さんのベッド下の掃除でもやってなさい」と言う。これは、感染防御の第一です。 学生が臨床実習で何をするか? それはできることの最大限の力で、患者さんに貢献することです。採血ができなくても、ベッドの下の掃除はできる。看護師が荷物運びに難儀していたら、率先して手伝えばいい。このように職場の中でできる責任を果たしていきながら、できることが増えていく。すなわち、患者貢献が拡大していくのです。 医師育成のために国が税金を使うのは、医師がいなくては国民が困るからです。解剖の献体にしても、臨床実習にしても、医師を育てているのは国民なのです。あらゆる助成を国民から受けているのだから、医学を学ぶ者に自由はない。学ぶ義務があるだけなのです。質問と回答を公開中!

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教授 福島統 先生の答え

診療所医師による医学教育のためのシステム人口8万都市で小児科医を開業している者です。診療所で研修医の「地域保健研修」を、また、出身医大で「外来小児科学」の講義を行っています。先生のご意見、医学生をプライマリ・ケアの場に出す動きには全面的に賛同します。診療の質を上げるためには、診療を人に見せて教える必要があると考えますが、この波が拡がるためにはどうすればよいでしょうか?優秀な開業医が医学教育に関わることができずにいる環境があります。初期研修が始まった時に医師会が率先してシステムを作ればよかったのでしょうが…全国レベルでの医学部でのプライマリ・ケア実習の動きはありますでしょうか。あるいは今後の、それぞれの学会に依存しない医学部としてのシステム作りは可能でしょうか。ことば足らずで回答しにくいかと思いますが、医学部の変化がないことには診療所医師の関与は難しいと思いましたので。すでに医学部という大学と特定機能病院という大学附属病院のみでは、国民が求める医療を教えることはできないことは自明です。大学は医学教育をコーディネートする「教育機関」です。医学部が様々な医療ニーズを学生に見せ、学生一人ひとりが自分の仕事を知る機会を作ることがcommunity-based medical education です。このcommunity-based medical education は世界的な流れです。日本が遅れているだけです。医学部の中には専門医療だけでなく、地域が求める医療を学生に見せようとカリキュラムを工夫するところが増えてきています。医療の世界では、どの医療機関に所属する人も「教育」をしていかなければなりません。教育の場は大学と附属病院だけではありません。診療所も、地域病院も、在宅で頑張っている医師も、医師とは本質的に医師を育てる人たちだと思います。大学で医学教育を考える人たちが、自分の専門だけでなく、「医療」を学ぶ学生のことを考える日は近いと思います。その時に、地域の医師が「医師の役割の一つ」としての教育に夢を持って欲しいと思います。政治と現場で意見反対なのは何故ですか?福島先生の解説を読んで、医師不足問題について大変理解が深まりました。まだ私は医学生なので考察が甘いかもしれませんが、福島先生の意見が正論だと思いました。ただ、福島先生の意見が正論だと思う一方で、では何故、日本は医学部新設に向かっているのか?というところが分かりません。政治と現場で意見が対立しているのでしょうか?何故、日本は医学部新設の流れにあるのでしょうか?昭和45年に秋田大学医学部と北里大学医学部、杏林大学医学部、川崎医科大学が出来ました。昭和46年は私立医大がさらにできた後に、昭和47年からの1県1医大が始まります。この時、私立医大ができたのは、戦後の医専の卒業の大量の医師(開業医)たちの後継者問題があったからです(昭和20年の医学部入学定員は1万人を超えていました)。この時、裏口入学の問題が世間を騒がせました。1県1医大政策は田中角栄首相が押し進めました。その時の理由は東北・北海道の医師不足、医師の地域偏在、診療科偏在、基礎医学者と公衆衛生に関わる医師の不足が問題となりました。まさに今、政治が論じている問題と全く同じです。医師数をただ増やせばこの問題が解決するというのは幻想です。問題があるから、「何かを」しなければいけないという風潮になり、医学部を新設すれば「きっとよくなる」という積極策の幻想(ペーター・センゲ)になっていると思います。何かをすればそれが解決へつながるという言い訳でもあります。これは危険な考え方です。今こそ、なぜ日本の医療がうまくいかないのかをみんなで考えるべきです。学外実習に必要な開業医の数は?私も、現場で学ぶ機会は多い方がよいと考えます。学外実習に協力している開業医の先生が65名いらっしゃるとのことですが、慈恵さんレベルの大学ではその人数で十分なのでしょうか?理想としてはどのくらいの先生方を確保するべきなのでしょうか?数年前、韓国の医学教育学会で慈恵医大の「家庭医実習」の話をしました。その時、どうやって指導医を集めているのか、との質問を受けました。私は次のように答えました「医者には二通りの医者がいる、good doctors とnot good doctors だ」。会場に大きな笑いを誘いました。でも、私はこれが真実だと思います。そして、いい医者は良い医者が誰かを知っています。慈恵医大では、素敵な指導医と学生が評価した開業医に、「良い開業医を紹介してください」とお願いし、指導医を集めました。素敵な指導医が最低30人いれば、1年間で100名の学生の臨床実習を行うことができます。でも、無理をしないで1年間で100名の臨床実習をするには、60名必要と経験的に考えています。 トータルの実習成果は?学生の中には学外実習が苦手というか社交的ではない者も多いかと。皆がみな学外実習で何かを掴んで帰ってくるとは思えないのですが、実際はいかがでしょうか?個別には成果をあげる学生もいるでしょうが、トータルでみたときの実習成果について、差し支えなければご教示ください。昔、私が学生時代は先生が「あの学生は口下手だが、まじめでいい子だよ」と言っていました。私は、それは間違いだと思います。臨床医になるなら、どうにかして口下手を克服すべきだと思いますし、口下手を拡幅するために大学はその学生に手をかけるべきだともいます。人と話ができない医者を作るのではなく、たとえ上手ではなくても患者さんの話を聞く態度を持つ医師に育て上げるべきと思います。今までの初等、中等教育では、「職場の中で学ぶ」力を生徒に養ってきませんでした。しかし、医師になる者には「職場の中で学ぶ」力が必要です。医学部がただ知識と技能を教えていればいいのではありません。その学生が病棟で、患者さんから医療チームのメンバーから「人から学ぶ」ことのできる力を持てるようにしなければなりません。学外実習に行って、多くの学生は「自分に足りないもの」を見つけてくるように思います。自分に足りないもの、これこそが学習課題です。学習課題に気づいた人は自ら学習するでしょう。でも気づくチャンスがなければ学習は進行しません。そして気づきは異文化の中で起こることが多いのです。学生を学外に出し、「無理やりさせられ体験」をさせることで医学部の中にいるだけでは気づけない自分自身の学習課題を知って欲しいと思います。しかしながら、気づきはその学生のレディネスに負うところが多いことも事実です。スキャモンの成長曲線を思い出してください。大器晩成型も、早熟型もあります。学生に気づきの機会を与えますが、その学生が気づくまで待つことも大事です。学生の成長を待つだけでなく、成長を促すためにも「無理やりさせられ体験」は必要だと考えます。学生の反応は?医学生であれば目の前の国試対策に意識が集中して、学外実習は二の次ではないかと思います。実際、学外実習に対する医学生の反応はどうでしょうか?学生を説得して実習に出す感じでしょうか?※医師として患者を診ている今となれば、慈恵さんの学外実習が如何に素晴らしいかよく分かります!本当人間って勝手ですよね(笑)学生は医者になりたがっています。決して国家試験のプロになろうとはしていません。これは真実だと信じます。そして学生は実り多い自分の人生を求めています。人間とは自分自身の成長に気づいたとき、それを嬉しいと思う存在です。しかし、学生には今どのような体験をすべきか自分では分からないと思います。カリキュラムで必修とするのは、「無理やりさせられ体験」として学生が理解できなくても「行かせる」ためです。もちろん、オリエンテーションはたくさんしますが、実体験のない学生には理解は困難だと思います。学外実習は3年か4年しないと安定しません。教員がいくら大事だと言っても学生が理解しませんが、先輩の学生は「行ってみろよ、経験になるぜ」と言ってくれるようになったら実習が安定します。彼らは身近な先輩の言うことは素直に信じるのでしょう。実習を経験し、臨床実習に出たときにこの実習の意味を理解してくれれば学生は「無理やりさせられ体験」から「意味のある経験学習」へと認識を変えてくれます。国試対策について場違いな質問であれば無視していただきたいのですが、現在息子の入学先を検討している者です。私は地方の国立大卒です。私大医学部出身の友人もおらず、私大医学部のことがよく分かりません。慈恵医大ならではの特別な国試対策カリキュラムなどあるのでしょうか?学外実習は完璧だと思いました。親として心配なのは国試対策だけです。宜しくお願いします。慈恵医大は特別な国試対策はしません。むしろ6年生の後半には学生に自由な時間を与えるようにしています。学習で重要なのは、自分自身の能力を自分で評価し、自分の不足しているところを自分が認識して、自分の方法で学ぶことです。医学部6年生に「教え込み」は通じません。彼らは立派な「成人学習者」ですから。自分の不足を振り返り、自律的に学習する機会と時間を与えれば、医師になれるものは「国家試験」に合格します。何時までも教え込まれなければ勉強できない人はむしろ医者になるべきではありません。医者に必要な能力は生涯学習力ですから。私が医学教育の仕事をするようになった時、留年者や国試浪人の人にインタビュー調査をしたことがありました。彼らの欠点は明らかでした、解剖と生理学、すなわち基礎医学を知らないのです。国家試験のための勉強は基礎医学にあります。基礎医学をまなんだ人は病態を暗記ではなく、論理として理解します。そして今の国家試験は昔と違い、病態を理解してそのうえで薬理学の知識を応用した治療の選択を聞いてきます。国家試験は既に暗記の世界から、理解の世界へと変わってきているのです。国家試験は心配なら、基礎医学教育をしっかりしている医学部を受験させるべきと思います。医学を学ぶ者の自由とは、それを否定する理由はなんですか義務のみで自由はないのでしょうか、腑に落ちません。一人の学生が医師になるためには6年間に約1億円の経費がかかります。国公立であろうが私立であろうが多量の税金を使って医者になります。私は納税者です。自分が払った税金が「金儲けしか考えない医師」の養成に使われたとした、損害賠償請求をします。私は献体者です。死んだら、この体は解剖学実習に使われます(それまでには痩せようと思っています)。阿部正和慈恵医大元学長が講義のたびに学生に言っていました「患者こそ最高の師」と。医者になるためにたくさんの期待がかけられています。だから医学生はエリートだと思います。もし、自由に学びたいのなら、その経費は自分で払うべきです。税金とご遺体の行為と患者さんの協力を頂いて医師になるなら、国民から期待される医師になる責任があると思います。自分の自由のために他者の心もお金も使う必要はないと思います。この道に進まれたきっかけを教えて下さい。先生が、臨床でもなく研究でもなく教育を専門にされた「きっかけ」に興味があります。産婦人科開業の長男として生まれ、私立医大に入学してっきり産婦人科開業医になると思っていました。しかし、卒業時には少子高齢化が始まっており、産婦人科開業医の道はなくなり、面白そうと思った解剖学に進みました。解剖で業績を上げている最中に、急に大学から医学教育の仕事をしろ!と命令されました。いざ、医学教育の世界に入ってみたら、したいことがたくさんあったのです。だからそれをしただけです。多分、どの分野に行っても良かったのでしょう。今したいことを、今の立場で出来れば何でもよかったのかもしれません。いまは、この分野の仕事ができることを嬉しいと思っています、そしてもっとしたいと思っています。実習を阻む障害に関して1年生から地域実習へ出すとなると結構大変だと思います。受け入れ先を探す他にも障害が多かったと推察しますが、どのような障害がありましたでしょうか?1年生の福祉体験実習を作るとき、最も困ったことは「医学部と地域福福祉」があまりにも遠かったことです。特定機能病院には、知的障害や精神障害者の就労支援のことを知っている人がいませんでした。2年生の重症心身障害児の実習を作るときも地域で子どもがどのように生活しているかを考えている小児科以外の医師はほとんどいませんでした。3年生の訪問看護ステーションの実習に至っては、一部の神経内科医は理解を示したものの、多くの専門医たちは在宅医療の存在すら想像してくれませんでした。でも低学年の学外実習は臨床医たちの利害とは離れていたので実習を作りことができました。実習を作るためには何足もの靴が必要でした。医学部とは遠い福祉や在宅には、足を運び理想を話し、夢を共有してもらい一緒に医師を作ろうと説得しまわりました。多くの実習施設は共感を示してくださり、快く学生実習を受けてくださいました。特に福祉施設では、「良い医者を私たちもメンバーさんのために作ってください」と励ましていただきました。臨床実習での「家庭医実習」を必修化できたのはひとえに、阿部正和元学長のおかげです。慈恵医大は全国に先駆けて昭和61年に選択科目として開業医実習を導入していました。阿部正和先生という方が、素晴らしい指導医がたくさんいる実地医家の会との連携を作ってくれていたので、解剖上がりの臨床を知らない私が「家庭医実習」を必修化できたのだと思います。実習先になりうる開業医とは?実習を引き受ける開業医に必要な素質はありますが?また高い理想とは?もう少し具体的にご教示ください。該当する先生がいたら是非紹介したいと考えます。良い医者は誰が見ても「良い医者」です。それは誰もそう思うと思います。教授 福島統 先生「国民のための医者をつくる大学 この理念の下に医師を育成する」

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主要評価項目がネガティブな企業助成試験はサブグループ解析の報告頻度が高い

企業助成金の拠出を受けた無作為化対照比較試験は、主要評価項目に統計学的な有意差がない場合に、企業助成のない試験に比べサブグループ解析の報告を行う頻度が有意に高いことが、カナダ・マクマスター大学のXin Sun氏らの調査で示された。影響力の強いジャーナルに掲載された論文の60%、心血管領域の論文の61%、外科領域の論文の37%がサブグループ解析の報告を行っているとのデータがあるが、事前に規定されたサブグループ解析や、交互作用に関して正規の検定を行っているものは少ないという。BMJ誌2011年4月2日号(オンライン版2011年3月28日号)掲載の報告。サブグループ解析の報告と企業助成の有無との関連を系統的にレビュー研究グループは、無作為化対照比較試験のサブグループ解析の報告頻度に及ぼす、企業による助成金拠出の影響を評価するために、系統的なレビューを行った。Medlineを検索して、2007年に118のコア・ジャーナル(National Library of Medicineの規定による)誌上に掲載された無作為化対照比較試験のうち、影響力の強いジャーナル(2007年の総引用数が最も多い上位5誌:Annals of Internal Medicine、BMJ、JAMA、Lancet、New England Journal of Medicine)とそれ以外のジャーナルの掲載論文が1対1の割合になるように1,140編(570編ずつ)が無作為に選出された。2名のレビュアーが別個に適格基準を満たす報告を選択し、データを抽出した。明確な判定基準を用いてサブグループ解析の報告を行っている無作為化対照比較試験を同定した。ロジスティック回帰分析を行い、事前に規定された試験の特性とサブグループ解析の報告の有無との関連を評価した。事前に規定されたサブグループ解析や交互作用検定の頻度は有意に低い469編の無作為化対照比較試験(影響力の強いジャーナル掲載論文219編、それ以外のジャーナル掲載論文250編)のうちサブグループ解析の報告を行っていたのは207編(44%)であった。影響力の強いジャーナル掲載論文(調整オッズ比:2.64、95%信頼区間:1.62~4.33、p<0.001)、非外科領域の論文(外科領域論文との比較、同:2.10、1.26~3.50、p=0.005)、サンプルサイズの大きい論文(同:3.38、1.64~6.99、p=0.001)で、サブグループ解析の報告の頻度が高かった。企業の助成金拠出とサブグループ解析報告の関連の強さは、主要評価項目に有意差を認めた場合と認めなかった場合で有意に異なっており(交互作用の検定:p=0.02)、主要評価項目に有意差がない試験では、企業助成がない場合よりも助成がある場合にサブグループ解析の報告が多かった(調整オッズ比:2.29、95%信頼区間:1.30~4.72、p=0.005)。主要評価項目に有意差がある試験には、このようなサブグループ解析の報告頻度の差は認めなかった(同:0.79、0.46~1.36、p=0.91)。企業助成金の拠出を受けた試験は助成のない試験に比べ、事前に仮説を立てて規定されたサブグループ解析の報告頻度が有意に低く(31.3% vs.38.0%、調整オッズ比:0.49、95%信頼区間:0.26~0.94、p=0.032)、サブグループの効果解析の交互作用検定を行う頻度も低かった(41.4% vs. 49.1%、同:0.52、0.28~0.97、p=0.039)。著者は、「企業助成金の拠出を受けた無作為化対照比較試験は、主要評価項目に統計学的な有意差がない場合に、助成のない試験に比べサブグループ解析の報告を行う頻度が有意に高く、事前に規定されたサブグループ解析や交互作用検定を実施する頻度が有意に低かった」とまとめ、「主要評価項目の結果がネガティブであった企業助成試験のサブグループ解析には警戒を要する」と指摘する。(菅野守:医学ライター)

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研修医の勤務時間、週80時間未満でも患者転帰に有害な影響はない

アメリカでは卒後研修医の勤務時間を週80時間未満に短縮しても、患者転帰や研修内容への有害な影響はみられなかったことが、イギリス・ユニバーシティ・カレッジ病院のS R Moonesinghe氏らの調査で示された。欧米では、過去20年にわたり、患者の安全性や医師の労働条件の改善を目的とする勧告や法律に従って、卒後研修医の勤務時間の短縮を進めているが、患者の転帰や研修の内容に想定外の有害な影響が及ぶ可能性が懸念されるという。BMJ誌2011年4月2日号(オンライン版2011年3月22日号)掲載の報告。勤務時間短縮が研修内容や患者転帰に及ぼす影響を系統的にレビュー研究グループは、卒後研修医の勤務時間の短縮が研修の内容や患者の転帰に及ぼす影響を評価するために系統的なレビューを行った。データベース(Medline、 Embase、ISI Web of Science、Google Scholar、ERIC、SIGLE)を用いて、記述言語を制限せずに1990~2010年に発表された論文を検索し、抽出された論文の引用文献なども参照した。対象は、勤務時間の変動が卒後研修、患者の安全や転帰に及ぼす影響を検討した試験とし、試験デザインの違いは問わないこととした。週56時間/48時間未満への短縮の影響の検討は不十分適格基準を満たした72の試験のうち、38試験は研修内容のアウトカムを、31試験は患者の転帰を検討しており、3試験は両方の評価を行っていた。勤務時間を、週80時間以上から、アメリカの勧告に従って80時間未満に短縮しても、患者の安全性に有害な影響はなく、卒後研修への影響も少なかった。週56時間未満あるいは48時間未満というヨーロッパの規定に関する研究は全般に質が低く、結果も相反するものが多いため、確定的な結論は得られなかった。著者は、「アメリカでは、勤務時間を週80時間未満に短縮しても、患者転帰や研修内容への有害な影響は見られなかったが、イギリスにおける週56時間/48時間未満への短縮の影響については、質の高い研究が十分には行われていない」と結論し、「大規模な多施設共同試験によるさらなる検討が、特にEUで求められる」と指摘している。(菅野守:医学ライター)

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避難所からいかに高齢者を救うか

日本老年医学会は今回の東日本大震災に対して、『高齢者災害時医療ガイドライン』と『一般救護者用・災害時高齢者医療マニュアル』を、現在行われている被災地での高齢者災害時医療に活用いただくため、試作版ではあるがいち早く学会ホームページを通して公開した。当ガイドラインの作成者の一人であり、日本老年医学会として被災地に赴いた東京大学大学院医学系研究科・加齢医学講座 飯島勝矢氏からの寄稿文を紹介する。【本ガイドラインおよび一般向けマニュアル作成にあたっての経緯】私自身は日本老年医学会の代議員であると同時に、この『高齢者災害時医療ガイドライン』作成の研究班の一員でもあり、そして、急遽立ち上げた「日本老年医学会 東北関東大震災対策本部」の中心として動いております。本国(日本)は地震、台風、津波などの様々な災害が多い国であります。その災害時において、「被災高齢者」に対する医療は非常に重要であると常日頃から考えております。特に避難所での生活に入らざるを得なかった高齢者の方々は、生活環境が一変し多くの精神的・身体的ストレスを受けます。さらに、もともとかかりつけていた慢性疾患(高血圧,糖尿病,脳心疾患なども含めて)の管理を継続しづらくなってしまいます。さらに、家屋倒壊や津波などによる直接の死亡だけではなく、避難所にどうにか収容されたにもかかわらずさまざまな疾患が発症し、最終的には亡くなってしまう、いわゆる『震災関連死』も高齢者では無視できません。実際、今回の東日本大震災においても、避難所にいる高齢女性が心筋梗塞によって搬送先の病院で亡くなってしまったなど、同様の現象が起きております。これからは被災高齢者において、認知機能やメンタル管理も含めて、慢性的な管理の重要性が問われていると考えております。すでに厚生労働省・厚生労働科学研究費補助金を受け「災害時高齢者医療の初期対応と救急搬送基準に関するガイドライン作成研究班を立ち上げ、平成23年度内完成を目標に作業を進めておりましたが、今回の東日本大震災発生により被災高齢者の方々に対する医療現場の厳しい現状が数多く報告されているため、本ガイドライン作成研究班および日本老年医学会は「高齢者災害時医療ガイドライン」および「一般救護者用・災害時高齢者医療マニュアル」を被災地の高齢者医療の現場で一刻も早く役立てていただきたく、現段階では試作版ではありますが、公表に踏み切ることと致しました。また、私自身がすでに日本老年医学会の代表としてとして、(短い時間ではありますが)福島県の相馬市にある避難所にて医療支援を行ってきました。その時に、お一人お一人の高齢被災者を診察しながら、この一般救護者向けのマニュアルを1冊ずつ手渡し、今後も続くであろう避難所生活において活用して頂くよう配布してきました。(相馬市避難所医療支援の様子はこちらから)『高齢者災害時医療ガイドライン』と『一般救護者用・災害時高齢者医療マニュアル』を日本老年医学会ホームページ上に掲載致します。少しでも現在行われている被災地での高齢者災害時医療の一助なって頂ければ幸いです。また、一般救護者向けマニュアルを、今後、各避難所に数多く配布できればと考え、現在準備中でございます。リンク 日本老年医学会ホームページhttp://www.jpn-geriat-soc.or.jp/ ●医療者向け『高齢者災害時医療ガイドライン』一括ダウンロード 全329頁 (PDF:10.3MB)表紙・前付・目次 (PDF:68KB)I :災害発生時の経時的な医療需要予測・評価 (PDF:545KB)II:避難所における高齢者急性期疾患発症と初期対応,搬送基準 (PDF:221KB)III:避難所における高齢者慢性期疾患発症と対応,搬送基準 (PDF:1.75MB)IV:災害現場,避難所,仮設住宅における高齢者の主要症候と初期対応法 (PDF:1.84MB)V:自治体の初期対応と福祉避難所設営 (PDF:246KB)VI:自治体他の医薬品,医療機材の備蓄 (PDF:220KB)VII:高齢者家屋の防災処置 (PDF:103KB)VIII:高齢者の災害時緊急持ちだし用品 (PDF:88KB)IX:様式集(PDF:5.39MB)X:過去の災害における高齢者医療出動の内容(65歳以上の高齢者を中心に) (PDF:666KB) ●一般救護者向け「一般救護者用・災害時高齢者医療マニュアル」(試作版)(全25頁)(PDF:1.94MB)(ケアネット 細田 雅之)

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震災時の抗がん剤治療に指標を

今回の震災にあたり、時間の経過とともに、急性期から亜急性期・慢性期に対する医療の問題がクローズアップされてきている。がん治療も生存期間の延長により慢性期医療の側面が濃くなっており、例外ではない。なかでも、抗がん剤治療については術後補助療法、再発転移治療ともに医薬品の流通が良好ではない被災地では大きな問題を抱えている。このような状況のなか解決策はあるのか、がん薬物療法のスペシャリストがん研有明病院化学療法科の畠清彦氏に聞いた。 Q. 被災地での抗がん剤治療に関する懸念がでてきているようですが? A. 現在は、当院でも抗がん剤の流通が良好な状態であるとはいえません。被災地ではなおさら条件が厳しいと思います。がん患者さんへの抗がん剤の投薬については、私たちが想像する以上に多くの問題を被災地では抱えていると思います。治療がままならないとはいえ、患者さんを放っておくわけにはいかず、お悩みの先生も大勢いらっしゃると思います。また、治療途中の病院がなくなってしまい途方にくれている患者さんも数多くいらっしゃることと思います。… 全文はこちらhttp://www.carenet.com/oncology/keyword/12/ ※畠清彦氏作「震災時の抗がん剤治療」も上記からダウンロード可能

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看護師、助産師などによる人工妊娠中絶は安全に実施可能:ネパールの調査

適切な研修を受け国家資格を持つ看護師や助産師などの非医師医療者は、高度な技術が不要な、薬剤を用いた人工妊娠中絶処置を医師がいない状況下で安全に実施可能なことが、世界保健機構(WHO)リプロダクティブ・ヘルス部門のI K Warriner氏らがネパールで実施した調査で示された。毎年、世界で2億1,000万人の女性が妊娠するが、約5人に1人は出産に至らず、そのうち約2,200万人が危険な状態で妊娠を中断しており、そのほとんど(98%)が開発途上国で起きているという。看護師や助産師が、医師がいない状況下でも安全に人工妊娠中絶処置を実施できれば、このような危険は回避可能になると期待されている。Lancet誌2011年4月2日号(2011年3月31日号)掲載の報告。医師、非医師医療者による人工妊娠中絶処置の同等性を検証研究グループは、ネパールにおいて、国家資格を持つ看護師や助産師などの非医師医療者による人工妊娠中絶処置の安全性と有効性について、医師が行う場合との同等性を検証する無作為化対照比較試験を行った。ネパールの5つの地域病院から、妊娠9週(63日)以内で、病院までの所要時間が90分以内の場所に居住する妊婦が登録された。これらの妊婦が、医師(14人、平均年齢42.4歳、女性3人、診療経験14.1年)あるいは非医師医療者(11人、平均年齢41.9歳、全員女性、診療経験21.8年)による人工妊娠中絶処置を受ける群に無作為に割り付けられた。中絶処置は、mifepristone 200mgを経口投与し、2日後にミソプロストール800μgを経膣的に投与した。その後、10~14日間のフォローアップを実施した。主要評価項目は、30日以内に手動真空吸引法を施行せずに達成された中絶成功率とした。結果は成功、不完全、不成功(妊娠継続)に分類した。中絶成功率:医師群96.1% vs. 非医師医療者群97.3%、不成功率:1% vs. 0%登録された1,295人のうち1,077人(医師群535人、非医師医療者群542人)が無作為割り付けの対象となり、1,032人(514人、518人)で解析が可能であった。中絶成功率は、医師群が96.1%(494/514人)、非医師医療者群は97.3%(504/518人)であった。中絶成功のリスク差は1.24%(95%信頼区間:-0.53~3.02)であり、事前に定義された同等性の範囲(-5~5%)内であった。中絶不成功率は医師群が1%(5/514人)、非医師医療者群は0%(0/518人)であった。重篤な合併症は両群とも認めなかった。著者は、「妊娠9週以内の妊婦に対する医師あるいは非医師医療者が行う人工妊娠中絶処置の安全性および有効性は同等であった。適切な研修を受けて国家資格を持つ非医師医療者は、高度な技術を要しない人工妊娠中絶処置を、医師がいない状況下で安全に実施可能である」と結論している。(菅野守:医学ライター)

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青年~若年成人の死亡率低下は小児よりも小さい:WHOデータの解析結果

1955~2004年の50年間における青年および若年成人の死亡率の低下率は小児よりも小さく、伝統的な死亡率パターンの逆転が起きていることが、イギリス・ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンのRussell M Viner氏らの調査で明らかとなった。近年、ミレニアム開発目標4(MDG4)の達成に向けた取り組みによって5歳未満の小児の死亡率が低下したため5歳以上の小児や青年層が増加し、5~24歳が世界人口の5分の2以上を占めるが、これらの年齢層は人生で最も健康度が高い時期としてその死亡率が相対的に軽視されているという。Lancet誌2011年4月2日号(オンライン版2011年3月29日号)掲載の報告。過去50年間の1~24歳の死亡率の動向を調査研究グループは、WHOの50年間(1955~2004年)の死亡率データベースを用いて、1~24歳の死亡率の動向について調査した。解析は5つの年齢層(1~4歳、5~9歳、10~14歳、15~19歳、20~24歳)に分けて男女別に行った。死亡率の変動を解析するために、各5年の3期間(1955~1959年、1978~1982年、2000~2004年)の死亡率の平均値を算出し、伝染性および非伝染性の疾患や外傷に起因する死亡の傾向を調査した。全死因死亡率の低下率、1~4歳が85~93%、15~24歳の男性は41~48%50ヵ国(高所得国10、中所得国22、低所得国8、超低所得国7ヵ国、分類不能3)のデータを、経済協力開発機構(OECD)加盟国、中南米、東欧、旧ソ連、その他の地域に分けて解析した。1955年の死亡率は1~4歳の年齢層が最も高かった。調査期間を通じ、OECD加盟国、中南米、その他の諸国の全死因死亡率は1~4歳で85~93%低下し、5~9歳で80~87%、10~14歳では68~78%低下した。これに比べて15~24歳の男性の全死因死亡率の低下率は小さく(41~48%)、2000~2004年の15~24歳の男性の死亡率は1~4歳の男児の2~3倍であった。2000年以降の15~24歳の女性の死亡率は、1~4歳の女児と同等であった。伝染性疾患に起因する死亡率は全地域のすべての年齢層で大きく低下したが、伝染性および非伝染性疾患は1~9歳の小児および10~24歳の女性の主要な死因であった。1970年代末期までは、全地域における10~24歳の男性の主な死因は外傷であった。著者は、「青年および若年成人の死亡率の低下率は、小児よりも小さく、過去50年にそれ以前の伝統的な死亡率パターンの逆転が起きていた」と結論し、「今後の世界的な保健活動のターゲットに、10~24歳の健康問題への取り組みを加えるべき」と指摘する。(菅野守:医学ライター)

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肥満高齢者には減量と運動のワンセットの介入のほうが各単独介入よりも身体機能を改善

肥満高齢者に対しては減量と運動の介入をワンセットで行うことが、どちらか単独の介入をするよりも身体機能の改善が大きいことが、米国・ワシントン大学医学部老年医学・栄養学部門のDennis T. Villareal氏らによる無作為化対照試験の結果、示された。肥満は加齢に伴う身体機能低下の増大や高齢者の虚弱を引き起こすとされるが、肥満高齢者に対する適切な治療については議論の的となっているという。NEJM誌2011年3月31日号掲載報告より。対照群、ダイエット群、運動群、ダイエット+運動群に肥満高齢者107例を無作為化試験は、1年間にわたり減量、運動介入の単独もしくは併用の効果を評価することを目的に行われた。試験参加の適格条件は、65歳以上の肥満者(BMI≧30)、座りきり生活、体重が安定(前年の変化2kg未満)、薬物療法が安定(試験前6ヵ月間)、軽度~中程度の虚弱[一部修正を施した身体機能検査(Physical Performance Test)のスコア(0~36、数値が高いほど身体機能は良好)18~32、最大酸素消費量11~18mL/kg体重/分、二つの手段的日常生活活動(IADL)困難、一つの日常生活動作(ADL)困難]だった。107例が、対照群、体重管理(ダイエット)群、運動群、体重管理+運動(ダイエット+運動)群に無作為に割り付けられ追跡された。主要評価項目は、一部修正を施した身体機能検査のスコアの変化とした。副次評価項目には、虚弱、身体組成、骨密度、特異的な身体機能、生活の質などの測定を含んだ。ダイエット+運動群の身体機能改善、最大酸素消費量改善などが最も大きく試験を完了したのは93例(87%)だった。intention-to-treat解析の結果、身体機能検査スコアは基線から、ダイエット+運動群が21%増で、ダイエット群12%増、運動群15%増よりも変化が大きかった。なおこれら3群は、対照群(1%増)よりはいずれも変化が大きかった(P<0.001)。また、最大酸素消費量の基線からの変化は、ダイエット+運動群が17%増で、ダイエット群10%増、運動群8%増と比べ改善が認められた(P<0.001)。機能状態質問票(Functional Status Questionnaire)のスコア(0~36、数値が高いほど機能状態は良好)については、ダイエット+運動群が10%増で、ダイエット群4%よりも変化が大きかった(P<0.001)。体重の減量は、ダイエット群10%、ダイエット+運動群9%で認められた。しかし運動群や対照群では減量が認められなかった(P<0.001)。除脂肪体重の減量、股関節部骨密度の低下はいずれも、ダイエット+運動群がダイエット群よりも小さかった(それぞれ3%対5%、1%対3%、両比較のP<0.05)。ダイエット+運動群では筋力、平衡感覚、歩行機能について一貫した改善が認められた(すべての比較のP<0.05)。なお有害事象として、少数の運動関連の筋骨格損傷などが認められた。(武藤まき:医療ライター)

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ターナー症候群、成長ホルモン+小児期エストロゲン補充療法にベネフィットの可能性

低身長と卵巣機能不全を特徴とするターナー症候群について、成長ホルモン+小児期のエストロゲン補充療法の併用効果に関する二重盲検プラセボ対照臨床試験が、米国・トーマス・ジェファーソン大学のJudith L. Ross氏らにより行われた。低身長には一般に組換え型ヒト成長ホルモンが用いられるが、それにより成人身長が高くなるのかについてこれまで無作為化プラセボ対照試験は行われておらず、また小児期にエストロゲン補充療法を行うことによる付加的なベネフィットの検証も行われていなかった。NEJM誌2011年3月31日号掲載より。女児149例を対象に二重盲検プラセボ対照臨床試験Ross氏らは、ターナー症候群を有する女児を対象に、成長ホルモンと早期の超低用量エストロゲン補充療法の単独もしくは併用投与の、成人身長への効果を検討した。5.0~12.5歳の女児149例を、ダブルプラセボ群(39例)、エストロゲン単独群(40例)、成長ホルモン単独群(35例)、成長ホルモン+エストロゲン併用群(35例)の4群に無作為に割り付け追跡した。成長ホルモンは0.1mg/kg体重を週3回投与、エストロゲン(エチニルエストラジオール)は暦年齢と思春期状態により調整し投与した。エチニルエストラジオールは、12歳以後最初の受診時に、すべての治療群の患者に漸増投与が行われた。成長ホルモンの注射投与は成人身長に達した時点で終了された。プラセボとの比較で成長ホルモンの効果は標準偏差スコア0.78±0.13、5.0cm平均年齢17.0±1.0歳、平均試験期間7.2±2.5年後の成人身長に関する平均標準偏差スコアは、ダブルプラセボ群-2.81±0.85、エストロゲン単独群-3.39±0.74、成長ホルモン単独群-2.29±1.10、併用群-2.10±1.02だった(P<0.001)。成長ホルモンの成人身長に対する全体的な効果(対プラセボ)は、標準偏差スコア0.78±0.13、5.0cmだった(P<0.001)。成人身長は、併用群が成長ホルモン単独群よりも標準偏差スコアで0.32±0.17、2.1cm大きく(P=0.059)、わずかではあるが、小児期超低用量エチニルエストラジオールと成長ホルモンとの相乗効果が示唆された。Ross氏は、「本試験により、ターナー症候群患者への成長ホルモン治療により成人身長が高くなることが示された。また小児期超低用量エストロゲンの併用により成長改善の可能性があり、エストロゲン補充療法の早期開始によりその他のベネフィットが得られる可能性があることが示唆された」と結論している。(武藤まき:医療ライター)

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欧州系白人2型糖尿病患者、HMGA1遺伝子機能変異型の保有率が高率

欧州系白人の2型糖尿病患者は非糖尿病の人に比べ、HMGA1遺伝子機能変異型の保有率が有意に高率であることが、イタリア・カタンザーロ大学のEusebio Chiefari氏らによる欧州系白人3集団を対象としたケースコントロール試験の結果、明らかになった。HMGA1は、インスリン受容体(INSR)遺伝子発現のキーとなるタンパク質。Chiefari氏らは過去に、INSR発現低下がみられるインスリン治療抵抗性の2型糖尿病患者2名において、HMGA1遺伝子機能変異型が特定されたことを受け、HMGA1遺伝子機能変異型と2型糖尿病との関連について調査を行った。JAMA誌2011年3月2日号掲載より。イタリア、米国、フランスの2型糖尿病患者でIVS5-13insC保有率は7~8%対象となったのはイタリア、米国、フランスの3ヵ国3集団で、イタリア(カラブリアのカタンザーロ大学外来患者とその他医療施設)では2003~2009年にかけて2型糖尿病患者3,278人とそれに対する2グループの対照群3,328人が参加。米国では1994~2005年にかけて北カリフォルニアで同患者970人と、対照群は2004~2009年にかけて非糖尿病の高齢のアスリート958人が参加。フランスでは1992年にランス大学で登録された同患者354人と対照群50人が参加し、それぞれコントロール試験が行われた。被験者はHMGA1遺伝子機能変異型について、ゲノムDNAの分析が行われ、また、HMGA1遺伝子とINSR遺伝子のメッセンジャーRNAとタンパク質発現について測定された。結果、HMGA1遺伝子機能変異型の中で最も多いIVS5-13insCが、2型糖尿病患者における保有率はいずれの国の被験者集団でも7~8%にみられた。イタリアでは、IVS5-13insC保有率は糖尿病群が7.23%に対し対照群1では0.43%(オッズ比:15.77)、対照群2では3.32%(オッズ比:2.03)だった(p<0.001)。米国では糖尿病群のIVS5-13insC保有率7.7%に対し、対照群は4.7%だった(オッズ比:1.64、p=0.03)。フランスでは糖尿病群のIVS5-13insC保有率7.6%に対し、対照群では0%だった(p=0.046)。イタリア糖尿病群ではHMGA1遺伝子機能変異型が計4種、保有率9.8%またイタリアの被験者集団では、IVS5-13insC以外の3種のHMGA1遺伝子機能変異型も認められ、その保有率は糖尿病群で2.56%だった。その結果、イタリア被験者集団における計4種のHMGA1遺伝子機能変異型の保有率は、糖尿病群が9.8%、対照群が0.6%だった。さらに、2型糖尿病でIVS5-13insCを保有する人は、HMGA1とINSRのメッセンジャーRNAとタンパク質発現の値が、そうでない人に比べ40~50%低かった。(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)

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米国ヘビースモーカー、1965年から2007年の間に大幅減少

米国(カリフォルニア州を除く)でタバコを1日に20本以上喫煙する重度喫煙者の割合は、1965年当時の約23%から2007年には約7%へと大幅に減少していることが調査の結果、明らかにされた。カリフォルニア州ではさらに大幅な減少(約23%から3%)がみられた。背景には喫煙を始める人の減少と禁煙する人の増加があるようだという。米国・カリフォルニア大学サンディエゴ校Moores UCSDがんセンターのJohn P. Pierce氏らの調べで明らかになったもので、JAMA誌2011年3月16日号で発表された。重度喫煙者の喫煙者に占める割合も減少研究グループは、1965~1994年のNational Health Interview Surveysと、1992~2007年のCurrent Population Survey Tobacco Supplementsの2つの調査結果で得られた、カリフォルニア州以外の米国内166万2,353人と、カリフォルニア州の13万9,176人の回答を基に分析を行った。その結果、1965年に1日20本以上喫煙する重度喫煙者は、米国カリフォルニア以外の地域では22.9%(95%信頼区間:22.1~23.6)だったのに対し、2007年には7.2%(同:6.4~8.0)に減少した。カリフォルニア州の同割合については、1965年の23.2%(同:19.6~26.8)から、2007年の2.6%(同:0.0~5.6)へとより減少幅は大きかった(p<0.001)。また、同期間の重度喫煙者の、喫煙者全体に占める割合は、カリフォルニア州を除く全米で56%から40%へと減少した。近年の出生コホートで、中程度~重度喫煙者の割合は減少1920~1929年の出生コホートでは、1日10本以上を喫煙する中程度~重度喫煙者の割合は、1965年時点で、カリフォルニア州以外の地域の割合で40.5%、カリフォルニア州で39.2%だった。同割合はその後の出生コホートでは減少した。1970~79年出生コホートでは高くなったが、カリフォルニア州以外の地域が18.3%、カリフォルニア州では9.7%だった。全コホートでみると、高齢者での中程度~重度喫煙者の割合の大幅な減少が認められた。特にカリフォルニア州でその割合は大きかった。また1970~79年出生コホートの35歳での同率は、カリフォルニア州以外の地域で13.5%、カリフォルニア州で4.6%だった。(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)

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スタチンは心房細動を抑制するか?

短期的な試験で示唆されたスタチンの心房細動に対する抑制効果は、長期的な大規模試験の包括的なレビューの結果では支持されないことが、イギリス・オックスフォード大学のKazem Rahimi氏らの検討で明らかにされた。心房細動は最も高頻度にみられる不整脈の一病型であり、加齢とともに増加することが示されている。多くの国では平均余命が延長し、その結果として心不全の発症率が上昇するため、今後、心房細動による世界的な疾病負担が増大する可能性が高い。心臓手術例や除細動施行例に限定されたエビデンスではあるが、スタチンはこれらの患者における心房細動のリスクを3分の1以上も低減する可能性があるという。BMJ誌2011年3月26日号(オンライン版2011年3月16日号)掲載の報告。既報および未報の無作為化対照比較試験のメタ解析研究グループは、スタチンによる心房細動のリスク低減効果を評価するために、既報および未報の無作為化対照比較試験のメタ解析を行った。データベース(Medline、Embase、Cochrane’s CENTRAL)を検索して2010年10月までに報告された試験を抽出した。未報の長期試験のデータは、研究者と連絡を取って入手した。解析の対象は、スタチン投与群と非投与群、あるいはスタチン高用量投与群と標準用量投与群を比較した無作為化対照試験とし、長期試験の場合は100例以上を対象に6ヵ月以上のフォローアップを行った試験とした。現時点では推奨されないが、さらなる検討も既報の13件の短期試験のデータ(4,414例、659イベント)を解析したところ、スタチン治療により心房細動の発症率が39%低下した(オッズ比:0.61、95%信頼区間:0.51~0.74、p<0.001)が、これらの試験間には有意な不均一性(heterogeneity)が認められた(p<0.001)。一方、スタチンと対照を比較した22件の長期大規模試験(10万5,791例、2,535イベント)では、スタチン治療によって心房細動の発症率が低下することはなかった(オッズ比:0.95、95%信頼区間:0.88~1.03、p=0.24、不均一性:p=0.40)(差の検定:p<0.001)。7件の高用量群と標準用量群を比較した、より長期の試験(2万8,964例、1,419イベント)においても、スタチンによる心房細動のリスク低減効果のエビデンスは示されなかった(オッズ比:1.00、95%信頼区間:0.90~1.12、p=0.99、不均一性:p=0.05)。著者は、「既報の短期的な試験で示唆されたスタチンの心房細動に対する抑制効果は、より大規模な既報および未報の試験の包括的なレビューでは支持されなかったため、現時点ではスタチンは心房細動の予防には推奨されない」と結論したうえで、「これらの知見は、一部の患者でみられたスタチンの心房細動抑制効果を排除するものではなく、今後、よくデザインされた無作為化試験を行って検証する価値がある」としている。(菅野守:医学ライター)

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チアゾリジン系薬剤の2型糖尿病における心血管リスクへの影響

2型糖尿病患者の治療では、ピオグリタゾン(商品名:アクトス)に比しrosiglitazoneで心筋梗塞、うっ血性心不全、死亡のリスクが有意に高いことが、イギリスEast Anglia大学のYoon Kong Loke氏らの検討で示された。rosiglitazoneとピオグリタゾンはいずれもうっ血性心不全のリスクを増大させることが知られているが、虚血性の心血管イベントのリスクはrosiglitazoneのほうが高いと考えられている。しかし、これらチアゾリジン系薬剤の心血管疾患に及ぼす影響の明白な違いは十分には解明されていないという。BMJ誌2011年3月26日号(オンライン版2011年3月17日号)掲載の報告。チアゾリジン系薬剤の心血管疾患への影響に関する観察試験のメタ解析研究グループは、チアゾリジン系薬剤(rosiglitazone、ピオグリタゾン)が、2型糖尿病患者における心筋梗塞、うっ血性心不全、死亡に及ぼす影響を評価するために、観察試験の系統的レビューとメタ解析を行った。データベース(Medline、Embase)を検索して2010年9月までに報告された試験を抽出した。2型糖尿病患者における心血管疾患のリスクに及ぼすrosiglitazoneとピオグリタゾンの影響を直接的に比較した観察試験を解析の対象とした。変量効果を用いたメタ解析により、チアゾリジン系薬剤の心血管アウトカムのオッズ比を算出した。統計学的な不均一性(heterogeneity)の評価にはI2 statisticを用い、I2 =30~60%の場合に不均一性は中等度と判定した。心筋梗塞が16%、うっ血性心不全が22%、死亡が14%多いチアゾリジン系薬剤の投与を受けた約81万人を含む16件の観察試験(症例対照試験4件、レトロスペクティブなコホート試験12件)について解析が行われた。ピオグリタゾンに比べ、rosiglitazoneは心筋梗塞(15試験、オッズ比:1.16、95%信頼区間:1.07~1.24、p<0.001、I2=46%)、うっ血性心不全(8試験、同:1.22、1.14~1.31、p<0.001、I2=37%)、死亡(8試験、同:1.14、1.09~1.20、p<0.001、I2=0%)の発現率が有意に高かった。有害なアウトカムが1例の患者に発現するのに要する治療例数(number needed to treat to harm; NNH)の解析を行ったところ、ピオグリタゾンに比べrosiglitazoneでは心筋梗塞が10万人当たり170人多く発現し、同様にうっ血性心不全は649人多く、死亡は431人多く発現することが示唆された。著者は、「2型糖尿病患者の治療では、ピオグリタゾンに比しrosiglitazoneは心筋梗塞、うっ血性心不全、死亡のリスクが有意に高いことが示された」と結論し、「医師、患者、監督機関はチアゾリジン系薬剤の血糖コントロールにおける有用性とともにこれらの有害作用にも十分に留意すべき」としている。(菅野守:医学ライター)

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新たな胸痛評価法により、低リスク患者の早期退院が可能に

ニュージーランド・クライストチャーチ病院のMartin Than氏らが新たに開発したADPと呼ばれる胸痛評価法は、主要有害心イベントの短期的なリスクが低く、早期退院が相応と考えられる患者を同定可能なことが、同氏らが行ったASPECT試験で示された。胸痛を呈する患者は救急医療部の受診数の増加を招き、在院時間の延長や入院に至る可能性が高い。早期退院を促すには、胸痛患者のうち主要有害心イベントのリスクが短期的には低いと考えられる者を同定する必要があり、そのためには信頼性が高く、再現性のある迅速な評価法の確立が求められている。Lancet誌2011年3月26日号(オンライン版2011年3月23日号)掲載の報告。ADPの有用性を検証する前向き観察試験ASPECT試験の研究グループは、急性冠症候群(ACS)が疑われる胸痛症状を呈し、救急医療部を受診した患者の評価法として「2時間迅速診断プロトコール(accelerated diagnostic protocol:ADP)」を開発し、その有用性を検証するプロスペクティブな観察試験を実施した。アジア太平洋地域の9ヵ国(オーストラリア、中国、インド、インドネシア、ニュージーランド、シンガポール、韓国、台湾、タイ)から14の救急医療施設が参加し、胸痛が5分以上持続する18歳以上の患者が登録された。ADPは、TIMI(Thrombolysis in Myocardial Infarction)リスクスコア、心電図、およびポイント・オブ・ケア検査としてのトロポニン、クレアチンキナーゼ MB(CK-MB)、ミオグロビンのバイオマーカーパネルで構成された。主要評価項目は、初回胸痛発作(初回受診日を含む)から30日以内の主要有害心イベントの発現とした。主要な有害心イベントは、死亡、心停止、緊急血行再建術、心原性ショック、介入を要する心室性不整脈、介入を要する重度の心房ブロック、心筋梗塞(初回胸痛発作の原因となったもの、および30日のフォローアップ期間中に発現したもの)と定義した。感度99.3%、特異度11.0%、陰性予測値99.1%3,582例が登録され30日間のフォローアップが行われた。この間に、421例(11.8%)で主要有害心イベントが発現した。ADPにより352例(9.8%)が低リスクで早期退院が適切と判定された。そのうち3例(0.9%)で主要有害心イベントが発現し、ADPの感度は99.3%(95%信頼区間:97.9~99.8)、陰性予測値は99.1%(同:97.3~99.8)、特異度は11.0%(同:10.0~12.2)であった。著者は、「この新たな胸痛評価法は、主要有害心イベントの短期的なリスクがきわめて低く早期退院が相応と考えられる患者を同定した」と結論し、「ADPを用いれば、全体の観察期間および胸痛による入院期間が短縮すると考えられる。ADPの実行に要する個々のコンポーネントは各地で入手可能であるため、健康サービスの提供に世界規模で貢献する可能性がある。より特異度の高い評価法のほうが退院数を増加させ得るが、安全性重視の観点から感度に重きを置くべきであろう」と指摘する。(菅野守:医学ライター)

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肥満を加味しても、心血管疾患リスク予測能は向上しない:約22万人の解析

欧米、日本などの先進国では、心血管疾患の従来のリスク因子である収縮期血圧、糖尿病の既往歴、脂質値の情報がある場合に、さらに体格指数(BMI)や腹部肥満(ウエスト周囲長、ウエスト/ヒップ比)のデータを加えても、リスクの予測能はさほど改善されないことが、イギリス・ケンブリッジ大学公衆衛生/プライマリ・ケア科に運営センターを置くEmerging Risk Factors Collaboration(ERFC)の検討で明らかとなった。現行の各種ガイドラインは、心血管疾患リスクの評価における肥満の測定は不要とするものから、付加的な検査項目とするものや正規のリスク因子として測定を勧告するものまでさまざまだ。これら肥満の指標について長期的な再現性を評価した信頼性の高い調査がないことが、その一因となっているという。Lancet誌2011年3月26日号(オンライン版2011年3月11日号)掲載の報告。58のコホート試験の個々の患者データを解析研究グループは、BMI、ウエスト周囲長、ウエスト/ヒップ比と心血管疾患の初発リスクの関連性の評価を目的にプロスペクティブな解析を行った。58のコホート試験の個々の患者データを用いて、ベースラインの各因子が1 SD増加した場合(BMI:4.56kg/m2、ウエスト周囲長:12.6cm、ウエスト/ヒップ比:0.083)のハザード比(HR)を算出し、特異的な予測能の指標としてリスク識別能と再分類能の評価を行った。再現性の評価には、肥満の指標の測定値を用いて回帰希釈比(regression dilution ratio)を算出した。むしろ肥満コントロールの重要性を強調する知見17ヵ国22万1,934人[ヨーロッパ:12万9,326人(58%)、北米:7万3,707人(33%)、オーストラリア:9,204人(4%)、日本:9,697人(4%)]のデータが収集された。ベースラインの平均年齢は58歳(SD 9)、12万4,189人(56%)が女性であった。187万人・年当たり1万4,297人が心血管疾患を発症した。内訳は、冠動脈心疾患8,290人(非致死性心筋梗塞4,982人、冠動脈心疾患死3,308人)、虚血性脳卒中2,906人(非致死性2,763人、致死性143人)、出血性脳卒中596人、分類不能な脳卒中2,070人、その他の脳血管疾患435人であった。肥満の測定は6万3,821人で行われた。BMI 20kg/m2以上の人では、年齢、性別、喫煙状況で調整後の、心血管疾患のBMI 1 SD増加に対するHRは1.23(95%信頼区間:1.17~1.29)であり、ウエスト周囲長1 SD増加に対するHRは1.27(同:1.20~1.33)、ウエスト・ヒップ比1 SD増加に対するHRは1.25(同:1.19~1.31)であった。さらにベースラインの収縮期血圧、糖尿病の既往歴、総コレステロール、HDLコレステロールで調整後の、心血管疾患のBMI 1SD増加に対するHRは1.07(95%信頼区間:1.03~1.11)、ウエスト周囲長1 SD増加に対するHRは1.10(同:1.05~1.14)、ウエスト/ヒップ比1 SD増加に対するHRは1.12(同:1.08~1.15)であり、いずれも年齢、性別、喫煙状況のみで調整した場合よりも低下した。従来のリスク因子から成る心血管疾患リスクの予測モデルにBMI、ウエスト周囲長、ウエスト/ヒップ比の情報を加えても、リスク識別能は大幅には改善されず[C-indexの変化:BMI -0.0001(p=0.430)、ウエスト周囲長 -0.0001(p=0.816)、ウエスト/ヒップ比 0.0008(p=0.027)]、予測される10年リスクのカテゴリーへの再分類能もさほどの改善は得られなかった[net reclassification improvement:BMI -0.19%(p=0.461)、ウエスト周囲長 -0.05%(p=0.867)、ウエスト/ヒップ比 -0.05%(p=0.880)]。再現性は、ウエスト周囲長(回帰希釈比:0.86、95%信頼区間:0.83~0.89)やウエスト/ヒップ比(同:0.63、0.57~0.70)よりもBMI(同:0.95、0.93~0.97)で良好であった。ERFCの研究グループは、「先進国では、心血管疾患の従来のリスク因子である収縮期血圧、糖尿病の既往歴、脂質値に、新たにBMI、ウエスト周囲長、ウエスト/ヒップ比の情報を加えても、リスクの予測能はさほど改善されない」と結論したうえで、「これらの知見は心血管疾患における肥満の重要性を減弱させるものではない。過度の肥満は中等度のリスク因子の主要な決定因子であるため、むしろ心血管疾患の予防における肥満のコントロールの重要性を強調するものだ」と注意を促している。(菅野守:医学ライター)

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化学療法後の切れ目ない医療の実践

2011年3月初旬、震災前の青森県三沢市にて第83回日本胃学会総会が開催された。大会3日目「化学療法後の切れ目ない医療の実践」と題したシンポジウムが行われた。このテーマは今回の会長である三沢市立三沢病院 坂田優氏の意向で主要演題として取り上げられた。がん診療連携拠点病院での緩和ケアが診療報酬加算の対象となったが、その要件の一つである緩和ケアチームのあり方について臨床現場での問題は多く、熱い論議が展開された。当シンポジウムは7人の演者が、基本講演と追加発言という形式で現場での取り組みについて発表を行った。基本講演から埼玉医科大学国際医療センター 奈良林至氏は、化学療法から全面的な緩和ケアに移行する時点で生じる診療の問題点を指摘した。わが国の固形がん治療は、診断から終末期にいたるまで外科医が担うという状況が永年続いていた。現在は、腫瘍内科医、放射線腫瘍医、緩和ケア医が併診するスタイルとなりつつあり、診療の経過のなかに多くの医療者が関わるようになったものの、化学療法から全面的な緩和ケアへの移行期については依然として診療の切れ目が顕著であるという。一般病棟で診療を選ぶか緩和ケア施設での診療を選ぶかは、患者の選択が重視されるべきである。しかし、実際には十分な情報がないまま短時間で患者は自分の将来を決定しなければならない。一方、医療者側も多くの人間が関わる中で、患者の病状や希望について十分な確認が行われていないといえる。医療者は、緩和ケア移行前から情報を共有し患者が納得して方向を決定するに十分な情報を提供する必要があると述べた。都立駒込病院 佐々木常雄氏は、終末期もがん薬物治療を継続するという診療形態が標準化する可能性と、それに対応できない現状の課題を指摘した。近年、分子標的治療薬では病状が進行しPD(progressive disease)となった後も薬剤投与を継続することで生存率向上を示すエビデンスがいくつか出てきている。一方、患者側からも化学療法が効果を示さなくなった後も治療を望む声は多く聞かれる。このように薬物治療の進化によるエビデンスの出現と患者の要望を考えると、終末期も薬物を用いた切れ目のない医療を提供する必要が出てくると予想される。しかし、現行のホスピスなどでは抗がん剤治療について制度上の制限があり、この診療形態に適応することは困難であるという。近い将来、こういった治療の流れに対応する必要が出てくるであろうと述べた。古川浩一氏インタビュー講演後、追加発言シンポジストの一人である新潟市民病院 古川浩一氏に話を伺った。古川氏の施設は600床以上の大病院であり、がん拠点病院である。緩和外来はあるものの、がん診療医ではなく総合診療科での開設であり受診者は2名たらず。また、緩和ケア病棟がないという理由で、緩和ケア担当医はいても実際には外科医を含めたがん診療を担う医療者が緩和ケアを行い、終末期診療を担い最期を看取っている構造は従来と変わらない。他のがん拠点病院でもこのような施設は少なくはなさそうである。そこには、がん医療が抱えるいくつかの問題点があるといえそうだ。 患者中心でないチーム医療の落とし穴: 緩和ケアの認知と普及は関係者の努力の甲斐あってめざましいものがある。その一方で、緩和ケアチームと称していても単なるグループとしての活動が中心となっていないだろうかと古川氏は指摘する。チームメンバーも“チーム”を作るために“召集”され、活動のための“活動”に重きが置かれ、患者中心に作られるチームであるはずが、初期の目的から離れて制度のために作られるチームとなってしまうことが危惧される。たとえば、緩和ケアチームチームの介入は活動を優先するあまり“イニシアチブを担い治療方針の決定を下すのは誰なのか所在がはっきりしない事態”が発生している。結果として、かえって患者の利益が損なわれたりすることはないだろうかと古川氏はいう。フラットな関係でもリーダー(司令塔)がいれば、情報が集約され適切な治療方針の決定ができ、不要なリスクも回避できる。地域のニーズや医療水準を加味した患者中心のチーム医療に回帰し、化学療法、緩和ケア、在宅医療といった枠を超えたより包括的なチームを再構築すべき段階が来ている。 他施設移行における問題: 患者は“誰が自分を診てくれるのか”“頼れるべき人なのか”わからないまま施設を移らざるを得ない。これはいずれの施設に移行する場合も大きな問題であるが、なかでもホスピスとの連携には制度上の段差があり敷居は高いという。病院とホスピス転移の際の段差をどうするかが今後の大きな問題といえそうである。一方、在宅医療との連携は良好である。古川氏の施設では在宅移行する場合、在宅診療医が各領域の担当スタッフを連れて来院し患者にあいさつをする。患者には“あなたの周りにはこんなに信頼できるスタッフがいて支えています”ということが目に見えてわかる。病院も在宅移行後の対応を保障している。患者にとっては初期の主治医との関係が途切れることなく心強いし、在宅診療医にとってはネットワーク時の障害である後方ベッド確保が保障される。古川氏は、「こういった取り組みを行うことで、参加者が増えネットワークができ、さらに切れ目なき医療モデルになると思う。とはいえ、現状ではまだまだ在宅ケアに取り組む多くの医療者の熱意に依存していることを忘れてはいけない」という。病院、ホスピス、在宅と連携して、今後ますますより充実した継続可能な制度設計をしていく必要があるといえる。最後に古川氏は、「がん対策基本法は、この5年間を振り返り次の5年間をどうするかという段階にきている。現実の医療を鑑みながら患者中心のチーム医療の在り方を見誤ることなく次の5年を考えるべきでしょう」と語った。(ケアネット 細田 雅之)

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