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口が青く染まって昏睡状態、何の中毒? 【中毒診療の初期対応】第3回

<今回の症例>年齢・性別62歳・男性患者情報自宅近くの公園のベンチで横になっているのを通りがかりの近所の女性が発見するも、呼びかけても反応がない状態であったため、救急センターに搬送された。初診時は鼾様呼吸、呼吸数12/分、SpO2 96%(室内気)、血圧124/78mmHg、心拍数62bpm、意識レベルJCS 100、瞳孔 左右2.5mm同大、対光反射+、体温36.4℃であった。身体所見では、口唇、歯牙、口腔内は青く染まっていた。気管挿管により気道を確保し、経鼻胃管を挿入したところ、青色の液体が吸引された。なお、病院にかけつけた妻が患者の所持品を確認すると財布の中身がなくなっていた。検査値・画像所見末梢血では、WBC 6.30×103/mm3、Hb 14.2g/dL、Ht 44.0%、Plt 109×103/mm3。生化学検査では、TP 7.2g/dL、AST(GOT)21IU/L、ALT(GPT)20IU/L、LDH 276IU/L、CPK 84IU/L、AMY 211IU/L、Glu 102mg/dL、BUN 12mg/dL、Cr 0.7mg/dL、Na 142mEq/L、K 4.1mEq/L、Cl 106mEq/Lであった。動脈血ガス(室内気)では、pH 7.364、PaCO2 44.6Torr、PaO2 82.5Torr、HCO3- 23.7mmol/L、BE -0.4mmol/L、乳酸値 1.4mmol/Lであった。尿中薬物簡易スクリーニングキットでBZO(ベンゾジアゼピン類)が陽性であったが、患者の「お薬手帳」ではベンゾジアゼピン受容体作動薬の処方歴は確認できなかった。念のためフルマゼニル0.2mgを静注したところ20秒後には開瞼し、従命が認められた。しかし、患者は20分後には再び昏睡状態となった。入院後の経過ベンゾジアゼピン受容体作動薬中毒と診断した。活性炭50gを微温湯300mLに懸濁して経鼻胃管より注入し、輸液療法のみで経過観察入院とした。翌日には覚醒したため気管チューブを抜管した。患者は薬物の摂取を否定したが、「公園のベンチに座って休んでいたところ、見知らぬ若い女性に声をかけられ、ラムネの瓶をもらって一緒に飲んだ。それ以降の記憶がない」と話した。患者の同意を得て、警察に通報した。<問題1><解答はこちら>2.フルニトラゼパム1)上條 吉人編. 臨床中毒学 第2版. 医学書院. 2023.

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帯状疱疹ワクチン、認知症予防だけでなく進行も抑制か/Cell

 認知症の発症と進行には神経炎症が関連しており、神経向性ウイルスが認知症の発症や進行の一因となっている可能性が指摘されている。今年に入って、帯状疱疹ワクチンが認知症発症を予防する可能性があるとの報告1)があったが、同じ米国・スタンフォード大学の研究グループが、帯状疱疹ワクチン接種と軽度認知障害発症、さらにすでに認知症を発症した人の死亡リスクとの関連について調査を行い、結果がCell誌オンライン版2025年12月2日号に掲載された。 研究者らは、ウェールズのプライマリ診療所の電子カルテのデータから1925年9月1日~1942年9月1日生まれの30万4,940例を抽出、うち認知障害歴のない28万2,557例を軽度認知障害(MCI)発症リスクの解析対象とし、すでに認知症と診断された1万4,350例を認知症関連死亡の解析対象とした。ウェールズでは帯状疱疹ワクチン接種プログラム開始時にワクチンの数に限りがあったため、開始直後に80歳の誕生日を迎えた人は1年間ワクチン接種対象となったのに対し、直前に誕生日を迎えた人は生涯にわたって対象外となり、ワクチン接種率に大きな差が出たことを利用し、接種資格の有無と、実際の接種の有無で比較した。 主な結果は以下のとおり。・フォローアップ中にMCI発症リスク解析対象の7.3%(2万712例)がMCIと診断された。ワクチン接種資格あり群(資格あり群)ではMCI発症が1.5パーセントポイント減少し、実際にワクチンを接種した群(接種群)は3.1パーセントポイント減少した。・認知症関連死亡解析対象の49.1%(7,049例)が認知症関連で死亡した。資格あり群では認知症関連死が8.5パーセントポイント低下し、接種群は29.5パーセントポイント減少した。全死亡率においても資格あり群は6.5パーセントポイント、接種群は22.7パーセントポイント低下した。・MCI発症リスクおよび認知症関連の死亡リスク低減効果は、女性において有意差が認められた。一方で男性では統計学的な有意差は認められなかった。・認知症の病型別では、混合型認知症において、ほかの認知症(アルツハイマー型や血管性)よりも相対的な効果が高い傾向が示唆された。 研究者らは「この研究は、帯状疱疹ワクチンが、早期のMCIから認知症の最終段階である死亡に至るまで、認知症のリスクと進行を抑制する可能性を示した初のエビデンスである。今回は生ワクチンが対象だったが、近年では組み換えワクチンが普及しており、これらが同様の認知保護効果を持つかは今後の研究で明らかにする必要がある。また本研究は、交絡因子や制度的バイアスの可能性は完全には排除できず、今後の大規模ランダム化比較試験が待たれる」とした。

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片頭痛予防のためのフレマネズマブ長期使用に関する実臨床データの解析結果

 片頭痛予防を目的としたフレマネズマブの長期使用に関して、実臨床におけるデータは限られている。このギャップを埋めるため、デンマーク・コペンハーゲン大学病院のMessoud Ashina氏らは、フレマネズマブの実臨床における有用性を評価したPEARL試験の第3回中間解析を行い、最長12ヵ月間投与した場合の長期的な有効性、安全性、忍容性を評価した。Neurological Sciences誌2025年12月号の報告。 PEARL試験は、欧州11ヵ国で実施された24ヵ月間のプロスペクティブ第IV相観察試験である。対象は、慢性または反復性片頭痛と診断され、フレマネズマブ(225mg月1回または675mg年4回)の皮下投与を受け、6ヵ月以上の治療を完了した18歳以上の成人患者。主要エンドポイントは、治療開始後6ヵ月間における1ヵ月当たりの片頭痛日数(MMD)が50%以上減少した患者の割合と定義した。副次エンドポイントは、平均MMD、急性片頭痛薬の使用、片頭痛評価尺度(MIDAS)と頭痛影響テスト(HIT)で測定した片頭痛関連障害スコアのベースラインから12ヵ月目までの平均変化量とした。安全性は、有害事象データの収集により評価した。 主な結果は以下のとおり。・データカットオフ(2022年9月22日)時点で登録された1,140例のうち968例を有効性の解析対象に含めた。・主要エンドポイントは、58.5%の患者で達成した。・12ヵ月にわたり、MMD、急性片頭痛薬の使用、障害スコアの持続的な減少が観察された。・新たな安全性シグナルは検出されなかった。 著者らは「PEARL試験の第3回中間解析の結果は、大規模な実臨床の片頭痛患者におけるフレマネズマブの長期的有効性を示すエビデンスである。これらの結果は、片頭痛の予防戦略としてのフレマネズマブの継続的な使用を支持するものであり、片頭痛の管理に実臨床のエビデンスを統合することの価値を強調するものである」としている。

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多疾患併存に迷わない:高齢者診療の「5つの型」実践フレーム【こんなときどうする?高齢者診療】第17回

CareNeTVスクール「Dr.樋口の老年医学オンラインサロンアーカイブズ」から、高齢者診療に役立つトピックをお届けします。今回はマルモ(多疾患併存)患者の治療に向き合うための型を学びます。高齢者の多疾患併存(マルモ)は、“ガイドラインの足し算”では解けません。(1)意向 (2)エビデンス適用 (3)予後×時間 (4)実行可能性 (5)最適化の5項目で落としどころを構造化しましょう。今回は、初めに皆さんも出合ったことがあるかもしれない典型的なマルモの症例を5つ挙げてみます。(1)90歳男性 心房細動があるものの、抗凝固薬を飲みたくない(2)85歳女性 高脂血症に対して長年スタチンを服用している(3)80歳女性 大腸がん検査の大腸内視鏡を勧められている既往症糖尿病、心不全、慢性腎機能不全(4)88歳女性 15種類の薬を服用中既往症認知症・心不全・骨粗鬆症・糖尿病・慢性腰痛(5)92歳男性 再発する心不全急性増悪発作に対して、埋め込み式除細動器を勧められている既往症認知症・慢性変形性関節症、抑うつ、不安症挙げたケースはいずれも、高齢者診療で頻繁に遭遇する場面です。65歳以上の2人に1人は、3つ以上の慢性疾患を有する状態・マルモ(多疾患併存)です。そして、同じ疾患であっても、AさんとBさんでは、併存疾患の状況や本人の価値観、自立度や家族との関係・住んでいる土地や利用できるサービスなどの条件がまったく異なります。1人の患者が持つ疾患の複雑性に加えて、身体認知機能・心理社会的な複雑性も考慮したうえで、患者それぞれに適した医療やケアの落としどころを見つけることが高齢者を診るときに欠かせません。ですが、複数の疾患ガイドラインをあてはめて治療してもよいアウトカムにつながらないのは皆さんもすでにご経験なさっていると思います。また高齢者やマルモ患者は臨床研究の対象から除外されていることが多く、ガイドラインの適応範囲に入っていないことがほとんどです。つまり65歳以上の約半数が3疾患以上のマルモ。併存疾患だけでなく家族・住環境・利用資源が異なる。ガイドライン合算=最適とは限らない(除外基準・一般化の限界)。ではどうしたらいいのか?頭を抱えて動けなくなって当たり前です。だからこそ落としどころを「5つの型」で探ることが思考停止に陥らないために重要なのです。マルモに向きあう5つの型そこで今回は、米国老年医学会が出している1)、高齢者のマルモに向き合う型をご紹介します。状況に応じて、以下の5つの項目を確認することで落としどころを見つけやすくなります。1:意向(What Matters)- 患者の意向・希望・気がかりなこと患者が何を望んでいるか。あるいは何はしたくないか。たとえば自立した生活や症状がコントロールされること、身体認知機能の維持を望む方は多くいます。逆にしたくないことやこうなったら死んだほうがまし、ということを聞くことで理由が明らかになる場合もあります。2:エビデンス適用の可能性 - エビデンスが目の前の患者に使えるか?参照しようとしているガイドラインや研究において、その推奨は誰を対象に、どのアウトカムに、どの時間軸で価値があるか。除外基準や外的妥当性を確認し、目の前の患者に適用できるか?患者の優先事項と統合することができるか、を検討しましょう。3:予後×時間 - 患者の予後は?患者の希望する治療/ケアと、その治療の効果が発現するまでにかかる時間を考慮にいれることは不可欠です。4:実行可能性 - ケアは実行可能か?負担は大きすぎないか?継続できるか?治療やケアの負担が大きすぎないか、本人や介護者が継続できるケアの範囲に治療方針は収まっているかを確認することが必要です。5:最適化 - 最適化のために何ができるか?患者のおかれた状況において、ベネフィットを増やしリスクを小さくするために何をしたらいいかを考えることです。最初に挙げた5つの症例に、これらの型から必要な項目を使うとどうなるか、みてみましょう。(1)90歳男性 抗凝固薬NO!心房細動があるものの、抗凝固薬を飲みたくない→1:意向を深掘りし、抗凝固薬を飲みたくないという意向の背後にどんな希望や気がかりがあるのかを探るのが近道です。それにより本人は頻回採血や通院の負担を懸念していることが明らかになり、選択肢として、生活背景に合う抗凝固法(採血不要のDOAC等)を検討し、転倒・出血リスク評価、目標の再設定が挙がってきます。このケースでは一時的にアスピリン投与としましたが、定期的に再検討し、本人の価値観×安全性の最適点を探る視点が必要です。(2)85歳女性 高脂血症に対して長年スタチンを服用してきた…これからも続ける?→2:エビデンス適用可能性と、3:予後×時間 の2項目が判断のポイントです。高脂血症に対するスタチンは、二次予防や高リスク群の一次予防では有益ですが、高齢者(75~80歳以降)の一次予防はエビデンスが限定的です2)。さらに、スタチンのベネフィットの発現は2~5年後とされています。予後や本人の優先事項と照合し、減量/中止を含めて再評価するのが妥当です3)。とすると、この方が長年スタチンを服用してきたとしても、現在のエビデンスに照らし合わせると効果が見込めない薬として中止にするほうが妥当でしょう。(3)80歳女性 既往は糖尿病・心不全・慢性腎機能不全。大腸がん検査のために大腸内視鏡を勧められている→3:予後×時間を見積もり、治療介入の効果発現の時間と併せて考えるのが適当です。大腸がん検診が利益になるのはおよそ10年後。この方の既往症から予測すると、検査のメリットが発生する前に予後が障害される可能性が高く、大腸内視鏡は不適当と考えられます。娘さんを含めて、予後予測をもとに話合いを設定するとよいでしょう。(4)88歳女性 15種類の薬を服用中。マルモ(認知症・心不全・骨粗鬆症・糖尿病・慢性腰痛)。→4:ケアの実行性について確認する認知機能が低下してきている状態で15種類を飲み続けるのは現実的ではありません。それぞれの疾患に対してガイドライン通りに処方すると15種類になりますが、本人や介護者の負担が大きすぎて服薬自体ができないならば、残す薬を絞る、あるいは服用しないといった選択肢も視野にいれた調整を行うのが妥当でしょう。(5)92歳男性 再発する心不全急性増悪発作があり、埋め込み式除細動器を勧められる。認知症・慢性変形性関節症、抑うつ、不安症の既往。→5:最適化を考えるこの患者の場合、認知症や不安症に加えて変形性関節症があり、家を出て入院し、手術でデバイスを埋め込むという一連の流れに、身体的・心理的負担が大きいことが予想できます。入院から退院までの間にパニックに陥り転倒するといったリスクも考えられます。ガイドラインではデバイス埋込みが推奨されますが、”この患者”にとってデバイスを埋め込むことが、本当にQOLの向上につながるのか、患者にメリットがあるのか、あるとすれば何か、延命することが本当にベネフィットか?といったゴールの再確認をする必要があると考えます。このように、一つの項目をあてはめるだけでも、すべきことがクリアになると思います。ケースによっては5つすべてを検討する場合もあるかもしれません。日ごろ5つのMを使うときに、これらの項目を少しずつ加えて確認することをおすすめします。明日のカンファで(1)意向 (2)エビデンス適用 (3)予後×時間 (4)実行 (5)最適化を確認してみましょう。迷いが整理され、次の一手が見えてきます。 ※今回のトピックは、2022年10月度、2024年11月度の講義・ディスカッションをまとめたものです。CareNeTVスクール「Dr.樋口の老年医学オンラインサロンアーカイブズ」でより詳しい解説やディスカッションをご覧ください。参考 1) Cynthia Boyd,et al. J Am Geriatr Soc. 2019 Apr;67(4):665-673. 2) Han BH, et al. JAMA Intern Med. 2017;177(7):955-965. 3) Yourman LC, et al. JAMA Intern Med. 2021;181(2):179-185.

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失敗しない理想的なクリスマスプレゼントとは

 「クリスマス」と聞いて連想するイメージは何があるだろうか。ケーキ、ごちそう、キャンドル、雪などさまざまあるが、「楽しみはプレゼント」と回答する人も多いのではないだろうか。「どのようなプレゼントが喜ばれるのか」をテーマにデンマークのコペンハーゲン大学健康科学部のVictor Alexander Gildberg氏らの研究グループは、約30人の健康成人に理想的なクリスマスプレゼントについて調査した。その結果、満足度の高いプレゼントには「大きい」「重い」「金色の包装紙」などの傾向がみられた。この結果はUgeskrift for Laeger誌12月8日号に掲載された。喜ばれるプレゼントに決まりはあるのか 研究グループは、クリスマスプレゼントの満足度について、どの特徴が受け手の満足を最も効果的に高めるかを調査した。方法として、21~66歳の31人について、プレゼントの「包装・サイズ・重量・質感・付随するストーリー」が異なる27種類のプレゼントを評価した。受取人の満足度はクリスマス修正版ウォン・ベイカー尺度(0~10点)で評価した。 主な結果は以下のとおり。・自己申告によるクリスマスへの満足度中央値は0~10点尺度で8点(四分範囲6~9点)。・赤包装の基準ギフトと比較し、以下の要素が満足度を有意に増加させた。 金色の包装紙(+1.48)、リボン(+1.81)、柔らかさ(+1.90)、陶器が割れている音(+2.61)、長文で心のこもったクリスマスカード(+5.42)。大きい(+3.55)および重い(+3.48)プレゼントは、小さいまたは軽いものより好意的に受け取られた。・高価(+3.19)または入手困難(+3.23)という口頭の説明も評価を高めた。・費用対効果の観点では、簡潔な説明を添えた小さなプレゼントが、時間と材料単位当たりの満足度が最も高くなった。・別の比較実験では、500デンマーククローネ(1万2,500円相当/2025年12月18日現在)のギフトカードまたは10mL生理食塩水注射器を入れた同一包装のプレゼントでは異なる結果が得られた。プラセボ(生理食塩水)のプレゼントの方が有意に高い評価を得た(6.90 vs.5.03、p=0.005)。 以上の結果から研究グループは、「クリスマスのプレゼントの満足度を最大化するには、プレゼントは大きく、重く、柔らかく、金色の包装紙とリボンで包まれ、長文の心のこもったカードと説得力のある背景ストーリーを添えるべきである」と結論付けている。

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早期アルツハイマー病に対するドナネマブの78週間二重盲検長期延長試験の結果

 ドナネマブのピポタルスタディである国際第III相試験「TRAILBLAZER-ALZ 2(AACI)試験」では、76週間のプラセボ対照期間中に、早期アルツハイマー病患者の臨床進行をドナネマブが有意に遅延させることが示された。米国・イーライリリーのJennifer A. Zimmer氏らは、AACI試験を完了した患者に対し、78週間の二重盲検長期継続試験を実施し、その結果を報告した。The Journal of Prevention of Alzheimer's Disease誌オンライン版2025年12月1日号の報告。 対象は、AACI試験を完了した参加者のうち、ドナネマブ群に割り当てられた患者(継続群)およびプラセボ群に割り当てられた患者(投与開始群)。アミロイド治療コース完了基準を満たした患者は、プラセボへ切り替えた。外部対照コホートとして、AD Neuroimaging Initiative(ADNI)の参加者を用いた。 主な結果は以下のとおり。・継続群では、ADNI対照群と比較し、ドナネマブ投与により認知症の重症度評価尺度CDR-SBにおける疾患進行が、3年時点で有意な遅延を認めた(-1.2ポイント、95%信頼区間[CI]:-1.7~-0.7)。・投与開始群では、ADNI対照群と比較し、76週時点においてCDR-SBにおける疾患進行の遅延が認められた(-0.8ポイント、95%CI:-1.3~-0.3)。・52週までに治療を完了した患者においても、3年時点でCDR-SBにおける疾患進行が同様に遅延した。・継続群は、投与開始群と比較し、3年間のCDR-Globalにおける疾患進行リスクが有意に低かった(ハザード比:0.73、p<0.001)。・両群ともに、ドナネマブ投与開始後76週目にPET評価を行った参加者の75%超がアミロイド除去(24.1センチロイド未満)を達成していた。・長期試験のデータを事前モデルに追加することで、再蓄積率の中央値は年間2.4センチロイドと予測された。・これまでの報告と比較し、ドナネマブの安全性プロファイルについては、新たな安全性シグナルは認められなかった。 著者らは「投与期間を3年間に限定することで、ドナネマブ投与を受けた早期アルツハイマー病患者は、臨床的ベネフィットの増加と一貫した安全性プロファイルを示すことが明らかとなった」と結論付けている。

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血圧変動が大きいと認知症リスクが高い?

 日本の国民健康保険データベースを用いた大規模な後ろ向きコホート研究において、血圧変動が大きいことは、降圧薬治療の有無にかかわらず認知症発症リスクの上昇と関連していたことが示された。この関連は、降圧薬の種類や処方数、服薬アドヒアランスを考慮しても認められた。佐藤 倫広氏(東北医科薬科大学)らが、本研究結果をHypertension Research誌オンライン版2025年11月10日号で報告した。 研究グループは、DeSCヘルスケアが提供する日本の国民健康保険データベースを用いて、5回の特定健診データ(血圧値含む)が得られ、死亡情報(資格喪失情報より特定)が取得可能であった50歳超の30万1,448例を解析対象とした。5回の特定健診における収縮期血圧の変動係数(SBP-CV)を用いて健診ごとの血圧変動を評価し、認知症発症リスク(抗認知症薬の新規処方を代替指標として定義)との関連を検討した。解析には死亡を競合リスクとしたFine-Grayモデルを用いて、ベースライン前365日以内の降圧薬処方の有無により未治療群と治療群に分けて評価した。治療群においては、降圧薬の種類や処方数、Medication Possession Rate(MPR)で評価した服薬アドヒアランスも調整して解析した。 主な結果は以下のとおり。・対象のうち男性の割合は38.6%、平均年齢は66.6歳であった。・追跡期間(平均:未治療群2.20年、治療群2.11年)中に、664例(未治療群366例、治療群298例)が認知症を発症した。競合リスクとしての死亡は未治療群1,254例、治療群1,115例に認められた。・SBP-CVの最高分位(第6分位)群は、治療の有無にかかわらず認知症リスクが最も高かった。一方で、第1~5分位では一定の傾向はみられなかった。・未治療群では、SBP-CV第6分位群(SBP-CV≧9.83%)は第1~5分位群と比較して、有意に認知症発症リスクが高かった(ハザード比[HR]:1.50、95%信頼区間[CI]:1.17~1.92)。・治療群では、降圧薬の種類や服薬アドヒアランスの調整後においても、SBP-CV第6分位群(SBP-CV≧10.67%)は第1~5分位群と比較して、有意に認知症発症リスクが高かった(HR:1.43、95%CI:1.09~1.89)。・層別解析の結果、治療群においてHbA1c値との有意な交互作用が認められ(交互作用のp=0.024)、HbA1cが6.5%以上の集団ではSBP-CV増大による認知症発症リスクの上昇が顕著であった(SBP-CV第6分位群の第1~5分位群に対するHR:2.84、95%CI:1.57~5.14)。・降圧薬の種類や処方数、服薬アドヒアランス不良(MPR 80%未満)による有意な交互作用は認められなかった。 著者らは「特定健診ごとの血圧変動が大きいこと(SBP-CV≧10%程度)は、降圧薬治療の有無にかかわらず認知症発症リスクの上昇と関連していた。降圧薬治療中の患者において、降圧薬の種類や処方数、アドヒアランスを考慮してもこの関連は維持され、とくに血糖コントロール不良例で顕著であった。認知症発症リスクを評価する上で、血圧変動のモニタリングが有用である可能性がある」とまとめている。

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ベンゾジアゼピン系薬中止に対する障壁とその要因とは

 高齢者におけるベンゾジアゼピン受容体作動薬(BZD)の中止では、さまざまな阻害要因が存在する。これら阻害因子を特定し、優先順位付けすることは、BZDを中止するための効率的な介入方法を作成するうえで不可欠である。ベルギー・Universite Catholique de LouvainのVladyslav Shapoval氏らは、高齢者におけるBZD中止の阻害因子およびBZDの減量または中止に対する意欲に関連する因子を特定するため、横断調査を実施した。Age and Ageing誌2025年11月28日号の報告。 対象は、欧州6ヵ国の医療機関から募集した睡眠障害の治療のためBZDを使用している65歳以上の高齢者。BZD中止の阻害因子は、行動の個人的および状況的決定要因を体系的に特定する理論的領域フレームワーク(TDF)に基づく27項目の質問票を用いて特定した。分析には、記述統計分析を用いた。患者のBZDの減量または中止への意欲に関連する因子の特定には、多変量ロジスティック回帰分析を用いた。 主な結果は以下のとおり。・本研究の参加者183例のうち、医師の勧めがあればBZDを減量する意欲があると回答した患者は59.1%、中止する意欲があると回答した患者は42.7%であった。・参加者の半数は、中止が必要な理由を理解していた。・多くの参加者において、TDFの複数の領域において阻害因子が特定された。・阻害要因としては、BZDに対する「高い満足度」「副作用リスクが低い」と認識されていること、「対処スキルや中止能力が限られている」こと、「中止への不安」「医師やソーシャルネットワークからのサポート不足」などが挙げられた。・TDFの目標、感情、社会的影響といった領域のスコアが高いほど、BZDを減量する意欲が高いことが示された。・これらの領域に加え、強化、環境的背景、リソースも、中止する意欲が高いことと関連していた。 著者らは「本知見は、高齢者のBZD中止における期間と課題の両方を浮き彫りにしている。約半数の患者は、BZDを中止する意欲があるものの、効果的にBZD中止を行うためには、多くの行動領域にまたがる障壁に対処できる介入が求められる」とまとめている。

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日本人統合失調症患者における抗精神病薬の治療パターンと機能アウトカムとの関係

 抗精神病薬の多剤併用や長時間作用型注射剤(LAI)の使用などの治療パターンは、統合失調症患者の機能アウトカムに影響を及ぼすのか。実臨床において、この課題に対する検討は、いまだ十分になされていない。福島県立医科大学の森 湧平氏らは、抗精神病薬の治療パターンと機能アウトカムとの縦断的な関係を明らかにするため、慢性期統合失調症患者を対象に10年間のレトロスペクティブ研究を実施した。Journal of Psychiatric Research誌オンライン版2026年2月号の報告。 対象は、日本人慢性期統合失調症患者114例。1ヵ月当たりの全般的機能評価(GAF)スコア(122ヵ月以上)と抗精神病薬の治療パターン(多剤併用、LAI使用、クロルプロマジン[CP]換算量)との関係を評価した。前月の治療パターンが翌月のGAFスコアを予測するかを、lagged線形混合効果モデルを用いて検証した。抗精神病薬の累積投与量と最終GAFスコアおよび10年間の変化の評価には、最小二乗回帰分析を用いた。未治療期間により層別化し、サブグループ解析を行った。 主な結果は以下のとおり。・GAFスコアは、前月の多剤併用(推定値:+1.50±0.14、p<0.001)およびLAI使用(推定値:+1.89±0.27、p<0.001)と有意な正の関連を示した。また、前月のCP換算量(推定値:3.7×10-3±1.8×10-4、p<0.001)と有意な負の関連が認められた。・入院は、機能アウトカムと負の関連を示した(β=-0.24、p=0.038)。・多剤併用、LAI使用、CP換算量の累積は、最終的なGAFスコアおよび10年間のGAFスコアの変化の両方において有意な関連が認められなかった。・未治療期間によるサブグループ解析では、すべてのモデルにおいて統計的に有意な結果は示されなかった。しかし、未治療期間が12ヵ月未満の患者では、教育水準と入院回数が長期的な機能アウトカムに影響を及ぼすことが示唆された。 著者らは「抗精神病薬の多剤併用およびLAI使用は、短期的なGAFスコアの改善と関連していたが、高用量での使用は機能アウトカム低下を予測した。未治療期間に基づく解析では、全体として有意な関連は認められなかった」としている。

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中高年の慢性不眠症、太極拳は有効か/BMJ

 中国・香港大学のParco M. Siu氏らは、中高年者の慢性不眠症の管理において、太極拳は第1選択治療とされる「不眠症に対する認知行動療法(cognitive behavioural therapy for insomnia:CBT-I)」と比較して、3ヵ月の時点(介入終了時)では不眠症の改善効果が劣ったが、15ヵ月後には非劣性を達成することを示した。研究の成果は、BMJ誌2025年11月26日号に掲載された。香港の単施設の無作為化非劣性試験 本研究は、香港の単施設で実施した評価者盲検無作為化非劣性試験であり、2020年5月~2022年7月の期間に参加者を募集した(香港大学General Research Fund of Research Grants Councilの助成を受けた)。 『精神疾患の診断・統計マニュアル第5版(DSM-5)』に基づき慢性不眠症と診断された年齢50歳以上の中国人を対象とした。 被験者を、太極拳またはCBT-Iを受ける群に無作為に割り付けた。介入は、3ヵ月間、グループ形式で行い、参加者は1回1時間の講習を週2回、合計24回受けた。 主要アウトカムは、介入終了時(3ヵ月後)と介入終了から12ヵ月の時点(15ヵ月後)における不眠重症度指数(Insomnia Severity Index:ISI)で評価した自覚的な不眠症重症度のベースラインからの変化量とした。ISIは7つの評価項目から成り、それぞれ5段階(0~4点)のリッカート尺度で評価し、合計0~28点(高点数ほど不眠症の重症度が高い)であった。非劣性マージンは4点(中等度の改善を検出する最小重要差である8点の50%)とした。3ヵ月時に両群とも改善したが、太極拳群で劣った 200例を登録し、100例を太極拳群(平均年齢64.83[SD 6.31]歳、女性77%、平均ISI 16.45[SD 3.69]点)、100例をCBT-I群(63.76[6.15]歳、84%、17.41[4.42]点)に割り付けた。 per-protocol解析では、ベースラインから3ヵ月時までに、ISIスコアが太極拳群で6.67(95%信頼区間[CI]:5.61~7.73)点低下し、CBT-I群では11.19(10.06~12.32)点低下した。群間差は4.52(-∞~5.81)点であり、95%CIの上限値が非劣性マージンを超えたため、有効性はCBT-I群に比べ太極拳群で劣ることが示された。 また、15ヵ月時のper-protocol解析では、ISIスコアが太極拳群で9.51(95%CI:8.47~10.54)点低下し、CBT-I群では10.18(8.97~11.40)点低下していた。群間差は0.68(-∞~2.00)点と、95%CIの上限値が非劣性マージン内であったため、CBT-I群に対する太極拳群の非劣性が確認された。 ITT解析の結果(ISIスコアの変化量の群間差:3ヵ月時3.85[-∞~5.46]点、15ヵ月時0.71[-∞~2.28]点)は、per-protocol解析と一致していた。不眠症寛解率、治療反応率も同様の結果 不眠症寛解率(DSM-5の不眠症の判定基準を満たさない参加者の割合)は、3ヵ月時(83.3%vs.56.1%、p<0.001)はCBT-I群で有意に優れたが、15ヵ月時(63.4%vs.76.5%、p=0.067)には差を認めなかった。 また、治療反応率(ISIの8点以上の低下を達成した参加者の割合)も、3ヵ月時(77.4%vs.43.9%、p<0.001)はCBT-I群で有意に良好であったが、15ヵ月時(73.2%vs.62.4%、p=0.137)には差がなくなった。 介入期間中の有害事象の発現は、両群とも観察されなかった。 著者は、「これらの知見は、中高年の慢性不眠症患者の長期管理における代替療法として、太極拳の使用を支持するものである」「太極拳群の36.5%が15ヵ月時の評価の後も練習を継続していたが、CBT-I群で継続していたのは15.9%であった。これは、介入終了後の結果に影響を及ぼしており、太極拳の持続的な効果を裏付けるものである」としている。

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認知症リスク低下と関連しているワクチン接種は?

 高齢者で多くみられる認知症は、公衆衛生上の優先事項である。しかし、認知症に対するワクチン接種の有用性については、十分に解明されていない。イタリア・National Research CouncilのStefania Maggi氏らは、一般的な成人向けのワクチン接種が認知症リスク低減と関連しているかを評価するため、システマティックレビューおよびメタ解析を実施した。Age and Ageing誌2025年10月30日号の報告。 2025年1月1日までに公表された研究をPubMed、Embase、Web of Scienceよりシステマティックに検索した。対象研究は、50歳以上の成人において、ワクチン接種を受けた人と受けていない人の間で認知症および軽度認知障害(MCI)の発症率を比較した観察研究とした。4人の独立したレビュアーがデータを抽出し、ニューカッスル・オタワ尺度を用いて研究の質を評価した。リスク比(RR)と95%信頼区間(CI)の算出には、ランダム効果モデルを用いた。主要アウトカムは、認知症(そのサブタイプを含む)の発症率とした。 主な結果は以下のとおり。・分析対象研究は21件(参加者:1億403万1,186例)。・帯状疱疹ワクチン接種は、すべての認知症(RR:0.76、95%CI:0.69~0.83)およびアルツハイマー病(RR:0.53、95%CI:0.44~0.64)のリスク低下と関連していた。・インフルエンザワクチン接種は、認知症リスクの低下と関連しており(RR:0.87、95%CI:0.77~0.99)、肺炎球菌ワクチン接種もアルツハイマー病リスクの低下と関連していた(RR:0.64、95%CI:0.47~0.87)。・破傷風、ジフテリア、百日咳の三種混合ワクチン接種も、認知症発症リスクの有意な低下と関連していた(RR:0.67、95%CI:0.54~0.83)。 著者らは「成人に対するワクチン接種、とくに帯状疱疹、インフルエンザ、肺炎球菌、三種混合のワクチン接種は、認知症リスクの低下と関連している。認知症予防のための公衆衛生施策に、ワクチン接種戦略を組み込むべきである」と結論付けている。

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Long COVIDの経過は8つのタイプに分かれる

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の罹患後症状、いわゆるlong COVIDは、一般に、新型コロナウイルスへの感染後に、疲労感やブレインフォグ、めまい、動悸などのさまざまな症状が3カ月以上持続する慢性疾患とされている。このほど新たな研究で、long COVIDの経過は、症状の重症度、持続期間、経過(改善傾向か悪化傾向か)により8つのタイプに分類されることが示唆された。米ハーバード大学医学大学院のTanayott Thaweethai氏らによるこの研究の詳細は、「Nature Communications」に11月17日掲載された。 Thaweethai氏らはこの研究で、RECOVER(Researching COVID to Enhance Recovery)イニシアチブへの参加成人3,659人(女性69%、99.6%は2021年12月以降のオミクロン株流行期に感染)を対象に、感染の3〜15カ月後に評価したlong COVIDの症状スコアに基づき、患者の縦断的経過パターンを解析した。対象者のうち、3,280人は最初の新型コロナウイルス感染から30日以内に試験に登録した急性期患者、残る379人は登録時には未感染であったがその後に感染したクロスオーバー群であった。 感染から3カ月時点で10.3%(374/3,644人)がlong COVIDの基準を満たしており、そのうち約81%が1年後も症状を有していた。解析の結果、long COVIDの経過として、以下の8つの異なるパターンが特定された。1)症状負担が持続的に重度(195人、5%):対象期間を通してlong COVIDの閾値を満たす。2)症状負担が断続的に重度(443人、12%):long COVIDの症状スコアが断続的に閾値を超える。3)改善傾向、症状負担が中等度(379人、10%):long COVIDの症状スコアが経時的に低下。4)改善傾向、症状負担は軽度(334人、9%):感染後3カ月時点の症状スコアが3)よりも低く、6カ月時点ではほぼ0。5)悪化傾向、症状負担は中等度(309人、8%):症状スコアが経時的に上昇。6)症状が遅れて悪化(217人、6%):感染後3〜12カ月の間の症状スコアは低いが、15カ月時点で増加。増加の一因は労作後の不調。7)一貫して症状負担が軽度(481人、13%):全体的に症状の負担は軽度だが、3〜15カ月の間に症状スコアが断続的に上昇する。ただし、いずれも閾値未満。8)一貫して症状負担は最小か無症状(1,301人、36%):一貫して症状スコアの閾値未満。 Thaweethai氏は、「われわれが特定したlong COVIDの経過の違いは、今後の研究において、患者ごとに回復期間が異なる理由の説明となり得るリスク因子やバイオマーカーの評価を可能にするとともに、潜在的な治療ターゲットの特定にも役立つだろう」とニュースリリースの中で述べている。 論文の上席著者である米ブリガム・アンド・ウイメンズ病院のBruce Levy氏は、「この研究は、COVID-19の長期的経過の多様なパターンを定義するという緊急の必要性に応えるものだ。得られた結果は、long COVID罹患者に対する臨床的および公衆衛生的サポートに必要なリソースを判断するのに役立つとともに、long COVIDの生物学的根拠を探る研究にも役立つだろう」と述べている。 なお、米疾病対策センター(CDC)によると、long COVIDの症状として200種類以上が確認されているという。

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看護師増員や臨床ケア環境の改善が医師のバーンアウトを減らす

 米国とヨーロッパの病院を対象にした研究で、看護師を数人増やすだけで、医療スタッフの燃え尽き症候群(バーンアウト)を大幅に減らし、士気を高められる可能性のあることが明らかにされた。米ペンシルベニア大学看護学部健康成果・政策研究センターのLinda Aiken氏らによるこの研究結果は、「JAMA Network Open」に11月17日掲載された。 Aiken氏は、「医師のバーンアウトは世界的な危機だが、実行可能な解決策はほとんど見つかっていない。われわれの研究は、看護師への投資が『一石二鳥』の解決策、つまり看護師と医師双方のウェルビーイングの改善と患者ケアの強化につながることのエビデンスとなるものだ」と述べている。 この研究では、ヨーロッパ6カ国の医師1,149人(平均年齢41.3歳、女性46.5%)と看護師3,044人、および米国の医師5,334人(平均年齢44.5歳、女性34.9%)と看護師1万1,869人の調査データを用いて、看護師配置の適切さ(人員の充足度)、臨床ケア環境、医師と看護師のチームワークが医師のウェルビーイングや職業アウトカム(バーンアウト、仕事に対する不満、離職意向、自分の病院を他者へ推薦する意向)に与える影響を検討した。 その結果、全体的に医師のウェルビーイングの低下が広く認められ、例えば、1年以内の離職意向を示した医師は、ヨーロッパで29.9%(324/1,083人)、米国では23.8%(1,178/4,959人)、強いバーンアウトを感じていることを報告した医師は、それぞれ30.5%と34.1%に上った。 一方、米国の病院では、臨床ケア環境のスコアを1標準偏差(1SD)改善するだけで、以下のような効果を得られることが示された。・離職意向を示す医師が22%減少。・勤務先として自分の病院を他者に推薦しない医師が25%減少。・医師の仕事に対する不満が19%減少。・強いバーンアウトを感じる医師が10%減少。 また、ヨーロッパの病院では、看護師の人員を10%増加した場合に米国と同様の結果が示された。具体的には、離職意向を示す医師が20%減少し、自分の病院を他者に推薦しない医師が27%減少し、仕事への不満が15%低下し、強いバーンアウトを感じる医師が12%減少した。 共著者の1人であるペンシルベニア大学看護学部の看護・健康政策学科長Karen Lasater氏は、「これらの調査結果は、病院のリーダーたちが、すぐにでも行動に移せる今後の道筋を明らかにしている。看護師の人員配置を改善し、支援的な職場環境を整えることは、実現可能でエビデンスに基づいた組織改革であり、看護師と医師の両方の定着率を高める」とニュースリリースの中で話している。

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スタチン使用は本当にうつ病リスクを低下させるのか?

 これまで、スタチンのうつ病に対する潜在的な影響については調査が行われているものの、そのエビデンスは依然として一貫していない。台北医学大学のPei-Yun Tsai氏らは、スタチン使用とうつ病の関連性を明らかにするため、最新のシステマティックレビューおよびメタ解析を実施した。General Hospital Psychiatry誌2025年11〜12月号の報告。 2025年9月11日までに公表された研究をPubMed、the Cochrane Library、EMBASEより、言語制限なしでシステマティックに検索した。また、対象論文のリファレンスリストの検討を行った。プールされたオッズ比(OR)および95%信頼区間(CI)の算出には、ランダム効果モデルを用いた。 主な結果は以下のとおり。・選択基準を満たした15研究(10ヵ国、540万3,692例)をメタ解析に含めた。・スタチン使用は、スタチン非使用と比較し、うつ病リスクが有意に低かった(統合OR:0.84、95%CI:0.74〜0.96、p=0.009)。しかし、研究間の異質性が大きかった(I2=85%)。・感度分析では、結果のロバスト性が確認された。・サブグループ解析では、コホート研究(OR:0.86、95%CI:0.76〜0.98、p=0.02)、検証済みの質問票/尺度を用いた研究(OR:0.71、95%CI:0.54〜0.94、p=0.02)、併存疾患を有する患者(OR:0.74、95%CI:0.55〜0.98、p=0.04)、抗炎症薬または抗うつ薬を併用している患者(OR:0.82、95%CI:0.71〜0.95、p=0.009)において有意な関連が認められた。・北米集団(OR:0.63、95%CI:0.51〜0.78、p<0.001)および西洋型の食生活(OR:0.61、95%CI:0.45〜0.81、p<0.001)、アジア型の食生活(OR:0.75、95%CI:0.64〜0.89、p=0.001)を順守する人において、スタチンのうつ病予防効果が認められた。 著者らは「とくに特定の集団および特定の臨床的または生活習慣条件において、スタチン使用はうつ病リスクの低下と関連していると考えられる。この因果関係を明らかにし、影響を及ぼす関連因子を特定するには、さらなる研究が求められる」とまとめている。

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週1回のチーズ摂取で日本人高齢者の認知症リスクが低下

 認知症は、急速に高齢化が進む日本において、公衆衛生上の懸念事項として深刻化している。乳製品を含む食生活要因は、認知機能の健康に影響を及ぼす因子であり、修正可能な因子であるとされているが、これまでの研究結果は一貫していなかった。新見公立大学の鄭 丞媛氏らは、習慣的なチーズ摂取と認知症発症との関連性を検証し、ベースラインの乳製品摂取量が少ない人におけるチーズの潜在的な予防効果に関する疫学的エビデンスを明らかにするため、大規模な地域住民ベースの日本人高齢者コホートを用いて評価した。Nutrients誌2025年10月25日号の報告。 日本老年学的評価研究機構(JAGES)プロジェクト2019-22コホートのデータを分析し、調査結果と介護保険の記録を関連付けた。65歳以上で、過去に介護保険認定を受けていない参加者を対象とした。チーズの摂取量は、ベースライン時に評価し、週1回以上摂取する人と摂取しない人に分類した。社会人口統計学的および健康関連の共変量には、傾向スコアマッチングを適用した。3年間の認知症発症のハザード比(HR)の推定には、Cox比例ハザードモデルを用いた。 主な結果は以下のとおり。・傾向スコアマッチング後、7,914例(チーズ摂取者:3,957例、非摂取者:3,957例)が解析対象として抽出された。・ベースラインの共変量は、両群間で同様であった。・3年間で認知症を発症した参加者は、チーズ摂取者で134例(3.4%)、非摂取者で176例(4.5%)であり、絶対リスク差は1.06パーセントポイントであった。・チーズ摂取は、認知症のHR低下との関連が認められた(HR:0.76、95%信頼区間:0.60〜0.95、p=0.015)。 著者らは「週1回以上の習慣的なチーズの摂取は、高齢者における3年間の認知症発症リスクの低下と中程度の関連性が認められた。絶対リスクの低下は小さかったが、本知見は、乳製品摂取と認知機能との関連性を示すこれまでの観察研究の結果と一致していた。用量反応関係やチーズの種類、そしてこの基礎的メカニズムを解明するためにも、さらなる研究が求められる」としている。

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「寂しい高齢者」に、医療介護者はどう対応したらいいか?【外来で役立つ!認知症Topics】第36回

涙という「心のごみ出し」前回の記事では、「老い」は孤独と裏表にあると述べた。そして文末で、山本 學氏の「寂しくなったときには思い切って泣く」という対処法を紹介した。さらに學氏は、悲しかったことを思い出して、「どうなってもいいから、とどんどん追い込む。自分で自分を追い込むんですけど、その後はさっぱりとした気分になりますよ」と語られた1)。私自身は最近では泣いたことがないので、そう簡単に真似できないかもしれない。しかし子供のころを振り返ってみると、カタルシスというのか、あの泣き終わった後の気分は清々しいものがあった。「悲しみやつらさで流す涙の中には、ストレスのもとになる物質が含まれている」という、ちょっと歌の文句的な表現がある。その真偽はさておき、涙は心のごみ出し、つまり泣くことで「つらさ」を外に流すということは事実だろう。癒しの鍵は「互恵性」にあり寂しさを癒すために、臨床心理学の分野などでさまざまな試みがなされてきた。これまでの報告を総括すると、以下の手法が効果的だとされる。社会的なスキルを改良すること(上手な対人交流を学ぶこと)社会的なサポートを増やすこと社会的な接点をたくさん持つこと認知行動療法しかし、筆者が注目するのは、こうした心理学的、あるいは精神医学的手法ではない。こうした論文を読んだとき「やっぱり!」と思ったことがある。それは、ペットを用いた「寂しさ」への介入の多くが成功していることだ。しかも生きた動物以外にロボットも、さらには今風の仮想ペットまでは含まれているのである。論文には、介入が成功する理由は「目的意識を生み、生産的なライフスタイルに変えていくからだ」と書かれていた。しかし筆者自身の実感として、ペットの効果については次のように思う。「自分がペットを世話するから、向こうも反応する」という双方向性がポイントだろう。これは「寂しさ」や孤独の反対にある、「お互いさま」という互恵そのものだ。仏教には「人に物や心を施せば、わが身の助けとなる」とか「惜しまずに与える気持ちで、心から奉仕できれば、人の心は豊かになる」との教えがある由。「寂しい」高齢者とペットとの関係はこれに似ている。だから多少なりとも「寂しさ」が癒されるのだろうと思う。また筆者は、人によっては、バラやキクなどの花の栽培、キュウリやナスなどの野菜作りも、そこそこ効果があると経験してきた。そのポイントは、ペット同様に「心を込めれば、だんだんと大きく育つこと」「実りがあること」だろう。そして、うがった見方ながら、人と違って植物もペットも自分に従順だということが肝なのかもしれない。介護者へのヒント「家庭の中で寂しい高齢者にどう対応したらいいか?」と介護者から尋ねられることは、まれでない。もちろん一言で答えられるほど易しくはないのだが、基本は前回述べたような「高齢者の寂しさの原点」を知って、そこを和ませる態度や姿勢だろう。それが容易でないからこそ、ペットや植物の導入である。これらを話題にして当事者に話してもらうことも含め介護者が対応していけば、寂しい人を案外和ませるかもしれない。医療者として:「常に慰む」ことさてここまでは「寂しさ」をキーワードに老いの心を論じた。こうした観点を含め、医療・福祉関係者として、自分の目前の高齢者に対する基本姿勢を考えてみる。われわれが対応する高齢の当事者には、多くの場合、不自由、病などが基盤にあり、自らの死が遠くないという思いもあるので「希望」がない。そのような希望に関して、筆者はときに次の格言を思い出す。「時に癒し、しばしば和らめ、常に慰む」これを言ったのは外科医だと聞くが、意味するところは「時には完治させることもある。対症療法にも心を砕いて症状を緩和させよ。けれども常に慰めること、励ますことを忘れてはならない」ということだろう。余談ながら、最近になって東京大学名誉教授で昭和天皇の執刀医であった森岡 恭彦先生の少し前の論文2)で、この言葉の由来を読む機会があった。そこで驚いたのは「この格言を最初に述べた人は誰か?」と医師国家試験に出題されたことである。正解はともかく、出題者の意図は、医師はこの格言を胸に刻んで患者さんに臨んでほしいことかと思う。そして認知症医の自分事として、今のところ完治も病勢停止もさせられない認知症に対しては、「常に慰む」をもって対応するしかないと思ってきた。もっともこの場合「慰む」は、むしろ「褒める、励ます、思いを察すること」かもしれない。たとえば、次のような声掛けである。「この2ヵ月、1日も休むことなくデイケアに通いましたね」「この1ヵ月は夫婦で3,000歩の散歩を頑張りましたね」「初診から1年間、軽度認知障害のまま維持できましたね」また、認知症の人が抱くふがいなさや悔しさへの「察し」と「共感」は、とくに若い患者さんでは不可欠だろう。つまり「慰む」とは、一筋でも希望を持っていただきたいというメッセージである。今のところ、われわれが認知症を癒すことはできなくても、慰む、そして和らむこともできるはずである。「悟り」とは「生きる」ということ本稿の終わりに、山本 學氏との共著のタイトルにある「老いを生ききる」の意味に触れたい。學氏と話し合ったのだが、それを端的に表現することは容易でなかった。筆者には、わだかまりが残り、消化不良の思いをずっと抱いてきた。しかし最近になって「これが近いかな?」と思う次の名言を知った。俳人・正岡 子規が死の3ヵ月前に『病床六尺』に書き付けたものである。「悟りということはいかなる場合にも平気で死ぬことかと思っていたのは間違いで、悟りということは、いかなる場合にも平気で生きていることであった」これに倣えば、「生ききる」とは、「過去も未来も見ない、今なすべきことに専心する」と命ある限り自らを鼓舞する意志かと思う。参考文献1)山本 學, 朝田 隆. 老いを生ききる 軽度認知障害になった僕がいま考えていること. アスコム;2025.2)森岡 恭彦. 「時に癒し、しばしば和らめ、常に慰む」~guerir quelquefois, soulager souvent, consoler toujours~ ~to cure sometimes, to relieve often, to comfort always~この格言の由来について. 日本医史学雑誌. 2020;66:300–304.

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AI時代の産業保健と法学をつなぐ―日本産業保健法学会第5回学術大会事務局長レポート【実践!産業医のしごと】

1. 「産業保健」と「法学」の接点を感じられる学会CareNet.comをご覧の医師の方、産業医の経験がある方でも、「産業保健法学の学会」と聞いて、イメージが湧くでしょうか?2025年9月、日本産業保健法学会の第5回学術大会が北里大学白金キャンパスで開かれ、著者の私は事務局長を務めさせていただきました。産業医、保健師、弁護士、社労士など、多職種が一堂に会し、「健康問題と法」を巡る実務の悩みを持ち寄った2日間でした。本学会の特徴は、「法知識をベースに多職種の知恵を借りて問題解決を図る」という趣旨を、実務の視点にまで落とし込んでいることです。具体的な特徴としては、1)各セッションに医学と法律の専門家をそれぞれ1名以上配置する2)各セッションのテーマを「マクロ・ミクロ/未然防止・事後解決」の4象限で整理し、学会全体でカバーするようにプログラムを組み立てるの2点です。産業医の日常業務で感じる「これは医療だけでは解決できない」というモヤモヤを、法学と実務でどう扱うのか、医学と法学の接点を感じられる学会といえます。2. AIを軸にした幅広いシンポジウム今回の大会の統一テーマは「AIと産業保健」でした。AIを1つの軸に据えつつ、AIを用いた労務管理やメンタルヘルス対応、健康情報の取り扱い、ハラスメント、障害者雇用、労災・安全配慮義務など、産業医が現場で直面する幅広いテーマを、法学と実務の視点から取り上げました。AIの話題も単なる未来予測にとどめず、AI活用に当たって、今の制度と何がかみ合っていないのか職場のルールや社内規程をどう書き換えるべきか産業医が面談や判定の場で、どこまでAIを活用でき、どこから人間の判断にすべきかといった、明日からの実務に持ち帰れる論点に落とし込めるよう、各セッションの先生方が努力してくれました。具体的には、下記のようなシンポジウムが開催されました。1)デジタルヘルスが産業保健にもたらすパラダイムシフトと法AIやDXが産業保健に与える変化を、単一視点では捉えきれない複合現象として整理し、法的含意も含め多面的に検討。2)生成AIは私たちの認知にどのようなインパクトを与えるか(法政策への示唆)AI時代の「認知のアップデート」を軸に、産業保健・法学・人類学の視点で対話し、人とAIが共に働く未来の視座を高める3)職場における新型コロナワクチン接種と被害者救済職域接種の社会的役割とともに、接種後健康被害救済・ハラスメント・労災認定等の法的課題を含めた「事実」を多角的に検証し、次のパンデミックへの教訓を議論。4)データ活用による健康経営推進と法的課題データ活用の期待と、個人情報保護等の法的・倫理的制約の実務ジレンマ(許容範囲が不明確)を問題意識として整理し、線引きを検討。参加者の感想を見ても、「AIというテーマから産業保健と法の『線引きの難しい領域』を正面から議論していた」「産業医として、どこまで責任を負うべきかを考えさせられた」といった声が多く、実務に沿った理解と課題解決といった目的を果たせたのではと感じています。3. 事務局の“裏側”レポートここからは少し学会運営に当たっての“裏側”の話です。これまでは学会に参加する側として、プログラムや会場運営が「当たり前に」回っているように見えていました。しかし運営側、とくに事務局の立場になって初めて、登壇者の調整、予算と採算の管理(各大会で独立採算)、後援・協賛・広報などの重要性を痛感しました。学会の肝となる登壇者の調整では、各セッションに医系と法学系の統括者が必ず登壇する「縛り」のほか、「テーマに人を当てる(=知り合いを呼ぶ)のではなく、テーマに合う人を探す」という原則を徹底するようにしました。結果として、候補者リストとにらめっこしながら「この先生はテーマの分野の法的論点をどこまで話してもらえるか」「この弁護士の方は労災問題に詳しいが、産業医向けの話にしてもらえるか」といった相談を重ねました。広報もまた地味ながら重要な仕事でした。学会のニュースレターやウェブサイトに加え、関連学会のバナー、社労士会や産業保健総合支援センターなどの後援団体にメーリングリストでの案内を依頼しました。申し込み人数の推移は常に気になります。学会は独立採算制ですから、参加者数はそのまま大会の収支に跳ね返ります。締め切りまでパソコンの前で、「今日は何人増えた」「この広報が効いたかもしれない」と一喜一憂しました。最終的に多くの先生方にご参加いただき、胸をなで下ろしました。4. 産業医へのメッセージ─線引きの難しい領域こそ一緒に考える場に大会を通じて、あらためて感じたのは、「産業保健と法学は、問題がこじれたときだけ出会うものではない」ということです。むしろ、業務起因性をどこまで見るか企業として復職・配置転換をどう判断するか健康情報をどう守りつつ、産業保健を最大化するかといった、産業医が日々悩んでいる「線引きの難しい領域」こそが、法学者や弁護士と一緒に考えるべき領域なのだと思います。産業保健法学会のセッションでは、「訴訟になったらどうなるか」だけでなく、「訴訟になる前に、どのような制度や運用を整えればよいか」「社内規程や合意形成をどう設計するか」といった、“予防としての法”の視点が繰り返し提示されました。これは、現場で奮闘する産業医にとって、大きな支えになるはずです。第5回大会の運営を担当した1人として、産業医の先生方には「困ったときの課題を解決する場」に加え、「迷っているテーマを一緒に言語化していく場」として、この学会を活用していただきたいと願っています。AIをはじめ、新しいリスクが次々と現れるこれからの時代、医療・法・実務が交差するこのプラットフォームが、働く人の健康を守る一助になればと願っています。

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第294回 改正医療法やっと成立、医療機関の集約化、統合・再編、病床削減さらに加速へ 「地域医療構想の見直し」8つのポイント

「医療法等の一部を改正する法律」遅れに遅れてやっとの成立こんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。MLB各チームの補強が佳境を迎えています。ポスティングでの移籍を目指すヤクルト・村上 宗隆内野手と巨人・岡本 和真内野手はまだ決まっていませんが、それに先駆ける形で大物の移籍が続々と決まっています。12月9日(現地時間)には、昨シーズンまでニューヨーク・メッツに在籍していたエドウィン・ディアス投手のロサンゼルス・ドジャースへの移籍が報道されました。ディアス投手と言えば、高らかなトランペットの登場曲、「Narco」でも有名なクローザーです。気分が滅入って仕事から逃げたい時に聴くとやる気が出てくる、あの曲「Narco」をドジャーススタジアムでも聴くことができるのでしょうか。今からとても楽しみです。さて、医師偏在対策、病床削減支援、医療DXの推進などを柱とする「医療法等の一部を改正する法律」が、2025年12月5日の参議院本会議で可決・成立しました。本連載(第265回 “米騒動”で農水相更迭、年金法案修正、医療法改正案成立困難を招いた厚労相の責任は?)でも書いてきたように、法案が国会に提出されてから実に10ヵ月、遅れに遅れてやっとの成立です。最重要政策「地域医療構想の見直し」を盛り込んだ医療法の改正「医療法等の一部を改正する法律」は2026年4月1日以降に順次施行されます。「等」と銘打たれているように、複数の医療関連法令をまとめた一括法です。柱は「地域医療構想の見直し」「医師偏在是正に向けた総合的な対策」「医療DXの推進」の3つとなります。一般マスコミの中にはキャッチーな「医師偏在是正」を前面に押し出した記事もありますが、やはり今回の最重要政策は「地域医療構想の見直し」を盛り込んだ医療法の改正だと言えます。「地域医療構想の見直し」は、これまでの地域医療構想の目標年であった2025年が到来したことを受け、2040年を目標年とする「新たな地域医療構想」を作るための政策です。85歳以上人口の増加や、各地での人口減少がさらに進む2040年とその先を見据え、すべての地域・世代の人々が適切に医療・介護サービスを受けながら生活できるための医療提供体制の構築を目的としています。以下に「地域医療構想の見直し」の主なポイントをまとめてみました。1)病床の機能分化だけでなく、外来・在宅、介護との連携、人材確保等の計画も「新たな地域医療構想」の目標年が2040年とされたのは、「団塊ジュニア世代」が全員65歳以上となり、高齢者人口がピークを迎える年と推計されていること、85歳以上の高齢者が大幅に増加し、救急医療や在宅医療、介護との連携といった多様で複雑な医療ニーズが急増すること、日本全体で人口減少が進み、医療従事者を含む働き手の確保が困難になる見込みであることなどが理由です。そうした理由から、これまでの地域医療構想は主に入院医療(病床数の調整、病床の機能分化など)が主体でしたが、「新たな地域医療構想」では「治す医療」と「治し支える医療」の役割分担の明確化とともに、外来医療・在宅医療、介護との連携、人材確保等の計画も含めた、より包括的で地域完結型の医療・介護体制の構築を目指すことになります。2)医療法の規定で「地域医療構想」が「医療計画」よりも上位の概念にこれまで「地域医療構想」は、「医療計画」の記載事項の1つに過ぎませんでした。しかし、今回の法改正で「地域医療構想」が「医療計画」の上位概念に位置付けられることになりました。今後は地域医療構想で地域の医療提供体制全体の将来ビジョン・方向性を定め、それに則って医療機関の分化・連携、病床の機能分化・連携等を進めていくことになります。都道府県が6年ごとに定める「医療計画」は、地域医療構想の具体的な実行計画という位置付けとなり、5疾病・6事業、在宅医療、外来医療、医師確保、医師以外の医療従事者の確保等について、中長期的な計画を立てて進めていくことになります。3)基準病床数は「新たな地域医療構想」における将来(2040年)の病床必要量の範囲内に「医療計画」との関係では、「医療計画」における許可病床の上限数(基準病床数)を、「新たな地域医療構想」における将来(2040年)の病床必要量の範囲内に収めることになります。特定の医療機関の増床計画により、地域の総病床数が必要病床数を上回ってしまう場合は、地域医療構想調整会議で了承が得られた場合に限り増床が許可されます。4)病床機能の区分、「回復期」は「包括期」に名称変更病床機能の区分については、現行の「高度急性期」「急性期」「回復期」「慢性期」という4区分は基本変わりませんが、「回復期」という名称は「包括期」に変更されます。これは、今後増加する高齢者救急等の受け皿として、急性期と回復期の両方の機能を併せ持つ病床が必要との考えからです。「包括期」の機能は、「高齢者救急等を受け入れ、入院早期からの治療とともに、リハビリテーション・栄養・口腔管理の一体的取り組み等を推進し、早期の在宅復帰等を包括的に提供する機能、急性期を経過した患者への在宅復帰に向けた医療やリハビリテーションを提供する機能」と定義されており、従来の「回復期=リハビリテーション」という考え方から大きく変わり、単なる回復期にとどまらず、軽症の急性期患者も対象とし、医療・リハビリ・退院支援を一体的に行う新しい病床機能になります。5)新たに「医療機関機能報告」の制度が創設「新たな地域医療構想」では、医療機関機能に着目して地域医療構想を策定・推進することになっており、それに伴って新たに「医療機関機能報告」の制度が創設されます。「医療機関機能報告」とは、地域(二次医療圏等を基礎とした構想区域)ごとに確保すべき医療機関機能として高齢者救急・地域急性期機能在宅医療等連携機能急性期拠点機能専門等機能より広域な観点で確保すべき医療機関機能として医育及び広域診療機能をそれぞれ位置付け、各医療機関(病床機能報告の対象となる医療機関)が定期的にどのような医療機関機能を有しているかを報告する制度です。なお、1医療機関がさまざまな医療機関機能を担い、1医療機関が報告する医療機関機能は複数になることも想定されています。具体的な「医療機関機能報告」の報告項目、報告方法等の詳細については、これから策定されるガイドラインで明らかにされる予定です。ところで、「医療機関機能報告」の中で「急性期拠点機能」に入るのが「がん診療連携拠点病院等」です。国は、がん診療連携拠点病院等についても連携・再編・集約等を進める考えです。「新たな地域医療構想」における議論では、がん医療を含む急性期医療について、「地域ごとに必要な連携・再編・集約を進め、二次救急医療施設も含めた医療機関において一定の症例数を集約して対応する地域の拠点として対応できる医療機関を確保することが求められる」としています。6)人口規模が小さ過ぎる構想区域は合併、大き過ぎる構想区域は分割「新たな地域医療構想」では、構想区域の考え方も柔軟になります。構想区域については引き続き2次医療圏を基本としつつ、人口規模が20万人未満や100万人以上の構想区域など、医療需要の変化や医療従事者の確保、医療機関の維持、アクセスなどの観点から課題がある場合には、必要に応じて構想区域を見直すことが適当とされました。人口規模が小さ過ぎる構想区域は合併、大き過ぎる構想区域は分割できるようになります。構想区域の具体的な設定方法については、今後策定されるガイドラインにその詳細が盛り込まれる予定です。7)精神医療も地域医療構想で位置付けこれまで地域医療構想の対象外だった精神医療が「新たな地域医療構想」では新しく位置付けられます。精神医療はこれまで、精神障害者の退院促進、地域移行・地域生活支援といった施策を推進することで、「入院医療中心から地域生活中心へ」という精神保健医療福祉施策の基本的方策の実現が図られてきました。今後、2040年頃を見据えると、高齢化の進展等に伴い、精神医療についても入院患者数の減少、病床利用率の低下などが見込まれます。そのため、一般病床と同様、精神科病床についても適正化を進めるとともに、急性期、回復期といった精神病床の機能分化・連携や、救急医療を含む一般医療との連携体制の強化、外来・在宅医療提供体制の整備が行われます。具体的には、2040年頃の精神病床数の必要量を推計した上で、計画的かつ効率的に地域の精神病床等の適正化・機能分化を進めていくことや、一般病床と同様、病床機能報告の対象に精神病床も追加することなどが予定されています。8)病床数の削減を支援する事業を都道府県が実施できるように病床数の削減を支援する事業等が法律で規定され、病床削減への公的支援が明文化されました。都道府県は、医療機関が経営安定のため緊急に病床数を削減する場合に支援事業を実施でき、国が予算の範囲内で費用を補助することができるようになります。これは、自民、日本維新の会、公明の3党合意を踏まえ、当初の法案に衆議院厚生労働委員会で修正・追加された内容です。2025年度補正予算では約3,490億円の「病床数適正化緊急支援基金」を創設し、稼働病床1床当たり410万円、非稼働病床では205万円を支給することになっています。これまでの補助分と合わせ、最大約11万床の削減が想定され、削減後は基準病床数も原則引き下げられます。自らの医療機関がどのような医療機関機能を担っていけるのか、担っていきたいのかの検討を以上述べてきたように、一般病床が主な対象だった地域医療構想が、外来・在宅、介護との連携、人材確保等の計画も含めたより包括的な“構想” へとバージョンアップします。地域医療構想は、医療機関の集約化、統合・再編、病床削減を強力に推し進める強力なツールになったといえます。個々の医療機関の経営者(とそこで働く医師)は、自らの医療機関が現状どのような医療機関機能を担っているのか、そして2040年に向けてどのような医療機関機能を担っていけるのか、あるいはいきたいのかを早急に検討し、医療機関機能報告制度の開始に向け、その準備を進めておく必要があるでしょう。

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統合失調症におけるブレクスピプラゾール切り替え、その有用性は?

 統合失調症は、長期の薬物治療を必要とする慢性疾患である。十分な治療反応が得られず、副作用を経験する患者が少なくないため、服薬アドヒアランスの低下を招き、抗精神病薬の切り替えや多剤併用療法が必要となることもある。このような状況において、良好な忍容性プロファイルを有する非定型抗精神病薬であるブレクスピプラゾールは、これまでの治療が奏効しなかった、または不耐容であった患者に臨床的ベネフィットをもたらす可能性がある。しかし、ブレクスピプラゾール切り替え後のリアルワールドにおけるエビデンスは依然として限られている。イタリア・Universita Cattolica del Sacro CuoreのMarco Di Nicola氏らは、ブレクスピプラゾールへの切り替えを行った統合失調症患者における精神病理学的、機能的、身体的健康状態への影響を評価した。Journal of Personalized Medicine誌2025年10月22日号の報告。 クロスタイトレーションによりブレクスピプラゾール(2~4mg/日)に切り替えた統合失調症外来患者50例を対象に、12週間のレトロスペクティブ観察研究を行った。主要アウトカムは、陽性・陰性症状評価尺度(PANSS)の14項目のサブセットを用いて評価した患者の生活へのエンゲージメントの変化および奏効率/寛解率とした。副次的アウトカムは、主観的ウェルビーイング、生活の質(QOL)、性機能、代謝パラメーター、プロラクチン値の変化とした。評価尺度には、主観的ウェルビーイング評価尺度短縮版(SWN-S)、WHO-5精神健康状態表(WHO-5)、Arizona Sexual Experience Scale(ASEX)を用いた。 主な結果は以下のとおり。・生活へのエンゲージメントについて、すべての領域で有意な改善が認められた(p<0.001)。また、40%の患者において、臨床的反応が認められた。・SWN-SおよびWHO-5スコアにおいて、有意な改善が認められた(各々、p<0.001)。・体重(−2.64kg、p=0.013)およびBMI(−0.91kg/m2、p=0.006)の有意な改善が認められた。・ASEX(p=0.067)およびプロラクチン値(−30.7ng/mL、p=0.077)の改善も認められたが、統計学的に有意な差は認められなかった。・忍容性は、全体として良好であった。 著者らは「統合失調症患者に対するブレクスピプラゾールへの切り替えは、精神病理学的、機能的、身体的健康状態の改善と関連していた」とし「本リアルワールドデータは、これまでに抗精神病薬治療で効果が不十分であった統合失調症患者に対するブレクスピプラゾールの有用性を裏付けるものである」と結論付けている。

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認知症に伴う食欲不振やアパシーに対する人参養栄湯の有用性

 現在、認知症に伴う食欲不振やアパシーに対する有効な薬物療法は明らかになっていない。筑波大学の田村 昌士氏らは、アルツハイマー型認知症(AD)およびレビー小体型認知症(DLB)における食欲不振やアパシーに対する人参養栄湯の有効性および安全性を評価するため、ランダム化比較試験を実施した。Psychogeriatrics誌2026年1月号の報告。 本研究には、日本の病院およびクリニック16施設が参加した。対象患者は、人参養栄湯群24例または対照群25例にランダムに割り付けられた。主要アウトカムは、Neuropsychiatric Inventory-12(NPI-12)のサブカテゴリー「摂食行動」における食欲不振スコアの12週間後の変化とした。副次的アウトカムは、食物摂取量、NPI-12スコア、Zarit介護負担尺度日本語版、意欲の指標(Vitality Index)、ミニメンタルステート検査(MMSE)、前頭葉機能検査(FAB)、体重、赤血球数、ヘモグロビン、アルブミン、CONUTスコアの変化とした。 主な結果は以下のとおり。・主要アウトカムである食欲不振スコアの変化は、12週時点で両群間に有意差は認められなかった。・副次的アウトカムのうち、人参養栄湯群において、対照群と比較し、4週目および12週目の食物摂取量の有意な増加が認められた。・人参養栄湯群では、4、8週目のNPI-12スコア、12週目の抑うつ症状、4、8、12週目のアパシー、4、8、12週目の摂食行動の有意な減少が認められたが、対照群との差は認められなかった。・食欲不振スコア6以上の患者を対象としたサブグループ解析では、人参養栄湯群は対照群と比較し、ベースラインから8、12週目におけるスコアの減少に有意な差が認められた。 著者らは「主要アウトカムにおいて、統計学的に有意な差は認められなかったが、サンプル数が少なかったことが影響していると考えられる。しかし、人参養栄湯群において、副次的アウトカムである食物摂取量の有意な改善が示された。また、サブグループ解析では、より重度な食欲不振を有する患者において、人参養栄湯が食欲を改善する可能性が示唆された」とし「これらの知見は、ADまたはDLBにおける食欲改善に対する人参養栄湯の潜在的な有効性を示唆している」と結論付けている。

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