中高年の慢性不眠症、太極拳は有効か/BMJ

提供元:ケアネット

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公開日:2025/12/23

 

 中国・香港大学のParco M. Siu氏らは、中高年者の慢性不眠症の管理において、太極拳は第1選択治療とされる「不眠症に対する認知行動療法(cognitive behavioural therapy for insomnia:CBT-I)」と比較して、3ヵ月の時点(介入終了時)では不眠症の改善効果が劣ったが、15ヵ月後には非劣性を達成することを示した。研究の成果は、BMJ誌2025年11月26日号に掲載された。

香港の単施設の無作為化非劣性試験

 本研究は、香港の単施設で実施した評価者盲検無作為化非劣性試験であり、2020年5月~2022年7月の期間に参加者を募集した(香港大学General Research Fund of Research Grants Councilの助成を受けた)。

 『精神疾患の診断・統計マニュアル第5版(DSM-5)』に基づき慢性不眠症と診断された年齢50歳以上の中国人を対象とした。

 被験者を、太極拳またはCBT-Iを受ける群に無作為に割り付けた。介入は、3ヵ月間、グループ形式で行い、参加者は1回1時間の講習を週2回、合計24回受けた。

 主要アウトカムは、介入終了時(3ヵ月後)と介入終了から12ヵ月の時点(15ヵ月後)における不眠重症度指数(Insomnia Severity Index:ISI)で評価した自覚的な不眠症重症度のベースラインからの変化量とした。ISIは7つの評価項目から成り、それぞれ5段階(0~4点)のリッカート尺度で評価し、合計0~28点(高点数ほど不眠症の重症度が高い)であった。非劣性マージンは4点(中等度の改善を検出する最小重要差である8点の50%)とした。

3ヵ月時に両群とも改善したが、太極拳群で劣った

 200例を登録し、100例を太極拳群(平均年齢64.83[SD 6.31]歳、女性77%、平均ISI 16.45[SD 3.69]点)、100例をCBT-I群(63.76[6.15]歳、84%、17.41[4.42]点)に割り付けた。

 per-protocol解析では、ベースラインから3ヵ月時までに、ISIスコアが太極拳群で6.67(95%信頼区間[CI]:5.61~7.73)点低下し、CBT-I群では11.19(10.06~12.32)点低下した。群間差は4.52(-∞~5.81)点であり、95%CIの上限値が非劣性マージンを超えたため、有効性はCBT-I群に比べ太極拳群で劣ることが示された。

 また、15ヵ月時のper-protocol解析では、ISIスコアが太極拳群で9.51(95%CI:8.47~10.54)点低下し、CBT-I群では10.18(8.97~11.40)点低下していた。群間差は0.68(-∞~2.00)点と、95%CIの上限値が非劣性マージン内であったため、CBT-I群に対する太極拳群の非劣性が確認された。

 ITT解析の結果(ISIスコアの変化量の群間差:3ヵ月時3.85[-∞~5.46]点、15ヵ月時0.71[-∞~2.28]点)は、per-protocol解析と一致していた。

不眠症寛解率、治療反応率も同様の結果

 不眠症寛解率(DSM-5の不眠症の判定基準を満たさない参加者の割合)は、3ヵ月時(83.3%vs.56.1%、p<0.001)はCBT-I群で有意に優れたが、15ヵ月時(63.4%vs.76.5%、p=0.067)には差を認めなかった。

 また、治療反応率(ISIの8点以上の低下を達成した参加者の割合)も、3ヵ月時(77.4%vs.43.9%、p<0.001)はCBT-I群で有意に良好であったが、15ヵ月時(73.2%vs.62.4%、p=0.137)には差がなくなった。

 介入期間中の有害事象の発現は、両群とも観察されなかった。

 著者は、「これらの知見は、中高年の慢性不眠症患者の長期管理における代替療法として、太極拳の使用を支持するものである」「太極拳群の36.5%が15ヵ月時の評価の後も練習を継続していたが、CBT-I群で継続していたのは15.9%であった。これは、介入終了後の結果に影響を及ぼしており、太極拳の持続的な効果を裏付けるものである」としている。

(医学ライター 菅野 守)