血圧変動が大きいと認知症リスクが高い?

提供元:ケアネット

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公開日:2025/12/24

 

 日本の国民健康保険データベースを用いた大規模な後ろ向きコホート研究において、血圧変動が大きいことは、降圧薬治療の有無にかかわらず認知症発症リスクの上昇と関連していたことが示された。この関連は、降圧薬の種類や処方数、服薬アドヒアランスを考慮しても認められた。佐藤 倫広氏(東北医科薬科大学)らが、本研究結果をHypertension Research誌オンライン版2025年11月10日号で報告した。

 研究グループは、DeSCヘルスケアが提供する日本の国民健康保険データベースを用いて、5回の特定健診データ(血圧値含む)が得られ、死亡情報(資格喪失情報より特定)が取得可能であった50歳超の30万1,448例を解析対象とした。5回の特定健診における収縮期血圧の変動係数(SBP-CV)を用いて健診ごとの血圧変動を評価し、認知症発症リスク(抗認知症薬の新規処方を代替指標として定義)との関連を検討した。解析には死亡を競合リスクとしたFine-Grayモデルを用いて、ベースライン前365日以内の降圧薬処方の有無により未治療群と治療群に分けて評価した。治療群においては、降圧薬の種類や処方数、Medication Possession Rate(MPR)で評価した服薬アドヒアランスも調整して解析した。

 主な結果は以下のとおり。

・対象のうち男性の割合は38.6%、平均年齢は66.6歳であった。
・追跡期間(平均:未治療群2.20年、治療群2.11年)中に、664例(未治療群366例、治療群298例)が認知症を発症した。競合リスクとしての死亡は未治療群1,254例、治療群1,115例に認められた。
・SBP-CVの最高分位(第6分位)群は、治療の有無にかかわらず認知症リスクが最も高かった。一方で、第1~5分位では一定の傾向はみられなかった。
・未治療群では、SBP-CV第6分位群(SBP-CV≧9.83%)は第1~5分位群と比較して、有意に認知症発症リスクが高かった(ハザード比[HR]:1.50、95%信頼区間[CI]:1.17~1.92)。
・治療群では、降圧薬の種類や服薬アドヒアランスの調整後においても、SBP-CV第6分位群(SBP-CV≧10.67%)は第1~5分位群と比較して、有意に認知症発症リスクが高かった(HR:1.43、95%CI:1.09~1.89)。
・層別解析の結果、治療群においてHbA1c値との有意な交互作用が認められ(交互作用のp=0.024)、HbA1cが6.5%以上の集団ではSBP-CV増大による認知症発症リスクの上昇が顕著であった(SBP-CV第6分位群の第1~5分位群に対するHR:2.84、95%CI:1.57~5.14)。
・降圧薬の種類や処方数、服薬アドヒアランス不良(MPR 80%未満)による有意な交互作用は認められなかった。

 著者らは「特定健診ごとの血圧変動が大きいこと(SBP-CV≧10%程度)は、降圧薬治療の有無にかかわらず認知症発症リスクの上昇と関連していた。降圧薬治療中の患者において、降圧薬の種類や処方数、アドヒアランスを考慮してもこの関連は維持され、とくに血糖コントロール不良例で顕著であった。認知症発症リスクを評価する上で、血圧変動のモニタリングが有用である可能性がある」とまとめている。

(ケアネット 佐藤 亮)