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2101.

乳幼児RSV感染症は入院・外来医療ともに大きな負荷をもたらす

乳児の入院に至る主要な要因にRSVウイルスがあることはよく知られているが、幼児におけるRSV感染症が医療資源全体に与える負荷については明らかではない。ロチェスター医科大学(アメリカ)のCaroline Breese Hall氏らは、アメリカの3つの郡(テネシー州ナッシュビル、ニューヨーク州ロチェスター、オハイオ州シンシナティ)で、5歳未満児における急性呼吸器感染症について、住民ベースの前向き調査を行った。NEJM誌2009年2月5日号より。生後6ヵ月未満児のRSVによる入院リスクは高い研究グループは、2000年~2004年にかけて入院した乳幼児、2002年~2004年にかけて外来救急や小児科クリニックを受診した乳幼児を登録し、培養と逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応法でRSVを検出した。臨床情報は保護者からの聞き取りとカルテから入手し、RSV感染症と関連する入院率を算出するとともに、外来受診率を住民ベースで推計した。登録した5,067例(入院2,892例、救急・外来2,175例)のうち、RSV感染症は入院が546例、救急・外来が355例、合わせて919例(18%)あった。全体として、11月から4月にかけての急性呼吸器感染症による入院の20%、救急受診の18%、小児科クリニック受診の15%がRSVと関連していた。年間平均入院率は、生後6ヵ月未満の乳児で17例/千人、5歳未満の幼児で3例/千人だった。大部分の乳幼児に併存疾患は見られず、早産児であること、低年齢であることが入院の独立したリスク因子と認められた。5歳未満児の外来受診率の高さもターゲットにすべき一方、5歳未満の幼児におけるRSV関連のクリニック受診率は救急受診の3倍と推計された。これを全米に当てはめると、RSV感染症に罹患する5歳未満児は210万人で、救急受診が約52万人、クリニック受診が約152万人(そのうち61%、126万人は2~5歳児が占める)と推計された。ところが、外来患者には中等度のRSV関連疾患が見られるものの、RSVに起因する疾患と診断が確定した患者はわずか3%に過ぎなかった。研究グループは、アメリカにおける乳幼児の入院・外来いずれの環境においても、RSV感染症が罹患率に大きく関わっており、しかもRSV感染症に罹患した乳幼児の大部分はそれまで健康であったことから、ハイリスク乳幼児だけを対象とした感染管理戦略では、RSV感染症がもたらす医療資源全体に対する負荷にもたらす効果は限定的であり、わずか18%にとどまる5歳未満児のワクチンの接種率を上げるべきだと述べている。(朝田哲明:医療ライター)

2102.

麻疹(はしか)は2010年までに撲滅できるか ?

2010年までに麻疹(はしか)ウイルスを撲滅するというヨーロッパの計画は、ワクチン接種率が不十分なため達成できない可能性が高いことが、デンマークStatens Serum研究所疫学部のMark Muscat氏らEUVAC.NETの研究グループの調査で明らかとなった。ヨーロッパでは、2006~07年にいくつかの国ではしかの大規模感染が起きたため、ウイルスの撲滅が計画されたという。Lancet誌2009年1月31日号(オンライン版2009年1月7日号)掲載の報告。32ヵ国からデータを収集ヨーロッパでは子どものルーチンなワクチンプログラムに、はしかワクチンが導入されて20年以上が経過したが、感染はいまだに存続している。そこで、研究グループは2010年までのウイルス撲滅を目的に、はしかの疫学的なレビューを行った。ヨーロッパ32ヵ国の国立の調査機関から2006~2007年のデータが集められ、年齢層、確定診断、ワクチン接種状況、入院治療、疾患合併症としての急性脳炎の発現、死亡に関するデータが得られた。30ヵ国からは、疾患の他国からの流入に関するデータも寄せられた。臨床症状が見られ、検査で確定のうえ疫学的な関連が確認された症例のうち、調査の要件を満たすものが解析の対象となった。これらの症例が1歳未満、1~4歳、5~9歳、10~14歳、15~19歳、20歳以上に分けられた。10万人当たりのはしかの年間発症数が0例の国を無発症国、0.1例未満の国を低発症国、0.1~1例の国を中発症国、1例以上の国を高発症国とした。患者のほとんどがワクチン未接種か不完全2年の試験期間中に記録されたはしか患者1万2,132例のうち85%(1万329例)を5ヵ国(ルーマニア、ドイツ、イギリス、スイス、イタリア)の症例が占めた。そのほとんどがワクチン未接種あるいは不完全な子どもであったが、20歳以上の症例は少なかった。この2年間に記録されたはしか関連死は7例であった。高発症国ではワクチン接種率が十分ではなかった。他国から流入したはしかに感染した210例のうち、117例(56%)がヨーロッパ以外の国からのもので、43例(20%)はアジアからであった。著者は、「ワクチン接種率が不十分であるため、2010年までのはしかウイルス撲滅という目標の達成には深刻な疑念が浮上した」と結論し、「ヨーロッパにおけるはしか撲滅計画には、十分なワクチン接種率の達成とその維持、そして調査法の改善が不可欠」としている。(菅野守:医学ライター)

2103.

ADA欠損症患児への遺伝子治療の長期転帰

ADA(アデノシンデアミナーゼ)欠損症患児への遺伝子治療が、安全かつ有効であることが、San Raffaele Telethon遺伝子治療研究所のAlessandro Aiuti氏らによって報告された。ADA欠損は、致死的なプリン代謝異常と免疫不全を示す重症複合免疫不全症(SCID)の原因となり、治療法としてはHLA一致同胞ドナーからの幹細胞移植があるが、ドナーがいないなど治療が適応される患者は限られている。本報告は、長期転帰の検討で、NEJM誌2009年1月29日号にて掲載された。4.0年現在、全例生存、有効性と安全性確認試験対象は、移植ドナーがいないADA欠損症によるSCIDを呈する患児10例。ブスルファンによる骨髄非破壊前処置を施した後、自己由来のCD34+骨髄細胞(ADA遺伝子を含んだレトロウイルスベクターで形質導入)を移植した。細胞移植後に酸素補充療法は行わなかった。追跡期間中央値4.0(1.8~8.0)年現在、全例生存が確認された。移植した造血幹細胞は安定しており、ADA(1年時点で骨髄細胞中に平均3.5~8.9%)と、リンパ系細胞(末梢血中に平均52.4~88.0%)を含む骨髄細胞に分化していた。患児8例は、酸素補充療法を必要とせず、血液細胞のADA発現が持続しており、プリン代謝物の解毒障害の徴候は見られなかった。また、9例は免疫再構築が認められ、T細胞が増加[3年時点で平均数1.07×10(9)/L]、T細胞機能が正常化。免疫グロブリン補充療法を中止した5例では、ワクチンまたはウイルス抗原への曝露後、抗原特異的抗体反応の誘発が確認された。効果的な感染予防と身体発育の改善によって、日常生活も可能になっていた。重篤な有害事象は、遷延性好中球減少症(2例)、高血圧(1例)、中心静脈カテーテル関連の感染症(2例)、EBウイルスの再活性化(1例)、自己免疫性肝炎(1例)。(武藤まき:医療ライター)

2104.

5歳未満児へ導入したPCV7ワクチンの髄膜炎予防効果は?

米国では2000年に、5歳未満児全員に7価小児用肺炎球菌結合型ワクチン(PCV7)の定期接種が導入されて以降、侵襲性肺炎球菌感染症の発症が小児および成人においても減少した。成人における減少はPCV7の集団免疫の効果による。一方で、同ワクチンの肺炎球菌性髄膜炎に関する効果は明らかになっていなかったことから、ピッツバーグ大学のHeather E. Hsu氏らが調査を行ったところ、発症率は低下しており全体的な効果は見られるものの、非PCV血清型髄膜炎の増加が見られ、懸念される結果も明らかとなった。NEJM誌2009年1月15日号より。8つの地域住民ベースで導入前と導入後の肺炎球菌性髄膜炎の発症率の変化を評価Hsu氏らは、米国内8つの地域から集めた住民ベースのサーベイランスデータを用いて、1998~2005年の肺炎球菌性髄膜炎の動向を調査した。発症例の分離株を、「PCV7血清型」「PCV7関連血清型」「非PCV7血清型」にグループ分けし、ワクチン導入前の1998~1999年をベースラインとして、肺炎球菌性髄膜炎の発症率の変化を評価した。全体的発症率は低下したが、分離株別で見ると非PCV血清型で増加が対象期間中の肺炎球菌性髄膜炎の発症例は1,379例で、10万人当たり発症率を導入前の1998~1999年と直近の2004~2005年で比べると、1.13例から0.79例へと30.1%低下していた(P<0.001)。年代別で比較すると、2歳未満における低下率は64.0%、65歳以上の低下率は54.0%だった(両群ともP<0.001)。分離株別で見ると、「PCV7血清型」の発症率(全年齢)は0.66例から0.18例に低下し、低下率73.3%(P<0.001)、「PCV7関連血清型」も32.1%低下していたが(P=0.08)、「非PCV7血清型」については0.32例から0.51例へと60.5%増大していた(P<0.001)。非PCV7血清型の19A、22F、35Bタイプの発症率はいずれも研究対象期間中に有意に増大していた。またペニシリン非感受性の分離株は平均27.8%を占めた。一方でクロラムフェニコール非感受性(5.7%)、メロペネム非感受性(16.6%)、セホタキシム非感受性(11.8%)の分離株は少ない。またペニシリン非感受性の分離株は、1998年から2003年にかけては32.0%から19.4%へと低下していたが(P=0.01)、2003年から2005年にかけて19.4%から30.1%に増大していた(P=0.03)。(武藤まき:医療ライター)

2105.

3種混合ワクチン接種の公式報告は実態反映せず

小児に対する3種混合ワクチンの実施状況は、実態調査に基づくデータと各国の公式報告の間に乖離が見られ、目的志向型かつ業績志向型のグローバル イニシアチブが過大な公式報告を助長している可能性があることが、ワシントン大学(アメリカ)健康基準/評価研究所のStephen S Lim氏らが行った系統的な解析で明らかとなった。Lancet誌2008年12月13日号掲載の報告。長年の懸案事項を検証子どものおもな死因を、ワクチンで予防可能な疾患が占める国は多い。それゆえ、小児予防接種の実現は保健システムの最重要事項とされ、「ミレニアム開発目標」にもMDG4として含まれる。小児予防接種の実施率向上を目指し、これまでにUniversal Childhood Immunisation(UCI)キャンペーンやGlobal Alliance on Vaccines and Immunisations(GAVI)などのグローバル イニシアチブを通じて多額の資金が投じられてきた。しかし、UCIやGAVIの予防接種サービス支援(ISS)のような目的志向型かつ業績志向型のイニシアチブは過大な報告を助長する可能性があるとの懸案が、長きにわたり存在するという。研究グループはこの懸案の検証を行った。193ヵ国における1986~2006年の入手可能な全データを用いてジフテリア/破傷風/百日咳3種混合ワクチン(DTP3)の粗実施率の傾向を系統的に検討した。また、各国の公式なDTP3実施報告と、実態調査に基づく実施率のずれを解析することで、UCIやGAVI ISSなどのグローバル ヘルス イニシアチブがDTP3実施の過大な報告を助長しているか否かを評価した。DTP3の粗実施率は段階的に改善、公式報告は実態とは異なる実態調査に基づくDTP3の粗実施率は、1986年の59%から1990年には65%、2000年には70%、2006年には74%にまで増加した。UCI期間中のDTP3実施の公式報告と、調査に基づく実施率には実質的な乖離が認められた。また、CAVI ISSによって、DTP3実施の公式報告と調査による実施率の差が有意に拡大した。2006年までに、公式報告によるDTP3接種小児の推定人数1,390万人に加えて、GAVI ISSの資金提供を受けた51ヵ国で新たに740万人の小児がDTP3の接種を受けた。調査で判明したDTP3接種を受けた小児の増加人数に基づいて解析を行ったところ、これに必要なGAVI ISSの提供資金は1億5,000万ドルと推算されたが、実際の支出額は2億9,000ドルに達していた。著者は、「実態調査に基づくDTP3予防接種の施行率は段階的に改善したが、各国の公式報告やWHO/UNICEFの推定から示唆されるレベルには達していなかった」と総括し、「小児予防接種が目的志向型のグローバル イニシアチブの主導で推進され、実績に基づいて資金提供が行われる時代においては、健康指標の独立かつ競争可能な(contestable)モニタリング法を確立することが急務である」と指摘する。(菅野守:医学ライター)

2106.

ヒブによる小児の感染症を予防 アクトヒブ発売

第一三共株式会社は19日、ヒブ(Hib:インフルエンザ菌b型)による感染症を予防する小児用ワクチン、アクトヒブ(製造販売元:サノフィパスツール第一三共ワクチン株式会社、製造元:仏・サノフィパスツール社、販売元:第一三共株式会社)を発売した。アクトヒブはヒブ感染症を予防するための小児用ワクチンで、世界100ヵ国以上で広く使用されている。詳細はプレスリリースへhttp://www.daiichisankyo.co.jp/4less/cgi-bin/cs4view_obj.php/b_newsrelease_n1/789/081219v2-j.pdf

2107.

より予防効果が高いマラリアワクチンの開発

AS01Eをアジュバンドとして用いた新しいマラリアワクチンRTS,S/AS01Eの有効性を検討する無作為化二重盲検試験を行ったケニア中央医学研究所のPhilip Bejon氏らは、「候補として有望である」との報告を行った。NEJM誌2008年12月11日号(オンライン版2008年12月8日号)より。5~17ヵ月児894例を、新ワクチン接種群と狂犬病ワクチン接種群に無作為化マラリアワクチンRTS,Sは、それ自体はスポロゾイド周囲蛋白を目標とするもので、これまでAS02Aをアジュバンドとして用いることで、1~4歳児で30%のマラリア予防率を示したことが示されている。新しいマラリアワクチン開発に取り組むBejon氏らは、対象を5~17ヵ月児として、より免疫原性の高いAS01Eをアジュバンドとして用いた場合の有効性を、狂犬病ワクチン接種を対照群とする比較で検討した。対象児は、ケニアのKilifiとタンザニアのKorogweに居住する894例(プロトコールに基づく試験終了は809例)で、平均追跡期間は7.9ヵ月(範囲:4.5~10.5ヵ月)だった。全例解析による有効率49%マラリアを発症した患児数(初発もしくは単発)は、RTS,S/AS01Eワクチン接種群32例(/402例、8%)、対照群66例(/407例、16%)。RTS,S/AS01Eワクチンの有効率(補正後)は53%(95%信頼区間:28~69、P

2108.

Step試験が早期中止に、細胞性免疫ワクチンはHIV感染を予防できず

期待の大きさを反映してか、落胆の声が世界中に広がっているという。MRKAd5 HIV-1 gag/pol/nefワクチンによる細胞性免疫はHIV-1感染の予防効果およびウイルス量の減少効果を示さず、一部の症例ではむしろ感染リスクを上昇させる可能性があることが、国際的な第II相Step試験の中間解析で判明したのだ。試験はすでに早期中止となっている。米San Francisco公衆衛生局HIV研究部のSusan P Buchbinder氏が、Lancet誌2008年11月29日号(オンライン版2008年11月13日号)で報告した。免疫反応の誘導は確認されたが、感染率、ウイルス量は低減せずこれまでの観察試験やヒト以外の霊長類の試験で、細胞性免疫反応によりHIV複製はコントロール可能であることが示唆されている。そこで、Step試験の研究グループは、HIV-1のgag/pol/nef遺伝子を発現している5型アデノウイルス(Ad5)をベクターとする細胞性免疫ワクチンのHIV-1感染の予防効果あるいは血漿HIV-1量の低下効果を評価した。本研究は、北米、カリブ海諸国、南米、オーストラリアの34施設でコンセプトの検証を目的に実施された二重盲検第II相試験である。HIV-1血清陰性例3,000例がMRKAd5 HIV-1 gag/pol/nefワクチン(1,494例)あるいはプラセボ(1,506例)を投与する群に無作為に割り付けられた。無作為割り付け時には、性別、ベースラインのAd5抗体価、施設で事前に層別化した。主要評価項目はHIV-1感染率の低下(6ヵ月ごとに検査)あるいはセットポイント(ウイルス量の低下が停止した時点)のHIV-1ウイルス量(HIV-1感染の診断後3ヵ月に測定)とし、per-protocol解析およびintention-to-treat解析変法を行った。予想に反し、本試験は初回の中間解析で事前に規定された無効判定基準を満たしたため早期中止となった。中間解析では、ベースラインのAd5抗体価が200以下の症例のうち、ワクチン群741例のウイルス感染率は3%(24例)であったのに対し、プラセボ群762例も3%(21例)と差を認めなかった(ハザード比:1.2、95%信頼区間:0.6~2.2)。感染例は1例を除きすべて男性であった。血漿HIV-1 RNAの幾何平均値は、感染男性患者のワクチン群とプラセボ群で同等であった(4.61 vs. 4.41 log10 コピー/mL、効果に関する片側p値=0.66)。全ワクチン投与例(Ad5抗体価低値例、高値例の双方を含む)から25%を無作為に抽出したサンプル(354例)について、ワクチンによって誘発されたインターフェロンγを産生する細胞をELISPOT(enzyme-linked immunospot)法で検出したところ、75%(267例)で反応が見られ免疫反応の誘導が確認された。探索的な解析では、ベースラインのAd5抗体価にかかわらずワクチン群とプラセボ群のHIV-1感染のハザード比は、Ad5血清陽性の男性例(2.3、95%信頼区間:1.2~4.3)および陰茎包皮切除術を受けていない男性例(3.8、1.5~9.3)で高く、これらの症例ではむしろワクチン群の感染リスクの有意な上昇が示唆された。これに対し、Ad5血清陰性例(1.0、0.5~1.9)あるいは包皮切除術を受けた例(1.0、0.6~1.7)ではハザード比は高値を示さなかった。著者は、「MRKAd5 HIV-1 gag/pol/nefワクチンによる細胞性免疫はHIV-1感染の予防効果を示さず、早期のウイルス量の減少効果も認めなかった」と結論し、「なぜ効果が不十分だったか、また一部の症例におけるHIV-1感染率の上昇のメカニズムについては、現在、究明を進めている」としている。(菅野守:医学ライター)

2109.

子宮頸がん予防ワクチンのCervarixがオランダの国民予防接種プログラムに組み入れ

グラクソ・スミスクライン株式会社は11月28日、オランダのNetherlands Vaccine Institute (NVI)が、オランダ国民に対する子宮頸がん予防接種プログラムのためのワクチンとして、英グラクソ・スミスクラインplc(GSK)の子宮頸がん予防ワクチンCervarixを選択したと発表した。この予防接種プログラムは、12歳の女児全員の接種を目的としており2009年9月より開始されているもの。このプログラムのためのCervarixはGSKが供給する。また、オランダのより幅広い女児においてヒトパピローマウイルス(HPV)感染と子宮頸がんのリスクを減少させることを目的としたキャッチアップ・プログラムも2009年の前半中に13歳から16歳までの女児全員を対象に実施される。12歳の女児を対象とする予防接種プログラムでは、初年度に合計35万人の女児がCervarixを接種することが推定されているという。詳細はプレスリリースへhttp://glaxosmithkline.co.jp/press/press/2008_07/P1000511.html

2110.

4価HPVワクチンGARDASILに、男性に対する外性器病変の予防効果

万有製薬株式会社は25日、子宮頸がんを予防する4価HPVワクチンARDASILの男性に対するG臨床試験結果から、16~26歳の男性に対して、HPV6、11、16、18型に起因する外性器病変の90%を予防する効果が示されたと発表した。この試験は、世界で初めてHPVワクチンの男性に対する疾患予防効果を評価したもので、結果は、フランスのニースで開催されたEUROGIN(European Research Organization on Genital Infection and Neoplasia)学会で発表された。詳細はプレスリリースへhttp://www.banyu.co.jp/content/corporate/newsroom/2008/merck_1125.html

2111.

13価肺炎球菌結合型ワクチンの第3相海外臨床試験のデータから、2歳未満の乳幼児における肺炎球菌感染症の予防効果拡大を示唆

米国ワイスは、第3相臨床試験データの結果から、13価肺炎球菌結合型ワクチン (PCV13)が、小児用7価肺炎球菌結合型ワクチン「PREVNAR」(PCV7)と比べ、乳幼児の肺炎球菌感染症に対し、より広範な予防効果を示す可能性があると発表した。この結果は、ワシントンD.C.で開催されたICAACとIDSAの合同年次集会で2008年10月27日に発表された。今回発表されたデータは、13価肺炎球菌結合型ワクチンが、「PREVNAR」に含まれている7つの血清型を引き続き含むため、侵襲性肺炎球菌症(Invasive Pneumococcal Disease:IPD)の予防に対し同等の効果を発揮すること、また、13価肺炎球菌結合型ワクチンに追加された6つの血清型によって、予防効果の範囲がさらに拡大することを示すとのこと。詳細はプレスリリースへhttp://www.wyeth.jp/news/2008/1118.asp

2112.

サノフィパスツールが小児用ワクチン市場に初参入

サノフィ・アベンティス株式会社は11月10日、同社のワクチン事業部門であるサノフィパスツールが、アクトヒブワクチン(インフルエンザ菌b型結合体ワクチン)を供給することにより、国際的ワクチン企業として初めて日本の小児用ワクチン市場に参入することを発表した。アクトヒブワクチンは(インフルエンザ菌b型結合体ワクチン)は、第一三共株式会社によって12月19日から日本で販売が開始される。同社のアクトヒブ結合体ワクチンは、これまでに120ヵ国以上の国で1億回接種分が使用された実績がある。詳細はプレスリリースへ(PDF)http://www.sanofi-aventis.co.jp/live/jp/medias/44782A9C-E11F-43E5-ACC7-07998AAF1654.pdf

2113.

高用量インフルエンザワクチンで65歳以上の免疫反応が増加

 サノフィ・アベンティス株式会社は11月5日、仏サノフィパスツール社が、標準的なインフルエンザワクチンと比較して、臨床試験中の高用量インフルエンザワクチンにより、65歳以上の成人で免疫反応が増加したと発表したと伝えた。 この試験は、65歳以上の高齢者約4,000名を対象にした第III相試験で、高用量インフルエンザワクチンを2006~2007年の流行期用に製造された標準的な深津かインフルエンザワクチンと比較したもの。 主な結果としては、標準ワクチンと比較して、新しい高用量ワクチンにより、試験対象集団で3種類のインフルエンザウイルス株すべてに対する免疫反応が増加し、さらに、毎年インフルエンザワクチンの接種前に体内の防御抗体が測定可能なレベルに達していない潜在的に脆弱な参加者のサブグループでも、免疫反応の増加が観察されたという。 試験の結果は、第48回抗菌薬および化学療法に関する国際会議(ICAAC)/米国感染症学会(IDSA)の第46回年次会議で報告された。

2114.

生物学的製剤の安全性問題の多くは感染症関連

生物学的製剤は相対的に新規クラスの薬剤で、免疫原性など特異的なリスクを伴うが、承認後の安全性の問題に関する情報入手が限られている。そこで、オランダ・ユトレヒト薬学研究所のThijs J. Giezen氏らは、米国およびEU(欧州連合)で承認された生物学的製剤の、その後にとられた安全性に関する規制措置を追跡調査し検証した。JAMA誌2008年10月22日号より。1995年~2007年の米国・EU承認薬を追跡調査追跡調査されたのは、1995年1月~2007年6月に米国およびEUで承認された生物学的製剤で、ワクチン、抗アレルギー薬、後発薬および輸血目的の製品は除外した。主要評価項目は、安全性規制措置の特徴と頻度、タイミングについてで、1995年1月~2008年6月になされた、(1)米国では医療専門家への文書、EUでは医療専門家への直接連絡、(2)米国で黒枠(強調)警告、(3)米国・EUで安全性に関わる薬剤の市場からの回収を調べ評価した。生物学的製剤承認後の安全性に関する規制措置は23.6%期間中に承認された生物学的製剤は計174製剤(米国136、EU105、両地域67)。安全性関連の規制措置は82回(医療専門家への文書46回、医療専門家への直接連絡17回、黒枠警告19回、市場回収なし)で、174製剤のうち41種(23.6%)に出された。カプラン‐マイヤー解析に基づく初回の安全性規制措置の確率は、承認から3年後が14%(95%信頼区間:9~19%)、承認から10年後29%(20~37%)だった。同クラスの生物学的製剤のうち、最初に承認を得た製品は、後から承認された製品と比較して、安全性規制措置が発動されるリスクはより大きかった(12.0/1,000ヵ月対2.9/1,000ヵ月、ハザード比:3.7、95%信頼区間:1.5~9.5)。警告の大部分は、一般疾患、投与部位の様態に関すること、感染症、寄生虫症、免疫系疾患、良性または悪性腫瘍、その他詳細不明だった。このためGiezen氏は「生物学的製剤の承認後に確認される安全性に関わる問題は、しばしば免疫調節作用(感染症)に関連がある。また同クラスで最初に承認された生物製剤が、規制措置を受ける可能性がより高く、緊密な監視が必要である」と結論付けている。(朝田哲明:医療ライター)

2115.

炭疽菌ワクチン接種は筋注のほうが有益

BioThraxは、現在、米国で唯一公認の炭疽菌ワクチン(AVA)であり皮下注4回接種が公認療法となっている。このワクチンについて米国議会は1999年、米国疾病管理センター(CDC)に対して安全性と有効性に関する調査を行うよう指示した。調査にあたったCDC炭疽菌ワクチン調査プログラム専門調査委員会は、「筋注のほうが安全性が高く、免疫獲得もすみやか」とする報告を寄せた。JAMA誌2008年10月1日号より。非劣性試験を行い注射部位の有害事象の割合で判定より利便な免疫獲得療法をめざした炭疽菌ワクチン接種の安全性と有効性に関する無作為化試験は、ワクチン投与のルート変更で、血清反応、注射部位の有害事象(AEs)に影響が及ぶかを評価することを目的に行われた。すなわち皮下注(SQ)から筋注(IM)への変更、および、投与回数も現在公認されている回数から減らした場合(2週後投与を省略)について検討された。多施設共同無作為化二重盲検非劣性試験に登録された対象は1,005例。試験は第4相ヒト臨床試験として2002年5月から継続中。炭疽菌ワクチン接種は、SQもしくはIMにて4回[初回(0週)、2週後、4週後、6ヵ月後]行われた。比較検討されたのは、SQで4回接種(4-SQ群)165例、IMで4回接種(4-IM群)170例、さらに2週後投与を省略した筋注3回接種(3-IM群)501例。同じタイムスケジュールで生理食塩水接種の対照群169例も比較検討された。主要評価項目は、8週時点と7ヵ月時点の非劣性、および反感染防御抗原IgGの相乗平均濃度(GMC)、相乗平均価(GMT)、4倍以上抗体価反応(%4R)。有効性結論の指標は、注射部位の有害事象の割合とされた。筋注のほうが有害事象少なく、接種回数も少なくて済む8週時点のGMC、GMT、%4Rは、4-IM群(90.8 μg/mL、1114.8、97.7)、4-SQ群(105.1 μg/mL、1315.4、98.8)で、3つの主要エンドポイントすべてで皮下注と筋注に差異はなかった。3-IM群は(52.2 μg/mL、650.6、94.4)、%4Rだけが非劣性。7ヵ月時点では、すべての投与群が、現行公認療法より劣っていなかった。有害事象の割合は、試験期間中、4-IM群(筋注)のほうが4-SQ群(皮下注)に比べ低かった。副次エンドポイントの注射直後の疼痛のオッズ比は、両群に差異はなかった(p<0.001)。投与経路が、全身性の有害事象の発現を左右することはなかった。本稿筆頭執筆者のNina Marano氏は、「炭疽菌ワクチン接種について、筋注の4-IM、3-IMは7ヵ月時点で免疫を獲得しており、公認療法の皮下注4-SQと比べて劣ることはなかった。また筋注のほうが有意に注射部位の有害事象が少なかった」と結論。「予防投与の機会増大という観点から、投与回数が少なくて済むのは大きな利点である」とまとめている。(朝田哲明:医療ライター)

2116.

7価小児用肺炎球菌結合型ワクチン(PCV7)の定期接種が高い費用対効果を示す

ワイス株式会社は、韓国ソウルで開催された「第3回国際薬剤経済学・アウトカム研究学会(International Society for Pharmacoeconomics and Outcomes Research、略称:ISPOR)」において、7価小児用肺炎球菌結合型ワクチン(PCV7)の定期予防接種が、医学的にも経済的にも大きな利益をもたらすことを改めて示したと発表した。特に香港、シンガポール、台湾のデータは、これらの国々で乳幼児に対しPCV7の定期予防接種を実施した場合、小児および成人の双方において侵襲性・非侵襲性の肺炎球菌感染症の頻度が大幅に減少する可能性があることを示したという。さらに、PCV7を乳幼児に定期接種することで、間接的な予防効果が成人にも及び、その結果数百万ドルのコスト削減が達成できると考えられるとのこと。詳細はプレスリリースへhttp://www.wyeth.jp/news/2008/0929.asp

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近年の婦人科がん医療の進歩:最近の学会報告から がん医療セミナー 「もっと知って欲しい女性のがん」より

 2008年8月10日、NP法人キャンサーネットジャパン、NPO法人ブーゲンビリア、卵巣がん体験者の会スマイリー、NPO法人女性特有のガンサポートグループオレンジティの4団体が主催する婦人科腫瘍啓発セミナーが開催された。セミナーでの、埼玉医大国際医療センター包括的がんセンター婦人腫瘍科、藤原恵一氏の講演の様子をレポートする。主な婦人科腫瘍とそれぞれの進行がん標準治療 婦人科の主な癌種は子宮頸がん、子宮体がん、卵巣がんである。これら3種の進行がん標準治療は概ね下記のようになる。・子宮頸がん:プラチナ製剤ベースの化学療法(CDDP)同時放射線療法・子宮体がん:術後放射線療法・卵巣がん:減量手術後化学療法 パクリタキセル(PTX)+カルボプラチン(CBDCA) 進行度別にみると、子宮頸がん・体がんでは早期例が多く0期からII期が半数以上である。特に頸がんでは0期が40%以上を占める。一方、卵巣がんでは進行例が多くIII期からIV期が半数以上を占める。卵巣がんの予後と治療 卵巣がんは予てから死亡率が高く予後が悪いといわれている。その言葉が示すとおり、卵巣がん(約7000人)罹患数は子宮がん(約18000人)の半分以下であるが、死亡数はほぼ同等である(子宮がん5500人に対し卵巣がん4400人)。その理由は、卵巣がんの進行例の割合が多いため(卵巣がんはIII~IV期が70%、子宮がんでは0期~I期が70%)だと考えられる。 進行卵巣がんはインオペ例とされていたが、1980年のCDDP登場、その後のタキサン系薬剤の登場で生存率は改善し、現在CBDCA+PTXが標準療法となっている。だが、その後は有効率の向上を目指し標準治療への抗がん剤のアドオン試験が行われたが予後改善をもたらすにはいたっていない。卵巣がんの治療の今後 そのような中、有効率の改善を目指すべく幾つかの研究が行われている。投与法も研究され、プラチナ製剤の腹腔内投与の有効性が米国NCI(National Institute of Cancer)が推奨されている。そして、2008年、日本発のエポックメイキングな研究がASCO2008で発表された。これは、医師主導治験JGOG3016で、PTX毎週投与の有効性試験有効性が立証された。今後、保健適応取得に向け行政への働きかけが重要となる。 さらに、分子標的治療薬の有効性も検討されており、医師主導の治験で、ベバシズマブの有効性研究も進行中である(GOG218)。 一方、ドラッグラグの問題も以前残っている。ドキシル(リボゾーマドキソルビシン)は世界80カ国で承認され、標準治療無効例における2ndライン薬剤として期待されておる。しかし、日本では以前未承認であり、現在自費投与1回あたり30~40万/回の金銭的負荷がかかる。子宮頸がんの治療 子宮頸がんは0期が多く、この段階で発見できれば多くの患者さんが助かることになる。 そのためには、まず、検診の普及が非常に重要である。実際、検査の普及率が高い国では子宮頸がんの死亡率は低いが、日本の検診普及率は22%であり後進国並みといえる。そのためか、日本では若年層での罹患数が増加しているという問題もある。 子宮がんの治療は、プラチナ製剤の化学療法(CDDP単独またはCDDP+5FU)と放射線治療同時併用が標準治療である。しかし、本邦での普及は依然高いとはいえない。今後の課題として日本人のCDDP適正ドーズの設定、ガイドラインでの積極的取り上げなど一層の普及が急がれる。子宮頸がんの治療の今後 そして、近年のトピックとして子宮頸がんにおけるHPV(ヒトパピローマウイルス)の関与があげられる。HPVは子宮頸がん患者の大部分が感染しており、確率こそ非常に少ないが子宮頸がんの発症因子である。そのため、HPVワクチンがHPVの感染予防および前がん病変への移行を防止するとして多大な効果が期待できる。現在、米国、オーストラリアをはじめ多くの国で承認されており日本でも早期の承認が望まれる。日本の婦人科腫瘍治療 日本の婦人科がんの取り組みは欧米に比べ遅れている。そこに昨今の婦人科医師不足が重なり、婦人科腫瘍の診療は大変な状況である。 婦人科腫瘍の場合、そのような状況下であっても製薬メーカーの協力を仰がず医師主導治験をしている例は多い。医師主導治験に携わる医師は診療後に何ら報酬もない中、ボランティアで協力している。しかしながら、医師主導治験を国に認めさせるシステムがなく、今後は医師主導治験で行政を動かしてゆく手法を検討する必要がある。 また、ドラックラグについても大きな問題である。ドキシルのように海外で実績があるのに日本では未承認という薬剤は多い。副作用発現などのリスクから優先審査への動き鈍ることも一つの要因であるが、一番の被害者は患者さんであることを忘れて欲しくない。この点については、マスメディアの取り上げ方が大きな影響を及ぼすため、正確な情報提供をお願いしたいと考える。

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高齢者の肺炎に対するインフルエンザワクチンの効果は予想よりも低い

インフルエンザ流行時期の高齢者肺炎に対するインフルエンザワクチンの効果は予想よりも低い可能性があることが、地域住民をベースとした調査で明らかとなった。肺炎は高齢者のインフルエンザ感染における最も頻度の高い合併症であり、それゆえインフルエンザワクチンは肺炎の予防に有効な可能性がある。しかし、これまでに報告されたワクチンの有効性を示唆する検討には根本的なバイアスが含まれるため信頼性は高くないという。米国シアトル市のGroup Health Center for Health StudiesのMichael L Jackson氏が、Lancet誌2008年8月2日号で報告した。ワシントン州西部の地域住民をベースとしたnested case-control study本研究は、2000年、2001年、2002年のインフルエンザ流行前および流行時期に、ワシントン州西部の健康維持組織である“Group Health”に登録された65~94歳の免疫応答が正常な高齢者を対象に実施された地域住民ベースのnested case-control studyである。症例は市中肺炎で外来通院中あるいは入院中の患者(診療記録あるいは胸部X線所見で確定)とし、それぞれの症例群に対し年齢および性別をマッチさせた2つの対照群を無作為に選択した。診療記録を評価して、交絡因子として喫煙歴、肺疾患および心疾患への罹患とその重症度などを規定した。ワクチンは高齢者の市中肺炎のリスクを低減させない1,173例の市中肺炎症例および2,346人の対照が登録された。診療記録審査に基づいて規定された併存疾患の存在および重症度で補正したところ、インフルエンザ流行期間中にインフルエンザワクチンを接種しても、高齢者の市中肺炎のリスクは低減しないことが示された(オッズ比:0.92、95%信頼区間:0.77~1.10)。著者は、「インフルエンザ流行時期の高齢者肺炎に対するインフルエンザワクチンの効果は予想よりも低い可能性がある」と結論したうえで、1)インフルエンザ感染を原因とする高齢者の肺炎はわずかであり、そのため感染リスクを低減しても肺炎は減少しない、あるいは2)ワクチンは、肺炎のリスクを有する高齢者におけるインフルエンザ感染リスクの低減にはそれほど有効ではないという2つの可能性を示唆し、「これらの可能性はワクチン開発およびその接種勧告においてまったく異なる意義を持つことから、基礎研究で確定されたエンドポイントを用いた臨床試験を行う必要がある」と指摘している。(菅野守:医学ライター)

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アミロイドβペプチドワクチンはアルツハイマー病の神経変性を予防しない

 全長アミロイドβペプチド(Aβ42)ワクチン(AN1792)はアルツハイマー病のアミロイド斑を除去するが、進行性の神経変性は予防しないことが、開発中止後の長期的な事後検証試験の結果から明らかとなった。Aβ42ワクチンの第I相試験では、アミロイド斑の除去効果に加え、多様性が高く広範な非用量依存性を示す抗体反応が確認されていた。イギリスSouthampton大学臨床神経科学部のClive Holmes氏が、Lancet誌2008年7月19日号で報告した。第I相試験の登録例を長期フォローアップ 2000年9月にAβ42ワクチンによる免疫療法のプラセボ対照無作為化第I相試験に登録されたアルツハイマー病の80例(もしくは介護者)から、2003年6月に長期的な臨床的フォローアップ、開発中止後の神経病理学的な検証試験あるいはその両方に関する承諾を得た。フォローアップ試験は2006年9月に終了した。 アミロイド斑の評価は、皮質のAβ免疫染色法(Aβ負荷)およびアミロイド斑の除去を反映する固有の組織学的特徴について行った。重篤な認知症あるいは死亡までの生存率はCox比例ハザードモデル用いて評価した。アミロイド斑は有意に除去、生存期間、重篤な末期認知症発症までの期間は改善せず フォローアップ開始前に20例(ワクチン群15例、プラセボ群5例)が、フォローアップ期間中に22例(ワクチン群19例、プラセボ群3例)が死亡した。死亡例のうち9例(いずれもワクチン群)は検証試験に同意していたが、アルツハイマー病以外で死亡した1例は解析から除外した。 ワクチンを投与され神経病理学的な検査を受けた8死亡例では、Aβ負荷が死亡時の年齢でマッチさせた対照群よりも有意に低かった(2.1% vs. 5.1%、p=0.02)。ワクチン群のAβ負荷およびアミロイド斑除去の程度にはばらつきが見られたが、治療期間中に達成された平均抗体反応が高いほどアミロイド斑除去の程度も高かった(Kruskal-Wallis検定:p=0.02)。 ワクチン群の8例中7例(事実上アミロイド斑が完全に除去された例も含まれる)は死亡前に重篤な末期認知症を呈していた。全体では、生存期間(ハザード比:0.93、95%信頼区間:0.43~3.11、p=0.86)あるいは重篤な認知症に至るまでの期間(1.18、0.45~3.11、p=0.73)について、ワクチン群の改善効果を示すエビデンスは得られなかった。 Holmes氏は、「Aβ42ワクチンはアルツハイマー病のアミロイド斑を除去する効果を有するが、進行性の神経変性の予防効果はない」と結論し、「最近の免疫修飾療法の臨床試験ではアミロイド斑の除去効果と高い安全性が証明されているが、今回の試験からはアルツハイマー病の進行性の神経変性を予防するにはAβの除去だけでは不十分なことが示唆される」と指摘している。

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腎細胞癌に対する自己腫瘍由来ワクチンによる術補助療法の有効性示せず

腎細胞癌に対する腎摘出術後の自己腫瘍由来熱ショック蛋白ワクチン(HSPPC-96、vitespen)療法は無再発生存率を改善しないことが、米国M D Anderson癌センターのChristopher Wood氏が行った無作為化第III相試験で明らかとなった。限局性腎細胞癌の標準治療は局所あるいは根治的な腎摘出術であるが、有効な補助療法がないため患者は実質的に再発のリスクに晒されているという。Lancet誌2008年7月12日号(オンライン版2008年7月3日号)掲載の報告。術後補助療法としてのvitespen群と観察群を比較本研究は、局所進行腎細胞癌切除後の高再発リスク例に対する補助療法としての自己腫瘍由来ワクチンvitespenの有用性を評価するもの。vitespen群に409例が、術後に治療を行わない観察群に409例が無作為に割り付けられた。vitespenは週1回4 週間にわたって皮内投与され、その後はワクチン効果が消失するまで2週に1回投与された。主要エンドポイントは無再発生存率とした。全体の再発率、死亡数は同等、早期ステージ群で再発率が優れる傾向フォローアップ期間中央値1.9年における再発率はvitespen群が37.7%(136/361例)、観察群は39.8%(146/367例)であり、両群間に差は認めなかった(ハザード比:0.923、95%信頼区間:0.729~169、p=0.506)。2007年3月までフォローアップを継続したところ、vitespen群で70例が死亡し、観察群の死亡数は72例であったが(p=0.896)、全体の生存データとしてはまだ十分でなく、さらなるフォローアップを続けている。American Joint Committee on Cancer(AJCC)のステージ分類に基づく事前に規定された探索的解析では、ステージIあるいはIIの症例の再発率はvitespen群が15.2%(19例)、観察群は27.0%(31例)であった(ハザード比:0.576、95%信頼区間:0.324~1.023、p=0.056)。vitespen群で最も多く報告された有害事象は、注射部位の紅斑(158例)および硬化(153例)であった。重篤な有害事象としてはグレード2の自己免疫性甲状腺炎が1例で認められたが、治療に関連したグレード3/4の有害事象は見られなかった。Wood氏は、「腎細胞癌に対する腎摘出術後のvitespenによる補助療法は、観察群との間に無再発生存率の差を認めなかった」と結論し、「vitespen群のうち早期ステージの無再発生存率の改善効果を評価するには、さらなる検証が求められる」と指摘している。(菅野守:医学ライター)

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