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官民学で肥満対策に取り組む千葉市の事例/千葉市、千葉大、ノボ

 国民の健康維持や医療費の削減などのため、肥満や過体重に対するさまざまな取り組みが行われている。今回、千葉市とノボ ノルディスク ファーマは、官民学連携による肥満・肥満症対策の千葉モデルの実施について「肥満・肥満症対策における課題と実態調査から見る官民学連携による千葉モデルの展望」をテーマに、メディアセミナーを開催した。セミナーでは、千葉市との連携の経緯やその内容、肥満症に関する講演、肥満症に関係する課題や今後の取り組みなどが説明された。官民学で千葉市から始まる新しい健康作りの流れ 同社が2024年9月に実施した全国47都道府県9,400人へのアンケート調査「肥満と肥満症に関する実態調査」によれば、「太っていることが原因で他人からネガティブなことを言われた内容」について、「体型が好ましくない」(57.6%)、「運動不足である」(45.5%)、「だらしない、怠惰である」(34.5%)の順で多かった。また。「『肥満』を解消するために医療機関を受診しなかった理由」では、「肥満は自己責任だと思うから」(39.8%)、「医療機関に行くとお金がかかるから」(35.4%)、「相談するほどの肥満だと思っていないから」(25.0%)の順で多く、肥満や肥満症に関するスティグマ(偏見)、社会的偏見の存在が確認されたという。 そこで、こうした課題に対し、2024年10月に千葉市と肥満および肥満症に関する環境を整備し、千葉市がより健康な社会を実現するモデル都市になることを目指すことを目的に協定を締結した。具体的には、地域住民・保健医療関係者の肥満・肥満症の理解向上、関連疾患の分析、子供の健康応援などの事項について連携を行うとされている。 はじめに千葉市長の神谷 俊一氏が、千葉市は最重要政策の柱の1つに「市民一人ひとりの健康寿命を伸ばし、誰もが豊かに暮らせる地域社会を作ること」を掲げていること、そのために「市民の健康に関する意識の向上を図り、行動変容を促し、健康作りに取り組みやすい社会環境を作る行動の後押しとしたい」と語り、今後は、三者が相互に協力しながら、市民の健康増進に取り組んでいき、「千葉市から始まる新しい健康作りの流れが全国へ波及していく第一歩となることを願う」と抱負を語った。肥満者の約4割が医師に相談は不要と回答 続いて基調講演として「肥満および肥満症 千葉市民の実態調査結果を踏まえて」をテーマに千葉大学学長の横手 幸太郎氏が、肥満症診療の要点と実態調査の内容などを解説した。 「わが国では20歳以上の肥満者は男性31.7%、女性21.0%とされ、年々BMI35以上の高度肥満も増えている」と疫学を示した上で、肥満と肥満症、メタボリックシンドロームは、概念が個々で異なり、肥満はBMI25以上、肥満症は、肥満(BMIが25以上)かつ、(1)肥満による耐糖能異常、脂質異常症、高血圧などの11種の健康障害(合併症)が1つ以上ある、または(2)健康障害を起こしやすい内臓脂肪蓄積がある場合に肥満症と診断されている。また、肥満症は治療が必要な疾患とされ、治療では食事、運動、行動、薬物療法、外科的療法が行われている。 そして、肥満・肥満症の原因としては、自己責任だけでなく、現在の研究では、遺伝的要因、職業要因などさまざまな要因により起こることが指摘されており、肥満・肥満症になることでスティグマや経済的問題、睡眠不足やメンタルヘルスなどの疾患など課題もあると説明した。 次に2025年3月に千葉市が市民に行った「肥満および肥満症に関する実態調査」について触れ、この調査は、千葉市民の男女2,400人(年齢20~70代)にインターネットで調査したもので、肥満症の認知について、「知っている」という回答は16.9%に止まり、医師への相談意向についても「思う・やや思う」で31.0%だった。その理由としては「相談するほど肥満だと思っていない」が43.4%で1番多かった。また、「肥満の人への印象」では、「運動不足である」が45.5%で1番多かった。 これらの調査を踏まえて横手氏は、「肥満はリスクであり、肥満症は病気である。一方、肥満・肥満症は自己責任だけでなくさまざまな要因が関連している。今回実施した千葉市民の肥満・肥満症に関する実態調査でも、千葉市民における肥満・肥満症に対する正しい理解の不足、そしてスティグマが存在することが明らかになった。予防だけでなく、治療を通して長きにわたる良い管理をして健康を保つためにも、スティグマの払拭が必要。自分で抱えることなく、それを社会でサポートして、リスクを認知し、どうやってそれを乗り越えて元気で長生きを実現するかが必要であり、今千葉市でこうした動きが出ている」と語り、講演を終えた。子供の健康応援を全世界で実施 次に「プロジェクトの進捗」について、同社の広報・サステナビリティ統括部の川村 健太朗氏が、今回の連携で行われている施策を紹介した。 3月4日「世界肥満デー」に合わせた疾患啓発として、千葉市の『市政だより』やSNSで肥満や肥満予防に関する記事の発信のほか、先述の実態調査を行ったこと、市民公開講座を実施したこと、大阪万博での発表などの取り組みが紹介された。 とくに3回にわけて行われた「ロゴ・スローガンの開発ワークショップ」では、官民学連携による新しい肥満・肥満症対策の取り組みが議論され、「みんなで気づく、みんなで動く。千葉市肥満と肥満症をほっとかない! プロジェクト」のローンチとロゴが決定されたことを紹介した。 最後に「今後に向けて」をテーマに同社の医療政策・渉外本部長の濱田 いずみ氏が同社の今後の取り組みを説明した。 肥満症の克服には社会的な連携が必要であること、そして、幼児期から思春期に肥満の子供は、成人後に肥満になる可能性が5倍高く、不安障害やうつ病のリスクも高いことが研究で示されていることから、今回の連携協定では「子供の健康応援」が含まれ、子供が健康に育つために運動と食事改善、地域に根ざした多様なアプローチなど仕組み作りを行うという。この取り組みは、世界5ヵ国(カナダ、スペイン、ブラジル、南アフリカ、日本)で展開しており、千葉市もその一環であることが説明され、「今後も肥満症を始めとする深刻な慢性疾患の克服に全社を挙げて取り組んでいく」と決意を述べた。

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母親の産前、産後うつ病と子供の自閉スペクトラム症との関係〜メタ解析

 母親の産前、産後うつ病や周産期うつ病と子供の自閉スペクトラム症(ASD)との関係については、相反する結果が報告されている。オーストラリア・カーティン大学のBiruk Shalmeno Tusa氏らは、母親の産前、産後うつ病や周産期うつ病と小児および青年期におけるASDリスクとの関連についての既存のエビデンスを検証し、統合するため、システマティックレビューおよびメタ解析を実施した。BJPsych Open誌2025年6月4日号の報告。 2024年2月21日までに公表された研究を、PubMed、Medline、EMBASE、Scopus、CINAHL、PsycINFOよりシステマティックに検索した。ランダム効果モデルを用いてメタ解析を実施し、サマリー効果推定値はオッズ比(OR)、95%信頼区間(CI)として算出した。異質性の評価には、Cochranの Q検定およびI2検定を用いた。対象研究における潜在的な異質性の要因を特定するため、サブグループ解析を行った。出版バイアスの評価には、ファンネルプロットとEggerの回帰検定を用いた。 主な結果は以下のとおり。・最終分析には、160万組超の母子を対象とした12件の研究が含まれた。・ランダム効果メタ解析では、子供におけるASD発症リスクは、妊娠前にうつ病を経験した母親の場合52%(OR:1.52、95%CI:1.13〜1.90)、産前うつ病の場合48%(OR:1.48、95%CI:1.32〜1.64)、産後うつ病の場合70%(OR:1.70、95%CI:1.41〜1.99)それぞれ増加していることが明らかとなった。 著者らは「メタ解析の結果、出産前、周産期、出産後にうつ病を経験した母親から生まれた子供は、ASD発症リスクが高いことが判明した。ASDリスクの子供に対する早期スクリーニングおよびターゲットを絞った介入プログラムの必要性が示唆された」と結論付けている。

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錐体外路症状の早期発生は予後不良の予測因子か

 抗精神病薬未治療または短期間の治療(準未治療)しかされていない初回エピソード統合失調症患者では、錐体外路症状(EPS)が主な病態として発現する可能性がある。スペイン・Universidad ComplutenseのJoaquin Galvan氏らは、未治療および準未治療の初回エピソード統合失調スペクトラム症におけるEPSの有病率、ベースラインにおける人口統計学的および臨床的相関、フォローアップ期間中の臨床アウトカムとの関連を解析した。European Neuropsychopharmacology誌オンライン版2025年7月12日号の報告。 OPTiMiSE第1相試験のデータ(対象:481例、年齢範囲:18〜40歳)を解析した。・EPSの定義は、スカンジナビア精神薬理学会の臨床試験委員会(UKU)の神経学的副作用サブスケールスコア1以上とした。ベースラインEPSの有無で層別化し、人口統計学的、臨床的、機能的指標で比較した。ベースラインEPSとフォローアップ時の臨床アウトカムとの関連を分析するため、ロジスティック回帰モデルおよび線形回帰モデルを用いた。 主な内容は以下のとおり。・ベースラインにおけるEPS有病率は30%、男性よりも女性で多くみられた。・抗精神病薬未治療群と準未治療群との間に差は認められなかった。・EPSを有する患者は、ベースライン時に抑うつ症状および自殺傾向がより多くみられた。・完全調整モデルでは、ベースライン時のEPSとフォローアップ時の抑うつ症状、陽性症状、陰性症状、総合精神病理症状の重症度、自殺傾向の増加、ウェルビーイングの低下、機能性低下との関連が示唆された。 著者らは「本結果は、EPSは統合失調症の主要な所見であることを支持するものであり、早期(抗精神病薬未治療または準未治療)のEPS発現は、臨床予後がより不良なサブグループを表している可能性が示唆された。EPSは、アウトカム不良の早期マーカーとして機能し、初回エピソード統合失調スペクトラム症に対する標的介入の指針となる可能性がある」とまとめている。

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軽度認知障害は自らの努力で改善できるのか?【外来で役立つ!認知症Topics】第32回

MCIからUターンする要因軽度認知障害(MCI)とは、アルツハイマー病などの認知症の前駆状態、つまり予備軍として知られる。ところが、その4人に1人は健康な状態に戻れることも有名である。これをリバートといい、そうなる人はリバーターと呼ばれる。MCIからリバートできる要因を検討した臨床研究も少なからずある。筆者自身、10年以上前に、とても励まされた論文の記憶が残る。これは「好奇心が強いこと」「複雑な知的作業に熱心なこと」などがリバート要因であったと報告したオーストラリアの論文である1)。この種の研究はその後多くなされ、今日までにそれらのメタアナリシスも報告されている2, 3)。MCIと診断された人にとって、「自分の努力次第で改善するかもしれない」という希望は大きな励みになる。そのため、診察の場では「どうすればリバートできるのか、その要因を教えてほしい」という質問をしばしば受ける。リバート要因の現状と課題当然、われわれは患者さんに勇気を持ってもらい、実際に役立つ回答がしたいのだが、実はこれが容易でない。なぜなら、ご本人の努力や心掛けで変えられる確実な要因を伝えたいものの、まだほとんど確立されていないのである。既述した好奇心や複雑な知的作業といった要因も、知る限りではその後の研究で再確認されていない。一方で、リバートを予測する因子としてある程度確立されているのは、APOE4のような遺伝子型や、現時点での認知機能テストの成績といった、患者さん自身では変えられないものばかりだ。だがそれを教えても当事者にはあまり意味がない。以上を踏まえ、こうしたリバート要因に関する研究のメタアナリシス1, 2)を改めて整理し、臨床の場で使える要因を探ってみたい。リバート要因:4つの分類これまでに注目されてきたリバートの要因は、大きく4つに分けられる。1.身体・脳神経の医学に関わる要因2.年齢などいわゆる基本属性3.認知機能テストなど評価に関わる要因4.ライフスタイルに関わる要因1. 医学的要因まず医学的要因では、遺伝子APOE4の存在は確定しているだろう。そのほか、脳画像上の海馬容積が大きいこと、拡張期血圧が低いこと、BMIが低いこと、うつ病なども報告されているが、これらはまだ「有望な候補」といったレベルだ。2. 基本属性基本属性としては、年齢が若いこと、男性、高学歴、一人暮らしではないことなどが注目されている。興味深いことに、「一人暮らしのほうが緊張感があり、心身ともに活発になるためリバートしやすい」と考察する研究もある。しかし、個々の研究はもとより、メタアナリシスでさえも正反対の結果を示すものがあり、このような要因は確実とはいえない。たとえば、「男やもめにうじが湧き、女やもめに花が咲く」、つまり「独り暮らしの男性は家事がおろそかで不潔になりがちだが、独り暮らしの女性は清潔で華やかだ」という意味の古いことわざがあるように、一人暮らしでも性別によって結果が反対になることもありえるからである。3. 認知機能テストの成績認知機能テストに関しては、MMSEなどの得点が高いこと、あるいはMCIの中でも、複数の領域で障害が見られる「複数ドメインMCI」ではなく、1つの領域のみの障害である「シングルドメインMCI」であることが代表的要因だ。これらに関しては筆者も納得するのだが、そのことをMCI当事者に伝えても直接的な改善策にはなりにくいだろう。4. ライフスタイル要因ライフスタイルでは、規則的な家事労働が良いとする報告がある。しかし意外なことに、認知症の予防因子として知られる有酸素運動などは、リバート要因としてまだ確実とはいえないようだ。また、さすがに喫煙が良いとする報告はないが、規則的な飲酒は良いとする報告もみられる。中国の報告では、新鮮な果物の摂取、読書の習慣、マージャンなどゲームが予防的に働くという報告もある。こうした研究は興味深いが、今後の精緻な研究が待たれるだろう。以上から、残念ながらMCIの人自身が修正可能な要因は、現時点ではまだ確立されていないようだ。臨床で丁寧に伝えたい4原則今回、このMCIのリバート要因と、中年期からの難聴など、近年Lancet誌で報告された認知症のリスクファクターは重複する部分もあるが、すべて同じではないかもしれないと感じた。とはいえ、臨床の現場では、リバート要因としても、運動、栄養、休養、そして社会交流(孤独にならないこと)の4原則を伝えることが基本となるだろう。また筆者の印象ながら「MCIと診断された人は、一般の健康成人に比べて、予防に対してより切実・真摯である」ことは事実であろう。それだけに、これらの原則をより丁寧に伝えたい。また、MCIの合併症は改めて要注意だ。うつ、複雑部分発作などのてんかん、発達障害(ADHD)は合併症でもありえるが、実はMCIの主因だということもある。しかもこれらは原則的に、薬物治療によって改善する可能性があるので、忘れてはならない。終わりに近い将来、MCIのリバート要因の探索は、ビッグデータを用いてさまざまな注目要因を組み合わせ、その相互作用をAIで解析することで、大きな進歩があるかもしれない。参考1)Sachdev PS, et al. Factors predicting reversion from mild cognitive impairment to normal cognitive functioning: a population-based study. PLoS One. 2013;8:e59649.2)Xue H, et al. Factors for predicting reversion from mild cognitive impairment to normal cognition: A meta-analysis. Int J Geriatr Psychiatry. 2019;34:1361-1368.3)Zhao Y, et al. The prevalence and influencing factors of reversion from mild cognitive impairment to normal cognition: A systemic review and meta-analysis. Geriatr Nurs. 2025;63:379-387.

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妄想性障害や急性精神病などの精神疾患と統合失調症や双極症との遺伝的関連性

 妄想性障害、急性精神病、特定不能精神病、統合失調感情障害の4つのまれな精神疾患における病因的な相互関係は、いまだに解明されていない。米国・バージニア・コモンウェルス大学のKenneth S. Kendler氏らは、妄想性障害、急性精神病、特定不能精神病、統合失調感情障害患者における統合失調症、双極症、うつ病の家族遺伝子リスクスコア(FGRS)レベルを評価し、これらの遺伝的関係を明らかにするためコホート研究を実施した。JAMA Psychiatry誌オンライン版2025年7月9日号の報告。 1950〜2000年にスウェーデン生まれの両親のもとスウェーデンで生まれた人を対象に、2018年までフォローアップを行った。国家レジストリーの診断コードに基づき診断した。統合失調症、双極症、うつ病患者の統合失調感情障害は、同居を考慮したうえ、第1〜5近親者より算出した。主要アウトカムは、妄想性障害、急性精神病、特定不能精神病、統合失調感情障害の診断とした。 主な結果は以下のとおり。・各疾患の患者数は次のとおりであった。【うつ病】66万7,012例(女性:42万142例[63%]、男性:24万6,870例[37%])【双極症】5万8,385例(女性:3万6,344例[62%]、男性:2万2,041例[38%])【統合失調症】1万7,465例(女性:6,330例[36%]、男性:1万1,135例[64%])【統合失調感情障害】7,597例(女性:4,125例[54%]、男性:3,472例[46%])【急性精神病】1万6,315例(女性:7,907例[49%]、男性:8,408例[51%])【特定不能精神病】2万7,127例(女性:1万2,277例[45%]、男性:1万4,850例[55%])【妄想性障害】1万1,560例(女性:5,060例[44%]、男性:6,500例[56%])・統合失調症、双極症、うつ病のFGRSの遺伝子マップでは、妄想性障害は単独で存在し、統合失調症の遺伝子リスクは統合失調症患者の約半数であり、双極症、うつ病リスクと同程度であった。・統合失調感情障害は、統合失調症と双極症の両方で非常に高い遺伝子リスクを有する唯一の疾患として特徴付けられ、精神病性双極症とは明確な差が認められた。・急性精神病と特定不能精神病は、類似した遺伝子プロファイルを有しており、統合失調症FGRSレベルは妄想性障害と同程度であったが、双極症、うつ病の遺伝子リスクはより高かった。・各疾患をアウトカム別に細分化すると、妄想性障害の遺伝子プロファイルは最小限の影響であり、急性精神病と特定不能精神病では中程度、統合失調感情障害では大きな影響が認められた。良好な社会的アウトカムは、統合失調症FGRSの低下および双極症FGRSの増加と関連が認められた。 著者らは「遺伝的観点から、妄想性障害、急性精神病、特定不能精神病、統合失調感情障害は、統合失調症、双極症、うつ病のサブタイプとは考えられない。これら4つのまれな精神疾患に関するさらなる遺伝学的研究は、遺伝的リスクや精神疾患の臨床症状および経過との関連に多くの知見を提供することにつながるであろう」とまとめている。

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8月7日 鼻の日【今日は何の日?】

【8月7日 鼻の日】〔由来〕「は(8)な(7)」の語呂合わせから、鼻の病気を減らすことを目的に、1961年に日本耳鼻咽喉科学会が制定。同会では、この日に全国各地で専門医の講演会や無料相談会などを行っている。関連コンテンツ長寿の村の細菌がうつ病や鼻炎に有効【バイオの火曜日】鼻血を繰り返す患児、最初にするべき検査は?【乗り切れ!アレルギー症状の初診対応】最新の鼻アレルギー診療ガイドラインの読むべき点とは/日本耳鼻咽喉科免疫アレルギー感染症学会1日1杯の緑茶が花粉症を抑制か~日本人大規模コホート鼻茸を伴う難治性慢性副鼻腔炎、テゼペルマブ追加が有効/NEJM

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1日7,000歩で死亡リスクが半減!?

 ウォーキングが健康に良いことが知られているが、具体的な歩数についてはさまざまな報告があり、明確な目標値は定まっていない。そこで、オーストラリア・シドニー大学のDing Ding氏らの研究グループは、成人の1日の歩数と死亡や疾患の発症、健康アウトカムとの関連を検討することを目的として、システマティックレビューおよびメタ解析を実施した。その結果、1日7,000歩でも死亡リスクが低下し、心血管疾患や認知症などの疾患の発症リスクも低下することが示された。本研究結果は、Lancet Public Health誌2025年8月号で報告された。 研究グループは、PubMedおよびEBSCO CINAHLを用いて、2014年1月~2025年2月に発表された文献を検索した。そのなかで、1日の歩数と死亡、心血管疾患(発症・死亡)、がん(発症・死亡)、2型糖尿病発症、認知症発症、うつ症状、身体機能、転倒との関連を検討した前向き研究を抽出した。57研究(35コホート)が抽出され、そのうち31研究(24コホート)をメタ解析に組み入れた。1日2,000歩を対照とし、歩数増加に伴う各アウトカムのリスクの変化を評価した。 主な結果は以下のとおり。・1日2,000歩を対照とした場合、1日7,000歩の歩行により、死亡やさまざまな疾患の発症、健康アウトカムのリスクが低下した。詳細は以下のとおり(ハザード比[95%信頼区間]、エビデンスの確実性を示す)。 死亡:0.53(0.46~0.60)、中程度 心血管疾患発症:0.75(0.67~0.85)、中程度 心血管死:0.53(0.37~0.77)、低い がん発症:0.94(0.87~1.01)、低い がん死亡:0.63(0.55~0.72)、中程度 2型糖尿病発症:0.86(0.74~0.99)、中程度 認知症発症:0.62(0.53~0.73)、中程度 うつ症状:0.78(0.73~0.83)、中程度 転倒:0.72(0.65~0.81)、非常に低い・死亡、心血管疾患(発症・死亡)、がん死亡、認知症発症、転倒のリスクと歩数の関連は非線形であり、歩数増加に伴うリスク低下の効果は、1日5,000~8,000歩程度で鈍化する傾向がみられた。・がん発症、2型糖尿病発症、うつ症状のリスクと歩数の関連は線形であった。 著者らは、本研究結果について「1日7,000歩という歩数は現実的な目標であり、調査したほとんどの健康アウトカムのリスク低下と関連した」とまとめた。

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日本人統合失調症患者における自殺企図の出現時期と重症度との関連

 岩手医科大学の伊藤 ひとみ氏らは、日本人統合失調症患者における自殺念慮の出現時期、自殺企図の重症度、これらに関連する因子の調査を行った。PCN Reports誌2025年7月6日号の報告。 対象は、2003〜21年に自殺企図のため救急外来を受診した統合失調症患者273例。自殺念慮の出現時期に基づき、同日群または同日前群のいずれかに分類した。受診時に観察された患者の人口統計学的特徴および精神症状に関するデータを収集した。また、自殺の動機および自殺企図手段に関するデータを分析し、自殺念慮の出現時期、自殺企図手段の重症度、関連因子との関係を検証した。 主な結果は以下のとおり。・同日前群は、同日群と比較し、高度な自殺企図手段を選択する可能性が有意に高かった(p=0.03)。・同日群では、高度な自殺企図手段の選択と幻覚・妄想に関連する自殺動機との間に強い正の相関が認められた(オッズ比[OR]:2.01、95%信頼区間[CI]:1.01〜4.03、p=0.049)。・一方、同日前群では、過去1年間の自殺企図歴と高度な自殺企図手段の選択との間に負の関連が認められた(OR:0.32、95%CI:0.12〜0.86、p=0.023)。 著者らは「日本人統合失調症患者における自殺リスクの評価と介入戦略の強化について重要な知見が明らかとなった。自殺念慮の出現時期は、自殺企図の重症度に有意な影響を及ぼすことが示唆された」と結論付けている。

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治療抵抗性うつ病に対する早期ブレクスピプラゾール補助療法

 うつ病治療では、患者の苦痛を最小限に抑えて、臨床的ベネフィットを最大化するために、可能な限り早い段階で適切な治療を行う必要がある。米国・Otsuka Pharmaceutical Development & Commercialization Inc.のShivani Kapadia氏らは、うつ病の早期および後期におけるブレクスピプラゾール併用療法の有効性および安全性を評価するため、ランダム化比較試験の事後解析を行った。The International Journal of Neuropsychopharmacology誌オンライン版2025年7月3日号の報告。 対象は、抗うつ薬治療で効果不十分な成人の治療抵抗性うつ病外来患者。ブレクスピプラゾール併用療法に関する3件の6週間ランダム化二重盲検プラセボ対照試験のデータを統合した。年齢中央値、診断時年齢、エピソード数、エピソード持続期間、過去に服用していた抗うつ薬数に基づき早期群および後期群に分類した。有効性はMontgomery Asbergうつ病評価尺度(MADRS)総スコアの変化、安全性は治療中に発現した有害事象により評価した。 主な結果は以下のとおり。・抗うつ薬にブレクスピプラゾール2〜3mg/日を併用した併用群(579例)は、プラセボを併用した対照群(583例)と比較し、6週目のMADRS総スコアの改善(p<0.05)が大きかった。早期群および後期群などのすべてのサブグループにおいて有効であった(範囲:−1.79〜−2.92)。・治療中に発現した有害事象の発生率は、サブグループ全体で併用群53.1〜67.2%、対照群43.0〜51.8%であり、早期群と後期群での差は認められなかった。 著者らは「ブレクスピプラゾール併用療法は、治療抵抗性うつ病の早期段階において抑うつ症状を改善し、患者および医療制度へのベネフィットを最大化する。うつ病の後期段階においても、ブレクスピプラゾール併用療法の有効性は示されるが、投与を遅らせるメリットは認められない」と結論付けている。

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自分のトリセツを知るとだいぶ楽になる(解説:岡村毅氏)

 認知行動療法について、皆さんはどのくらい知っているだろうか? 医療が「悪いところを取る」「折れたものをつなげる」「薬を飲んで治す」といった領域だけだと思っているシンプルな人にはなかなかわかってもらえない。大学生などに説明するときに使っているのは「自分のトリセツを知ることだ」という説明である。 たとえば、こうである…。最近とても暑いので、精神科の外来では調子の悪いパニック症の人によく出会う。「空気が熱いと息苦しい感じがする。パニック発作のときみたいな体験をする。そうなると不安が亢進し、呼吸が速くなり、確かにパニック発作が起きてしまう」と説明すると、多くの患者さんは良くなる。自分の身に何が起きているかわかるからである。 相手によっては、さらに畳み掛ける。「人間なんて天候に左右される弱い存在なのです。暑すぎると調子が悪い、雨だと気分が沈む。そういうものです」と言うと、ハッとする人もいる。別に大したことは言っていないのだが、自分が弱い存在だということをつい忘れてしまっているのだ。私に言わせれば、これも認知行動療法の原型である。 さて、慢性疼痛に対して認知行動療法が効くことはずいぶん前からわかっていた。身体が損傷を受ければ痛みが生じる。これが急性の疼痛である。ところが、その時期を過ぎても延々と痛みが続くものが慢性疼痛である。慢性疼痛には複合的な要因があり、もちろん心理的要因も大きい。痛みが続くと気持ちが沈み、痛みが来たらどうしようといつも構えていると、身体が緊張して、より一層痛みが生じる、というようなことも起こる。いつも痛みのことを考えていると、症状がより目立ってしまうということもあるだろう(読者の皆さま、40歳を過ぎるといつもどこか微妙に痛くないですか?)。 ただし、認知行動療法をするために医療機関等を受診するのは大変である。そこで本研究は、(1)電話やオンライン会議を用いた1対1の認知行動療法、(2)e-learningのようなオンライン教材、(3)相談先や対処方法の情報を渡す(これが対照群である通常のケア)に分けて比較している。臨床的に意味のある改善は、(1)は(3)に比べて1.54倍、(2)は(3)に比べて1.28倍得られた。 オンラインの1対1の認知行動療法ができればよいし、それが無理でもオンラインの自己学習型のプログラムでも十分効果があるということだ。なお、このオンラインプログラムは実は無料で公開されている(painTRAINER)。 となると、オンラインの認知行動療法と、対面の(リアルの)認知行動療法は違うのだろうか、という疑問が生じる。うつ病に関してはメタアナリシス(文献)があり、効果は同等、ただし対面のほうが脱落率は低い。まあそうだろうな、という結果だ。知識として自分のトリセツを知る分にはオンラインでも対面でも変わらないが、人と人が数十センチの距離で対峙するとき、さまざまな不確実な事象が起こり、これが対面の心理療法の醍醐味だ、というのが精神科医である私の見解だ。

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孤独感は心身の健康に悪影響を及ぼす

 孤独感は、うつ病や体調不良のリスクを劇的に高めるようだ。新たな研究で、常に孤独を感じていると答えた人では半数(約50%)がうつ病の診断を受けると予測されたのに対し、孤独を感じたことがない人では10%弱にとどまると推定された。また、常に孤独を感じている人では、精神的・身体的な不調を感じる日も多かったという。米ハワード大学医学部のOluwasegun Akinyemi氏らによるこの研究の詳細は、「PLOS One」に7月9日掲載された。研究グループは、「孤独感は単なる感情状態ではない。心身の健康に明らかな影響を及ぼす。孤独感への対処は、うつ病を軽減し、全体的なウェルビーイングを改善するために、公衆衛生上の重要な優先事項となる可能性がある」と述べている。 この研究でAkinyemi氏らは、2016年から2023年の間に米国で実施された行動リスク要因サーベイランスシステム(Behavioral Risk Factor Surveillance System;BRFSS)のデータを分析して、孤独感とうつ病の診断、精神的または身体的に不調な日との関連を検討した。孤独感は「どのくらいの頻度で孤独を感じますか?」という質問で測定され、「常に」「たいてい」「時々」「まれに」「全くない」の5つのレベルに分類された。社会人口学的特徴を調整し、BRFSSのサンプリングウェイトおよび州・年ごとの固定効果を考慮した上で、逆確率重み付け(IPW)を用いて孤独感が及ぼす平均的な影響を推定した。対象者は総計4万7,318人で、白人が73.3%、女性が62.1%、18〜64歳が72.1%を占めていた。 分析の結果、孤独を感じる頻度が高いほどうつ病発症のリスクも高まることが示された。具体的には、「全くない」群での予測確率は9.7%であったのに対し、「まれに」の群では16.3%、「時々」の群では30.6%、「たいてい」の群では47.7%、「常に」の群では50.2%であった。また、孤独感の頻度が高いほど、精神的・身体的に不調を感じる日数が増加する傾向が認められた。例えば、精神的な不調を感じる日数は、「常に」の群で月平均19.95日であるのに対し「全くない」群では9.36日、身体的な不調を感じる日数は、それぞれ15.83日と11.22日であった。 さらに、一部のグループは他のグループよりも孤独の影響をより強く受けることも判明した。例えば、孤独を感じる頻度を問わず、女性では男性よりも、また白人では黒人よりもうつ病になる可能性が高く、精神的に不調な日も多かった。 Akinyemi氏は、「若い成人、女性、失業者、教育歴があまりない人は、孤独感を訴える傾向が強かった。孤独感は、高齢者だけではなく、あらゆる年齢層や背景を持つ人々にも影響を及ぼす」と述べている。 Akinyemi氏らは、孤独感はストレスのかかった状況下で生じる防御システムである闘争・逃走反応を刺激するか、セロトニンやドパミンなどの神経伝達物質の流れに影響を及ぼすことで、健康に影響を与えるのではないかと推測している。同氏らは、「これらの神経化学的変化は、社会とのつながりが失われているという心理的負担が重なって、うつ病の症状のリスクを増大させる可能性が高い」と記している。さらに同氏は、「孤独を認めることは、弱さや社会的失敗と捉えられがちであり、それが支援を求めることをためらわせてしまう。この沈黙が、健康への悪影響や長期的な害を引き起こす可能性がある」と述べている。 研究グループは、今後の研究では孤独感を軽減することで心身の健康が改善されるのかどうかを検討すべきだと話している。

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電話相談って困るんだけど…【救急外来・当直で魅せる問題解決コンピテンシー】第9回

電話相談って困るんだけど…Point受診時期、受診可能な施設、搬送手段が明確になるような相談をしよう。相手の現状理解や、今後どう行動するかを確認する丁寧な対応を心がけよう。電話相談で診断をつけず、病態から予想されうる疾患の徴候を伝えて、再相談・受診の目安をわかりやすく伝えよう。症例その日の深夜帯は忙しく、立て続けに心筋梗塞やクモ膜下出血が搬送され、当直帯のスタッフは処置につきっきりだった。そんな時、2歳男児の母親から受診相談の電話がかかってきた。その日の午後に近医を受診し、嘔吐、下痢、腹痛で受診し胃腸炎と診断されたが、まだ、痛がっているので救急外来に受診したい旨の電話だった。母親によると前日に男児の4歳の姉も胃腸炎と診断され、姉は元気になったが、兄は痛がって寝つけないため心配だとの相談だった。当直医は処置に追われていることもあり、すでに診断されて内服薬もあるのだから大丈夫だろうと、やや早口で「胃腸炎でしたら、様子をみてもらえば大丈夫です」とだけ告げて電話を切った。翌日に小児科を受診し、腸重積と診断されそのまま入院となった。男児の両親から、「すぐに入院が必要な状態だったのに前日の電話対応はなんだ」と怒りのクレームを受けることになった。おさえておきたい基本のアプローチ昨今、電話救急医療相談(救急安心センター事業#7119)は全国的に広まりつつあり、日本国民の79%をカバーしている1)。一方で、多くの地域ではサービスが利用できず、またかかりつけ医に直接電話で相談する患者もいるだろう。夜中の電話相談は、なかなか難しいものだ。診察なしに、患者本人や家族からの情報だけで適切な判断を求められる、「これは何かの罠だろうか? あー、早く偉い人がAIとか進歩させて患者相談が全自動になって、この原稿もお役御免にならないかなー」と流れ星に願いをかけてみるも、もうしばらくは電話相談と付き合っていかなければならなさそうだ。そもそも、電話相談で大事なポイントは何だろうか? 相談相手が適切な受診行動をとることが最重要だ。(1)受診時期、(2)受診可能な施設、(3)搬送手段が相手に伝わるようにしよう。まず、受診時期については、病態の緊急度が相関する。今すぐに治療が必要な病態で、急いで救急外来を受診すべき状態か、今すぐの受診は必要ないが2、3日以降にかかりつけ医を受診して診察・治療が必要な状態か、かかりつけ医の次の予約外来の診察で間に合うのか、われわれの判断で患者の受診行動が大きく変わり、患者の転帰が変わることもある。前医の診断を鵜呑みにして判断すると、痛い目にあうのが電話相談の大きな落とし穴だ。実際に診察しないと、はっきりしたことは言えないとしっかり電話越しに伝える必要がある。夜中だと電話を受ける側も楽な疾患に飛びつきやすく、バイアスに陥りやすいものだ。受診可能な医療機関については、その地域ごとのルールを参照してほしい。とくに精神科、小児科、歯科については特別なルールがあることが多いだろう。かかりつけ医での対応なのか、対応する専用の施設があるのか、輪番病院での対応なのか。また、休日や夜間帯によっても、対応施設が変わるので、そこも考慮してほしい。搬送手段についても病態に応じたアドバイスが必要だ。酸素投与やルート確保も必要で救急車による搬送が考慮される病態、公共交通機関で受診が可能な病態、病態は緊急ではなくともADLの低下などで歩行不可能な高齢者で民間の介護タクシーなどの手段が必要な病態などが考えられる。病態に応じた搬送手段を提案しよう。上記を考慮に入れた電話相談のポイントを表に示す。表 電話相談のポイント画像を拡大する落ちてはいけない・落ちたくないPitfalls「電話対応で心配いらない旨を伝えたのですが、もう一度電話がかかってきて、別のスタッフにまた同じ相談をしていました賢明な読者は、普段の病状説明では紙に病名や対応を大きな文字でわかりやすく書き、ときに図示して工夫されていることだろう。一方、電話相談では音声でのコミュニケーションに限られる(今後オンライン診療やWeb会議システムで相談が置き換わるようであれば変わるかもしれないが)。普段は文字で書けば通じる言葉でも、音声だと一気に難易度アップ! まして、難聴の高齢者からの電話相談ではなおさらだ。ちゃんとこちらの伝えたい意図が伝わっているかを確認するうえで、現在の状態をどう理解したのか、これからどう行動するのかを相手から言ってもらって(復唱してもらって)、相談の終わりに確認しよう。これで不要な受診や電話が減って、平和な夜が過ごせること請け合いだ。Point電話相談は音声伝達であるため、相手の理解、どう行動するかを確認しよう話を聞いたら、前医で診断、処方があって外来でのフォロー予定も入っていたので、そのまま経過をみるように伝えました前医で診断を受け処方をされ外来でのフォローの予定が決まっていても、何か様子が変わったところがあったり、別の症状が出現したりで、心配になり電話をかけてきたのだろう。その心配な点を聞かずに、ただ経過を見なさいでは、相談者も納得がいかないだろう。相手の不安な点、ニーズを丁寧に聞き取ると、実は見逃してはいけない疾患が隠れていたなんてこともあるだろう(いや、これが結構あるんだよ。今回の症例でも腹痛がメインになる「胃腸炎」なんて誤診もいいところ!)。前医の診断をそもそも電話で聞いただけで信じてはいけない。診察なしに診断なんてできないと、明確に電話相談者に伝えるべきである。でもつっけんどんに冷たくあしらうのではダメ。共感的声色をもって対応しよう。落とし穴にはまらないよう、カスタマーセンターのスタッフになったつもりで聞いてみよう。日中、自分の病院にかかっている場合は、日中見逃されていた可能性もあり、ハイリスクと考えて受診してもらうほうが無難なんだよ。Point相手の不安に思う点を丁寧に聴取して、解消に努め、必要があれば再受診を促そう前医の診断は疑ってかかれ!不眠の訴えで電話があったので、翌日受診をお勧めしたのですが、自殺企図で救急搬送されました不眠の訴えの裏に、うつ病などの希死念慮を伴う精神疾患が存在することもある。緊急性のある精神疾患が隠れていないか確認して、場合によっては精神科救急への受診を勧めることも必要になる。また精神疾患があっても、生命を脅かすのは器質的疾患や外因によるものだから、精神疾患で片づけてしまってはいけない。Pointメンタルヘルスの電話相談にも緊急性のある疾患を考慮して適切に受診を促す電話で小児の母親から「嘔吐と下痢と腹痛があって周囲に流行もある」と聞いたので感染性胃腸炎と診断し、伝えましたあくまで電話相談では、現在の病態が受診すべきどうかを判断して、受診時期や施設、搬送手段についてアドバイスすることが求められる。限られた情報での診断は難しいし危険である。疑われる疾患やありうる疾患と徴候などを伝え、どうなったら再相談、受診したほうがよいのかを丁寧にアドバイスしよう。そのうえで、実際に診察しない電話だけでは診断はなかなかわからないものなので、適切なアドバイスができなくてすみませんと伝えよう。「どうせ電話でなんて診断がわかるわけがないんだから、心配ならきちんと受診しなさいよ!」なんて高圧的な態度で対応するのはダメチンだよ。また、高齢者や小児の家族からの相談は自分でうまく症状が伝えられないことが多く、訴えが聴取しにくい。高齢者では急にいつもと様子が違う状態になったならば、感染症などの背景疾患からせん妄になっていることも考えられるため、高齢者の受診の閾値は下げるべきだ。高齢者では、症状をマスクする解熱鎮痛薬、循環作動薬、抗凝固薬、抗血小板薬、抗がん薬やステロイドなどの免疫抑制薬を定期内服していることも多い。カルテなどの情報がなければ、内服の丁寧な聴取も病態判断に重要だ。また、小児では予備能が低く血行動態が破綻しやすいため、重症になるまでの時間が成人よりも急激であることが多い。症状が持続しているならば受診を勧めよう。親にとって、子供は自分の命に代えても大事な宝物なのだから。Point電話相談だけで診断はつけられない。予想される疾患や再相談や受診の目安を伝えようワンポイントレッスン電話相談の小ネタ〜これであなたも電話相談したくなる!?電話相談では、どんな相談が多い?スウェーデンの80歳以上の高齢者の電話医療相談の研究では、全体の17%が薬剤関連で、自分の入院に関連した情報(既往歴や内服などの情報照会)、尿路関連、腹痛といった相談が続く2)。薬剤関連が多いのは高齢者という特性が大きく関連しているだろうが、皆さんの実感とも近いだろうか。電話相談で不要な診察はどのくらい減らせる?デンマークの研究では、電話相談による介入で不適切な頻回受診が16%減らせるとの報告がある3)。また、英国の電話相談サービス“NHS111”にかかってきた救急外来受診相談にgeneral practitionerが介入することで、73%が救急外来受診以外の方針(1次医療機関や軽傷対応施設の受診:45.2%、経過観察など:27.8%)となったことが報告された4)。適切な電話相談で相当数の不要不急の診察が減らせそうだ。電話相談だけで済ませることになっても有害事象は起こっていない?電話相談を行っている地域と行っていない地域とで比較した報告によると、有害事象や死亡の転帰をたどった率はそれぞれ、0.001%、0.2〜0.5%だった3)。適切な電話相談が行われれば、相談者に有害な転帰をたどる可能性はきわめて低いといえる。 電話相談による医療コストは減らせる?これだけ不要な診察を減らして有害事象も起こさない電話相談なら、医療費削減にもよいのでないかと思うだろう。しかし、現在のところ英国の研究によれば、議論の余地があるところだ。救急医療コストの29%を減らしたとする一方、そのうちの75%は電話相談サービスの運営コストで相殺される。今後AIなどの発達によって相談サービスのコストが削減できると結果は変わってくるだろう。電話相談で患者の救急医療の満足度は変わる? 認識は変わる?電話相談によって大幅なコストダウンは見込めないが、患者満足度はどうだろうか?イギリスの電話相談サービス“NHS 111”のあるエリアとないエリアで比較して、救急外来を受診した患者の満足度や救急医療に対する認識に変化があるか調査したが、救急医療への満足度、認識に変化はないとの報告だった5)。こちらも相談サービスの質向上によって改善しうるだろう。勉強するための推奨文献 Ismail SA, et al. Br J Gen Pract. 2013;63:e813-820. Knowles E, et al. BMJ Open. 2016;6:e011846. 石川秀樹 ほか. 日本臨牀. 2016;74:p.303-313. 参考 1) 総務省消防庁HP. 救急安心センター事業(#7119)関連情報 2) Dahlgren K, et al. Scand J Prim Health Care. 2017;35:98-104. 3) Ismail SA, et al. Br J Gen Pract. 2013;63:e813-820. 4) Anderson A, Roland M. BMJ Open. 2015;5:e009444. 5) Knowles E, et al. BMJ Open. 2016;6:e011846. 執筆

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医療従事者におけるベンゾジアゼピン使用が仕事のパフォーマンスに及ぼす影響

 不眠症や不安症の治療によく用いられるベンゾジアゼピン(BZD)は、スペインでの使用が増加しており、濫用や依存のリスクに対する懸念が高まっている。スペイン・Miguel de Cervantes European UniversityのCarlos Roncero氏らは、医療従事者におけるBZDおよびその他の向精神薬の使用状況を調査し、その使用率、関連因子、そしてCOVID-19パンデミック後のメンタルヘルス問題との関連性を評価した。Journal of Clinical Medicine誌オンライン版2025年6月16日号の報告。 Salamanca University Healthcare Complex(CAUSA)の医療従事者1,121人を対象に、2023年3月〜2024年1月に匿名オンライン調査を実施した。完全解答が得られた685人のデータを分析した。不眠症、不安症、うつ病の評価には、不眠症重症度質問票(ISI)および患者健康アンケート(PHQ-4)を用いた。 主な結果は以下のとおり。・回答者のうち、睡眠薬を使用していると解答した割合は23.8%、そのうち27.8%は処方箋なしと回答した。・さらに、うつ病または不安症の治療薬を使用していた人の割合は14.7%、処方箋なしと回答したのは、わずか0.6%であった。・睡眠薬の使用と関連していた因子は、高齢、不眠症、不安症、うつ病、心理療法または精神科治療、COVID-19の後遺症、睡眠障害の診断であった。・夜勤は、男性では睡眠薬の使用増加と関連が認められたが、女性では認められなかった。・これらの薬剤の使用は、QOL低下や仕事のパフォーマンス低下との関連が認められた。 著者らは「BZDの使用、とくに自己判断での使用は、医療従事者の間で広くみられており、一般集団よりも高かった。これらの結果は、向精神薬の使用に対処し、不眠症に対する他の薬理学的および非薬理学的な代替療法の促進、脆弱集団に対するメンタルヘルス支援の強化などターゲットを明確にした介入の必要性を浮き彫りにしている」と結論付けている。

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抗うつ薬中止後の離脱症状発生率とうつ病再発への影響

 抗うつ薬中止後にみられる離脱症状の発生率やその性質は依然としてよくわかっていない。英国・キングス・カレッジ・ロンドンのMichail Kalfas氏らは、抗うつ薬の服用を中止した患者において、標準化された尺度(Discontinuation-Emergent Signs and Symptoms[DESS]など)を用いた離脱症状の有無およびそれぞれの離脱症状の発生率を評価するため、システマティックレビューおよびメタ解析を実施した。JAMA Psychiatry誌オンライン版2025年7月9日号の報告。 2023年11月7日までに公表された研究をEmbase、PsycINFO、Ovid MEDLINE、Cochrane Libraryの各データベースよりシステマティックに検索した。対象研究は、抗うつ薬中止後に、標準化された尺度を用いて離脱症状を報告したランダム化臨床試験(RCT)、それぞれの離脱症状(有害事象など)を報告したRCTとした。抽出したデータは、2人のレビューアーによるクロスチェックを行った。11件のRCTより未発表のデータも追加で対象に含めた。抗うつ薬中止患者、抗うつ薬継続患者、プラセボ中止患者との標準化平均差(SMD)を算出するために、ランダム効果メタ解析を実施した。プラセボと比較したそれぞれの離脱症状の発生率を評価するため、割合およびオッズ比(OR)のメタ解析を行った。異なる抗うつ薬の比較は、サブグループ解析として実施した。データ解析は、2024年9〜12月に行った。主要アウトカムは、標準化された尺度または標準化されていない尺度を用いて測定した抗うつ薬中止に伴う離脱症状の発生率とその性質とした。 主な結果は以下のとおり。・50研究(1万7,828例、女性の割合:66.9%、平均年齢:44歳)のうち、49研究をメタ解析に含めた。・フォローアップ期間は、1日〜52週間。・DESSのメタ解析では、抗うつ薬中止患者は、プラセボまたは抗うつ薬継続患者と比較し、1週間後の離脱症状の増加が認められた(SMD:0.31、95%信頼区間[CI]:0.23〜0.39、11研究、3,915例)。・エフェクトサイズは、DESSにおける1症状増加に相当した。・抗うつ薬中止は、プラセボ中止と比較し、浮動性めまい(OR:5.52、95%CI:3.81〜8.01)、悪心(OR:3.16、95%CI:2.01〜4.96)、回転性めまい(OR:6.40、95%CI:1.20〜34.19)、神経過敏(OR:3.15、95%CI:1.29〜7.64)のオッズ増加と関連していた。・最も多く認められた離脱症状は、浮動性めまいであった(リスク差:6.24%)。・離脱症状の測定は、うつ病患者(5研究)で測定されたにもかかわらず、抑うつ症状との関連は認められなかった。 著者らは「抗うつ薬中止後1週間目における離脱症状の平均数は、臨床的に意義のある離脱症候群の閾値を下回っていることが示唆された。気分症状の悪化は、抗うつ薬中止と関連していなかったことから、中止後の抑うつ症状の再燃は、うつ病の再発を示唆する可能性がある」と結論付けている。

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うつ病の維持期治療:患者さんの視点から/日本うつ病学会

維持療法にも目を向けて 2025年、うつ病診療ガイドラインが改訂され、うつ病の維持期治療について新しく取り上げられることになった。寛解の後、どのように治療を継続するか、あるいは治療を終了するのかは非常に重要である。 2025年7月11日、第22回日本うつ病学会総会共催シンポジウムにて「うつ病の維持期治療~患者さんの声とともにリカバリーの課題について考える~」と題したセッションが開催され、うつ病の経験を持つ林 晋吾氏が患者さん本人の視点から講演を行った。うつ病患者の回復と家族の視点~残遺症状とEmotional Bluntingの理解~ 林氏は2010年にまずパニック障害を発症し、その後うつ病を発症した。現在は寛解状態にあり、うつ病などの精神疾患を持つ患者さんの家族向けのコミュニティサイトの運営を行っている。当事者としての経験と家族支援を通して見えた維持期における課題として、残遺症状とEmotional Blunting、そして患者家族を含めた環境整備を挙げた。 林氏は寛解後も残遺症状である倦怠感や気分の落ち込み、集中力の低下を感じており、自己否定が強まり、人に相談できない状態に陥ることがあると述べた。また、Emotional Bluntingの影響についても自身の経験をもとにどのような状況になるかを説明した。 Emotional Bluntingとは感情の麻痺や平坦化、無関心、感情的な反応が低下している状態を指し、ポジティブな感情もネガティブな感情も感じにくくなる。Emotional Bluntingによって他人だけでなく自分自身へも関心が持てなくなり、結果として社会との繋がりを避けるようになり、自分自身を矮小な存在と感じてしまうことがあった、と林氏自身の経験を語った。 さらに患者家族の支援を通した活動から、Emotional Bluntingは本人だけでなく、患者家族にも影響を与ることがわかった。感情の麻痺や平坦化、無関心、反応の低下により、患者家族が戸惑いや無力感、悲しみ、患者との距離感などを感じることがあるという。必要とされるサポートとは これらのことから、林氏は2つの観点からサポートの必要性を指摘する。 1つ目は医療者からの情報提供である。患者さん自身、そして患者家族も「この状態は病気の一部である」と理解することで戸惑いは軽減される。そのため、パンフレットなどを活用した情報提供によって理解を支えることが望ましい。 2つ目は患者さんが安心して話せる環境づくりである。「以前興味があったことに関心が持てないことはありませんか?」など、感情の変化に気づけるような問いかけがあると、患者さんも話しやすくなる。つまり、何かおかしいと感じたときに伝えられる環境を作ることが重要である。 うつ病の維持期に見られる残遺症状やEmotional Bluntingは患者さん本人だけでなく、家族にも大きな影響を与える。そのため、これらの症状に対する理解と支援のためには、正確な情報提供と安心して話せる場の整備が欠かせない、と自らの経験を通して維持期の治療で注目すべき点について林氏は語った。

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統合失調症患者の認知機能改善に対するメトホルミンのメカニズム

 認知機能低下は、統合失調症の長期予後に悪影響を及ぼす病態であるが、効果的な臨床治療戦略は依然として限られている。トリカルボン酸(TCA)回路の破綻と海馬における脳機能異常が認知機能低下の根底にある可能性が示唆されているが、これらの本質的な因果関係は十分に解明されていない。とくに、ビグアナイド系糖尿病薬であるメトホルミンは、統合失調症患者のさまざまな認知機能領域を改善することが示されており、TCA回路を調節する可能性がある。中国・The Second Xiangya Hospital of Central South UniversityのJingda Cai氏らは、以前、研究において、メトホルミン追加投与が統合失調症患者の認知機能を改善することを報告した。本研究では、認知機能改善とTCA回路代謝物および脳機能との関連を調査した。BMC Medicine誌2025年7月1日号の報告。 対象は、同様の状態にある統合失調症患者58例。メトホルミン1,500mgを24週間追加投与したメトホルミン群と対照群に割り付けた。液体クロマトグラフィータンデム質量分析(LC-MS/MS)法を用いて統合失調症患者の血中における主要なTCA回路代謝物の濃度を検出し、MRIスキャンを実施した。臨床症状の評価には陽性・陰性症状評価尺度(PANSS)、認知機能の評価にはMATRICSコンセンサス認知機能評価バッテリー(MCCB)中国語版を用いた。 主な結果は以下のとおり。・メトホルミン投与24週間後、TCA回路におけるアップストリームの乳酸(24週目:−80.81μg/mL[−96.85〜−64.77])、ピルビン酸(24週目:−17.51μg/mL[−20.52〜−14.49])レベルが低下した。一方、他の7つのダウンストリームの代謝物レベルは上昇した(各々、p<0.001)。・左海馬尾部と右内腹側後頭葉皮質(12週目の群間差:−0.334)、右海馬尾部と右中前頭回(24週目の群間差:0.284)との間の機能的連結性は両群間で有意な差が認められた(p<0.001)。・メトホルミンによる認知機能(ワーキングメモリー/言語学習)および海馬機能連結性(右海馬尾部と右中前頭回)の改善は、TCA回路代謝物の変化と関連していた。 本研究の限界として、サンプル数やフォローアップ期間が不十分な点、メカニズムの詳細は検討が不十分な点が挙げられる。 著者らは「統合失調症患者に対するメトホルミン追加投与は、エネルギー代謝を調節することで、認知機能を改善する可能性が示唆された」と結論付けている。

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アリピプラゾールLAIの長期結果〜10年間ミラーイメージ研究

 統合失調症などの精神疾患では、再発が頻繁に発生する。長時間作用型注射剤抗精神病薬(LAI)は、入院予防や服薬アドヒアランス、患者アウトカムの改善に有効であるにもかかわらず、依然として十分に活用されているとはいえない。さらに、新規製剤や縦断的研究によるエビデンスは、一般的に長期投与されているにもかかわらず、限られたままである。このようなデータ不足を解消するため、英国・West London NHS TrustのJoshua Barnett氏らは、長時間作用型製剤として入手可能な唯一の第3世代抗精神病薬アリピプラゾールLAIの月1回投与の長期的な有効性および受容性を評価するため10年間のミラーイメージ研究を実施した。Schizophrenia誌2025年6月23日号の報告。 実用的かつ独立した10年間のミラーイメージ研究は、英国ロンドンの大規模都市部メンタルヘルスサービスにおいて実施した。アリピプラゾールLAI投与を開始した成人患者を対象に、5年間の入院率および治療継続率を評価した。治療開始前後5年間の入院頻度と期間、治療中止率およびその理由は電子記録によって記録された。治療完了群と治療中止群、統合失調症患者と非統合失調症患者でのアウトカムの違いを比較する解析を別途実施した。 主な内容は以下のとおり。・本研究には、合計135例(統合失調症患者:63%、非統合失調症患者:37%)が含まれた。・5年後の治療中止率は47%(1年目:23.7%、2年目:13.6%、3年目:7.9%、4年目:7.3%、5年目:5.3%)であった。・5年間のアリピプラゾールLAI治療を完了した患者は53%であり、治療開始前の5年間と比較し、平均入院回数が88.5%減少(1.57回から0.18回へ減少、p<0.001)、平均入院日数が90%減少した(103日から10日へ減少、p<0.0001)。・入院回数中央値は1回から0回、入院日数中央値は68日から0日に減少した(各々、p<0.001)。・対照的に、治療中止群(47%)はアウトカム不良であり、5年間の入院回数の減少率は29.9%であった。・治療中止の主な理由は、コンプライアンス不良、効果不十分であり、忍容性によるものはほとんどなかった。・他のLAIからアリピプラゾールLAIへの切り替え以外で、治療継続を予測する主な臨床的および人口統計学的因子は認められなかった。・アウトカムは、診断にかかわらず一貫していた。・潜在的な交絡因子として、厳格な適格基準による多くの患者の除外、研究期間中の医療政策の変更などが挙げられる。 著者らは「本研究は、アリピプラゾールLAIによる5年間の治療における入院および治療継続を評価した初めての研究である。アリピプラゾールLAIの使用は、入院回数の大幅な減少と関連しており、治療完了群の85%は再入院の必要がなかったのに対し、治療中止群では30%にとどまった。これらの実臨床における知見は、アリピプラゾールLAIの長期的な価値を裏付けており、臨床意思決定におけるLAI導入の障壁を解消するうえで役立つ可能性がある」としている。

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抗精神病薬の早期処方選択が5年後の体重増加に及ぼす影響

 英国・マンチェスター大学のAdrian Heald氏らは、精神疾患1年目における抗精神病薬による治療が、その後5年間の体重増加に及ぼす影響を分析した。Neurology and Therapy誌2025年8月号の報告。 対象は、精神症、統合失調症、統合失調感情障害、妄想性障害、情動精神症と初めて診断された患者1万7,570例。5年間の体重変化を調査し、診断1年目に処方された抗精神病薬との関連を30年にわたり評価した。 主な結果は以下のとおり。・初回抗精神病薬処方時の年齢は、大半が20〜59歳(65%)であった。・ベースライン時の平均BMIは、男女共に同様であった。・BMIの大幅な増加が認められた。とくに肥満患者(BMI:30kg/m2以上)では、体重カテゴリーの変化が最も大きく、女性では30〜43%、男性では26〜39%に増加した。一方、対象患者の42%では、体重の有意な増加は認められなかった。・ペルフェナジン、フルフェナジン、amisulprideを処方された患者は正常BMIを維持する可能性が最も高く、アリピプラゾール、クエチアピン、オランザピン、リスペリドンを処方された患者は、最初の1年間で正常BMIから体重増加、過体重(BMI:25.0〜29.9 kg/m2)、肥満(BMI:30.0kg/m2以上)に移行する可能性が最も高かった。・定型抗精神病薬であるthioridazine、クロルプロマジン、flupenthixol、trifluoperazine、ハロペリドールは、BMIカテゴリーの変化の可能性が中程度であると評価された。・多変量回帰分析では、体重増加と関連する因子は、若年、女性、1年目に処方された抗精神病薬数、アリピプラゾール併用(75%併用処方または第2/第3選択薬としての使用を含む)オランザピン併用、thioridazine併用(各々、p<0.001)、リスペリドン併用、クエチアピン併用(各々、p<0.05)であった。・体重増加7%以上の多変量ロジスティック回帰分析では、特定の薬剤は類似しており、薬剤のオッズ比はクエチアピンの1.09(95%信頼区間[CI]:1.00〜1.21)からthioridazineの1.45(95%CI:1.20〜1.74)の範囲であった。 著者らは「診断1年目に複数の抗精神病薬を処方された患者および若年女性では、体重増加リスクが高かった。一部の定型抗精神病薬は、非定型抗精神病薬と同程度の体重増加との関連が認められた。なお、40%以上で体重増加は認められなかった」と結論付けた。

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青年期統合失調症患者に対するブレクスピプラゾールの長期安全性

 米国・Evolution Research GroupのSarah D. Atkinson氏らは、青年期統合失調症の維持療法として非定型抗精神病薬ブレクスピプラゾールを使用した際の長期的な安全性および忍容性を評価するため、24ヵ月多施設共同単群オープンラベル試験を実施し、その中間解析結果を報告した。JAACAP Open誌2024年5月27日号の報告。 対象は、13〜17歳の統合失調症患者。経口ブレクスピプラゾール1〜4mg/日(可変用量)を投与した。主要エンドポイントは、治療関連有害事象(TEAE)、重症度別TEAE、重篤なTEAE、治療中止に至った有害事象の発現率とした。 主な結果は以下のとおり。・中間解析時点での症例数は169例。そのうち114例(67.5%)が治療継続中、24ヵ月の試験完了が23例(13.6%)、試験中止は32例(18.9%)であった。・試験中止の主な理由は、患者自身による離脱。・試験参加者の平均年齢は15.6歳、女性の割合は52.7%、白人の割合は79.9%。・全体として、治療を受けた167例中95例(56.9%)において、1つ以上のTEAEが報告された。最も報告が多かったTEAEは、傾眠(10.2%)、頭痛(9.0%)、体重増加(9.0%)、鼻咽頭炎(6.6%)であった。・ほとんどのTEAEの重症度は、軽度〜中等度であった。・自然成長を考慮したうえで、臨床的に意味のある体重増加は33例(19.8%)でみられた。・重篤なTEAEは5例(精神病性障害:2例、非致死的自殺企図:1例、毛巣洞:1例、精神運動性多動:1例)で報告されたが、いずれも試験期間中に回復した。・有害事象のため治療を中止した患者は2例であり、1例は重篤な非致死的自殺企図によるものであり、もう1例は下垂体機能亢進症および体重増加によるものであったが、いずれも退院時には安定していると判断された。 著者らは「青年期統合失調症に対するブレクスピプラゾール維持療法の安全性プロファイルは、成人患者の場合とおおむね同様であった。青年期患者では、体重増加を注意深くモニタリングし、正常な成長に伴う体重増加と比較する必要がある」と結論付けている。

60.

老年期気分障害における多様なタウ病理がPET/剖検で明らかに

 老年期気分障害は、神経変性認知症の前駆症状の可能性がある。しかし、うつ病や双極症を含む老年期気分障害の神経病理学的基盤は依然としてよくわかっていない。国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構の黒瀬 心氏らは、老年期気分障害患者におけるアルツハイマー病(AD)および非ADタウ病態の関与について調査した。Alzheimer's & Dementia誌2025年6月号の報告。 対象は、老年期気分障害患者52例および年齢、性別をマッチさせた健康対照者47例。18F-florzolotauおよび11C-Pittsburgh compound Bを用いたtau/Aβ PET検査を実施した。さらに、さまざまな神経変性疾患を含む208例の剖検例における臨床病理学的相関解析を行った。 主な結果は以下のとおり。・老年期気分障害患者は、健康対照者よりもtau PETおよびAβ PETで陽性となる可能性が高かった。・PETの結果は、剖検結果により裏付けられ、老年期躁病またはうつ病患者は、そうでない患者よりも多様なタウオパチーを有する可能性が高かった。 著者らは「本試験におけるPETおよび剖検結果は、ADおよび非ADタウ病態が一部の神経病理学的基盤となっている可能性を示唆している」としている。

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