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看護師の抑うつと燃え尽き、幼少期体験がリスクを高める?「橋渡し症状」特定へ【論文から学ぶ看護の新常識】第37回

看護師の抑うつと燃え尽き、幼少期体験がリスクを高める?「橋渡し症状」特定へ看護師の抑うつと燃え尽き症候群の間を繋ぐ「橋渡し症状」として、「情緒的消耗感」と「シニシズム」が特定され、特に幼少期の逆境体験が多い看護師において重要な介入ターゲットである可能性が示された。Jiao-Mei Xue氏らの研究で、BMC Nursing誌2025年9月29日号に掲載の報告。看護師の幼少期体験プロファイルが抑うつ・燃え尽き症候群ネットワークに与える影響:潜在クラス分析とネットワークアナリシス研究チームは、個人中心アプローチを用いて看護師の幼少期体験をタイプ別に分類し、グループ間で抑うつと燃え尽き症候群の関係が異なるかを調査することを目的に、横断研究を行った。総合病院の看護師866名を対象に、逆境的小児期体験尺度(Adverse Childhood Experiences scale:ACEs)、良好な小児期体験尺度(Benevolent Childhood Experience scale:BCEs)、患者健康質問票-9(Patient Health Questionnaire-9:PHQ-9)、マスラック・バーンアウト尺度(Maslach Burnout Inventory:MBI)を用いた質問紙調査を実施した。主な結果は以下の通り。潜在クラス分析により、2つの幼少期体験プロファイルが特定された:「低ACEs/高BCEs」(n=648)および「中等度ACEs/低BCEs」(n=218)。ネットワークアナリシスの結果、「中等度ACEs/低BCEs」群において抑うつと燃え尽き症候群の症状の間の全体的な関連性がより強いことが明らかになった。情緒的消耗感は、抑うつと燃え尽き症候群の間で苦痛を伝達する橋渡し症状として機能しており、介入の重要なターゲットであることが示された。シニシズムも、特に「中等度ACEs/低BCEs」群において重要な橋渡し症状であった。これらの知見は、中国の看護師の幼少期体験が明確なパターンを形成し、情緒的消耗感とシニシズムが重要な介入ターゲットであることを示している。病院管理者は、労働力の安定性と患者ケアを保護するために、特に「中等度ACEs/低BCEs」の看護師において、情緒的消耗感のモニタリングとシニシズムの低減を優先すべきである。本研究の最も重要な点は、「看護師」という一つの集団を均質に捉えるのではなく、「幼少期体験」という個人の発達歴に着目したことにあります。その結果、抑うつと燃え尽き症候群の関連は一様ではなく、特に「中等度ACEs/低BCEs」(幼少期に困難な体験を中程度経験し、恵まれた体験が少ない)群において、両者の全体的な結びつきが有意に強いことがネットワークアナリシスによって可視化されました。これは、過去の体験が単に症状のレベルを悪化させるだけでなく、心理的苦痛の「ネットワーク構造そのもの」を変化させることを示しており、非常に示唆に富んでいます。この研究が示す最も重要な介入点は、両群に共通する「情緒的消耗感(仕事に力を尽くした結果、疲れ果ててしまった状態)」に加え、「中等度ACEs/低BCEs」群に特有の「シニシズム(人や仕事に対して冷淡になる状態)」が、第二の「橋渡し症状(抑うつと燃え尽き症状群をつなぐ鍵となる症状)」であることを特定したことです。これは、看護師のメンタルヘルス支援が画一的では不十分であることを意味します。特にリスクの高い群に対しては、単なる「疲れ」へのケアだけでなく、仕事への冷笑的な態度や距離を置いてしまう「シニシズム」に焦点を当てた、よりターゲットを絞った介入が不可欠であることを示しています。「燃え尽き症候群の予防」と「うつ病の予防」は、しばしば別個の課題として扱われがちです。しかし本研究は、特に逆境体験を持つ人々において、これらが「シニシズム」や「情緒的消耗感」といった特定の症状を介して、強固に結びついていることを明らかにしました。同僚や部下の「シニシズム」や「情緒的消耗感」の症状に特に注意していきましょう。論文はこちらXue JM, et al. BMC Nurs. 2025;24(1):1216.

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寛解後の抗精神病薬の減量/中止はいつ頃から行うべきか?

 初回エピソード統合失調症患者における寛解後の抗精神病薬の早期減量または中止は、短期的な再発リスクを上昇させる。長期的なアウトカムに関する研究では、相反する結果が得られているため、長期的な機能改善への潜在的なベネフィットについては、依然として議論が続いている。オランダ・University of GroningenのIris E. Sommer氏らは、初回エピソード統合失調症患者の大規模サンプルを対象に、4年間にわたり抗精神病薬の減量/中止と維持療法の短期および長期的影響について比較を行った。JAMA Psychiatry誌オンライン版2025年10月1日号の報告。 本HAMLETT(Handling Antipsychotic Medication Long-Term Evaluation of Targeted Treatment)試験は、2017年9月~2023年3月にオランダの専門精神病ユニット26ヵ所で実施された単盲検実用的ランダム化臨床試験である。対象患者は、入院および外来診療から寛解となった初回エピソード統合失調症患者347例(男性:241例[69.5%]、平均年齢:27.9±8.7歳)。寛解後12ヵ月以内に抗精神病薬を減量/中止した場合と維持療法を12ヵ月間継続した場合のアウトカムを比較した。主要アウトカムは、WHODAS 2.0を用いて測定した患者による機能評価とした。副次的アウトカムは、研究者評価による全般的機能評価(GAF)、生活の質(QOL)、再発、陽性・陰性症状評価尺度(PANSS)で測定した症状重症度、重篤な有害事象、副作用とした。 主な結果は以下のとおり。・対象患者347例は、早期中止/減量群(168例)と維持療法群(179例)にランダムに割り付けられた。・WHODAS 2.0では、時間と状態の交互作用は認められなかった。・1年目、中止/減量群は再発リスクの上昇(オッズ比:2.84、95%信頼区間[CI]:1.08~7.66、p=0.04)およびQOLの低下(β=-3.31、95%CI:-6.34~-0.29、p=0.03)との関連が認められた。・3年目(β=3.61、95%CI:0.28~6.95、p=0.03)および4年目(β=6.13、95%CI:2.03~10.22、p=0.003)には、時間との非線形効果が認められ、中止/減量群においてGAFが有意に良好であることが示された。4年目ではPANSSについても同様の傾向が認められた(p for trend=0.06)。・重篤な有害事象および副作用は両群で同程度であった。しかし、減量/中止群では自殺による死亡が3件確認されたのに対し、維持療法群では自殺による死亡が1件のみであった。 著者らは「抗精神病薬の減量/中止は、最初の1年目は再発リスクおよびQOL低下リスクとの関連が認められたが、3年目および4年目には研究者による機能評価が向上し、症状の重症度についても改善傾向が認められた。1年目以降、両群の抗精神病薬の投与量は同程度であったため、この結果は投与量の減少による直接的な影響ではなく、抗精神病薬を用いて精神病的脆弱性への対処を改善するための学習経験を反映している可能性がある。これらの知見は、抗精神病薬の減量/中止の潜在的な学習およびエンパワーメントの要素と短期的なリスクを慎重に比較検討する必要があることを示唆している」と結論付けている。

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抗うつ薬30種類の生理学的影響を比較~ネットワークメタ解析/Lancet

 英国・キングス・カレッジ・ロンドンのToby Pillinger氏らは系統的レビューとネットワークメタ解析を行い、抗うつ薬はとくに心代謝パラメータにおいて薬剤間で生理学的作用が著しく異なるという強力なエビデンスがあることを明らかにした。抗うつ薬は生理学的変化を誘発するが、各種抗うつ薬治療におけるその詳細は知られていなかった。結果を踏まえて著者は、「治療ガイドラインは、生理学的リスクの違いを反映するよう更新すべき」と提唱している。Lancet誌オンライン版2025年10月21日号掲載の報告。15のパラメータの変化をネットワークメタ解析で評価 研究チームは、2025年4月21日の時点で医学関連データベースに登録された関連文献を検索し、系統的レビューとネットワークメタ解析を行った(英国国立衛生研究所[NIHR]などの助成を受けた)。対象は、成人の精神疾患患者の急性期(8週目まで)単剤療法において、抗うつ薬とプラセボを比較した単盲検または二重盲検無作為化臨床試験の論文とした。 頻度論的な変量効果ネットワークメタ解析により、抗うつ薬治療による抑うつ症状の重症度の変化と、次の15の代謝パラメータの変化の相関性を評価した。体重、総コレステロール、血糖、心拍数、収縮期血圧、拡張期血圧、補正QT間隔(QTc)、ナトリウム、カリウム、アスパラギン酸トランスフェラーゼ(AST)、アラニントランスアミナーゼ(ALT)、アルカリホスファターゼ(ALP)、ビリルビン、尿素、クレアチニン。 151件の研究と17件の米国食品医薬品局(FDA)の報告書が選択基準を満たした。対象は5万8,534例(抗うつ薬[30種の薬剤]群4万1,937例、プラセボ群1万6,597例)で、平均年齢は44.7(SD 15.8)歳、女性が62.0%、白人が74.8%であり、治療期間の範囲は3~12週(中央値:8週、四分位範囲:6.0~8.5)であった。4つの試験が、バイアスのリスクが高いと判定された。体重に4kg、心拍数に21bpm、収縮期血圧に11mmHg以上の差 代謝および血行動態に及ぼす影響について、抗うつ薬間で臨床的に有意な差を認めた。たとえば、(1)体重:プラセボと比較してagomelatineで2.44kg減少、同様にマプロチリンで1.82kg増加し(いずれも有意差あり)、両群間で4.26kgの差、(2)心拍数:フルボキサミンで8.18bpm低下、ノルトリプチリンで13.77bpm上昇し(いずれも有意差あり)、21.95bpmの差、(3)収縮期血圧:ノルトリプチリンで6.68mmHg低下、doxepinで4.94mmHg上昇し(いずれも有意差あり)、11.62mmHgの差が観察された。 また、パロキセチン、デュロキセチン、desvenlafaxine、ベンラファキシンは総コレステロール値の上昇(プラセボと比較してそれぞれ0.16、0.17、0.27、0.22mmol/Lの上昇、いずれも有意差あり)と関連し、デュロキセチンはさらに血糖値の上昇(0.30mmol/Lの上昇、有意差あり)とも関連しており、これら4つの薬剤は体重減少(それぞれ0.35、0.63、0.63、0.74kgの減少、いずれも有意差あり)をももたらした。 一方、デュロキセチン、desvenlafaxine、levomilnacipranについては、AST(プラセボと比較してそれぞれ2.08、1.27、1.78IU/Lの上昇、いずれも数値上の有意差あり)、ALT(同様に2.20、1.43、1.97IU/Lの上昇、有意差あり)、ALP(同様に2.29、7.25、4.55IU/Lの上昇、有意差あり)の濃度上昇の強力なエビデンスを得たが、これらの変化の程度は臨床的に有意とは見なされなかった。高齢ほど血糖値上昇幅が大きい QTcとナトリウム、カリウム、尿素、クレアチニンの濃度には、臨床的に有意な影響を及ぼすほどの抗うつ薬の強いエビデンスを認めなかった。また、ベースラインの体重が重いほど、抗うつ薬による収縮期血圧、ALT、ASTの上昇幅が大きく、ベースラインの年齢が高いほど、抗うつ薬による血糖値の上昇幅が大きかった。抑うつ症状の変化と代謝異常との間に関連はみられなかった。 著者は、「これらの知見は、個別の抗うつ薬には高頻度で多様な生理学的副作用があることを示しており、とくに体重、心拍数、血圧の生理学的変化の程度は大きい。マプロチリンやアミトリプチリンは、患者のほぼ半数に臨床的に重要な体重増加を引き起こす可能性がある」「抗うつ薬の選択は、臨床所見および患者、介護者、臨床医の意向を考慮し、個別に行うべき」としている。

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第35回 特別編 ネクソムラボ特別企画『どうすればよかったか?』上映会を開催

統合失調症を発症した実姉とその家族を20年にわたって記録した映画『どうすればよかったか?』*の上映会が2025年9月21日、東京慈恵会医科大学で開催された。千葉大学病院次世代医療構想センターセンター長 特任教授の吉村 健佑氏と浜松医科大学教授の大磯 義一郎氏が共同代表を務める、「次世代社会医学オープンラボNexSoM Labo(ネクソムラボ)」が企画し、東京慈恵会医科大学臨床検査医学講座教授の越智 小枝氏の協力のもと開催された。*映画『どうすればよかったか?』ドキュメンタリー監督の藤野 知明氏が、統合失調症の症状が現れた実姉と、彼女を精神科の受診から遠ざけた両親の姿を20年にわたって自ら記録したドキュメンタリー。NexSoM Laboは、コロナ禍が一段落したことを契機に2023年度に立ち上がった組織であり、全国の医療系学生・若手医療従事者が社会医学に触れる機会を提供している。第1回のイベントではオンライン双方向参加型のセミナーを、第2回のイベントではグループワークを通した学生の交流を行い、今回の上映会が第3回目のイベントとなった。第2回イベントの様子精神疾患患者へのバイアスを映画で考える今回の上映会は3部構成で開催された。第1部では映画の上映、第2部では共同代表で精神科医でもある吉村氏と映画『どうすればよかったか?』監督の藤野 知明氏による対談企画、第3部では懇親会が行われた。対談企画では、吉村氏から統合失調症治療の歴史と現状、精神疾患に関する法的制度の解説が行われた。また、藤野監督からは、映画の各シーンにおける制作の意図、当時の思いなどが語られた。対談企画中の様子(左から司会を務めた浜松医科大学3年の高木氏、共同代表の吉村氏、監督の藤野氏)【吉村氏による解説】統合失調症の無治療期間が長くなるほど、症状改善が難しくなる。1952年、世界初の抗精神薬であるクロルプロマジンが登場して以降、統合失調症が治療可能な疾患へと変遷していくが、第1世代薬が効かない患者も一定数いる上にパーキンソン症状などの副作用がみられた。1996年以降、非定型抗精神病薬(第2世代)が開発され、現在ではLAI(持続性注射製剤)や部分作動薬(アリピプラゾール)、難治性統合失調症治療薬(クロザピン)など、多くの選択肢があり治療効果が上がっている。しかし、いまだに統合失調症患者に対する偏見は根強く社会復帰の障害となっている。とくに精神科医以外の医師や看護師からの統合失調症の患者に対する偏見が強く、一般医療従事者の約4割が「統合失調症患者は危険である」というステレオタイプのイメージを持っている。また、医学生の多くが「統合失調症患者は社会生活に適応できない」といった否定的なイメージを持っている。【対談企画でのトピック】実家を離れることとなった1992年、「このままでは何も残らない」という思いから帰省ごとに家族の姿を記録するようになった。人々が受け入れがたい事実に直面した際の反応を映しているものであり、周りの人々つまり実弟である監督や両親が中心となった映画である。統合失調症の姉をもつ家族の状況を映画として世の中に出し、統合失調症と取り巻く家族について理解を深める機会を作ったことが、「どうすればよかったか?」に対する問ではないだろうか。(吉村氏)参加した学生からは、以下の感想が寄せられた。家族とは何なのか、家族外には言えない秘密を抱えているかもしれない当事者と家族を支援する在り方とは何なのか考えさせられた」(千葉大4年)答えのない問いをディスカッションしながら考えることができた」(浜松医大3年)ネクソムラボでは、第4回イベントとして、2026年春に能登でのフィールドワークを企画しているという。ネクソムラボ学生代表で浜松医科大学3年の高木 柊哉氏は「能登の復興状況を実際に見ることで、災害医療の現状や課題を肌で感じる機会になるよう企画をしている」と語っている。関連リンクNexSoM Labo『どうすればよかったか?』公式ページ

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息切れがして歩きが遅い【漢方カンファレンス2】第8回

息切れがして歩きが遅い以下の症例で考えられる処方をお答えください。(経過の項の「???」にあてはまる漢方薬を考えてみましょう)【今回の症例】80代男性主訴呼吸困難、歩きが遅くなった既往慢性閉塞性肺疾患(COPD)、腰椎椎間板ヘルニア生活歴50歳まで喫煙、ADLは自立。病歴50歳時にCOPDと診断。呼吸器内科で吸入薬を中心とした治療を受け、咳や痰がときおりある程度で落ち着いていた。3ヵ月前に腰痛が悪化して、腰椎圧迫骨折の診断で3週間の入院加療を行った。退院後、腰痛は軽減して日常生活は問題なくできていたが、歩行時の息切れがひどくなった。以前から妻と散歩をしていたが、妻の歩きについていけなくなった。呼吸機能検査では悪化はなく、漢方治療を希望して受診した。現症身長161cm、体重52kg。体温35.4℃、血圧115/77mmHg、脈拍70回/分 整、SpO2 98%。呼吸音は異常なし、軽度の下肢浮腫あり。経過初診時「???」エキス3包 分3で治療開始。(解答は本ページ下部をチェック!)1ヵ月後息切れは変わらない。夜間尿が1〜2回に減った。下肢の浮腫は減ったが冷えは変わらない。ブシ末3包 分3を追加2ヵ月後腰痛と息切れがずいぶん楽になった。散歩に行く意欲がでてきた。3ヵ月後散歩で息切れがなくなって、妻と同じ速度で散歩ができるようになったと喜んでいる。問診・診察漢方医は以下に示す漢方診療のポイントに基づいて、今回の症例を以下のように考えます。【漢方診療のポイント】(1)病態は寒が主体(陰証)か、熱が主体(陽証)か?(冷えがあるか、温まると症状は改善するか、倦怠感は強いか、など)(2)虚実はどうか(症状の程度、脈・腹の力)(3)気血水の異常を考える(4)主症状や病名などのキーワードを手掛かりに絞り込む【問診】<陰陽の問診> 寒がりですか? 暑がりですか? 体の冷えを自覚しますか? 体のどの部位が冷えますか? 横になりたいほどの倦怠感はありませんか? 寒がりです。 足、とくに膝下が冷えます。 足は冷えますが、足の裏がほてることがあります。 横になりたいほどではありませんが歩くと息切れがひどくきついです。 入浴で長くお湯に浸かるのは好きですか? 入浴で温まると、腰痛はどうなりますか? 冷房は苦手ですか? 入浴の時間は長いです。 入浴後は腰痛が軽くなります。 冷房は好きでも嫌いでもありません。 のどは渇きますか? 飲み物は温かい物と冷たい物のどちらを好みますか? のどは渇く方です。 温かい飲み物が好きです。 <飲水・食事> 1日どれくらい飲み物を摂っていますか? 食欲はありますか? 胃は弱くありませんか? だいたい1日1L程度です。 食欲はあります。 胃は丈夫です。 <汗・排尿・排便> 汗はよくかきますか? 尿は1日何回出ますか? 夜、布団に入ってからは尿に何回行きますか? 便は毎日出ますか? 下痢や便秘はありませんか? 汗はあまりかきません。 尿は1日12回くらいです。 夜は3回トイレに行くので困っています。 便は毎日出ます。下痢はありません。 <ほかの随伴症状> 全身倦怠感はありますか? 朝が一番きついということはありませんか? 腰痛はどうですか? よく眠れますか? 歩くときついですがじっとしていれば倦怠感はありません。 朝は調子がよいです。 腰痛は随分よくなりましたが動くとまだ痛いですね。 睡眠は問題ありません。 日中の眠気はありませんか? 目の疲れや抜け毛は多くありませんか? 足をよくつりますか? 頭痛やめまいはありませんか? 下肢はむくみませんか? 眠気はありません。 目の疲れや抜け毛はありません。 足はつりません。 頭痛やめまいはしません。 夕方になると下肢がむくみます。 風邪をひきやすいですか? 咳や痰はひどいですか? 風邪はあまりひきません。 咳はたまに出る程度です。痰も量は少ないです。 ときどき粘っこい痰が出ます。 イライラや不安はありませんか? どれくらい生活に支障が出ていますか? イライラや不安はありませんが、何をするにも億劫になりました。以前はグランドゴルフもやっていましたが、いまは散歩にいく気力もありません。 【診察】顔色は正常。脈診ではやや沈・強弱中間の脈。また、舌は暗赤色、乾燥した白苔が中等量、舌下静脈の怒張あり。腹診では腹力は中等度より軟弱、胸脇苦満(きょうきょうくまん)・心下痞鞕(しんかひこう)はなし、腹直筋緊張あり、上腹部と比べて下腹部の腹力が低下している小腹不仁(しょうふくふじん)を認めた。下肢に浮腫が軽度あり、触診で冷感あり。カンファレンス 今回の症例は、呼吸困難感と歩行速度の低下を訴える高齢の男性です。 COPDはコモンな疾患で、抗コリン薬やステロイドの吸入が標準的な治療ですが、それ以外の治療は乏しいです。本症例は呼吸機能検査の悪化はなく、腰椎圧迫骨折を契機に出現した症状ということで、肺というよりは体力や筋力の低下が問題で「リハビリを頑張ってください」と言いたくなりますね。 そうですね。COPDの治療には生活の質の改善や身体活動性の維持・向上が含まれますから、リハビリの強化は必要ですね。 全身倦怠感や息切れのために積極的にリハビリが行えない、意欲が低下してなかなかリハビリが進まないケースも多いですね。 そういうケースに漢方薬を使うことでリハビリがスムーズに行えるように支えることができたらよいね。 それでは、順番にみていきましょう。 下肢、とくに膝下の冷えの訴えがあるので陰証でしょうか。そのほか寒がり、入浴の時間は長い、温かい飲み物を好む、触診で下肢に冷感があるなどが陰証を示唆する所見です。ただし、横になりたいほどの倦怠感はない、脈は強弱中間であることから、少陰病や厥陰病(けついんびょう)というわけではないようです。 そうだね。ただし腰痛が入浴で温まると改善するということは、冷えの関与が考えられるね。 入浴で温まると痛みがよくなるということで附子(ぶし)を使いたくなります。 それでは漢方診療のポイント(2)の虚実はどうだろう? 脈は強弱中間、腹力は中等度より軟弱であることからやや虚証〜虚実間です。 そうですね。では気血水の異常を考えてみましょう。 歩行できついという全身倦怠感があるので気虚でしょうか? 疲れやすさは気虚と考えることができるね。ただし本症例では気虚の倦怠感の特徴である食欲低下や昼食後の眠気は目立たないね。また、風邪をひきやすいことも気虚の特徴だけど、そちらもないよね。 気虚はありそうだけど、典型的な気虚というわけでもなさそうですね。 また、朝調子が悪いという気鬱の全身倦怠感でもないようです。 血の異常はどうだろう? 抜け毛、こむら返り、目の疲れなど血虚はありません。瘀血は舌暗赤色、舌下静脈の怒張があります。 水毒の所見としては下肢の浮腫がありますね。また夜間尿3回は夜間頻尿で水毒と考えることができますね。ここまでをまとめると、太陰病で、気虚はありそうだけど典型ではない、瘀血、水毒となりますね。 散歩に行く意欲がない、何をするのも億劫というのは気鬱でしょうか? 気鬱としてもよいかもしれないね。ただし、下肢の冷え、腰痛、夜間頻尿、歩行速度の低下などと意欲の低下を一元的に考えるとどうだろう? なるほど、心身一如の漢方治療ですね。それらを加齢に伴う症状として考えると漢方医学的には腎虚(じんきょ)と捉えることができませんか? そのとおり。腎の働きが加齢とともに弱くなり、腎の機能が衰えてくることを腎虚というよ。代表的なものは腰以下の症状(冷え、腰痛、下肢痛、下肢の脱力感など)、排尿異常(夜間頻尿、頻尿や尿量減少:尿が多くても少なくてもよい)、精力減退だね。下肢(とくに膝から下)の冷えが典型だけど、手掌や足底のほてりを訴えることもあるよ。加齢に伴う症状として、聴力障害、視覚障害、呼吸器症状なども腎虚による症状だね(腎虚については本ページ下部の「今回のポイント」の項参照)。 腎虚といえば、坐骨神経痛や夜間頻尿など、腰下肢痛や排尿異常を思い浮かべてしまいますが、さまざまな症状が含まれるのですね。 先天の気は腎に蓄えられることから、全身倦怠感や意欲の低下といった気虚と類似した症状もあらわれることがあるのも理解できるね。 現代ではフレイルやサルコペニアなどが老化の概念として活用されていますね。とくにフレイルには多面性があって、身体的フレイル、心理・精神的フレイル、社会的フレイルに分類され、心理社会的側面な意味を含むことも腎の働きと似ていますね。 あとは細かい点だけど、足の裏がほてるという症状も腎虚で出現する症状だよ。 本症例をまとめましょう。 【漢方診療のポイント】(1)病態は寒が主体(陰証)か、熱が主体(陽証)か?寒がり、下肢、とくに膝下が冷える、入浴は長い、下肢に冷感→陰証(太陰病)(2)虚実はどうか脈:やや強弱中間、腹:中等度より軟弱→やや虚証〜虚実間(3)気血水の異常を考える歩くと倦怠感→気虚?、舌暗赤色、舌下静脈の怒張→瘀血、下肢浮腫→水毒、下肢冷えと浮腫、腰痛、夜間頻尿、意欲の低下→腎虚(4)主症状や病名などのキーワードを手掛かりに絞り込む加齢症状、小腹不仁解答・解説【解答】本症例は、腎虚に対して用いる八味地黄丸(はちみじおうがん)で治療をしました。【解説】腎虚に対して用いる漢方薬が八味地黄丸です。古典を参考に八味丸(はちみがん)という場合もあります。八味地黄丸は、地黄(じおう)、山茱萸(さんしゅゆ)、山薬(さんやく)が体を栄養・滋潤する作用があり、そのほか、利水作用のある茯苓(ぶくりょう)、沢瀉(たくしゃ)、駆瘀血作用のある牡丹皮(ぼたんぴ)に加え、体を温める桂皮(けいひ)と附子で構成されます。八味地黄丸は太陰病の虚証に適応となる漢方薬ですが、虚証の程度は軽く、虚実間からやや実証まで幅広く適応になります。ひどく虚弱で胃が弱い人ではしばしば胃もたれすることがあるので注意が必要です。そのため食前ではなくあえて食後に内服する、あるいは減量して用いる場合もあります。この胃もたれは構成生薬の地黄が原因です。八味地黄丸に牛膝(ごしつ)と車前子(しゃぜんし)を加えたものが牛車腎気丸(ごしゃじんきがん)で浮腫やしびれが強い場合に用います。また、冷えが目立たない症例では桂皮と附子を除いた六味丸(ろくみがん)を用います。腎虚の治療の効果判定は、加齢に伴う症状ですから、内服によりすべての症状がすみやかに改善することは難しく、じっくりと月単位で内服してもらいます。八味地黄丸は軽度アルツハイマー認知症患者に対してアセチルコリンエステラーゼ阻害薬に併用することで、女性や65歳以上では有意に認知機能を改善させたという前向きオープンラベル多施設ランダム化比較試験があります1)。また、精神症状に関する報告として、八味地黄丸を意欲の低下を目標に15症例に投与したところ、7割以上に有効で八味地黄丸には意欲賦活作用があるとする症例報告2)やうつ病患者の倦怠感や気力の低下に八味地黄丸や六味丸が有効であったとする報告3)があります。また呼吸器症状に関しても気管支喘息に対する八味地黄丸の効果4)やストレスに起因した慢性咳嗽に八味地黄丸が有効であった症例5)が報告されています。腎虚の治療薬は、夜間頻尿や過活動膀胱などに対する泌尿器科的な症状や牛車腎気丸が末梢神経障害に用いるといったイメージが強いですが、腎虚はもっと幅広い概念であるため、精神症状や呼吸器症状に有効であるということにも注目すべきでしょう。「腎は納気(のうき)を司(つかさ)どる」といわれ、肺だけでなく腎も呼吸にも関与しているとされているのです。今回のポイント「腎虚」の解説生命活動を営む根源的エネルギーである気(き)は「先天の気」と「後天の気」に分けられます。生まれた後は呼吸や消化によって後天の気を取り入れることができます。一方、先天の気は、生まれながらの生命力というべきもので「腎」に宿ります。腎は現代医学的な腎臓とは異なる概念で、全身の生命活動を支える根本的な臓器として、水分代謝の調整のほか、成長、発育、生殖能、呼吸機能などが含まれます。腎の働きは加齢とともに弱くなり、腎の機能が衰えてくることを腎虚といいます。代表的なものは腰以下の症状(冷え、腰痛、下肢痛、下肢の脱力感など)、排尿異常(夜間頻尿、頻尿や尿量減少:尿が多くても少なくてもよい)、精力減退です。下肢(とくに膝から下)の冷えが典型ですが、手掌や足底のほてりを訴えることもあります。加齢に伴う症状として、聴力障害、視覚障害、呼吸器症状なども腎虚による症状です。また、腎は思考力、判断力、集中力の保持にかかわっていると考えられ、腎虚ではそれらが低下して、易疲労感や意欲の低下が出現します。腎虚を示唆する身体所見として、上腹部より下腹部の腹力が減弱した小腹不仁(図)があります。今回の鑑別処方今回は八味地黄丸や牛車腎気丸から展開する漢方治療を紹介します。八味地黄丸は腎虚に対して用いる漢方薬ですが、さらにほかの漢方医学的異常を認める場合はそれぞれの病態に応じてほかの漢方薬と併用します。八味地黄丸や牛車腎気丸には附子が含まれていますが、冷えを伴わない場合は六味丸を用います。六味丸は小児の発育障害のような病態に用いられた歴史があります。逆に冷えや痛みが強い場合には八味地黄丸や牛車腎気丸にブシ末を併用して冷えや痛みに対する治療を強化します。また腰以下の冷え、とくに腰周囲や大腿部の冷えが目立つ場合は苓姜朮甘湯(りょうきょうじゅつかんとう)を併用します。全身倦怠感が強く気虚を合併していれば、補中益気湯を併用することもあります。補中益気湯と八味地黄丸の併用はしばしば男性不妊に対する治療で用います。八味地黄丸に含まれる地黄で胃もたれを生じるような場合は人参湯(にんじんとう)と併用することがあります。また脱水傾向があるとか、気道粘膜が乾燥傾向にあって乾性咳嗽を伴う場合には、麦門冬湯(ばくもんどうとう)を併用します。麦門冬湯には滋潤(じじゅん)作用といって潤す作用があり、COPD患者で乾燥傾向があってしつこい咳嗽(喀痰はあっても少量)がある場合に適応です。今回の症例で乾性咳嗽が目立っていれば併用すればよいでしょう。この麦門冬湯と八味地黄丸の併用は煎じ薬では味麦地黄丸(みばくじおうがん)という漢方薬と類似した構成です。また、当科では「八味丸と桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)に持ち込めば勝ち戦」という漢方治療の口訣があります。最初は食欲低下、冷え、不眠など、それぞれの漢方治療を行うけれども、最後に八味地黄丸や桂枝茯苓丸を内服できるようになればこちらの漢方治療が上手くいったという意味です。さまざまな症状が改善して漢方医学的異常として最後に残るのは腎虚と瘀血ということで、なんとも味わい深い口訣です。漢方外来ではそれらを飲んでいて、積極的に運動をするなど、活動的な高齢者も多いです。2つの漢方薬はともに甘草を含まないことから偽アルドステロン症の恐れもなく、地黄による胃もたれや漢方薬によるアレルギーさえなければ長期内服しやすい組み合わせになります。参考文献1)Kainuma M, et al. Front Pharmacol. 2022;13:991982.2)尾﨑哲, 下村泰樹. 日東医誌. 1993;43:429-437.3)Yamada K, et al. Psychiatry Clin Neurosci. 2005;59:610-612.4)伊藤隆ほか. 日東医誌. 1996;47:443-449.5)木村容子ほか. 日東医誌. 2016;67:394-398.

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難治性うつ病患者、搬送後に心室頻拍に!【中毒診療の初期対応】第1回

<今回の症例>年齢・性別52歳・女性患者情報難治性うつ病の診断で某院精神科にて通院加療していた。仕事から帰宅した夫が、リビングで倒れていて呼びかけてもまったく反応がない状態であるのを発見し、救急センターに搬送された。初診時はいびき様呼吸、呼吸数22/分、SpO2 98%(フェイスマスクにて酸素3L/分)、血圧78/46mmHg、心拍数124bpm、意識レベルJCS 200、瞳孔 左右5.5mm同大、対光反射 緩慢、体温38.6℃であった。心電図モニターでは、QRS(0.18sec)およびQTc(0.50sec)の延長(図1)が認められた。身体所見では、皮膚の乾燥、腸蠕動音の減弱が認められた。気管挿管により気道を確保し、経鼻胃管を挿入したところ薬物残渣が大量に吸引された。突然、心電図モニターで心室頻拍(図2)が出現したが、脈は触知できた。上段:(図1)搬送直後の心電図下段:(図2)経鼻胃管挿入後の心電図画像を拡大する検査値・画像所見末梢血では、WBC 9.80×103/mm3、Hb 13.8g/dL、Ht 39.6%、Plt 132×103/mm3、生化学検査では、TP 6.9g/dL、AST(GOT)12IU/L、ALT(GPT)14IU/L、LDH 320IU/L、CPK 125IU/L、AMY 253IU/L、Glu 132mg/dL、BUN 11mg/dL、Cr 0.6mg/dL、Na 140mEq/L、K 3.9mEq/L、Cl 106mEq/L、動脈血ガス(フェイスマスクにて酸素3L/分)、pH 7.336、PaCO2 30.8Torr、PaO2 112.3Torr、HCO3- 16.7mmol/L、BE -3.6mmol/L、乳酸値 4.6mmol/Lであった。<問題1><解答はこちら>2.第1世代三環系抗うつ薬<問題2><解答はこちら>4.炭酸水素ナトリウム1)上條 吉人編. 臨床中毒学 第2版. 医学書院. 2023.

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日本食はうつ病予防に有効なのか?

 老年期うつ病は、高齢化社会においてますます重要な公衆衛生問題となっている。日本は世界有数の平均寿命と健康寿命の長さを誇るにもかかわらず、日本食と老年期うつ病との具体的な関連性に特化したプロスペクティブコホート研究はこれまで行われていなかった。北海道大学のHo Chen氏らは、日本食と老年期うつ病との関連性を検証し、この関連性が食事の質の向上に起因する身体的健康状態の改善にとどまらないかどうかを評価するため、本研究を実施した。The Journal of Nutrition, Health & Aging誌2025年9月号の報告。 本研究では、1996〜2005年に65歳となる愛知県・日進市の住民を対象とした、年齢別プロスペクティブコホート研究である「the New Integrated Suburban Seniority Investigation(NISSIN)プロジェクト」のデータを利用した。高齢者1,620人(男性:827人、女性:793人)を対象に、70歳時点での老年期うつ病の発症状況を評価した。老年期うつ病の評価には、老年期うつ病尺度15項目質問票を用いた。日本食の順守状況は、修正版日本食インデックス(JDI)を用いて測定した。 主な結果は以下のとおり。・70歳時点で老年期うつ病を発症した高齢者は合計135例であった。・主要な交絡因子を調整した後、日本食の順守が最も高かった群では、順守が最も低かった群と比較し、老年期うつ病の発症リスクが有意に低かった(調整オッズ比[aOR]:0.525、95%信頼区間[CI]:0.286〜0.962)。・また、JDIの各ポイントも老年期うつ病リスクの低下との関連が認められた(aOR:0.900、95%CI:0.816〜0.992)。・食事項目別の解析では、魚介類(p=0.024)、緑黄色野菜(p=0.003)、大豆由来製品(p=0.001)が老年期うつ病リスクの低下と有意に関連していることが示唆された。 著者らは「日本食、とくに緑黄色野菜、大豆由来製品、魚介類を多く含む食生活を順守することは、老年期うつ病の予防につながる可能性がある」と結論付けている。

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寛解後の抗精神病薬減量は認知機能改善に寄与するか

 寛解した精神疾患患者では、再発リスクを増加させることなく、抗精神病薬を減量することが可能である。しかし、抗精神病薬の漸減が認知機能改善につながるかどうかは、これまでよくわかっていなかった。国立台湾大学のChun-I Liu氏らは、抗精神病薬の漸減を行った患者と固定用量のまま維持した患者における認知機能の変化を比較した。Psychological Medicine誌2025年8月27日号の報告。 安定期統合失調症関連精神病患者を対象に、2年間のプロスペクティブ研究を実施した。抗精神病薬の漸減群または維持群に分類した。認知機能は、ベースライン時、1年後、2年後にWAIS-III成人認知機能検査中国語版を用いて評価した。抗精神病薬の減量率と認知機能改善との関係の評価には、スピアマンの相関係数を用いた。また、アリピプラゾール使用群と非使用群にける認知機能も比較した。 主な結果は以下のとおり。・漸減群は、総合知能指数(IQ)、とくにワーキングメモリー、情報および算数のサブテストスコアにおいて有意な改善を示したが、再発率には両群間で有意差は認められなかった。・減量率と総合IQ(72例、r=0.242、p=0.041)、ワーキングメモリー指数(72例、r=0.284、p=0.016)、算数のサブテスト(72例、r=0.295、p=0.012)の改善との間に、統計的に有意な用量反応相関が認められた。・アリピプラゾール使用群と非使用群との間で、認知機能の変化に差は認められなかった。 著者らは「抗精神病薬の減量は、いくつかの認知機能領域における患者パフォーマンスを改善する可能性がある。本知見は、寛解した精神疾患患者における抗精神病薬の漸減のリスクとベネフィットの比を評価する際、考慮する価値がある」と結論付けている。

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世界の疾病負担とリスク因子、1990~2023年の状況/Lancet

 2010年以降、感染性・母子新生児・栄養関連(CMNN)疾患および多くの環境・行動リスク因子による疾病負担は大きく減少した一方で、人口の増加と高齢化が進む中で、代謝リスク因子および非感染性疾患(NCD)に起因する障害調整生存年数(DALY)は著しく増加していることが、米国・ワシントン大学のSimon I. Hay氏ら世界疾病負担研究(Global Burden of Diseases, Injuries, and Risk Factors Study:GBD)2023 Disease and Injury and Risk Factor Collaboratorsの解析で示された。Lancet誌2025年10月18日号掲載の報告。375の疾病・傷害、88のリスク因子について解析 研究グループは、死亡登録、各種調査、疾病登録および公表された科学論文を含む31万以上のデータソースを用い、375の疾病・傷害についてDALY、障害生存年数(YLD)、損失生存年数(YLL)を推定するとともに、88の修正可能なリスク因子が関与する疾病負担を算出した。疾病・傷害負担の推定に12万超のデータソースが、リスク因子推定に約5万9,000のデータソースが使用され、データ解析にはベイズメタ回帰モデリングツールのDisMod-MR 2.1や、新規ツールのDisMod-AT、時空間ガウス過程回帰モデル(ST-GPR)、比較リスク評価フレームワークなど、確立された方法が用いられた。 GBD 2023における疾病・傷害、リスク因子の推計値は、年齢(新生児早期から95歳以上までの25の年齢層)、性別(男性、女性、複合)、年次(1990~2023年までの各年)、および地域(204の国・地域を21の地域および7つのGBD super-regionに分類、加えて20ヵ国については660の地方自治体レベル)別に算出した。疾病・傷害ならびにリスク因子はそれぞれ4段階に分類した。NCDの負担は増加、虚血性心疾患、脳卒中、糖尿病が主因 世界全体で総DALYは、2010年の26億4,000万(95%不確実性区間[UI]:24億6,000万~28億6,000万)から2023年は28億(95%UI:25億7,000万~30億8,000万)と6.1%(95%UI:4.0~8.1)増加した。一方で、人口増加と高齢化を鑑みた年齢標準化DALY率は12.6%(95%UI:11.0~14.1)減少しており、長期的に大きく健康状態が改善していることが明らかになった。 世界全体のDALYにおけるNCDの寄与は、2010年の14億5,000万(95%UI:13億1,000万~16億1,000万)から2023年には18億(95%UI:16億3,000万~20億3,000万)に増加したが、年齢標準化DALY率は4.1%(95%UI:1.9~6.3)減少した。DALYに基づく2023年の主要なレベル3のNCDは、虚血性心疾患(1億9,300万DALY)、脳卒中(1億5,700万DALY)、糖尿病(9,020万DALY)であった。2010年以降に年齢標準化DALY率が最も増加したのは、不安障害(62.8%)、うつ病性障害(26.3%)、糖尿病(14.9%)であった。 一方、CMNN疾患では顕著な健康改善がみられ、DALYは2010年の8億7,400万から2023年には6億8,100万に減少し、年齢標準化DALY率は25.8%減少した。COVID-19パンデミック期間中、CMNN疾患によるDALYは増加したが、2023年までにパンデミック前の水準に戻った。2010年から2023年にかけてのCMNN疾患の年齢標準化DALY率の減少は、主に下痢性疾患(49.1%)、HIV/AIDS(42.9%)、結核(42.2%)の減少によるものであった。新生児疾患および下気道感染症は、2023年においても依然として世界的にレベル3のCMNN疾患の主因であったが、いずれも2010年からそれぞれ16.5%および24.8%顕著な減少を示した。同期間における傷害関連の年齢標準化DALY率は15.6%減少した。主なリスク因子は代謝リスク、2010~23年で30.7%増加 NCD、CMNN疾患、傷害による疾病負担の差異は、年齢、性別、時期、地域を問わず変わらなかった。 リスク分析の結果、2023年の世界全体のDALY約28億のうち、約50%(12億7,000万、95%UI:11億8,000万~13億8,000万)がGBDで分析された88のリスク因子が主因であった。DALYに最も大きく影響したレベル3のリスク因子は、収縮期血圧(SBP)高値、粒子状物質汚染、空腹時血糖(FPG)高値、喫煙、低出生体重・早産の5つで、このうちSBP高値は総DALYの8.4%(95%UI:6.9~10.0)を占めた。 レベル1の3つのGBDリスク因子カテゴリー(行動、代謝、環境・職業)のうち、2010~23年に代謝リスクのみ30.7%増加したが、代謝リスクに起因する年齢標準化DALY率は同期間に6.7%(95%UI:2.0~11.0)減少した。 レベル3の25の主なリスク因子のうち3つを除くすべてで、2010~23年に年齢標準化DALY率が低下した。たとえば、不衛生な衛生環境で54.4%(95%UI:38.7~65.3)、不衛生な水源で50.5%(33.3~63.1)、手洗い施設未整備で45.2%(25.6~72.0)、小児発育不全で44.9%(37.3~53.5)、いずれも減少した。 2010~23年に代謝リスクに起因する年齢標準化負担の減少が小さかったのは、高BMI負担率が世界的に大きく10.5%(95%UI:0.1~20.9)増加したこと、顕著ではないがFPG高値が6.2%(-2.7~15.6)増加したことが主因であった。

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父親の厳しい子育てが子供のメンタルヘルスに影響

 青年期における厳しい子育ては、抑うつ症状のリスクを高める可能性がある。しかし、その影響には個人差があり、リスクを増悪または軽減させる要因を明らかにする必要がある。睡眠の問題は、対処能力を低下させるだけでなく、厳しい子育てを増幅させる可能性もある。米国・ニューメキシコ大学のRyan J. Kelly氏らは、青年期の睡眠を調整因子として、青年期の厳しい子育てとその後の抑うつ症状の関係を調査した。Sleep Health誌オンライン版2025年9月17日号の報告。 9年間にわたる5wave(子供の年齢が16、17、18、23、25歳)研究を実施した。16歳で研究に参加した家族は245組(女性の割合:52%、白人/ヨーロッパ系米国人:67%、黒人/アフリカ系米国人:33%)、5waveすべてに参加した家族は132組であった。母親と父親は、16〜18歳までに子供に行った厳しい子育て(言葉による虐待および身体的な虐待)の頻度について報告した。16〜18歳までの子供の睡眠時間および睡眠の質(睡眠維持効率、長時間覚醒エピソード)の測定には、アクティグラフィーを用いた。抑うつ症状は、5waveのすべてで自己申告により評価した。 主な結果は以下のとおり。・自己回帰効果をコントロールした後、構造方程式モデルを用いて、青年期における父親の厳しい子育てと成人初期の抑うつ症状との関連を悪化させる因子は、青年期における睡眠時間の短縮、睡眠維持効率の低下、長時間覚醒エピソードの増加であることが明らかとなった。【青年期における睡眠時間の短縮】β=-0.16、p<0.03【睡眠維持効率の低下】β=-0.30、p<0.001【長時間覚醒エピソードの増加】β=0.24、p=0.004・母親の厳しい子育ては、青年期の睡眠状況に関わらず、リスク変化に影響しなかった。 著者らは「青年期における父親の厳しい子育てと睡眠障害との相互作用は、成人初期の抑うつ症状を予測する可能性が示された。これらの結果は、父親の厳しい子育てを受けた子供のメンタルヘルスを改善するうえで、睡眠を考慮することの重要性を示唆している」と結論付けている。

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初発統合失調症における性特異的プロラクチン異常と性腺ホルモンとの関連

 統合失調症患者では、高プロラクチン血症やプロラクチン(PRL)値の上昇が頻繁に認められる。しかし、初回エピソード統合失調症患者におけるPRL調節不全の有病率に関する性差を検討した研究は非常に少ない。中国・Second People's Hospital of LishuiのAnle Pan氏らは、初回エピソード統合失調症患者における性別特異的なPRL調節不全と性腺ホルモンとの相互作用について検討を行った。The International Journal of Neuropsychopharmacology誌2025年10月1日号の報告。 対象は、2週間以内の最小限の治療を行った初回エピソード統合失調症患者189例(男性:96例、女性:93例)。すべての対象患者においてPRL値と性腺ホルモンを測定した。 主な結果は以下のとおり。・男性は、女性と比較し、PRL値異常の有病率が有意に高かった(32.3%vs.8.6%、χ2=16.2、p<0.001)。・PRL高値群(39例)とPRL正常群(150例)の性腺ホルモンの比較解析では、高プロラクチン血症群において卵胞刺激ホルモン(Z=2.7、p=0.007)およびテストステロン(Z=3.7、p<0.001)の上昇が認められた。・PRL高値群では、PRLはプロゲステロンおよびテストステロンと正の相関が認められた。一方、PRL正常群では、PRLはエストラジオールおよび黄体形成ホルモンと正の相関を示したものの、プロゲステロンとは負の相関を示した。 著者らは「初回エピソード統合失調症患者におけるPRL調節不全の複雑かつ性別特異的な異常およびそれが性腺ホルモンと関連していることが強く示唆された」としている。

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片頭痛発作の急性期治療と発症抑制の両方に有効な経口薬「ナルティークOD錠75mg」【最新!DI情報】第49回

片頭痛発作の急性期治療と発症抑制の両方に有効な経口薬「ナルティークOD錠75mg」今回は、経口カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)受容体拮抗薬「リメゲパント(商品名:ナルティークOD錠75mg、製造販売元:ファイザー)」を紹介します。本剤は、わが国で初めての片頭痛の急性期治療および発症抑制の両方を適応とする治療薬です。<効能・効果>片頭痛発作の急性期治療および発症抑制の適応で、2025年9月19日に製造販売承認を取得しました。<用法・用量>片頭痛発作の急性期治療:通常、成人にはリメゲパントとして1回75mgを片頭痛発作時に経口投与します。片頭痛発作の発症抑制:通常、成人にはリメゲパントとして75mgを隔日経口投与します。<安全性>重大な副作用として、過敏症(頻度不明)があります。その他の副作用として、便秘(1%以上)、浮動性めまい、悪心、下痢、アラニンアミノトランスフェラーゼ増加(いずれも0.5~1%未満)、上気道感染、尿路感染、単純ヘルペス、前庭神経炎、白血球減少症、好中球減少症、鉄欠乏性貧血、貧血、食欲亢進、うつ病、不眠症、易刺激性、異常な夢、錯乱状態、不安、傾眠、片頭痛、頭痛、錯感覚、頭部不快感、味覚不全、ドライアイ、回転性めまい、動悸、高血圧、潮紅、呼吸困難、腹痛、嘔吐、腹部不快感、胃食道逆流性疾患、肝機能異常、脂肪肝、発疹、そう痒症、ざ瘡、多汗症、蕁麻疹、頚部痛、背部痛、頻尿、疲労、倦怠感、口渇、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ増加、血中クレアチンホスホキナーゼ増加、体重増加、肝酵素上昇、血中クレアチニン増加、糸球体濾過率減少、肝機能検査値上昇、血圧上昇、心電図QT延長、サンバーン(いずれも0.5%未満)があります。<患者さんへの指導例>1.この薬は、片頭痛発作の急性期治療および発症抑制に用いられます。「前兆のない片頭痛」および「前兆のある片頭痛」のどちらにも使用できます。2.発作時には、頓用で服用します。ただし、1日に1錠を超えての服用はできません。3.発症を予防するには、隔日(2日に1回)、決まった時間に服用します。この薬を服用した日は、急性期治療として追加服用はできません。服用前であれば、急性期治療のために頓用で服用できますが、同日中に発症予防のための追加服用はできません。服用日以外の日に発作が生じた場合は、1日1錠まで服用ができます。<ここがポイント!>片頭痛は代表的な一次性頭痛の1つで、本邦における年間有病率は約8%(前兆のない片頭痛が5.8%、前兆のある片頭痛が2.6%)と報告されています。片頭痛は、日常生活に大きな支障を来す疾患であり、多くの患者が家事や仕事の生産性低下に悩まされています。片頭痛の主な誘因としてはストレスが最も多く、その他に女性ホルモンの変動、空腹、天候の変化、睡眠不足または過眠、特定の香水やにおいなどが挙げられます。片頭痛の発症機序は完全には解明されていませんが、「三叉神経血管説」が広く受け入れられています。この説では、何らかの原因で三叉神経を構成する無髄線維(C線維)からカルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)が放出され、脳血管の拡張や神経の炎症を引き起こすことで痛みが生じると考えられています。リメゲパントは、CGRP受容体拮抗薬であり、CGRPによる血管拡張や神経原性炎症の誘導を阻害することで、片頭痛に伴う痛みや諸症状を軽減します。本剤の特徴は、わが国で初めて片頭痛発作の急性期治療および発症抑制の両方に適応を有する点です。急性期治療には片頭痛発作時に頓服で服用し、発症抑制には隔日で服用します。また、本剤は薬剤の使用過多による頭痛(薬物乱用頭痛:MOH)を誘発する可能性が低いと考えられているため、MOHの発症リスクを有する患者、またはMOHの既往のある患者について、添付文書上で特別な注意喚起をしていません。急性期治療に関しては、中等度または重度の片頭痛を有する日本人患者を対象とした国内第II/III相試験(BHV3000-313/C4951022試験)において、主要評価項目である投与2時間後の疼痛消失割合は、本剤75mg群で32.4%、プラセボ群で13.0%でした。群間差(本剤群-プラセボ群)は、19.4%(95%信頼区間[CI]:12.0~26.8)で本剤群のプラセボ群に対する優越性が検証されました(p<0.0001、Mantel-Haenszel検定)。一方、発症抑制に関しては、日本人患者を対象に片頭痛の予防療法を評価した国内第III相試験(BHV3000-309/4951021試験)において、主要評価項目である二重盲検期の最後の4週間(Week 9~12)での1ヵ月当たりの片頭痛日数のベースラインからの平均変化量は、本剤群で-2.4日(95%CI:-2.93~-1.96)、プラセボ群で-1.4日(95%CI:-1.87~-0.91)でした。両群間の差は-1.1日(95%CI:-1.73~-0.38)であり、本剤群のプラセボ群に対する優越性が検証されました(p=0.0021、反復測定線形混合効果モデル)。

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日本の大学生の過度な飲酒とうつ病との関連性は

 アルコール摂取とうつ病との関連性は、いまだ明らかになっていない。また、アジアの大学生を対象とした大規模研究で、この関連性の検証は行われていない。筑波大学の斉藤 剛氏らは、日本の大学生を対象に、過度な飲酒とうつ病との関連性を検証するため横断的研究を行った。Neuropsychopharmacology Reports誌2025年9月号の報告。 2019年4月〜2020年1月に、日本の2つの大学で定期健康診断を受けた20歳以上の学部生および大学院生を対象に調査を実施した。自記式質問票を用いて、飲酒頻度、1日当たりの飲酒量、過去1ヵ月間の過度な飲酒、うつ病自己評価尺度(CES-D)スコア、人口統計学的データの評価を行った。 主な結果は以下のとおり。・分析対象は学生4,535例。内訳は、男性2,775例(61.2%)、女性1,760例(38.8%)。・過度な飲酒者は、男性で1,076例(66.3%)、女性で548例(33.7%)であった。・1,474例(32.5%)がうつ病を有しており、そのうち528例(35.8%)は過度な飲酒者であった。・ロジスティック回帰分析では、複数の変数で調整した後でも、うつ病は大量飲酒との逆相関が認められた(オッズ比:0.59、95%信頼区間:0.36〜0.98)。 著者らは「アジアの大学生において、過度な飲酒とうつ病の負の相関が確認された。年齢や人種別に、アルコール摂取とうつ病との関係をより詳細に調査する必要がある」としている。

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うつ病と就労:パーソナルリカバリーを目指した治療とは

 1992年、世界精神保健連盟はメンタルヘルス問題に関する世間の意識を高め、偏見をなくし、正しい知識を普及することを目的として、10月10日を「世界メンタルヘルスデー」と定め、その後、世界保健機関(WHO)も協賛し、正式な国際デー(国際記念日)となった。 2025年9月、世界メンタルヘルスデーに合わせてルンドベック・ジャパンによるプレスセミナーが行われ、慶應義塾大学の菊地 俊暁氏と株式会社ベータトリップの林 晋吾氏が医師の立場、当事者の立場からそれぞれ講演を行った。うつ病の治療とリカバリー うつ病におけるリカバリーの概念は症状が軽減し、医師の視点で改善と評価できる状態である“臨床的リカバリー”と、患者個人の指標・目標に対して本人が「良くなった」と実感できる状態である“パーソナルリカバリー”の2種類があり、両者は必ずしも一致しない。医師の視点から見て症状が改善しているか、という点だけではなく患者自身が個人の価値観や目標に対して回復しているかという点も重要である。 また、パーソナルリカバリーに関連する社会機能に関してはすぐに戻らない例が多く、日常生活や社会生活を送るための社会機能は治療開始から半年後で回復している患者は約3割、2年経っても約4割と社会機能が十分に回復していないことが多い。また認知機能の障害が見られることがあり、とくに記憶力・集中力・判断力・処理速度などが低下しやすく、仕事のパフォーマンス低下の要因となっている。うつ病におけるリカバリーの評価:VGOAL-J study では、どのような治療が社会機能を含めたパーソナルリカバリーに有効であるのか。抗うつ薬による機能的/パーソナルリカバリーの効果について評価した試験がVGOAL-J studyである。 試験の概要は以下のとおり。対象:20~65歳で有給の就労をしており、DSM-5の基準に従って診断された大うつエピソードを経験している人。主な指標:抗うつ薬(ボルチオキセチン)の投与を開始した対象者において以下の2つの主要な指標を測定した。GAS-D(Goal Attainment Scale for Depression):12週間にわたる目標を達成した割合の変化や、12週時点での目標を達成した割合を評価。患者と医療従事者が協力して患者ごとに治療目標を設定し、目標に向けて進捗経過を測定する。WPAI(Work Productivity and Activity Impairment Questionnaire):24週間にわたる労働生産性の変化を評価。 結果はベースラインと比較して、GAS-Dスコアは8週、12週、24週で有意に増加していた。また、設定した目標の達成率は24週時点で6割以上であった。 WPAIはベースラインと比較して4週以降から有意な改善が観察され、経時的にパフォーマンスが戻ってきていることが示された。 有害事象は121例中67例で発現したが、軽度なものが多く、試験中止に至った有害事象および死亡例は報告されていない。 この結果から、抗うつ薬を継続して投与する、すなわち治療継続の有効性と重要性が示唆された。一方で、目標未達成者への追加支援は今後の課題であるとした。うつ病と働くこと:復職はゴールではない 林氏は2010年にパニック障害を発症し、その後うつ病を併発、休職・復職・転職を繰り返し、約7年で寛解に至った。現在は患者家族向けコミュニティ「エンカレッジ」を運営しており、経験者の立場からうつ病と就労について講演を行った。 復職しても以前と同じように働けるわけではなく、林氏は新しい困難と向き合う日々が続いた。出勤はできても午後になると集中力が途切れ、簡単な資料をまとめるにも以前の数倍の時間がかかる、さらに終業後は疲れ果てて家で何もできず、生活の他の部分が回らなくなってしまった。この状態を「職場の人からは普通に働いているように見えていたかもしれません。でも実際は、必死に取り繕っていました。」と林氏は語った。 働きながら感じた課題に対して、ひとつひとつ工夫をしながら対策していく中で気づいたのは「小さな目標設定」の重要性であった。 例えば、毎朝8時に起きる、予定がなくても身だしなみを整える、など日常生活に根ざした小目標を設定する。最初は「ちっぽけ」と感じても、達成感を積み重ねることで回復や生産性改善の実感に繋がっていった。家族からの「先月より安定している」という声が大きな励みとなった。支援を繋ぐために うつ病と共に生きることは、本人だけでなく家族や職場にも影響を与えるため、医療、職場、そして家族が“共通の物差し”を持つことが大切である。 林氏は、GAS-DやWPAIのような同じ評価軸の物差しを共有することで、周囲が本人の状況を理解しやすくなり、より適切な支援につながると強調した。 「復職はゴールではなくスタートです。小さな目標を積み重ねることで、回復と働き続ける力が生まれます。医療・職場・家族が一緒になって支えることで、うつ病と共に生きる道は開けていくのだと思います」と林氏は講演を締めくくった。ルンドベック・ジャパンのうつ病に対する取り組みと社会啓発 ルンドベック・ジャパンはデンマークに本社を置くグローバル製薬企業であり、精神神経領域に特化し、70年以上の歴史を持つ。「脳の健康を推し進め、人々の人生を変える」をパーパスに掲げている。 2013年から世界メンタルヘルスデーに合わせて各国で啓発活動を展開しており、日本では毎年、患者団体・医療関係者・行政・NGOなどと連携した啓発活動を実施している。 世界メンタルヘルスデーに合わせたセミナーやイベントを継続的に実施しており、一般向けセミナーやシンボルカラーによるライトアップなどを予定している。

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ドキドキして眠れません【漢方カンファレンス2】第7回

ドキドキして眠れません以下の症例で考えられる処方をお答えください。(経過の項の「???」にあてはまる漢方薬を考えてみましょう)【今回の症例】50代女性主訴不眠既往40歳、50歳に胃潰瘍生活歴パート病歴数年前に不審者が自宅に侵入した被害にあった後から不眠になった。寝つきが悪く、小さな物音でも目が覚めてしまい、中途覚醒2〜3回。また日中も動悸がある。近医を受診して心電図異常はなく、ゾルピデム5mgを処方されたが効果が不十分、できたら睡眠薬は飲みたくないと受診。現症身長158cm、体重45.1kg。体温35.8℃、血圧110/60mmHg、脈拍90回/分 整。経過初診時「???」エキス3包 分3を処方した。(解答は本ページ下部をチェック!)1ヵ月後寝つきがよくなった。中途覚醒はまだある。2ヵ月後動悸、悪夢がなくなった。眠れるようになり、睡眠薬を飲まない日もある。4ヵ月後睡眠良好。睡眠薬は不要になった。1年後漢方薬も飲まずに眠れているとのことで終診。問診・診察漢方医は以下に示す漢方診療のポイントに基づいて、今回の症例を以下のように考えます。【漢方診療のポイント】(1)病態は寒が主体(陰証)か、熱が主体(陽証)か?(冷えがあるか、温まると症状は改善するか、倦怠感は強いか、など)(2)虚実はどうか(症状の程度、脈・腹の力)(3)気血水の異常を考える(4)主症状や病名などのキーワードを手掛かりに絞り込む【問診】<陰陽の問診> 寒がりですか? 暑がりですか? 体の冷えを自覚しますか? 横になりたいほどの倦怠感はありませんか? 暑がりです。 冷えは感じません。 睡眠不足がつらくて、きついですが横になりたくはありません。 入浴では長くお湯に浸かるのが好きですか? 冷房や暖房は苦手ですか? 湯船には浸からずほとんどシャワーです。冷房は苦手ではありません。暖房はすぐに顔が赤くなるので嫌いです。 入浴するとのぼせませんか? はい、すぐに顔がのぼせるので湯船に浸かることはあまりないです。 のどは渇きますか? 飲み物は温かい物と冷たい物のどちらを好みますか? のどはあまり渇きません。 冷たい物、温かい物どちらも好きです。 <飲水・食事> 1日どれくらい飲み物を摂っていますか? 食欲はありますか? 1日1.5Lくらいです。 食欲はあります。 <汗・排尿・排便> 汗はよくかくほうですか? 尿は1日何回出ますか? 夜、布団に入ってからは尿に何回行きますか? 便秘や下痢はありますか? 汗はよくかきます。 尿は8〜10回/日です。 夜はトイレに行きません。 便は毎日出ます。下痢もしません。 <睡眠> 何時に寝て、何時に起きますか? 寝つきはよいですか? 途中で目が覚めますか? 悪夢をみませんか? 日中の眠気はありませんか? 毎晩23時に就寝して、6時に起きます。 1時間以上寝つけません。 2〜3度目が覚めてしまいます。 毎晩のように悪夢をみます。追いかけられるような夢です。 日中は仕事で気を張っていて眠くありません。 <ほかの随伴症状> 全身倦怠感はありますか? 帰宅後にぐったりしませんか? 朝、調子が悪いですか? きつい感じはありますが、休んでも楽にはなりません。 帰宅後もとくにぐったりする感じはありません。 帰宅しても気が休まらず、落ち着かない感じです。 とくに朝調子が悪いということはありません。 足はむくみませんか? のどのつまりはありませんか? みぞおちがつかえたり、お腹が膨れる感じはありませんか? 抜け毛が多い、皮膚の乾燥はありませんか? 動悸はありませんか? 足はむくみません。 のどはつまりません。 つかえやお腹の張る感じはありません。 抜け毛や皮膚の乾燥はありません。 動悸をよく感じます。 イライラはありませんか? 落ち込むことはありませんか? 不安を感じることが多いですか? 驚きやすくありませんか? イライラしません。 落ち込みはありません。 不安はそこまで強くないと思っています…。 小さな物音にもすぐにビクッとなります。 ほかに困っている症状はありますか? 可能であれば睡眠薬をやめたいです。 【診察】顔色は普通。脈診ではやや浮・弱の脈、脈拍も90回/分程度とやや多い(数脈[さくみゃく])。また、舌は暗赤色、湿潤した白苔が少量、舌下静脈の怒張あり。腹診では腹力は軟弱、胸脇苦満(きょうきょうくまん)・心下痞鞕(しんかひこう)はなし、腹直筋の緊張あり、腹部大動脈の拍動あり(心下悸[しんかき]、臍上悸[せいじょうき]、臍下悸[せいかき])、両側臍傍の圧痛なし。四肢の触診で冷感なし。カンファレンス 今回は、不眠の症例です。 不眠を訴える患者さんは多いですね。うつ病や不安障害のような精神疾患のほか、睡眠時無呼吸症候群やレストレスレッグス症候群などの器質的疾患は見逃さないようにしています。 そうですね。若年世代ではゲームやスマホを原因とする不適切な睡眠衛生が問題となるケースも増えていますね。それでは、漢方診療のポイント(1)陰陽の判断からいきましょう。 暑がりで入浴はシャワー、冷房は苦手でない、自覚的・他覚的に冷えなしと陽証です。 陽証だね。六病位はどうだろう? 陽証で太陽病の悪寒・発熱なく、陽明病を示唆する熱感、腹満、便秘もないから今回も少陽病ですね。 少陽病だね。次は漢方診療のポイント(2)の虚実の判断にいこう。 脈は弱、腹力は軟弱とあるので虚証です。 今回の症例は陽証・虚証ですね。漢方診療のポイント(3)気血水の異常はどうでしょうか? 今回の症例は不審者に自宅侵入されたことをきっかけとして不眠が出現していて、気の異常と考えられますね。 「気のせいです」っていわないところが漢方治療のいいところだね。お気の毒な症例だけれども…。 気が動転してしまっている感じですね。 そう! 気が動転するように、逆走することを気逆(きぎゃく)とよぶよ(気逆については本ページ下部の「今回のポイント」の項参照)。 気逆は更年期障害、パニック発作とイメージするとわかりやすいですね。そのような症状に悩む患者さんが目に浮かびます。 本症例の気逆の症状を挙げてみてください。 顔色は普通なので顔面紅潮はありません。 ただし、「暖房は顔がすぐに赤くなるから嫌い」とあるのは気逆だね。気逆の患者さんではのぼせるから入浴や暖房が嫌という人は多いよね。 動悸や驚きやすいことも気逆ですね。 気逆の代表的な症状ですね。睡眠の特徴はどうですか? 入眠困難、中途覚醒でしょうか? 入眠困難、中途覚醒は気逆の特徴とはいえません。睡眠に関して気逆で必ず聞くことは悪夢の有無です。不眠の患者さんには必ず問診しましょう。 動悸や悪夢がある場合は竜骨(りゅうこつ)と牡蛎(ぼれい)という気を鎮める作用がある生薬が含まれる漢方薬が適応になるよ。竜骨は哺乳動物の化石、牡蛎は貝のカキの殻で、どちらも炭酸カルシウムが主成分だね。ほかの生薬より重量があるため、重鎮安神薬(じゅうちんあんじんやく)といわれます。 悪夢の有無はあまり気にしたことはありませんでした。 悪夢に加えて、気逆の他覚所見として、腹診での腹部大動脈の拍動があります。今回の症例でも、心下悸、臍上悸、臍下悸と3ヵ所で拍動が触れています。最も上部の心窩部で触れる拍動が心下悸で、この場所が触れる頻度が少ないことから病的意義が大きいとされます。腹動が触れる患者さんには、「悪夢をみませんか?」、「驚きやすいですか?」と診察中に質問するとよいですよ。 具体的には「携帯電話がなるとビクッとしませんか?」、「後ろから呼びかけられると驚きませんか?」などと聞くとよいね。 おぉ。問診のコツですね。 気逆以外に気血水の異常はありますか? 全身倦怠感は気虚ですね。眠れずにきつそうです。 気逆には、気虚が合併しやすいからね。 いつもドキドキしていると疲れてしまいますね。のどのつまり、腹満感、不安感などはなく気鬱は目立ちません。 そうですね。鬱々しているというよりビクビクした感じですね。気鬱の要素は少ないようです。 水毒はありません。 血の異常では血虚はなく、舌の暗赤色、舌下静脈の怒張が瘀血です。 そうだね。本症例をまとめよう。 解答・解説【解答】本症例は、陽証・虚証・気逆に対して用いる桂枝加竜骨牡蛎湯(けいしかりゅうこつぼれいとう)で治療をしました。【解説】竜骨と牡蛎が含まれる漢方薬には柴胡加竜骨牡蛎湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)、柴胡桂枝乾姜湯(さいこけいしかんきょうとう)(牡蛎のみ)、桂枝加竜骨牡蛎湯があります。このうち、桂枝加竜骨牡蛎湯が最も虚証の漢方薬で、太陽病の桂枝湯(けいしとう)に竜骨と牡蛎が加わった構成です。古典にはいわゆる性的神経衰弱で、妙に性欲が亢進して夢精、夢交といった病態に用いると書かれています。添付文書では神経質、小児夜尿症、神経衰弱、遺精などのほか、陰萎にも適応になり、性的な愁訴が目立つ場合に用います。「高齢者の性的逸脱行動に桂枝加竜骨牡蛎湯が有効であった2症例」という報告もあります1)。しかし、実際の臨床では性的愁訴ではなく、虚弱で神経質な人でドキドキ、ビクビクと不安と緊張が強く、眠れない、動悸がするなどの場合に用いることが多いです。柴胡加竜骨牡蛎湯は少陽病・実証で、腹力や胸脇苦満が強く、過度のストレスによりイライラ、過緊張、抑うつが目立つ場合に用います。柴胡桂枝乾姜湯は少陽病・虚証でより華奢なタイプで、ストレスを溜め込んで疲弊している状態に用います。職場ではがんばれるけれども、家に帰ったらぐったり疲れてしまうような疲労感が特徴です。気逆はドキドキしやすいといった患者さんのもともとの性格に加え、何かショッキングなことが起こった後に生じることが多くあります。実際に、東日本大震災後のPTSD様症状に柴胡桂枝乾姜湯が有効であったRCTがあります2)。当科でも福岡西方沖地震後のめまい感に柴胡加竜骨牡蛎湯が有効であった症例を経験しました。今回のポイント「気逆」の解説気の異常は気虚(ききょ)、気鬱(きうつ)、気逆の3つに分類します。気の異常に共通して、変動性、発作的、朝調子が悪い、憂うつ感を伴うなどの特徴があります。気逆は気の循環の失調で、主に上から下へ巡る気が、逆走することによって起こります。更年期障害でみられるホットフラッシュが代表で、顔にのぼせが出現する、さらに上半身は熱いが下肢が冷える上熱下寒(じょうねつげかん)といわれる冷えのぼせがみられます。また、パニック発作のような動悸も気逆の症状です。気逆の治療は、桂皮(けいひ)、黄連(おうれん)といったのぼせを改善させる生薬や竜骨、牡蛎といった気を鎮める作用のある生薬で治療します。気が胸腹部を支点として上方へ発作性に舞い上がるという意味から、のぼせや顔面紅潮以外にも頭痛、胸満感、発作性咳嗽、嘔吐(吐き気は少ない)などの症状も気逆と考えます。麦門冬湯(ばくもんどうとう)は発作性の咳嗽に用いられますが、古典には「大逆上気(たいぎゃくじょうき)」と記載があります。また、気逆の精神症状として、驚きやすい、悪夢をみる、焦燥感があります。また気逆には程度の差はあれ、全身倦怠感などの気虚の状態を伴うことが多いです。今回の鑑別処方不眠を大きく3つ「ドキドキして不眠」、「疲労困憊で不眠」、「気が昂って不眠」に分けて考えます。「ドキドキして不眠」は動悸や悪夢を伴う気逆として竜骨や牡蛎が含まれる漢方薬で治療することを解説しました。「疲労困憊で不眠」では、第6回で解説したように、「眠るにも体力が必要」として、全身倦怠感や日中の眠気など気虚のみが目立つ場合は補中益気湯の適応です。気虚に加えて、ストレスから精神的な症状も目立つ場合には酸棗仁湯(さんそうにんとう)や加味帰脾湯(かみきひとう)を用います。酸棗仁湯や加味帰脾湯は気を補う作用以外にも酸棗仁(さんそうにん)などの精神安定作用がある生薬が含まれます。酸棗仁湯は疲れ過ぎてかえって眠れない、加味帰脾湯はあれこれとつまらないことが気になる、思い悩んで憂鬱、悲哀感がある場合に用います。酸棗仁湯が不眠に対して有効であったというRCT論文から12本を抽出したシステマティックレビュー3)や、担がん患者において加味帰脾湯を投与した群で、Insomnia Severity Indexが有意に改善したというRCTの報告4)があります。「気が昂ぶって不眠」では交感神経の過緊張状態が持続して不眠をきたしている場合で、イライラや胸脇苦満を伴えば柴胡剤(さいこざい)の適応です。抑肝散(よくかんさん)や加味逍遙散(かみしょうようさん)も柴胡が含まれることから広義の柴胡剤です。抑肝散は「怒り」が投与目標になりますが、現代の日本人は怒りをうちに秘めて、怒りの自覚がない例も多く眼瞼けいれんや舌のぴくつきなど怒りのサインを見逃さないようにする必要があります。抑肝散加陳皮半夏(よくかんさんかちんぴはんげ)は胃腸症状を伴う場合や抑肝散よりも怒りがやや弱い場合に用います。加味逍遙散はホットフラッシュやイライラを伴う更年期障害や月経前症候群、多くの不定愁訴がある場合に適応です。柴胡加竜骨牡蛎湯や柴胡桂枝乾姜湯は柴胡剤で、かつ気逆に対する作用をもつことから「ドキドキ」と「気の昂ぶり」の要素を併せもつことになります。加味逍遙散よりもさらにイライラや顔面紅潮が強い熱感を伴う場合は、より鎮静・清熱作用の強い黄連解毒湯(おうれんげどくとう)が適応になります。参考文献1)田原英一ほか. 日東医誌. 2003;54:957-961.2)Numata T, et al. Evid Based Complement Alternat Med. 2014;2014:683293.3)Xie CL, et al. BMC Complement Altern Med. 2013;13:18.4)Lee JY, et al. Integr Cancer Ther. 2018;17:524-530.

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ADHDに対する神経刺激薬治療後の精神疾患発症リスク〜メタ解析

 注意欠如・多動症(ADHD)患者は、神経刺激薬による治療後に精神疾患や双極症を呈することがある。しかし、その発現の程度は不明であった。英国・キングス・カレッジ・ロンドンのGonzalo Salazar de Pablo氏らは、ADHD患者における神経刺激薬治療後の精神疾患または双極症の発現を定量化し、その影響を調節する可能性のある因子を評価するため、システマティックレビューおよびメタ解析を実施した。JAMA Psychiatry誌オンライン版2025年9月3日号の報告。 DSMまたはICDで定義されたADHD患者を対象に精神疾患または双極症のアウトカムを評価した、あらゆるデザインの研究を対象とした。2024年10月1日までに公表された対象研究を、PubMed、Web of Science、Ovid/PsycINFO、Cochrane Central Register of Reviewsより言語制限なしで検索した。PRISMAおよびMOOSEガイドラインに従い、プロトコールを登録し、ニューカッスル・オタワ尺度およびCochraneバイアスリスクツール2を用いて質評価を行った。ランダム効果メタ解析、サブグループ解析、メタ回帰分析を実施した。主要アウトカムは、精神症状、精神病性障害、双極症を発症した患者の割合とし、エフェクトサイズおよび95%信頼区間(CI)を算出した。アンフェタミンとメチルフェニデートの比較についても評価した。 主な結果は以下のとおり。・対象は16研究(39万1,043例)で、平均年齢12.6歳(範囲:8.5〜31.1歳)、男性28万8,199例(73.7%)であった。・神経刺激薬を処方されたADHD患者のうち、精神症状、精神病性障害、双極症を発症した患者は、次のとおりであった。【精神症状】2.76%、95%CI:0.73〜9.88、10研究、23万7,035例【精神病性障害】2.29%、95%CI:1.52〜3.40、4研究、9万1,437例【双極症】3.72%、95%CI:0.77〜16.05、4研究、9万2,945例・研究間で有意な異質性が認められた(I2>95%)。・アンフェタミン治療患者では、メチルフェニデート治療患者よりも、精神疾患発症リスクが有意に高かった(オッズ比:1.57、95%CI:1.15〜2.16、3研究、23万1,325例)。・サブグループ解析では、北米の研究およびフォローアップ期間の長い研究において、精神症状の有病率が有意に高かったことが示唆された。・精神疾患発症率の上昇と関連していた因子は、女性の割合の高さ、サンプルサイズが小さいこと、高用量の神経刺激薬であった。 著者らは「本解析の結果、神経刺激薬治療を行ったADHD患者において、精神症状、精神病性障害、双極症の発症率は無視できないレベルであることが明らかとなった。アンフェタミン治療は、メチルフェニデート治療と比較して、精神疾患発症率が高いことが示された」とし、「対象とした研究では因果関係を立証できず、ランダム化臨床試験や神経刺激薬使用の有無により比較するミラーイメージ研究など、さらなる調査の必要性が浮き彫りになった。とはいえ、臨床医は神経刺激薬治療について患者と話し合う際に、精神疾患や双極症の発現率上昇について説明し、治療全体を通してこれらの症状をシステマティックにモニタリングする必要がある」とまとめている。

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青年期のデジタル依存症が健康に及ぼす影響~メタ解析

 スマートフォン、コンピュータ、ソーシャルメディアプラットフォームなどのデジタル機器の過度かつ強迫的な使用を特徴とする青年期のデジタル依存症は、世界的な懸念事項となっている。中国・Xuzhou Medical UniversityのBlen Dereje Shiferaw氏らは、デジタル依存症について包括的に捉え、それらの青年期におけるサブタイプとさまざまな健康アウトカムとの関連性を調査する目的でシステマティックレビューおよびメタ解析を実施した。Journal of Behavioral Addictions誌2025年9月30日号の報告。 Chinese National Knowledge Infrastructure(CNKI)、Wanfang、PubMed、Web of Scienceのデータベースより、青年期のデジタル依存症に関連する健康アウトカムを報告した研究を包括的にレビューし、事前に定義された包含基準と除外基準を用いて評価した。 主な結果は以下のとおり。・デジタル依存症の若者では、過体重または肥満(オッズ比[OR]:1.25、95%信頼区間[CI]:1.03~1.48)、自己評価による健康状態不良(OR:1.75、95%CI:1.42~2.08)を報告する傾向がより高かった。・また、不眠症(OR:1.46、95%CI:1.33~1.59)、睡眠の質の低下(OR:1.50、95%CI:1.37~1.64)などの睡眠障害を経験している傾向があった。・デジタル依存症の若者は、自殺傾向(OR:2.63、95%CI:2.36~2.90)、抑うつ症状(OR:1.76、95%CI:1.68~1.83)、ストレス(OR:2.15、95%CI:1.79~2.52)、不安(OR:2.14、95%CI:1.99~2.28)などの精神衛生上の懸念についても高いオッズを示した。・さらに、喫煙(OR:1.55、95%CI:1.41~1.68)、問題のあるアルコール摂取(OR:1.47、95%CI:1.33~1.60)、薬物使用(OR:1.94、95%CI:1.44~2.44)の傾向も高かったことが示唆された。 著者らは「青年期におけるデジタル依存症は、身体的、精神的、行動上の問題を含む、重大かつ広範な健康への悪影響をもたらすことが示唆された」としている。

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日本人高齢者の笑いの頻度とうつ病発症との関係

 笑いは、精神的および身体的な健康の有益性と関連するといわれている。しかし、日常生活における笑いがうつ病の予防に有効かどうかに関する縦断的なエビデンスは、依然として限られている。東北大学の玉田 雄大氏らは、日常生活における笑いの頻度が高齢者のうつ病発症リスクと関連しているかどうかを検証するため、6年間の縦断研究を実施した。Journal of Affective Disorders誌オンライン版2025年9月4日号の報告。 6年間にわたる3-waveコホートである日本老年学的評価研究(JAGES)に参加した65歳以上の日本人3万2,666例のデータを分析した。笑いの頻度は、2019年に自記式質問票を用いて評価した。回答カテゴリーは、「ほぼ毎日」「1~5日/週」「1~3日/月」「まったくない、またはほとんどない」とした。2016~22年のうつ病発症の定義には老年うつ病尺度を用いた。2016年に測定された潜在的交絡因子でコントロールしたうえで、修正ポアソン回帰モデルを用いて調整リスク比(aRR)と95%信頼区間(CI)を算出した。 主な結果は以下のとおり。・フォローアップ期間中に4,805例(14.7%)がうつ病を発症した。・うつ病のaRRは、笑いの頻度が「ほぼ毎日」の人と比較し、「1~5日/週」の人で1.25(95%CI:1.09~1.44)、「1~3日/月」の人で1.26(95%CI:1.05~1.52)、「まったく笑わない」の人で1.49(95%CI:1.18~1.89)であった。・これらの関係に、有意な用量反応傾向が認められた(p for trend<0.001)。 著者らは「日常生活における笑いの頻度が低いことは、高齢者のうつ病発症リスクの上昇と関連が認められた。本知見は、頻繁に笑うことが老後のうつ病予防に役立つ可能性があることを示唆している」と結論付けている。

59.

急性期~維持期統合失調症に対するブレクスピプラゾールのベストプラクティスに関するコンセンサス

 ブレクスピプラゾールは、統合失調症などに適応を有する第2世代抗精神病薬であり、ドパミンパーシャルアゴニストとして他の抗精神病薬と異なる作用機序を有している。米国・Zucker Hillside HospitalのChristoph U. Correll氏らは、大塚ファーマシューティカルヨーロッパおよびH. Lundbeck A/Sからの資金提供を受けて組織された精神科専門家による国際委員会において実施された、統合失調症のさまざまな段階におけるブレクスピプラゾールの安全かつ効果的な使用法についての議論を報告した。Neuropsychiatric Disease and Treatment誌2025年8月29日号の報告。 主な内容は以下のとおり。・ブレクスピプラゾールの薬理学的プロファイルは、ノルエピネフリン、ドパミン、セロトニン受容体に対してバランスの取れた結合親和性を特徴としており、興奮症状や陰性症状を含む複数の症状領域において有効性を示す。・最小限の活性化および鎮静作用、長期的な心血管代謝への懸念が比較的低いといった忍容性の高い安全性プロファイルは、ブレクスピプラゾールの臨床的有用性をさらに裏付けている。・ブレクスピプラゾールは、適切な用量調節とモニタリングを行えば、入院患者および外来患者のいずれにおいても、第1選択薬として使用可能である。・ブレクスピプラゾールは、統合失調症のさまざまな症状領域の治療選択肢として、また、症状コントロールが不十分または許容できない有害事象のために抗精神病薬の変更を必要とする患者においても有用である。・統合失調症の再発予防には長期維持療法が不可欠である。ブレクスピプラゾールは、適切な用量で精神症状コントロールに使用された場合、長期的な安全性への懸念を最小限に抑えながら持続的な有効性を期待できる薬剤である。

60.

9種類の第2世代抗精神病薬に関連する血清プロラクチン上昇パターン

 抗精神病薬に伴うプロラクチン上昇は、統合失調症患者の服薬アドヒアランスおよび長期治療アウトカムに重大な影響を及ぼす。現在入手可能なデータでは、抗精神病薬を服用している患者におけるプロラクチン上昇のモニタリングとマネジメントを実践するには、不十分である。中国・上海交通大学のLei Zhang氏らは、実臨床における9種類の第2世代抗精神病薬(SGA)に関連するプロラクチン上昇パターンを調査し、プロラクチン上昇リスクを比較するため、本研究を実施した。CNS Drugs誌オンライン版2025年8月19日号の報告。 2007〜19年の中国の大規模メンタルヘルスセンターの入院患者における電子カルテのデータを用いて、レトロスペクティブコホート研究を実施した。対象は、統合失調症と診断され(ICD-10基準)、SGA治療を行い、血清プロラクチン値を測定した患者。9種類のSGA(amisulpride、リスペリドン、パリペリドン、ziprasidone、オランザピン、ペロスピロン、クエチアピン、クロザピン、アリピプラゾール)の多剤併用療法および単剤療法を含む投与量を収集した。主要アウトカムは、入院患者におけるプロラクチン上昇の発現率とした。9種類のSGAにおけるプロラクチン上昇のハザード比(HR)を比較するために、調整層別Cox比例ハザード回帰分析を用いた。さらに、これらのSGAについて、規定1日用量(DDD)法を用いて用量反応解析を実施した。用量区分は、0.6DDD/日未満(低用量)、0.6~1.1DDD/日未満(中用量)、1.1DDD/日以上(高用量)とした。 主な結果は以下のとおり。・分析対象者数は、統合失調症患者6,489例(平均年齢:35.1±14.2歳、男性患者数:3,396例[52.3%])。・非曝露群と比較し、プロラクチン上昇リスクと最も高い関連性が認められたSDAは、amisulpride(HR:2.76、95%信頼区間[CI]:2.12〜3.59)、リスペリドン(HR:2.70、95%CI:2.30〜3.16)、パリペリドン(HR:1.84、95%CI:1.37〜2.46)、ziprasidone(HR:1.36、95%CI:1.06〜1.76)であった。・対照的に、クエチアピン(HR:0.73、95%CI:0.61〜0.87)、クロザピン(HR:0.59、95%CI:0.46〜0.76)、アリピプラゾール(HR:0.30、95%CI:0.23〜0.37)は、リスクが低かった。・男性患者ではamisulprideが最もリスクが高く、女性患者ではリスペリドンが最もリスクが高かった。・7種類のSGAにおいて、異なるタイプの用量反応関係が検出された。 著者らは「入院患者を対象とした本コホート研究により、SGAに関連するプロラクチン上昇の異なるリスクと、それぞれの用量反応曲線が明らかになった。SGA治療を行なっている統合失調症患者におけるプロラクチン上昇の分析においては、性別と年齢を考慮する必要がある」とまとめている。

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