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41.

統合失調症の疾患経過に発症年齢が及ぼす影響

 中国・天津大学のQingling Hao氏らは、慢性期統合失調症患者の初回入院年齢に影響を及ぼす因子、とくに臨床的特徴および血清パラメータに焦点を当て、検討を行った。European Archives of Psychiatry and Clinical Neuroscience誌オンライン版2025年1月21日号の報告。 対象は、中国の精神科病院17施設より募集した慢性期統合失調症患者1,271例。初回入院年齢を含む人口統計学的データおよび臨床データを収集した。精神症状、未治療期間、各血清パラメータの評価を行った。これらの因子と初回入院年齢との関連を調査するため、統計分析を行った。 主な内容は以下のとおり。・初回入院年齢の平均は、28.07±9.993歳。・独身および精神疾患の家族歴を有する患者では、入院時の年齢がより若年であった。・自殺念慮および自殺行動のある患者では、そうでない患者と比較し、入院年齢がより若年であった。・回帰分析では、早期入院年齢の重要なリスク因子として婚姻状況(独身)、精神疾患の家族歴、自殺念慮または自殺行動が特定された。・一方、未治療期間、総タンパク質、LDL値は初回入院年齢と正の相関が認められ、抗精神病薬の投与量およびアルブミン値は負の相関が認められた。 著者らは「本調査により、慢性期統合失調症患者の初回入院と関連する重要な因子が特定された」とし「統合失調症患者の治療アウトカムを改善するためにも、高リスク患者に対する早期介入および適切なサポートの重要性が示唆された」としている。

42.

MCI高齢者に対するVR介入の有効性〜メタ解析

 アルツハイマー病は、根治不能な疾患であるが、軽度認知障害(MCI)の段階で仮想現実(VR)を用いた介入を行うことで、認知症の進行を遅らせる可能性がある。中国・上海交通大学のQin Yang氏らは、MCI高齢者におけるVRの有効性を明らかにするため、ランダム化比較試験(RCT)のシステマティックレビューおよびメタ解析を実施した。Journal of Medical Internet Research誌2025年1月10日号の報告。 2023年12月30日までに公表された研究をWeb of Science、PubMed、Embase、Ovidよりシステマティックに検索した。対象研究は、55歳以上のMCI高齢者の認知機能、気分、QOL、体力に対するVRベース介入を自己報告で評価したRCT。調査されたアウトカムには、一般的な認知機能、記憶力、注意力/情報処理速度、実行機能、言語機能、視空間能力、うつ病、日常生活能力、筋力パフォーマンス、歩行/バランスなどを含めた。2人の独立した担当者により、特定された論文と関連レビューの検索結果およびリファレンスリストをスクリーニングした。介入の構成要素と使用された実施および行動変化の手法に関するデータを抽出した。適格基準を満たした場合に、メタ解析、バイアスリスク感度分析、サブグループ解析を実施し、潜在的なモデレーターを調査した。エビデンスの質の評価には、GRADEアプローチを用いた。 主な結果は以下のとおり。・18研究、MCI高齢者722例を分析に含めた。・VR介入は、VR認知トレーニング、VR身体トレーニング、VR認知運動デュアルタスクトレーニングがさまざまな没入レベルで行われていた。・VR介入により、記憶力、注意力/情報処理速度、実行機能の有意な改善が認められた。【記憶力】標準化平均差(SMD):0.2、95%信頼区間(CI):0.02〜0.38【注意力/情報処理速度】SMD:0.25、95%CI:0.06〜0.45【実行機能】SMD:0.22、95%CI:0.02〜0.42・セラピストによる介入のないVR介入でも、記憶力だけでなく注意力/情報処理速度の改善が認められた。・VR認知トレーニングにより、MCI高齢者の注意力/情報処理速度の有意な改善が認められた(SMD:0.31、95%CI:0.05〜0.58)。・没入型VRは、注意力/情報処理速度(SMD:0.25、95%CI:0.01〜0.50)および実行機能(SMD:0.25、95%CI:0.00〜0.50)の改善に対し有意な影響を示した。・一般的な認知機能、言語機能、視空間能力、うつ病、日常生活能力、筋力パフォーマンス、歩行/バランスに対するVR介入効果は、非常に小さかった。・GRADEアプローチに基づくエビデンスの質は多様であり、特定の認知機能評価に対しては中程度、その他の評価では低であった。 著者らは「MCI高齢者に対するVR介入は、記憶力、注意力/情報処理速度、実行機能の改善に有効であることが示唆された。エビデンスの質は中程度〜低であったことから、これらの結果を確認し、新たな健康関連アウトカムについても検討するうえで、さらなる研究が必要とされる」と結論付けている。

43.

日本における精神科入院に対する向精神薬頓服処方モニタリングプログラムの有用性

 向精神薬の頓服処方は、精神疾患に対する通常の薬物療法に加えて、興奮や不眠などの症状に対し、必要に応じて使用される。しかし、向精神薬頓服処方の有効性は、関連するエビデンスの質が低く、多剤併用につながる懸念がある。北里大学の斉藤 善貴氏らは、精神科入院患者を対象に向精神薬頓服処方モニタリングプログラムを導入し、プログラム実施前後の処方の変化をレトロスペクティブに調査した。BMC Psychiatry誌2025年1月17日号の報告。 対象は、2021年7月〜2023年6月の精神科入院患者389例。向精神薬頓服処方モニタリングプログラムは、2022年7月に実施した。対象患者を、モニタリング群および非モニタリング群(対照群)に分類した。人工統計学的データ(年齢、性別、診断)、入院前および退院時の定期処方、入院前および退院時の向精神薬頓服処方、入院中の向精神病薬頓服処方数を両群間で比較した。向精神薬処方に関するデータは、向精神薬のカテゴリ別に集計した。ボンフェローニ補正多重比較法を用いて、有意水準5%を0.00167に設定した。 主な結果は以下のとおり。・退院時の向精神薬頓服処方率は、モニタリング群で9.3%であり、対照群(28.1%)と比較し有意に低かった。・入院中に向精神薬頓服処方を行った患者の割合は、モニタリング群で29.8%であり、対照群(64.5%)よりも有意に低かった。・対照群では、入院前後の定期処方された向精神薬の薬剤数に有意な変化が認められなかった。・しかし、モニタリング群では、入院前の定期処方された向精神薬も薬剤数2.47±1.90から退院時には1.87±1.24へと有意な減少が認められた。 著者らは「向精神薬頓服処方モニタリングプログラムは、定期処方を含む向精神薬の多剤併用リスクを軽減させる可能性が示唆された。向精神薬の頓服処方を最適化し、多剤併用からの脱却を目指すためにも、さらなる研究が求められる」と結論付けている。

44.

10代の若者が自殺に向かう理由―未遂者対象解析

 10代の若者が自殺行動に至る理由やその手段などの特徴が明らかになった。日本医科大学付属病院精神神経科の成重竜一郎氏らの研究の結果であり、詳細は「BMC Psychiatry」に11月6日掲載された。学校や家庭の問題、および自閉スペクトラム症が、この世代の自殺リスクを押し上げている可能性があるという。 国内の自殺者数は近年減少傾向にあるが、10代の若者の自殺者数は変化が乏しく、依然としてこの世代の死因のトップを占めている。10代の自殺は他の世代とは異なる特徴を持つことが海外から報告されている。しかし日本人のデータは少なく詳細が不明。これを背景として成重氏らは、2010~2021年に同院救命救急センターに収容され、救命し得た症例を対象とする詳細な解析を行った。自殺企図の原因・動機や精神疾患の有無などは、2人以上の経験豊富な精神科医の討議により推定・診断した。 上記期間の自殺未遂による患者数は860人だった。このうち、10代の自殺未遂の特徴を探るという意図から、最も近い世代である20代の自殺未遂者を比較対照群とした。各群の患者数は、10代が59人(全体の6.9%)、20代が216人(同25.1%)だった。 まず、10代と20代の合計275人の全体としての特徴を見ると、女性が68.7%と多く、精神科の受診歴ありが74.2%、自傷行為の既往ありが61.8%だった。自殺行動の手段としては過量服薬が67.3%、高所からの飛び降りが17.8%などであり、認められた精神疾患・発達特性は、気分障害23.6%、パーソナリティー障害21.5%、適応障害17.1%、統合失調症と他の精神病性障害12.0%、自閉スペクトラム症9.8%などだった。 これらを10代と20代で比較した場合、性別の分布や自傷行為の既往には有意差がなかったが、精神科の受診歴は20代に多く(10代62.7%対20代77.3%)、高所からの飛び降りによる自殺企図(同順に28.8%対14.8%)や自閉スペクトラム症(28.8%対4.6%)は10代に多いといった有意差が認められた。 自殺企図の原因・動機については、学校の問題(40.7%対4.6%)、家庭の問題(39.0%対16.7%)、家庭の問題のうちの親子関係(30.5%対8.8%)などは10代が有意に多く、一方、恋愛上の問題(5.1%対32.4%)、仕事上の問題(3.4%対20.8%)、経済的な問題(0.0%対12.0%)は20代が有意に多かった。 次に、先行研究において10代の自殺に関連が深いと報告されている事柄を説明変数とするロジスティック回帰分析にて、10代の自殺企図に関連のある因子を検討。その結果、学校の問題(オッズ比〔OR〕14.338〔95%信頼区間5.557~36.998〕)、自閉スペクトラム症(OR7.297〔同2.541~20.956〕)、家庭の問題(OR2.860〔1.355~6.038〕)という三つの因子がそれぞれ独立して自殺企図に関連していることが示された。 著者らは、本研究が都心部の単一施設のデータに基づく解析であるため、日本の他の地域とは傾向が異なる可能性があることなどを留意点として挙げた上で、「10代の若者は、ある程度自分で環境を変えることのできる成人と比べ、学校や家庭などの容易に変え難い環境で発生する困難から逃れることができず、その葛藤が自殺企図につながる可能性を示唆している。10代の自殺防止対策には、これらの要因を考慮することが重要である」と述べている。 なお、学校や家庭の問題以外に、自閉スペクトラム症が10代の自殺企図に関連しているという結果については、「自分を取り巻く状況を変えることが難しい場合に、代替策として自身の特性を抑え込み、周囲に適応しようとする『社会的カモフラージュ』を強いられることで、精神的な負担がさらに増大しやすくなるためではないか」との考察が加えられている。

45.

重度精神疾患患者における第2世代抗精神病薬の心代謝プロファイルの安全性比較

 重度の精神疾患のマネジメントにおけるアリピプラゾールの心代謝への安全性および有効性の比較に関するエビデンスは限られており、その結果は一貫していない。英国・ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンのAlvin Richards-Belle氏らは、他の第2世代抗精神病薬と比較したアリピプラゾールの心代謝プロファイルおよび有効性を調査した。PLoS Medicine誌2025年1月23日号の報告。 英国・プライマリケアにおけるアリピプラゾールとオランザピン、クエチアピン、リスペリドンを直接比較した観察エミュレーションを実施した。データは、Clinical Practice Research Datalinkより抽出した。対象は、2005〜17年に新たに抗精神病薬を使用した重度の精神疾患(双極症、統合失調症、その他の非器質性精神病)成人患者。2019年までの2年間、フォローアップを行った。主要アウトカムは、1年後の総コレステロール値(心代謝安全性)とした。主な副次的アウトカムは、精神科入院(有効性)とした。その他のアウトカムには、体重、血圧、すべての原因による治療中止、死亡率などを含めた。分析では、人口統計、診断、併用薬、心血管代謝パラメータなどのベースライン交絡因子で調整を行った。 主な結果は以下のとおり。・対象患者数は2万6,537例。その内訳は、アリピプラゾール群3,573例、オランザピン群8,554例、クエチアピン群8,289例、リスペリドン群6,121例。・年齢中央値は53歳(四分位範囲:42〜67)、女性の割合は55.4%、白人の割合は82.3%、統合失調症の割合は18.0%。・アリピプラゾール群における1年後の総コレステロール値は、オランザピン群(調整平均[aMD]:−0.03、95%信頼区間[CI]:−0.09〜0.02、p=0.261)、クエチアピン群(aMD:−0.03、95%CI:−0.09〜0.03、p=0.324)、リスペリドン群(aMD:−0.01、95%CI:−0.08〜0.05、p=0.707)と同等であった。・体重や血圧などの他の心代謝パラメータは、とくにオランザピン群と比較し、アリピプラゾール群のアウトカムが良好であることが示唆された。・入院歴で調整した後、アリピプラゾール群の精神科入院率は、オランザピン群(調整ハザード比[aHR]:0.91、95%CI:0.82〜1.01、p=0.078)、クエチアピン群(aHR:0.94、95%CI:0.85〜1.04、p=0.230)、リスペリドン群(aHR:1.01、95%CI:0.91〜1.12、p=0.854)と同等であった。 著者らは「重度の精神疾患患者に対するアリピプラゾール治療は、他の第2世代抗精神病薬と比較し、1年後の総コレステロール値は同等であったが、体重や血圧などの他の心代謝パラメータは良好であり、有効性の違いも認められなかった」とし「本結果は、新規の重度精神疾患患者に対する抗精神病薬の選択時において、臨床意思決定の根拠となるであろう」と結論付けている。

46.

統合失調症の新治療戦略、マイクロバイオーム治療に関するメタ解析

 統合失調症は、慢性的な精神疾患であり、さまざまな症状が認められる疾患である。その症状は、大きく陽性症状、陰性症状、認知機能に分類される。統合失調症の病因は多因子性であり、遺伝的、神経生物学的、環境的因子が複雑かつ相互に関与しており、神経生物学的因子は、さまざまな神経伝達物質システムの異常と関連していると考えられる。この多因子性の病因および神経生物学的因子により、症状や臨床所見が多種多様となる。現在の抗精神病薬による治療は、依然として課題に直面しており、新たな治療法が求められている。最近の研究では、統合失調症患者と健康対照者における腸内マイクロバイオームの違いが明らかになっており、統合失調症と胃腸の健康に複雑な関連があると報告され、マイクロバイオームを標的とした介入が、臨床症状の改善に寄与する可能性が示唆されている。ブラジル・サンパウロ大学のLucas Hassib氏らは、薬物療法中の統合失調症患者の臨床アウトカムに対するマイクロバイオーム治療の有効性を調査するため、システマティックレビューおよびメタ解析を実施した。Brain,Behavior, & Immunity-Health誌2024年12月11日号の報告。 主な内容は以下のとおり。・81件の研究より、バイアスリスクの低い7件のランダム化比較試験、2件の非盲検試験を含む9件の研究(417例)をメタ解析に含めた。・全体的な複合エフェクトサイズでは、マイクロバイオーム治療後の臨床症状の有意な改善が示されたが(Hedges'g=0.48、95%信頼区間:0.09〜0.88、p=0.004、I2=62.35%)、エフェクトサイズは小さく、研究の異質性は中程度であった。・臨床研究および前臨床研究において、とくにラクトバチルス属とビフィズス菌属によるマイクロバイオーム治療は、神経、免疫、代謝経路に作用し、脳腸軸を介して統合失調症の症状に効果的な影響をもたらす可能性が示唆されている。 著者らは「統合失調症の主要または補助的な治療におけるマイクロバイオーム治療の可能性を明らかにするためには、大規模かつ高品質な試験が求められる」としている。

47.

混合性うつ病の精神運動興奮に対するトラゾドンIVの有効性

 精神運動興奮は、混合性うつ病の困難な症状であり、多くの場合、臨床アウトカムを悪化させ、治療を複雑化させる。イタリア・シエナ大学のPietro Carmellini氏らは、混合性うつ病患者を対象に、トラゾドン静脈内投与(IV)の有効性および忍容性を評価するため、レトロスペクティブ研究を実施した。International Clinical Psychopharmacology誌オンライン版2025年1月13日号の報告。 対象は、混合性うつ病入院患者97例。症状重症度は、Montgomery Asbergうつ病評価尺度(MADRS)、ヤング躁病評価尺度(YMRS)、ハミルトン不安評価尺度(HAM-A)、7項目一般化不安障害質問票(GAD-7)、臨床全般印象度-重症度(CGI-S)を用いて評価した。 主な内容は以下のとおり。・治療初期において、興奮、不安、易怒性の有意な低減が観察された。・相関分析では、トラゾドンIVの投与量とMADRS(r=−0.23、p<0.05)、GAD-7の項目5(r=−0.27、p<0.001)、CGI-S(r=−0.22、p<0.05)のスコア改善との間に有意な負の相関が認められた。・治療期間においても、GAD-7の項目5(r=−0.29、p<0.001)、CGI-S(r=−0.27、p<0.001)のスコア改善と負の相関が認められ、これは治療期間が長くなると効果が低減する可能性を示している。・回帰分析では、投与量ではなく治療期間がGAD-7の項目5およびCGI-Sのスコア改善に有意な影響を及ぼすことが示唆された。・トラゾドンは、忍容性が良好であり、軽度の副作用が11.3%の患者でみられた。 著者らは「混合性うつ病の興奮および関連症状の低減に対するトラゾドンIV治療、とくに初期段階での治療が有効であることを示唆しており、併せて治療期間を最適化することの重要性が示された。今後の研究において、個別化された投与戦略や長期アウトカムを調査する必要がある」としている。

48.

日本における妊娠中の抗うつ薬継続投与、約10年の変化は

 近年、複数の日本の学会より周産期の抗うつ薬治療に関する治療ガイドラインが発表されており、最新の動向や妊娠中の抗うつ薬継続投与を評価し、出産前抗うつ薬処方を最適化することが重要であると考えられる。東北大学の石川 智史氏らは、日本での2012〜23年における妊娠中の抗うつ薬処方の変化を評価した。Journal of Affective Disorders誌オンライン版2025年1月10日号の報告。 対象は、2012〜23年に日本で出産した女性。妊娠中の抗うつ薬処方率、傾向、継続性について、大規模行政レセプトデータを用いて評価した。年次変化は、出産時女性の年齢に合わせて調整された多変量ロジスティック回帰モデルを用いて評価した。 主な結果は以下のとおり。・出産時の平均年齢が32.5歳であった女性17万9,797例のうち、妊娠中に抗うつ薬を処方されていた女性は1,870例(1.04%)。・抗うつ薬処方率は、2012年の0.63%から2023年の1.67%へと増加していた(p<0.0001)。・妊娠初期に抗うつ薬が処方されていた女性1,730例(0.96%)のうち、妊娠中に抗うつ薬処方を継続していた女性は670例(38.7%)であり、抗うつ薬継続率は2012年の19.51%から2023年の50.70%へと有意な増加が認められた(p<0.0001)。・妊娠中に最も処方されていた抗うつ薬クラスは、セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)であり(0.74%)、なかでもセルトラリン(0.33%)およびエスシタロプラム(0.23%)の有意な増加が認められた。 著者らは「今回の評価には、妊娠中絶または死産に至った女性に対する抗うつ薬処方は評価されていない」としながらも「妊娠中の抗うつ薬処方および処方継続が一般的になっていることを考慮すると、妊娠前のケアおよび共同意思決定(Shared Decision Making:SDM)の促進を含め、ガイドラインの内容が専門医および出産年齢女性により広まることが求められる」と結論付けている。

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ブレクスピプラゾールは統合失調症患者の精神症状だけでなくQOLも改善

 統合失調症治療では、感情的、身体的、社会的、認知機能的な領域にわたる健康的な生活への関与と関連する因子の向上が重要である。カナダ・カルガリー大学のZahinoor Ismail氏らは、統合失調症患者の健康的な生活への関与に対するブレクスピプラゾールの短期的および長期的な影響を評価するため、臨床試験データの事後分析を行った。Current Medical Research and Opinion誌オンライン版2025年1月3日号の報告。 成人統合失調症患者に対するブレクスピプラゾールの有効性および安全性を評価した臨床試験のデータを分析した。臨床試験には、6週間のランダム化二重盲検プラセボ対照試験3件(1,385例)、52週間の非盲検延長試験2件(408例)を含めた。患者の生活への関与は、妥当性が証明されている陽性・陰性症状評価尺度(PANSS)の14のサブセットを用いて測定した(スコア範囲:最高14〜最低98)。平均スコアの変化および治療反応率(臨床的に重要な最小差異推定値5ポイント以上および10ポイント以上)を算出した。 主な結果は以下のとおり。・ベースラインから6週目までの患者の生活への関与において、ブレクスピプラゾール群(2〜4mg/日)は、プラセボ群と比較し、より大きな改善が認められた(95%信頼区間:−3.57〜−1.58、p<0.001、エフェクトサイズCohen's d:0.28)。【ブレクスピプラゾール群】最小二乗平均差変化:−8.3±0.3(868例)【プラセボ群】最小二乗平均差変化:−5.7±0.4(517例)・これらの改善は、ブレクスピプラゾール1〜4mg/日の58週間投与においても、維持された(399例)。・6週目における治療反応率は、5ポイント以上の改善ではブレクスピプラゾール群71.6%、プラセボ群58.0%(p<0.001)、10ポイント以上の改善ではブレクスピプラゾール群43.5%、プラセボ群32.8%(p<0.001)であった。・58週目(179例)におけるブレクスピプラゾール群の治療反応率は、5ポイント以上の改善で90.5%、10ポイント以上の改善で78.2%であった。 著者らは「統合失調症に対するブレクスピプラゾール治療は、精神症状の改善だけでなく、重要なアウトカムである患者の生活への関与を改善する可能性を秘めていることが明らかとなった」と結論付けている。

50.

毎日どのくらい歩くとうつ病予防に効果的か〜メタ解析

 1日の歩行は、心血管イベントや全死亡リスクを低下させ、保護的に作用することが、近年のエビデンスで報告されている。しかし、歩数に基づく健康アウトカムには、追加の推奨事項が含まれる可能性がある。スペイン・Universidad de Castilla-La ManchaのBruno Bizzozero-Peroni氏らは、一般成人における1日の歩数とうつ病との関連を総合的に評価した。JAMA Network Open誌2024年12月2日号の報告。 2024年5月18日までに公表された研究をPubMed、PsycINFO、Scopus、SPORTDiscus、Web of Scienceデータベースをシステマティックに検索し、メタ解析を実施した。対象研究には、身体活動、1日の歩数、うつ病などに関連するキーワードで検索した観察研究を含めた。補足的な検索方法も適用した。研究データには、客観的に測定された1日の歩数、うつ病に関するデータを含めた。PRISMA、MOOSEガイドラインに従い、システマティックレビューおよびメタ解析を実施した。独立した2人のレビューアーにより、データを抽出した。プールされたエフェクトサイズ(相関係数、標準化平均差[SMD]、リスク比[RR])、95%信頼区間(CI)の推定には、Sidik-Jonkmanランダム効果モデルを用いた。 主な結果は以下のとおり。・18歳以上の成人9万6,173例(平均年齢の範囲:18.6±0.6〜91.2±1.6歳)を対象とした33件の研究(横断研究:27件、パネル研究:3件、プロスペクティブコホート研究:3件)をメタ解析に含めた。・横断研究およびパネル研究において、1日の歩数とうつ病との逆相関が認められた。・横断研究のSMDでは、1日5,000歩未満と比較し、5,000歩以上でうつ病リスクの有意な減少が認められた。【1日1万歩以上】SMD:−0.26、95%CI:−0.38〜−0.14【1日7,500〜9,999万歩】SMD:−0.27、95%CI:−0.43〜−0.11【1日5,000〜7,499万歩】SMD:−0.17、95%CI:−0.30〜−0.04・プロスペクティブコホート研究の統合推定値では、1日7,000歩以上は、7,000歩未満と比較し、うつ病リスクが低いことが示唆された(RR:0.69、95%CI:0.62〜0.77)。・1日の歩数が1,000歩増加することは、うつ病リスク低下と関連していた(RR:0.91、95%CI:0.87〜0.94)。 著者らは「本メタ解析により、1日の歩数が多いほど抑うつ症状が少ないことが示唆された。成人のうつ病リスクを軽減するための日常的な歩行の潜在的な保護的役割を明らかにするためには、さらなるプロスペクティブコホート研究が必要とされる」と結論付けている。

51.

自閉スペクトラム症と統合失調症の鑑別に有用な評価尺度は

 統合失調症と自閉スペクトラム症(ASD)は、別々の疾患として認識されているが、症状の類似性により鑑別診断が困難な場合が少なくない。昭和大学の中村 暖氏らは、統合失調症とASDの症状について類似点と相違点の特定、より有用で客観的な鑑別診断法の確立、統合失調症患者におけるASD特性を明らかにすることを目的に、本研究を実施した。Frontiers in Psychiatry誌2024年12月18日号の報告。 対象は統合失調症患者40例(女性:13例、平均年齢:34±11歳)およびASD患者50例(女性:15例、平均年齢:34±8歳)。自閉症診断観察尺度第2版(ADOS-2)およびその他の臨床尺度を用いて評価を行った。 主な結果は以下のとおり。・ADOS-2モジュール4および改訂版では、統合失調症とASDの鑑別は困難であったが、A7、A10、B1、B6、B8、B9を組み合わせた予測モデルは、両疾患を鑑別するうえで、優れた精度を示した。・ADOS-2は統合失調症の偽陽性率が高く、統合失調症患者においてADOS-2すべてのドメインおよび合計スコアと陽性・陰性症状評価尺度(PANSS)の陰性症状スコアとの間に正の相関が認められた。・ADOS-2アルゴリズムにおいて、自閉スペクトラム症のカットオフ値が陽性の患者は、陰性の患者よりも、PANSS陰性症状スコアが有意に高かった。・ロジスティック回帰分析では、ADOS-2アルゴリズム尺度の陽性度は、PANSS陰性症状スコアのみを使用して予測可能なことが明らかとなった。 著者らは「ASDと統合失調症の鑑別には、ADOS-2と複数の項目を組み合わせることにより実現可能であることが示唆された」とし「本知見は、ASDと統合失調症の治療戦略の開発に役立つ可能性がある」と結論付けている。

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医師による身体活動量の評価は慢性疾患の予防につながる

 医師が患者の身体活動量について尋ねることは、慢性疾患の予防に役立つ可能性があるようだ。米アイオワ大学ヘルスケア医療センターの患者を対象にした調査結果から、中強度から高強度の身体活動を週に150分以上というガイドラインの推奨を満たしていた人では、高血圧や心疾患、糖尿病など19種類の慢性疾患の発症リスクが有意に低いことが示された。論文の上席著者である、アイオワ大学健康・人間生理学分野のLucas Carr氏らによるこの研究結果は、「Preventing Chronic Disease」1月号に掲載された。 この研究でCarr氏らは、2017年11月1日から2022年12月1日の間にアイオワ大学ヘルスケア医療センターで健康診断を受けた患者を対象に、Exercise Vital Sign(EVS)質問票を用いた身体活動量のスクリーニングを受けた患者と受けていない患者の健康状態を比較した。また、スクリーニングで測定された身体活動量の違いに基づく健康状態の比較も行った。 EVS質問票は、「中強度から高強度の身体活動(早歩きなど)を週に平均何日程度行っていますか」と「中強度から高強度の身体活動を平均何分間行っていますか」の2つの質問で構成されている。Carr氏は、「この2つの質問には、通常は30秒もあれば回答できるので、患者の診察の妨げになることはない。それにもかかわらず、患者の全体的な健康状態について多くの情報を得ることができる」と述べている。 Carr氏らはまず、EVSの有効なデータがそろった患者7,261人と、スクリーニングを受けていない患者3万3,445人の比較を行った。その結果、身体活動量のスクリーニングを受けた患者は、受けていない患者に比べて、肥満(15%対18%)、うつ病(17%対19%)、高血圧(22%対28%)、合併症のない糖尿病(5.9%対8.5%)、合併症を伴う糖尿病(4.4%対7.3%)、貧血(4.6%対6.1%)、甲状腺機能低下症(9.3%対10.0%)、うっ血性心不全(1.1%対1.9%)、および中等度の腎不全(1.8%対2.5%)の発症率が有意に低いことが明らかになった。 次に、身体活動量のスクリーニングを受けた7,261人の患者を身体活動量に基づき、十分な身体活動量(4,382人、60%)、不十分な身体活動量(2,607人、36%)、身体活動を全く行わない(272人、4%)の3群に分けて健康状態を比較した。その結果、十分な身体活動量の群は、不十分な身体活動量の群や身体活動を全く行わない群に比べて、肥満、うつ病、合併症のない/合併症を伴う高血圧・糖尿病、弁膜症、うっ血性心不全など、身体活動不足に関連する19種類の併存疾患のリスクが低いことが示された。 こうした結果に基づき研究グループは、医師に対し、患者に身体活動量について質問し、活動量を増やす必要がある患者には活動量を増やすように促すことを推奨している。Carr氏は、「現在の医療環境では、患者の身体活動量を増やすために医師が支援を行っても、それに対する報酬を得ることは難しい。身体活動量の不足を報告している患者に対しては、身体活動の処方や地域の健康専門家などの支援サービスと簡単につながるための選択肢が必要だ」と述べている。 Carr氏は、「この研究は、たとえ短時間であっても、患者と身体活動習慣について話すことの大切さを強調している」との見方を示す。なお、2024年12月に「Journal of Physical Activity and Health」に発表した関連研究でCarr氏らは、医師が患者への身体活動のカウンセリングを行った場合、保険会社が医師に95%近くの確率で払い戻しを行っていることを明らかにしている。同氏は、「われわれの研究結果は、推奨されている身体活動に関する請求コードを医療従事者が申請すると、高確率で払い戻しが行われていることを示唆している。この結果は、身体活動量の評価とカウンセリングサービスを提供する取り組みの推進を支持するものだ」と結論付けている。

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副腎性クッシング症候群〔Adrenal Cushing's syndrome〕

1 疾患概要■ 定義クッシング症候群は、副腎皮質から慢性的に過剰産生されるコルチゾールにより、中心性肥満や満月様顔貌といった特徴的な臨床徴候を示し、糖・脂質代謝異常、高血圧などの合併症を伴う疾患である。手術により治癒が期待できる内分泌性高血圧症の1つである。 広義のクッシング症候群は副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)依存性クッシング症候群(下垂体性のクッシング病や異所性ACTH産生腫瘍など)とACTH非依存性クッシング症候群(副腎性クッシング症候群)に大別され、本稿では副腎性クッシング症候群について解説する。■ 疫学厚生省特定疾患副腎ホルモン産生異常症調査研究班による全国実態調査では、日本全国で1年間に約50症例の副腎性クッシング症候群の発症が報告されている。CT検査などが行われる機会が増えた現在では、副腎偶発腫を契機に診断される症例が増加していると考えられる。副腎腺腫によるクッシング症候群の男女比は1: 4と女性に多く、30~40代に好発する。■ 病因副腎皮質の腺腫やがんなどにおいてコルチゾールが過剰産生される。その分子メカニズムとしてcAMP-プロテインキナーゼA(protein kinase A:PKA)経路およびWNT-βカテニンシグナル経路の異常が示されている。顕性クッシング症候群を生じる症例の約85%で症例の副腎皮質腺腫において、PKAの触媒サブユニットをコードするPRKACA(protein kinase A catalytic subunit α)遺伝子、およびアデニル酸シクラーゼを活性化することによりcAMP産生に関わるタンパク質をコードするGNAS(α subunit of the stimulatory G protein)遺伝子、WNTシグナル伝達経路の細胞内シグナル伝達因子であるβカテニンをコードするCTNNB1(β catenin)遺伝子の変異を認めることが報告されている。■ 症状クッシング症候群に特異的な症状として、中心性肥満(顔、頸部、体幹のみの肥満)、満月様顔貌、鎖骨上および肩甲骨上部の脂肪沈着(野牛肩:buffalo hump)、皮膚の菲薄化、皮下溢血、赤色皮膚線条、近位筋萎縮による筋力低下があり「クッシング徴候」と言う。その他、耐糖能異常、高血圧、脂質異常症や性腺機能低下症、骨粗鬆症、精神障害、ざ瘡、多毛を認めることもある。■ 分類副腎腫瘍によるもの、副腎結節性過形成によるものに大別される。副腎腫瘍には副腎皮質腺腫、副腎皮質がんがあり、副腎結節性過形成にはACTH非依存性大結節性過形成(primary bilateral macronodular adrenal hyperplasia:PBMAH)、原発性色素性結節状副腎皮質病変(primary pigmented nodular adrenocortical disease:PPNAD)が含まれる。顕性クッシング症候群のうちPBMAH、PPNADの頻度は併せて5.8%とまれである。また、クッシング徴候を欠くがコルチゾール自律分泌を認める症例を「サブクリニカルクッシング症候群」と言う。■ 予後副腎皮質腺腫によるクッシング症候群は、治療によりコルチゾールを正常化できた症例では同年代とほぼ同程度の予後が期待できる。治療しなければ、感染症や心血管疾患のリスクが増加し、予後に影響することが示されており、早期発見、治療が重要である。一方、副腎皮質がんはきわめて悪性度が高く、急速に進行し、肝臓や肺などへの遠隔転移を認めることも多く予後不良である。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)クッシング徴候や副腎偶発腫、また、治療抵抗性の糖尿病、高血圧、年齢不相応の骨粗鬆症を認めた際は、クッシング症候群を疑い精査を行う。まず、病歴、服薬状況の問診によりステロイド投与による医原性クッシング症候群を除外し、血中コルチゾール濃度に影響を及ぼす薬剤(表)の使用を確認する。表 クッシング症候群の診断に影響する可能性がある薬剤(左側は一般名、右側は商品名)画像を拡大する血中コルチゾール濃度は視床下部から分泌されるCRHの調節により早朝に高値になり、夜間には低値になる日内変動を示す。クッシング症候群ではCRHの調節を受けないため、コルチゾールの日内変動は消失し、デキサメタゾン内服により抑制されない。そのため、24時間尿中遊離コルチゾール高値、デキサメタゾン1mg抑制試験で翌朝血清コルチゾール値≧5μg/dL、夜間血清コルチゾール濃度≧5μg/dLのうち、2つ以上あればクッシング症候群と診断する。さらに早朝の血漿ACTH濃度を測定し、測定感度以下(<5μg/mL)に抑制されていれば副腎性クッシング症候群と診断する。図に診断のアルゴリズムを示す。図 クッシング症候群の診断アルゴリズム画像を拡大するただし、うつ病、慢性アルコール依存症、神経性やせ症、グルココルチコイド抵抗症、妊娠後期などでは視床下部からのCRH分泌増加による高コルチゾール血症(偽性クッシング症候群)を呈することがあり、抗てんかん薬内服ではデキサメタゾン抑制試験で偽陽性を示すことがあるため、注意が必要である。副腎腫瘍の有無の検索のため腹部CT検査を行う。副腎皮質腺腫は脂肪成分が多いため、単純CT検査で辺縁整、内部均一な10HU未満の低吸収値を認める。直径4cm以上で境界不明瞭、内部が出血や壊死で不均一な腫瘍の場合は副腎皮質がんを疑い、MRIやFDG-PETなどさらなる精査を行う。PBMAHでは著明な両側副腎の結節性腫大を認め、PPNADでは副腎に明らかな腫大や腫瘍を認めない。コルチゾールの過剰産生の局在診断のため131I-アドステロール副腎皮質シンチグラフィを行う。片側性副腎皮質腺腫によるクッシング症候群では、健側副腎に集積抑制を認める。3 治療 (治験中・研究中のものも含む)副腎皮質腺腫では腹腔鏡下副腎摘出術を施行することで根治が期待できる。術後、対側副腎によるコルチゾール分泌の回復までに6ヵ月~1年を要するため、その間は経口でのグルココルチコイド補充を行う。手術困難な症例や、片側副腎摘出術後の再発例、著明な高コルチゾール血症による糖代謝異常や精神異常、易感染性のため術前に早急なコルチゾールの是正が必要な症例に対しては、副腎皮質ステロイドホルモン合成阻害薬であるメチラポン(商品名:メトピロン)、トリロスタン(同:デソパン)、ミトタン(同:オペプリム)が投与可能である。11β-水酸化酵素阻害薬であるメチラポンは可逆性で即効性があることから最もよく用いられている。副腎皮質がんでは開腹による腫瘍の完全摘出が第1選択であり、術後アジュバント療法として、または手術不能例や再発例に対しては症状軽減のためミトタンを投与する。ミトタンは約25~30%の奏効率とされているが、副作用も少なくないため有効血中濃度を維持できない症例も多い。PBMAHでは、症状が軽微な症例や腫大副腎の左右差もあり、合併症などを考慮して症例ごとに片側あるいは両側副腎摘出術や薬物療法による治療方針を決定する。一部の症例でみられる異所性受容体に対する阻害薬が有効な場合もあるが、長期使用による成績は報告されていない。PPNADでは、顕性クッシング症候群を発症することが多いため、両側副腎全摘が第1選択となる。サブクリニカルクッシング症候群では、副腎腫瘍のサイズや増大傾向、合併症を考慮して症例ごとに経過観察または片側副腎摘出術を検討する。4 今後の展望唾液コルチゾール濃度は、外来での反復検査が可能で、遊離コルチゾール濃度との相関が高いことが知られており、欧米では、夜間の唾液コルチゾール濃度がスクリーニングの初期検査として推奨されているが、わが国ではまだ保険適用ではなくカットオフ値の検討が行われておらず、今後の課題である。また、2021年3月に11β-水酸化酵素阻害薬であるオシロドロスタット(同:イスツリサ)の使用がわが国で承認された。メチラポンと比べて服用回数が少なく、多くの症例で迅速かつ持続的にコルチゾールの正常化が得られるとされており、長期使用成績の報告が待たれる。5 主たる診療科内分泌内科※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報日本内分泌学会(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)厚生省特定疾患副腎ホルモン産生異常症調査研究班 副腎ホルモン産生異常に関する調査研究(医療従事者向けのまとまった情報)1)出村博ほか. 厚生省特定疾患「副腎ホルモン産生異常症」調査研究班 平成7年研究報告書. 1996;236-240.2)Lacroix A, et al. Lancet. 2015;386:913-927.3)Yusuke S, et al.Science. 2014;344:917-920.4)Rege J, et al. J Clin Endocrinol Metab. 2022;107:e594-e603.5)日本内分泌学会・日本糖尿病学会 編. 内分泌代謝・糖尿病内科領域専門医研修ガイドブック. 診断と治療社;2023.p.182-187.6)Nieman Lk, et al. J Clin Endocrinol Metab. 2008;93:1526-1540.公開履歴初回2025年1月23日

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映画「クワイエットルームにようこそ」(その2)【家族の同意だけでいいの?その問題点は?(強制入院ビジネス)】Part 1

今回のキーワード障害者権利条約医療保護入院制度法律の抜け穴判断基準入院費精神医療審査会家族調整市町村長同意前回(その1)は、強制入院の1つである医療保護入院について詳しく説明しました。実は、この医療保護入院は、もはや世界で日本だけにしかなく、障害者権利条約に従っていないと国連から改善勧告がなされています1)。また、精神科医が所属する基幹学会(日本精神神経学会)からは、すでに医療保護入院を廃止すべきであるとの見解が示されています2)。つまり、日本ならではの医療保護入院という制度が障害者への人権侵害を招いており、しかもそれに私たちがあまり気付いていないという衝撃の事実です。どういうことでしょうか?今回(その2)は、映画「クワイエットルームにようこそ」を通して、医療保護入院制度の問題点を明らかにして、強制入院ビジネスの不都合な真実に迫ります。医療保護入院制度の問題点とは?まず、医療保護入院制度の問題点を、病院、家族、地域の3つの立場からそれぞれ明らかにしてみましょう。(1)強制入院の裁量権が病院に独占明日香が強制入院させられた精神科病院は、民間病院でした。実際に、精神科病院の8割以上は民間病院です。よくよく考えると、本来、行動制限のような人権侵害ができるのは警察などの公権力に限られています。しかし、精神障害に限っては、私人(民間病院)がほぼ独断ですることが可能になっています。1つ目の問題点は、強制入院の裁量権が精神科病院に独占されていることです。それを可能にする「法律の抜け穴」を、大きく3つ挙げてみましょう。a.医療保護入院の判断基準が曖昧明日香が入院していた女子病棟には、さまざまな人が入院していました。たとえば、おそらく統合失調症で、何らかの妄想によって自分の髪の毛を燃やしたり暴れる人です。この場合は、措置入院の要件にもなっている「自傷他害のおそれ」があるため、強制入院が必要であると多くの人が納得できます。一方、摂食障害で、食事を食べない、食べても吐くために、超低体重になっている人も何人かいました。確かに、摂食という点では自立不全ではありますが、程度の問題になるため、自傷他害ほど白黒つけられません。また、判断能力が保たれている場合は、本人の意思で体重を減らしていることになります。本人の意思でお酒を飲み続けるアルコール依存症と、「本人の意思」という生き方の問題(嗜癖)としては同じです。ちなみに、アルコール依存症だけではさすがに強制入院の対象になりません。なお、摂食障害が嗜癖である理由については、関連記事1をご覧ください。1つ目の「法律の抜け穴」は、医療保護入院の判断基準が曖昧であることです。その1でも説明しましたが、強制入院の要件は、自傷、他害、自立不全によって「自他への不利益が差し迫っている」ことです。自傷と他害は明確ですが、自立不全は程度の問題になるため、明確ではありません。そもそも、根拠となる精神保健福祉法では「医療及び保護のため」としか記載されていません。つまり、入院が必要と精神科医(精神保健指定医)が独断し、家族が同意すれば、誰でも強制入院させることができます。これは、実はとんでもない権力です。しかも、現在では入院したあとに家族が同意を撤回しても、医療保護入院は継続できるという行政解釈がなされてしまいました3)。ますますとんでもない状況になっています。次のページへ >>

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25種類の治療抵抗性うつ病治療の有効性比較〜ネットワークメタ解析

 オーストリア・ウィーン医科大学のJohan Saelens氏らは、治療抵抗性うつ病に対するさまざまな抗うつ薬治療を比較し、エビデンスに基づく治療選択を促進するため、システマティックレビューおよびネットワークメタ解析を実施した。Neuropsychopharmacology誌オンライン版2024年12月30日号の報告。 2つ以上の抗うつ薬試験で治療反応が認められなかった成人うつ病を対象に実施されたランダム化比較試験(RCT)を対象研究とした。2023年4月13日までに公表された研究をPubMed、Cochrane Library、Embaseより検索した。すべてのRCTは、研究群が10例以上で構成され、双極性うつ病または精神病性うつ病患者は除外された。研究の質の評価には、Cochrane Risk of Bias Tool-2を用いた。主要アウトカムは、治療反応率とした。ランダム効果ネットワークメタ解析を用いてオッズ比(OR)を算出した。 主な内容は以下のとおり。・8,234件のうち69件のRCTを分析に含めた。・対象患者数は1万285例(女性:5,662例、男性:4,623例)、25種類の治療法が含まれた。・25種類の治療法のうちプラセボまたは対照治療よりも高い治療反応を示した治療法は、電気けいれん療法(ECT)、ミノサイクリン、シータバースト刺激(TBS)、反復経頭蓋磁気刺激(rTMS)療法、ケタミン、アリピプラゾールのみであった。・ORの範囲は、アリピプラゾールの1.9(95%信頼区間[CI]:1.25〜2.91)からECTの12.86(95%CI:4.07〜40.63)であった。・中程度の異質性が認められた(I2:47.3%、95%CI:26.8〜62.0)。・対象研究のうち、バイアスリスクが高い研究は12.5%、低い研究は28.13%、懸念のある研究は59.38%と評価された。 著者らは「治療抵抗性うつ病の治療法の中には、さまざまなアウトカムに対し強力な治療効果を示すもの(ECT、TBS、rTMS、ケタミン)もあれば、一部のアウトカムに有用なアウトカムを示すもの(ミノサイクリン、アリピプラゾール)もある」とし「これらの知見は、治療抵抗性うつ病に対するエビデンスに基づく治療選択の指針となる可能性がある」としている。

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出産後の抜け毛の量が育児中の不安に独立して関連

 出産後に抜け毛が多い女性は不安が強く、交絡因子を調整後にも独立した関連のあることが明らかになった。東京科学大学病院周産・女性診療科の廣瀬明日香氏らの研究によるもので、詳細は「The Journal of Obstetrics and Gynaecology Research」に10月27日掲載された。 個人差があるものの、出産後女性の多くが抜け毛を経験し、一部の女性は帽子やかつらを使用したり外出を控えたりすることがあって、メンタルヘルスに影響が生じる可能性も考えられる。産後の脱毛症の罹患率などの詳細は不明ながら、廣瀬氏らが以前行った調査では、育児中女性の91.8%が「抜け毛が増えた」と回答し、73.1%がそれに関連する不安やストレスを感じていることが明らかにされている。今回の研究では、その調査データをより詳しく解析し、産後脱毛と育児中のメンタルヘルスとの関連を検討した。 2021年6月~2022年4月に東京医科歯科大学病院(現在は東京科学大学病院)と東京都立大塚病院で出産した女性1,579人に対して、出産後10~18カ月時点にオンライン調査への回答協力を依頼。回答を得られた中から、多胎妊娠や出産以前に脱毛症の既往のあった女性を除外した331人を解析対象とした。なお、季節による脱毛量の変化を考慮し、回答依頼は8カ月の間隔をおいて2回実施された。 主な調査項目は、産後の脱毛量の質問(全くない/少し/かなり/非常に多いの四者択一)と、Whooleyの質問票、2項目の全般性不安障害質問票(GAD-2)、エジンバラ産後うつ病質問票(EPDS)、およびアテネ不眠尺度(AIS)によるメンタルヘルス状態の評価。解析対象者の主な特徴は、出産時年齢が34.5±4.5歳で、経産婦が27.2%、経腟分娩65.8%であり、脱毛量は「全くない」8.2%、「少し」30.8%、「かなり」46.5%、「非常に多い」14.5%だった。 メンタルヘルス状態については、Whooleyの質問票の「気分が落ち込む」に33.5%、「何をしても楽しくない」に22.4%、GAD-2の「緊張や不安、神経過敏を感じる」に28.7%、「心配をコントロールできない」に16.6%が「はい」と回答していた。EPDSは、総合スコアが30点満点中6.5点、不安とうつのサブスケールはそれぞれ9点満点中2.9点、3.7点であり、AISは24点満点中6.8点だった。また、脱毛が「全くない」と回答した人以外に脱毛関連の不安やストレスを質問したところ、「全くない」が26.9%、「少し」が47.2%、「かなり」が18.9%、「非常に強い」が7.0%だった。 脱毛量とメンタルヘルス関連指標との関係性を単変量解析で検討した結果、脱毛量が「非常に多い」群では「全くない」群に比べて、GAD-2の「緊張や不安、神経過敏を感じる」の該当者が有意に多かった(オッズ比〔OR〕4.47〔95%信頼区間1.34~14.93〕、P=0.01)。また有意水準未満ながら、脱毛量が「非常に多い」群はGAD-2の「心配をコントロールできない」(OR4.17〔同0.86~20.26〕、P=0.08)の該当者が多く、EPDSの評価に基づく不安が強い傾向が見られた(係数1.06〔-0.14~2.25〕、P=0.08)。 上記の解析で有意な関連の見られたGAD-2の「緊張や不安、神経過敏を感じる」を従属変数とし、出産時年齢、分娩方法、不妊治療、妊娠糖尿病、妊娠高血圧症候群、出生時体重、授乳状況、および脱毛量などを独立変数とするロジスティック回帰分析を行ったところ、脱毛量が「非常に多い」こと(調整オッズ比〔aOR〕4.86〔1.21~19.53〕、P=0.026)と、不眠症状(AISが1高いごとにaOR1.26〔1.17~1.35〕、P<0.001)が、それぞれ独立した正の関連因子として抽出された。なお、経産婦であることは、有意な保護的因子として示された(aOR0.53〔0.36~0.80〕、P=0.002)。 著者らは本研究を、「育児中の女性における産後の抜け毛とメンタルヘルスとの関連を示した初のエビデンスである」とした上で、「産後の脱毛量の多さは、GAD-2で評価した不安と独立した関連が認められる」と結論付けている。なお、脱毛を経験した女性がより積極的に回答した可能性があることによる選択バイアスの存在や、横断研究のため因果関係は不明といった限界点とともに、「産後の不安が強い女性ほど、脱毛量をより多く感じやすい可能性もある」との考察が加えられている。

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グルタミン酸調整薬evenamideは治療抵抗性統合失調症の新たな選択肢となるのか〜国際第III相臨床試験

 グルタミン酸調整薬evenamideは、治療効果不十分または治療抵抗性の統合失調症に対する併用薬として、現在第III相臨床試験が行われている。スイス・Anand Pharma ConsultingのRavi Anand氏らは、第2世代抗精神病薬で治療効果不十分な慢性期統合失調症患者を対象に、evenamide併用療法の有効性、安全性、忍容性を評価するため、国際第III相臨床試験を実施した。Neuropharmacology誌2025年3月号の報告。 対象は、第2世代抗精神病薬の安定した用量で2年以上治療を行っているが、依然として症状が残存する(PANSS:70〜85、CGI-S:4〜6、主な症状:陽性症状)18歳以上の慢性期統合失調症外来患者(DSM-V基準)。経口evenamide(30mg1日2回)併用療法による有効性、安全性、忍容性を評価するため、4週間のプロスペクティブランダム化二重盲検プラセボ対象試験を実施した。対象患者は、21日間のスクリーニング期間終了後、evenamide群またはプラセボ群に1:1でランダムに割り付けられた。主要アウトカムは、PANSS合計スコア(毎週評価)のベースラインからの変化とし、主要エンドポイントは4週時点で評価した。 主な結果は以下のとおり。・対象患者291例のうち、11例(3.8%)は早期中止に至った。・evenamide併用療法は、すべての有効性アウトカムにおいて、プラセボよりも統計学的に有意な改善が認められた(29日目のPANSS合計スコアの絶対差:2.5、p<0.05、Cohen's d effect size=0.33)。・臨床的に意味のあるベネフィットとの関連も認められ、忍容性も良好であった。 著者らは「第2世代抗精神病薬で治療効果が不十分な慢性期統合失調症患者に対するevenamide併用療法の有効性および臨床的に意味のあるベネフィットが認められたことは、新たな治療パラダイムとなりうる可能性を示唆している」と結論付けている。

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映画「クワイエットルームにようこそ」(その1)【なんで精神科病院に入院しなきゃいけないの?なんで閉じ込められたり縛られたりするの?(強制入院)】Part 1

今回のキーワード医療保護入院措置入院行動制限身体拘束隔離通信制限皆さんは、強制入院と聞くと何をイメージしますか? ちょっと怖いイメージでしょうか? それでは、なぜ強制的に入院させられるのでしょうか? さらに、なぜ病室に閉じ込められたり縛られたりするのでしょうか?今回は、強制入院をテーマに、映画「クワイエットルームにようこそ」を取り上げます。この映画は、精神科病院での入院生活の日常をポップでコミカルに描きながらも、実はさりげなく強制入院のあり方への疑問も投げかけています。まずは、医療監修の視点も加えて、ツッコミを入れながら解説してみましょう。なんで強制的に入院させられるの?主人公は明日香。28歳のフリーライター。ある時、目が覚めると、知らない白い部屋で自分が縛られていることに気付きます。そして、遠くで女性の叫び声が聞こえてきます。いきなり、ホラーな展開です。彼女はわけがわからず、不安におののきます。しばらくして看護師がやってきて、そこが精神科病院の閉鎖病棟であり、彼女は強制入院をさせられ、身体拘束をされていると聞かされます。まず、なぜ彼女は強制的に入院させられているのでしょうか? その理由(要件)を大きく3つ挙げてみましょう1)。(1)自他への不利益が差し迫っている明日香は、担当看護師から「アルコールと睡眠薬の過剰摂取によって昏睡状態になっているところを、同居人の方に発見されて、ここに来たんです」と聞かされます。1つ目の理由は、自他への不利益が差し迫っていることです。このような自分を傷つけること(自傷)のほかに、暴力など他人を傷つけること(他害)、摂食や排泄などの身辺自立が困難であること(自立不全)が挙げられます。(2)精神障害がある明日香は、酔った勢いで「私はひどい女」「私には価値なんかないんだから」と泣き叫び、同居人宅の2階から飛び降りようとしていました。また、救急病院で胃洗浄をされている時、「死なせてください」と言っていました。その後、意識が戻ったところで、担当看護師から「希死念慮にとらわれた気分変調症の疑いがあるって聞きましたけど。簡単に言えば、自殺願望ですね」と説明されます。2つ目の理由は、精神障害があることです。気分変調症は、うつ病や双極性障害と同じ気分障害の1つです。このほかに、統合失調症や認知症などが挙げられます。逆に言えば、ただの酔っ払い、ハンガーストライキ、純粋な犯罪など合理的な理由がある場合は、精神障害によるものではないため、強制入院の対象にはなりません。(3)判断能力が著しく低い明日香は、救急病院で胃洗浄の処置を受けますが、ベッドの空きがなかったために、意識が戻る前に精神科病院に転院となります。これは、かなりレアケースです。本来は、意識が戻ったところで、医師(多くは精神科医)が判断能力を評価し、精神科病院への転院が必要か判断します。3つ目の理由は、判断能力が著しく低いことです。これは自他に不利益となっている自覚がないことであり、明日香のような意識障害のほかに、認知機能障害、病識欠如が挙げられます。逆に言えば、自覚できて入院に同意している場合は、任意入院となり、強制入院にはなりません。また、たとえばリストカット(自傷)をするのはすっきりするだけのためと自覚して常習的にやっている場合(情緒不安定性パーソナリティ障害)や、悪酔いから覚めて我に返り謝罪や反省の弁を述べている場合(アルコール依存症)は、判断能力が保たれているため、外来通院は勧められますが、強制入院の対象にはなりません。次のページへ >>

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統合失調症に対するルラシドン投与量は80mg/日へ増量すべきか

 慶應義塾大学の竹内 啓善氏らは、統合失調症患者に対するルラシドンの投与量を40mg/日から80mg/日に増量した場合の有効性および安全性を評価するため、本検討を行った。Journal of Clinical Psychopharmacology誌2025年1、2月号の報告。 対象は、6週間のルラシドン二重盲検プラセボ対照試験を完了し、その後12週間の非盲検延長試験に移行した統合失調症患者。二重盲検期間中に、ルラシドン群(40mg/日)またはプラセボ群に割り当てられた患者には、延長試験期間中にルラシドン40mg/日投与を行った。臨床医による判断に基づきルラシドン80mg/日への増量を可能とした。有効性アウトカムには、ルラシドン80mg/日の治療開始から終了までの陽性・陰性症状評価尺度(PANSS)合計スコアの変化を含めた。安全性アウトカムは、新たに発生した有害事象の発現率とした。 主な結果は以下のとおり。・ITT集団287例のうち、ルラシドンの投与量を40mg/日から80mg/日へ増量した患者は153例であった。・両群において、PANSS合計スコアの有意な減少が認められた(すべてp≦0.001)。・PANSS合計スコアが20%以上減少した患者の割合は、ルラシドン群で35.9%、プラセボ群で40.0%であった。・ルラシドン80mg/日での治療期間中における新たな有害事象の発現率は、ルラシドン群で47.4%、プラセボ群で48.0%であった。 著者らは「対照群がなく、盲検化されていないため、結果は慎重に解釈する必要がある」としながらも「統合失調症患者に対するルラシドン40mg/日から80mg/日への増量は、効果的かつ忍容性も良好であることが示唆された」と結論付けている。

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統合失調症患者の推定死亡率、男女間での違いは?

 統合失調症患者の早期死亡リスクに対する性差の影響は、不明である。カナダ・オタワ大学のMarco Solmi氏らは、統合失調症患者と性別で層別化した複数の対照群を比較し、すべての原因による死亡リスクおよび特定の死因での死亡リスクの違いを評価した。European Neuropsychopharmacology誌2025年2月号の報告。 統合失調症患者の死亡相対リスク(RR)を性別で比較するため、PRISMA 2020ガイドラインに従い、システマティックレビューおよびランダム効果メタ解析を実施した。出版バイアスの評価には、ニューカッスル・オタワ尺度(NOS)を用いた。 主な結果は以下のとおり。・43件の研究、統合失調症患者270万825例をメタ解析に含めた。・男女ともに統合失調症患者は、対照群と比較し、すべての原因による死亡率、自殺率、自然死率が高かった。 ●すべての原因による死亡率 【男性】RR:2.62、95%信頼区間(CI):2.35〜2.92 【女性】RR:2.56、95%CI:2.27〜2.87 ●自殺率 【男性】RR:9.02、95%CI:5.96〜13.67 【女性】RR:12.09、95%CI:9.00〜16.25 ●自然死率 【男性】RR:2.11、95%CI:1.88〜2.38 【女性】RR:2.14、95%CI:1.93〜2.38・性別による死亡リスクに、有意な差は認められなかった。・40歳未満の女性では、40歳以上の女性と比較し、年齢依存的に死亡リスクの増加が認められた(RR:4.23 vs.2.17)。・神経疾患(認知症)による死亡リスクは、男性のほうが女性よりも有意に高かった(RR:5.19 vs.2.40)。・死亡リスクの増加は、多くの場合、特定の修正可能なリスク因子との関連が認められた。 著者らは「死亡リスクの増加は、時間経過とともに改善が認められないため、修正可能なリスク因子の特定のためのさらなる研究および統合失調症の男女の身体疾患治療の改善が求められる」と結論付けている。

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