強制的なランニングがストレスや抑うつ症状に及ぼす影響〜動物実験データ

提供元:ケアネット

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公開日:2025/04/16

 

 High mobility group box 1(HMGB-1)は主に有核細胞の核内に発現しているタンパクで、炎症性刺激時または細胞死に際して核内から細胞外に放出され、それが炎症応答を誘導し、敗血症や免疫疾患などの病態を増悪することが知られている。HMGB-1により媒介される炎症反応は、うつ病の病態生理学的メカニズムにおいて重要な役割を果たすと考えられる。Qian Zhong氏らは、海馬におけるHMGB-1の影響を評価し、うつ病の慢性予測不能軽度ストレス(CUMS)マウスモデルに対する強制的なランニング(FR)の抗うつ作用を調査した。Neuropsychobiology誌オンライン版2025年3月11日号の報告。

 本研究では、FRまたは従来の広域スペクトル抗うつ薬であるfluoxetine(FLU)による単独または併用療法の潜在的なベネフィットを評価した。実験は、対照マウス、FR+FLUマウス、CUMS、CUMS+FRマウス、CUMS+FLUマウス、CUMS+FR+FLUマウスにより実施した。うつ病様行動の評価には、尾懸垂試験、強制水泳試験、ショ糖嗜好試験を用いた。実験後、海馬のHMGB-1および関連タンパク質、サイトカインレベルを測定した。

 主な結果は以下のとおり。

・4週間のFRにより、CUMSマウスにおけるうつ病様行動の有意な軽減が認められた。
・また、HMGB-1関連炎症性タンパク質およびサイトカイン発現の減少が明らかとなった。
・一方、FLUによるうつ病様行動の改善に対する作用は限定的であったが、海馬のHMGB-1関連炎症性タンパク質およびサイトカイン発現の減少が認められた。
・FR+FLU併用は、統計学的に有意な抗うつ作用を示し、HMGB-1関連炎症性タンパク質およびサイトカイン発現の減少が認められた。また、FR単独と比較し、反応速度が向上した。

 著者らは「FRは、HMGB-1関連の抗炎症反応の調節に対し潜在的なベネフィットをもたらす可能性がある。うつ病のマネジメントや治療において、身体活動の潜在的な役割が明らかとなった」としている。

(鷹野 敦夫)