統合失調症治療における抗精神病薬の有効性を得るためには、服薬アドヒアランスを保つことが不可欠であり、中止率が高い場合には、有効性が損なわれる。そのため、抗精神病薬の投与量と中止率との関係を理解することは重要である。ドイツ・ミュンヘン工科大学のJing Tian氏らは、この関連性を評価し、アドヒアランスの最大化、中止リスクを最小限に抑える抗精神病薬の投与量を明らかにするため、システマティクレビューおよびメタ解析を実施した。European Neuropsychopharmacology誌2025年5月号の報告。
統合失調症および関連疾患の急性増悪期患者を対象に20種類の抗精神病薬を評価した固定用量RCTを複数の電子データベースよりシステマティックに検索した。頻度論的フレームワークで1ステージ用量反応メタ解析を用い、用量反応関係を分析した。関連性をモデル化するため、制限付き3次スプラインを用いた。主要アウトカムは、すべての理由による治療中止とし、副次的アウトカムに効果不十分および副作用による治療中止を含めた。
主な結果は以下のとおり。
・136研究(4万4,126例)を分析した結果、抗精神病薬のさまざまな用量反応関係が明らかとなった。
・主要アウトカムであるすべての原因による治療中止については、amisulpride、cariprazine、オランザピン、クエチアピンは、用量反応曲線がU字型を示し、最適な投与閾値が示され、投与量を増やすことで副作用による中止率が上昇する可能性が認められた。
・アリピプラゾール、アセナピン、ブレクスピプラゾール、クロザピン、パリペリドン、リスペリドンは、用量反応曲線がプラトーを示し、特定の投与量を超えた増量によるメリットの追加は認められなかった。
・ハロペリドール、iloperidone、lumateperone、ルラシドン、sertindole、ziprasidoneは、研究された投与量の範囲内で用量反応曲線がプラトーに達しなかった。
・効果不十分による治療中止の曲線は、すべての原因による治療中止の曲線と類似していた。
・副作用による治療中止の曲線の多くは、高用量に関連する副作用の急激な増加を示した。
著者らは「投与量と治療中止との関連は、抗精神病薬により異なり、用量反応曲線は、U字型、単調型、双曲型がみられた。今後の研究により、疾患および副作用関連の有害事象による治療中止を、個別に評価する必要がある」としている。
(鷹野 敦夫)