クロザピンの米国添付文書、30年の時を経て改訂されるか〜世界中の専門家の意見

提供元:ケアネット

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公開日:2025/05/06

 

 クロザピンは、1989年より米国において使用が再開された抗精神病薬であり、米国の添付文書は、時代遅れとなっていることが指摘されている。米国・ Wayne State UniversityのJose de Leon氏らは、クロザピンの添付文書改訂案を作成するため、文献の包括的レビューを実施した。Journal of Clinical Psychopharmacology誌オンライン版2025年4月9日号の報告。

 パートIでは、407件の関連論文に基づき基礎薬理学(クリアランス、薬物動態および薬力学、モニタリングツール)に焦点を当て検討した。パートIIでは、WHOのグローバル医薬品安全性監視データベースより、2023年1月15日までに米国より報告されたデータを用いて、臨床的側面および医薬品安全性監視に焦点を当て、致死的な臨床アウトカムおよび5つの警告(そのうちの4つはクロザピン特有で、重度の好中球減少、発作、起立性調節障害、心筋炎であり、1つはすべての抗精神病薬に関連する認知症高齢者への使用)に関して検討した。

 主な結果は以下のとおり。

・パートIでは、次の9つの主要な問題点が特定された。
(1)in vivo試験において、クロザピンの代謝はCYP1A2に依存していることが示唆された
(2)CYP2D6の影響が小さいことから、CYP2D6低代謝患者におけるクロザピンの減量に関する記載を削除する必要がある
(3)非毒性濃度において、CYP3A4は代謝に関与しておらず、強力なCYP3A4阻害薬は臨床的に関連する影響を及ぼさない
(4)最新のエビデンスに基づき、いくつかの薬物相互作用に関する知見を更新する必要がある
(5)全身性炎症は、クロザピン代謝を低下させ、クロザピン中毒リスクを高める可能性がある
(6)肥満は、クロザピン代謝を低下させる可能性がある
(7)アジア系およびアメリカ先住民族の患者では、クロザピンを減量する必要がある
(8)プロスペクティブ研究が利用可能になるまで、個別化用量設定およびC反応性タンパク質モニタリングを検討すべきである
(9)米国では、夜間単回投与の頻度が高いため、半減期に関する項を修正する必要がある

・パートIIでは、米国におけるクロザピンに関する報告件数は最も多く、5万6,003件の報告および9,587件の関連致死的アウトカムが報告されていた。
・クロザピンに関する4つの警告は、534件の死亡例と関連していた(重度の好中球減少218件、発作131件、起立性調節障害125件、心筋炎36件、心筋症24件、僧帽弁逸脱症0件)。
・警告以外では、肺炎で674件、感染の兆候である白血球数増加で596件の死亡例と関連していた。
・重複を考慮すると、肺炎と白血球数増加は900件の死亡例、つまり9,587件の死亡例のうち9.4%を占めることが明らかとなった。
・米国FDAは、重度の好中球減少に注目しているが、これは死亡例の218件(2.3%)にしかすぎなかった。一方、米国のクロザピン治療患者で報告された死亡例の97.7%は、別の原因によるものであった。

 著者らは「これらの結果は、44の国と地域、124人の米国以外のクロザピン専門家からの支持を得られた。とくに、クロザピン治療患者の将来の死亡リスクを抑制するためにも、感染症による致死的アウトカムに焦点を当てるべきである。米国におけるクロザピンの添付文書改訂は、世界中の添付文書に改訂につながる可能性がある」と結論付けている。

(鷹野 敦夫)