治療抵抗性うつ病の成人患者に対する抗うつ薬と併用した第2世代抗精神病薬(SGA)増強療法のレジメンの根底にある「time window」効果をフォローアップ期間で調整しながら調査するため、中国・大連医科大学のBinru Bai氏らは、ネットワークメタ解析を実施した。BMC Psychiatry誌2025年4月5日号の報告。
Embase、PubMed、Scopus、Cochrane Library、Google Scholars、Clinicaltrials.govを含むデータベースより、2024年5月15日までに公表されたランダム化比較試験を検索した。主要エンドポイントは、Montgomery Asbergうつ病評価尺度(MADRS)スコアとした。副次的エンドポイントはMADRS反応率、3次エンドポイントは臨床全般印象度(CGI-S)およびMADRS寛解率とした。標準平均差(SMD)およびハザード比(HR)は、それぞれ二値変数および連続変数との比較について、ベイジアンネットワークメタ回帰(NMR)により算出した。
主な結果は以下のとおり。
・NMRには、24種類の増強薬を用いた23件(1万679例)の研究を含めた。
・抗うつ薬治療と比較し、主要エンドポイントで有意な効果が得られた増強療法は、次のとおりであった(SMD:−0.28〜−0.114)。
●アリピプラゾール 3〜12mg/日
●ブレクスピプラゾール 1〜3mg/日
●cariprazine 1.5〜3mg/日
●オランザピン 6〜12mg/日+fluoxetine 25〜50mg/日併用
●クエチアピンXR
・エフェクトサイズは同等であり、フォローアップ期間を調整した後、クエチアピンXRを除き、主要エンドポイントの結果は同様であった(SMD:−0.10、95%信頼区間:−0.212〜−0.014)。
・time windowが認められた薬剤は、次のとおりであった。
●ブレクスピプラゾール 3mg/日:7.22週
●cariprazine 1〜2mg/日:2.97週
●cariprazine 2〜4.5mg/日:2.81週
●cariprazine 3mg/日:7.16週
●オランザピン 6〜12mg/日:4.11週
●クエチアピン 150〜300mg/日:3.89週
・MADRS反応率では、ブレクスピプラゾール3mg/日およびリスペリドン0.5〜3mg/日が他の薬剤よりも明らかに優れていた(HR:1.748〜2.301)。
・抗うつ薬治療と比較し、CGI-S(SMD:−0.438〜−0.126)およびMADRS寛解率(HR:0.477〜3.326)において顕著な有効性を示した増強療法は、次のとおりであった。
【CGI-S】
●アリピプラゾール 2〜20mg/日
●ブレクスピプラゾール 2〜3mg/日
●cariprazine 3mg/日
●オランザピン 6〜12mg/日+fluoxetine 25〜50mg/日併用
●リスペリドン 0.5〜3mg/日
【MADRS寛解率】
●アリピプラゾール 2〜20mg/日
●ブレクスピプラゾール 3mg/日
●cariprazine 3mg/日
●リスペリドン 0.5〜3mg/日
著者らは「各エンドポイントと対応するtime windowを総合的に考慮すると、特定のSGAは、治療抵抗性うつ病に対する抗うつ薬の補助療法として有用であり、とくにアリピプラゾールは、他の薬剤よりも有効性および忍容性が良好であることが示唆された」と結論付けている。
(鷹野 敦夫)