循環器内科/心臓血管外科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:8

経口抗凝固療法中の慢性冠症候群患者、アスピリン併用は?/NEJM

 経口抗凝固薬を服用中のアテローム血栓症リスクが高い慢性冠症候群患者において、アスピリンの追加投与はプラセボと比較し、心血管死、心筋梗塞、脳卒中、全身性塞栓症、冠動脈血行再建術または急性下肢虚血の複合アウトカムのリスクを増加させ、さらに全死因死亡および大出血のリスクも高める。フランス・リール大学のGilles Lemesle氏らが、同国の51施設で実施された二重盲検プラセボ対照無作為化試験「Assessment of Quitting versus Using Aspirin Therapy in Patients with Stabilized Coronary Artery Disease after Stenting Who Require Long-Term Oral Anticoagulation trial:AQUATIC試験」の結果を報告した。長期経口抗凝固療法中の高リスク慢性冠症候群患者に対する適切な抗血栓療法のレジメンは依然として明らかになっていなかった。NEJM誌オンライン版2025年8月31日号掲載の報告。

心筋梗塞後にβ遮断薬は今日でも標準治療薬か?正反対の結論を導いた2つのトライアル(解説:桑島巌氏)

10年ほど前までは、β遮断薬は心筋梗塞発症後の再発予防と生命予後改善薬の標準治療薬の代表格として位置付けられており、その処方が行われていない場合には、その医療機関や担当医師がEvidence Based-Medicineを順守していないとみなされていた時代が長く続いた。しかし近年、急性心筋梗塞後の治療は、PCIによる血行再建術が普及し、アスピリンやクロピドグレルなどの抗血小板薬処方が必須となり、また高脂血症治療薬による厳格なコレステロール管理がなされるようになるなど、その状況は大きく変わった。そのような時代の変遷の中で、β遮断薬は心筋梗塞後に必須の治療薬として残存しているのか。

アブレーション後のAF患者、抗凝固療法中止の影響は?/JAMA

 心房細動(AF)のカテーテルアブレーション後1年以上心房性不整脈の再発が確認されていない患者では、経口抗凝固療法を中止したほうが継続した場合と比較し、脳卒中、全身性塞栓症および大出血の複合アウトカムのリスク低下に結び付いたことが示された。韓国・Yonsei University College of MedicineのDaehoon Kim氏らALONE-AF Investigatorsが、同国の18施設で実施した研究者主導の無作為化非盲検比較試験「Anticoagulation One year after Ablation of Atrial Fibrillation in Patients with Atrial Fibrillation:ALONE-AF試験」の結果を報告した。AFに対するカテーテルアブレーション後の患者における、長期抗凝固療法に関する無作為化比較試験のデータは不足していた。JAMA誌オンライン版2025年8月31日号掲載の報告。

フレイル高齢者における心リハの新展開(解説:野間重孝氏)

心筋梗塞後の心臓リハビリテーション(心リハ)は、これまで多数の臨床試験やメタアナリシスによりその有効性が検証されてきた。従来の複数の研究において、運動耐容能や生活の質の改善に加えて、全死亡や心血管死の低下といった予後改善効果も報告されている。しかし、その対象は比較的若年で活動的な患者が中心であり、フレイルや身体機能低下を伴う高齢者に関するエビデンスは乏しかった。実臨床においてはむしろこの層の患者が多いにもかかわらず、十分に検討されてこなかった点は大きな課題であった。

僧帽弁クリップ術やアブレーションによる心房中隔欠損が問題に、その対策とは/日本心臓病学会

 第73回日本心臓病学会学術集会が9月19~21日に高知にて開催された。シンポジウム「循環器内科が考える塞栓症予防-左心耳閉鎖、PFO閉鎖、抗凝固療法-」において、赤木 禎治氏(心臓病センター榊原病院 循環器内科)が、「医原性心房中隔欠損の現状と治療」と題し、心血管インターベンション治療の普及に伴い増加傾向にある心房中隔裂開の対策や課題などについて報告した。  経カテーテル僧帽弁形成、左心耳閉鎖やアブレーションなどの心血管インターベンション治療中に心房中隔を損傷し、中隔が裂けて発生する心房中隔欠損(ASD)を医原性心房中隔欠損(iASD)と呼ぶ。カテーテル操作に起因する中隔裂開として発生するが、術者の技量に関係なく一定の頻度で発生し、一部の患者では急激な血行動態の破綻を招くという。

ヘパリン起因性血小板減少症、病原性抗体の特性を評価/NEJM

 ヘパリン起因性血小板減少症(HIT)は、ヘパリン治療に対する免疫介在性の反応で、血小板第4因子(PF4)とヘパリンの複合体を標的とする抗体によって引き起こされ、血小板数の減少と血栓症リスクの上昇を特徴とする。カナダ・McMaster UniversityのJared Treverton氏らは、最も多くみられる抗PF4抗体疾患であるHITが、クローン性の限定された抗PF4-ヘパリン抗体によって引き起こされるかどうかを、カナダ国内の患者9例を対象に調査し、全員の病原性抗体がモノクローナルであったことを報告した。HITはポリクローナル免疫応答として特徴付けられてきたが、他のまれな抗PF4疾患の研究で、クローン性の限定された抗体が同定されていた。著者は、「今回の知見は、HITの発症機序への洞察を与えるものであり、診断や標的治療の向上に影響をもたらすものである」と述べている。NEJM誌2025年9月4日号掲載の報告。

脳卒中リスクを有する高齢者、遠隔AFスクリーニングは有効か/JAMA

 英国・オックスフォード大学のRohan Wijesurendra氏らは、脳卒中リスクが中等度~高度の高齢患者について、郵送送受信によりパッチ型の長時間携帯型心電図(ECG)を用いて14日間モニタリングする心房細動(AF)スクリーニングの長期有効性を検討し、通常ケアと比較して、2.5年時点のAF診断率の上昇にわずかだが結び付いたことを示した。JAMA誌オンライン版2025年8月29日号掲載の報告。  研究グループは、2019年5月2日~2022年2月28日に、英国のプライマリケア診療所27ヵ所から被験者を集めて並行群間非盲検遠隔無作為化試験「AMALFI試験」を実施した。適格対象は、参加プライマリケア診療所で電子的に記録された健康記録(EHR)によって特定した、CHA2DS2VAScスコアが男性は3以上、女性は4以上で、AFまたは心房粗動(AFL)既往のない65歳以上の高齢者であった。

心室性不整脈予防のための最適なカリウム戦略は?/NEJM

 心血管疾患患者では、低カリウム血症により心室性不整脈のリスクが増加するが、血漿カリウム値が正常下限域であっても同様のリスクの増加が知られている。デンマーク・コペンハーゲン大学のChristian Jons氏らPOTCAST Study Groupは、血漿カリウム値が正常下限域で、心室性不整脈のリスクが高い心血管疾患患者において、カリウム値を正常上限域まで積極的に上昇させる戦略の有効性の評価を目的に、非盲検イベント主導型無作為化優越性試験「POTCAST試験」を実施。植込み型除細動器(ICD)を装着した心室性不整脈のリスクが高い心血管疾患患者において、標準治療単独に薬物療法と食事指導を加えたことによって血漿カリウム値が上昇したことにより、標準治療単独と比べてICD適切作動、不整脈または心不全による予定外の入院、全死因死亡の複合のリスクが有意に低下したことを報告した。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2025年8月29日号で発表された。

植物性食品中心の食事は慢性疾患の併発を予防する

 植物性食品中心の食生活が、がん、心血管疾患、2型糖尿病のいずれか二つ以上を併発する状態の予防につながることを示唆するデータが報告された。ウィーン大学(オーストリア)のReynalda Córdova氏らの研究によるもので、詳細は「The Lancet Healthy Longevity」8月号に掲載された。  この研究では、欧州6カ国で行われている「欧州がん・栄養前向き調査(EPIC)」と英国で行われている「UKバイオバンク」という二つの大規模疫学研究のデータが解析に用いられた。年齢35~70歳で、がん、心血管疾患、2型糖尿病の既往のない40万7,618人を解析対象とした。食事スタイルの評価には、全粒穀物や果物、野菜、ナッツ、豆類などの健康に良い植物性食品の摂取量が多いことを表す「hPDI」と、精製穀物やジャガイモ(フライドポテトなど)といった健康にあまり良くない植物性食品の摂取量が多いことを表す「uPDI」という、二つの指標を用いた。

音楽は血圧の調節に役立つ?

 英語では「Music hath charms to soothe the savage breast(音楽には怒りを鎮める力がある)」というフレーズがあるが、音楽は心臓の健康状態にも同様の効果をもたらし得るようだ。新たな小規模研究で、血圧が音楽のパターンに「同期」する可能性のあることが明らかになった。この研究を実施した、英キングス・カレッジ・ロンドン工学教授でピアニストでもあるElaine Chew氏らは、「このことは、身体の血圧を調節する能力である圧受容体反射感受性を高める助けになるかもしれない」との見方を示している。この研究結果は欧州心臓病学会年次総会(ESC Congress 2025、8月29日~9月1日、スペイン・マドリード)で発表された。