循環器内科/心臓血管外科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:8

降圧薬服用は、朝でも夜でもお好きなほうに―再び(解説:桑島巖氏)

「降圧薬の服用は朝か夜か?」の問題については、2022年にLancet誌上で発表されたTIME studyのコメントで発表しているが、今回JAMA誌に発表されたGarrisonらのBedMed randomized clinical trial論文でもまったく同じコメントを出さざるを得ない。TIME studyと同様、本研究でも降圧薬の時間薬理学を理解していれば、服薬は朝(6~10時)でも夜(20~0時)でもどちらも同じ結果(心血管イベント、心血管死)をもたらすというのは当然の結論である。降圧薬の心血管予防効果は24時間にわたる降圧効果の持続と相関することはすでに知られており、現在処方されている降圧薬のほとんどは血中濃度に依存して降圧効果を発揮するが、24時間以上持続する降圧薬はアムロジピンとサイアザイド系、非サイアザイド系降圧利尿薬のみである。ACE阻害薬やARBはいずれも24時間持続性がない。

フィネレノン、HFpEFの心血管死・心不全入院リスク減~プール解析(FINE-HEART)

 米国・ブリガム&ウィメンズ病院のJohn W Ostrominski氏らが、非ステロイド性ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬(MRA)のフィネレノン(商品名:ケレンディア)の3件の大規模試験(FIDELIO-DKD、FIGARO-DKD、FINEARTS-HF)をプール解析した「FINE-HEART」から、フィネレノンは左室駆出率(LVEF)の保たれた心不全(HFpEF)の心血管死または心不全による入院を13%減少させることを示唆した。JACC:Heart Failure誌2025年6月11日号掲載の報告。

RNAi治療薬ブトリシラン、ATTR-CMの適応追加/アルナイラム

 2025年6月24日、アルナイラムジャパンは核酸医薬(RNAi)のブトリシラン(商品名:アムヴトラ)について、トランスサイレチン型心アミロイドーシス(ATTR-CM)治療薬として、国内における適応追加承認を取得した。  この適応追加は、多施設共同二重盲検無作為化試験の第III相HELIOS-B試験の結果に基づいたもの。本試験は、ATTR-CM(変異型および野生型)と診断された成人患者655例を対象に、主要評価項目を全死因死亡および心血管関連イベントの再発の複合とし、アムヴトラの有効性と安全性を評価。主要評価項目およびすべての副次評価項目を達成し、NEJM誌オンライン版2024年8月30日号でも報告されていた。

心筋梗塞後の便秘、心不全入院リスクが上昇~日本人データ

 心筋梗塞患者において、退院後6ヵ月間における便秘は心不全による入院リスクの上昇と強く関連していることを、仙台市医療センター仙台オープン病院の浪打 成人氏らによる研究の結果、示唆された。浪打氏らは以前、急性心不全後に便秘のある患者は心不全による再入院リスクが高いことを報告しており、今回、便秘による心筋梗塞患者の予後への影響を心不全入院で評価し、BMC Cardiovascular Disorders誌2025年5月28日号に報告した。

ドナー心の冷却保存時間の延長に新たな可能性

 ドナーから摘出された心臓を移送中のダメージから守ることにつながる新たな発見によって、今後、移植に使用できる心臓(以下、ドナー心)の数が増えるかもしれない。米メイヨー・クリニックの心臓血管外科医であるPaul Tang氏らが、冷却保存している間にドナー心が損傷を受ける生物学的なプロセスを特定したとする研究結果を、「Nature Cardiovascular Research」に5月19日発表した。  さらに喜ばしいことに、Tang氏らはすでに心疾患の治療に使用されているある薬が、ドナー心の損傷の予防にも活用できることを突き止めた。Canrenoneと呼ばれるこの薬を使用して保存されたドナー心では、同薬を使用しなかったドナー心と比べてポンプ機能が約3倍に強化されたことが示されたという。

わが国における単剤療法を考えるにはもう一段の考察も必要か?(解説:野間重孝氏)

本論文は、PCI後の抗血小板療法において、DAPT終了後の維持戦略としてP2Y12阻害薬単剤療法がアスピリン単剤と比較して虚血イベント抑制において優れ、出血リスクも同等に保たれる可能性を、個別患者データ(IPD)を用いたメタ解析によって明らかにしたものである。対象データはいずれも信頼できるRCTに基づいており、解析の設計と手法も洗練されている。近年積み重ねられてきたP2Y12阻害薬単剤療法の有効性に関する知見を、統合的かつ精緻に再検討した意義は十分に評価できると考える。

治療法が大きく変化、アミロイドーシス診療ガイドライン8年ぶりに改訂

 『アミロイドーシス診療ガイドライン2025』が2024年12月に発刊された。2017年版から8年ぶりの改訂となるが、この間にアミロイドーシスの各病型の病態解明が進み、診断基準をはじめ、トランスサイレチン型(ATTR)アミロイドーシスに対する核酸医薬、ALアミロイドーシスに対する抗CD38抗体薬、アルツハイマー病(AD)による軽度認知障害および軽度の認知症に対する抗アミロイドβ抗体薬の発売など、治療法も大きな変化を遂げている。そこで今回、本ガイドライン作成委員長であり、アミロイドーシスに関する調査研究班を率いる関島 良樹氏(信州大学医学部 脳神経内科、リウマチ・膠原病内科 教授)にアミロイドーシスの現状や診断方法、本書の改訂点などについて話を聞いた。

歯周病の進行が動脈硬化と相関か

 歯周病は40歳以上の成人における歯の喪失の主な原因と考えられているが、2000年代の初頭からは他の全身疾患との関連性も報告されるようになった。今回、アテローム性動脈硬化と歯周病の進行が相関しているとする研究結果が報告された。研究は鹿児島大学大学院医歯学総合研究科予防歯科学分野の玉木直文氏らによるもので、詳細は「Scientific Reports」に4月18日掲載された。  アテローム性動脈硬化は血管疾患の主な原因の一つであり、複数のメタ解析により歯周病との関連が報告されている。長崎大学は2014年に、離島における集団ベースの前向きオープンコホート研究である長崎諸島研究(Nagasaki Islands Study;NaIS)を開始した。このコホート研究でも以前、動脈硬化が歯周病の進行に影響を与えるという仮説を立て、横断研究によりその関連性を調査していた。しかし、両者の経時的な関連性を明らかにする縦断研究はこれまで実施されていなかった。そこで著者らは、追跡調査を行い、動脈硬化と歯周病の関連性を検討する3年間のコホート研究を実施した。

心臓発作から回復後にしてはいけないこと

 心臓発作から回復した後に、座位行動の時間が長いほど発作再発や死亡リスクが高く、座位行動を運動または睡眠に置き換えることでそのリスクが抑制される可能性のあることが明らかになった。米コロンビア大学医療センターのKeith Diaz氏らの研究によるもので、詳細は「Circulation: Cardiovascular Quality and Outcomes」に5月19日掲載された。  この研究は、2016~2020年に急性冠症候群(心筋梗塞や不安定狭心症)の症状のために同センター救急外来で治療を受けた成人患者を対象に実施された。退院後30日間にわたり、手首装着型の加速度計を用いて、座位行動や身体活動、および睡眠の時間を測定。また退院1年後に、電話調査や医療記録、死亡記録によって転帰が確認された。解析対象者数は609人(平均年齢62歳〔範囲21~96〕、男性52%)で、1日の座位時間は平均13.6±1.8時間だった。

DOACによる消化管出血での死亡率~20研究のメタ解析

 抗凝固薬による消化管出血は、発生頻度や死亡リスクの高さから、その評価が重要となる。しかし、重篤な消化管出血後の転帰(死亡を含む)は、現段階で十分に特徴付けられておらず、重症度が過小評価されている可能性がある。今回、カナダ・ブリティッシュコロンビア大学のNicholas L.J. Chornenki氏らは、直接経口抗凝固薬(DOAC)関連の重篤な消化管出血が30日全死亡率の有意な上昇と関連していることを明らかにした。Thrombosis Research誌2025年5月24日号掲載の報告。