循環器内科/心臓血管外科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:7

高血圧に関する米国人の誤解の多さが明らかに

 米ペンシルベニア大学アネンバーグ公共政策センターが6月6日に発表した新たな調査結果において、米国人の3分の1以上が、高血圧はめまいや息切れなどの明らかな症状を伴うものと誤解していることが示された。  血圧は、心臓の拍動によって動脈にかかる圧力を示す指標であり、心臓が収縮して血液を送り出すときの収縮期血圧(上の血圧)と、心拍と心拍の間の安静状態にあるときの拡張期血圧(下の血圧)の2つで表される。米国心臓協会(AHA)と米国心臓病学会(ACC)は、2017年に高血圧の定義を従来の140/90mmHgから130/80mmHgに引き下げた。米疾病対策センター(CDC)によると、2022年に米国では高血圧が68万5,000人以上の死亡の主因、または一因であったという。

心房細動を伴う脳梗塞のDOAC開始、早期vs.遅延~メタ解析/Lancet

 急性虚血性脳卒中と心房細動を有する患者において、直接経口抗凝固薬(DOAC)の遅延開始(5日以降)と比較して早期開始(4日以内)は、30日以内の再発性虚血性脳卒中、症候性脳内出血、分類不能の脳卒中の複合アウトカムのリスクを有意に低下させ、症候性脳内出血を増加させないことが、英国・ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンのHakim-Moulay Dehbi氏らが実施した「CATALYST研究」で示された。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2025年6月23日号に掲載された。  研究グループは、急性虚血性脳卒中発症後におけるDOACの早期開始と遅延開始の有効性の評価を目的に、無作為化対照比較試験の系統的レビューと、個別の患者データのメタ解析を行った(英国心臓財団などの助成を受けた)。

スタチンは敗血症の治療にも効果あり?

 スタチン系薬剤(以下、スタチン)は、高LDLコレステロール(LDL-C)血症の治療における第一選択薬であるが、この安価な薬剤は、別の病態において救命手段となる可能性があるようだ。新たな研究で、敗血症患者の治療において、抗菌薬、点滴、昇圧薬による通常の治療にスタチンを加えることで死亡リスクが低下する可能性のあることが明らかになった。天津医科大学総合病院(中国)のCaifeng Li氏らによるこの研究結果は、「Frontiers in Immunology」に6月6日掲載された。  敗血症は、感染症に対する過剰な免疫反応によって全身に炎症が広がり、複数の重要な臓器に機能不全が生じる病態である。研究グループによると、米国では毎年約75万人が敗血症で入院し、そのうち約27%が死亡している。敗血症患者の約15%には、血圧が危険なレベルまで低下する敗血症性ショックが生じる。敗血症性ショックの死亡リスクは30〜40%に上ると報告されている。

心エコーの自動解析AIシステム「PanEcho」、精度は?/JAMA

 米国・テキサス大学オースティン校のGregory Holste氏らは、経胸壁心エコー(TTE)において39項目(診断分類タスク18項目、パラメーター推定タスク21項目)を自動解析する人工知能(AI)システム「PanEcho」を開発し、内部および外部検証の結果、地理的および時間的な違いにかかわらず高い精度が得られることを報告した。心エコー検査は心血管診療の基盤であるが、一連の動画の専門家による読影と手作業によるレポート作成に依存している。著者は、「マルチタスクディープラーニングを用いて心エコー読影を自動化したAIシステム(PanEcho)は、心エコー検査室における補助的な読影ツールとして、あるいはポイントオブケアにおけるAI対応スクリーニングツールとして活用できる可能性があり、各臨床ワークフローにおける前向き評価が望まれる」と述べている。JAMA誌オンライン版2025年6月23日号掲載の報告。

僧帽弁逆流症、MTEER後の予後予測にNT-proBNPが有用

 一次性(器質性)僧帽弁逆流症(Primary Mitral Regurgitation:PMR)に対する経皮的僧帽弁接合不全修復術(MitraClipによるMTEER)を受ける患者のN末端プロB型ナトリウム利尿ペプチド(NT-proBNP)を用いた予後予測の真価は不明である。今回、PRIME‐MR Investigatorsのドイツ・ケルン大学のPhilipp von Stein氏らは、MTEERを受けたPMR患者のNT-proBNPが、3年以内の死亡または心不全入院と独立して関連していたことを明らかにした。European Journal of Heart Failure誌オンライン版2025年6月18日号掲載の報告。

大手術前のRAS阻害薬の継続/中止、心血管リスク有無での判断は?

 昨年JAMA誌に掲載されたStop-or-Not試験では、非心臓大手術前のレニン-アンジオテンシン系阻害薬(RASI:ACE阻害薬またはARB)の継続と中止のアウトカムを比較し、全死因死亡と術後合併症の複合アウトカムに差は認められなかった。しかし、術前の心血管リスク層別化がこの介入に対する反応に影響を与えるかどうかは依然として不明である。そこで、米国・カリフォルニア大学サンフランシスコ校のJustine Tang氏らはStop-or-Not試験の事後解析を行い、術前の心血管リスクが患者の転帰に影響を与えないことを明らかにした。JAMA Cardiology誌オンライン版2025年6月25日号に短報として掲載された。

希釈式自己血輸血、心臓手術時の同種血輸血を減じるか/NEJM

 心臓手術を受ける患者は赤血球輸血を要することが多く、これには多額の費用や、供給量が不足した場合の手術の延期、輸血関連合併症のリスクが伴うため、輸血の必要性を減じるアプローチの確立が求められている。イタリア・IRCCS San Raffaele Scientific InstituteのFabrizio Monaco氏らANH Study Groupは「ANH試験」において、通常ケアと比較して希釈式自己血輸血(acute normovolemic hemodilution:ANH)は、人工心肺装置を使用した心臓手術時に同種赤血球輸血を受ける患者の数を減らさず、出血性合併症も抑制しないことを示した。研究の詳細は、NEJM誌オンライン版2025年6月12日号に掲載された。  ANH試験は、ANHの使用が同種赤血球輸血の必要性を減少させるとの仮説の検証を目的とする実践的な単盲検無作為化第III相試験であり、2019年4月~2024年12月に北米、南米、欧州、アジアの11ヵ国32施設で参加者を登録した(イタリア保健省の助成を受けた)。

経口セマグルチドはASCVDかつ/またはCKDを合併した肥満2型糖尿病患者の心血管イベントを減らす(解説:原田和昌氏)

GLP-1受容体作動薬の注射剤は、さまざまな異なる患者像において心血管系の有効性が確立しており、メタ解析でも同様の結果が得られている。しかし、経口セマグルチドはPIONEER 6試験にて2型糖尿病(T2DM)かつ心血管リスクの高い患者における安全性は確立されたが、主要有害心血管イベント(MACE)に対する有効性は示されなかった。米国のDarren K. McGuire氏らはSOUL試験により、アテローム動脈硬化性心血管疾患(ASCVD)かつ/または慢性腎臓病(CKD)を有する平均BMI 31のT2DM患者において、経口セマグルチドがプラセボと比較してMACEのリスクを有意に減少させることを示した。

糖尿病と高血圧の併発が命を脅かす

 米国では2型糖尿病と高血圧を併発している患者が過去20年間で倍増し、そのような患者は全死亡リスクが約2.5倍、心血管死のリスクは約3倍に上ることが明らかになった。これは米コロンビア大学メイルマン公衆衛生大学院のNour Makarem氏らの研究の結果であり、詳細は「Diabetes Care」に5月21日掲載された。  この研究には、1999~2018年の米国国民健康栄養調査(NHANES)に参加した4万8,727人の成人のデータが用いられた。参加者全体を、2型糖尿病も高血圧もない群(50.5%)、2型糖尿病のみの群(2.4%)、高血圧のみの群(38.4%)、両方に罹患している群(8.7%)という4群に分類して、全死亡(あらゆる原因による死亡)と心血管死のリスクを比較した。なお、2型糖尿病と高血圧を併発している患者の割合は、前記の期間中に6%から12%へと倍増していた。

減量・心代謝リスク因子に対し、最も効果的な断食戦略は?/BMJ

 米国・Harvard TH Chan School of Public HealthのZhila Semnani-Azad氏らは、無作為化比較試験99報についてネットワークメタ解析を行い、断続的断食および連続的エネルギー制限食は自由食と比較して体重を減少させ、断続的断食の中でも隔日断食は連続的エネルギー制限食と比較して体重減少に有益であることを報告した。体重減少は心代謝リスク因子を低下させ、結果として2型糖尿病や心血管疾患などの疾病負担を減らすことを可能とするが、減量戦略としてよく行われている断続的断食が、カロリー制限食や自由食と比較して健康にどのような効果があるかは明らかになっていなかった。BMJ誌2025年6月18日号掲載の報告。